リサンよ…111連は結構効いたぞ。
狂気が…ズキンとしたんだ。
ヤケクソ単発で出てくんのホンマいい加減にせぇよ。
アル達はブラックマーケットを抜け、事務所に帰還した。
「いやぁ危なかったねぇ。マーケットガードナーと運悪く遭遇しちゃうなんて。」
ムツキが飄々と言う。
「そんなこと言って、ムツキが全部爆弾で吹き飛ばしたでしょ?しかも楽しそうだったし。」
カヨコが呆れたように言う。
「ア、アル様。大丈夫ですか?さ、さっきと同じで変わりますか?」
アルを心配するように声をかけるハルカ。
「ゼェ…ゼェ…心配…しないで頂戴。全然……疲れてない……わ。」
ルチオを背負いながら全速力で走ってきたせいか、顔が真っ青で、生まれたての子鹿のようにプルプルと足を振るわせるアル。
「とりあえず、この人の治療が先だね。応急処置はしたけど、包帯とか巻き直さなきゃ。」
カヨコが早く事務所に入って、ルチオを治療するように促す。
-便利屋68事務所内-
「結構出血してるね。これじゃあ処置にするには、少し衣服を脱がさないといけない。」
カヨコが冷静にルチオの出血部位を分析する。
「じゃあ、お兄さんには悪いけど服脱がしちゃおっか〜。どんな体してるんだろう?」
「私も手伝うわ。ちょっと恥ずかしいけど…」
ムツキが服に手をかける。アルは少し恥じらいを感じつつも、ムツキの手伝いをする。
ムツキとアルが丁寧に上着を脱がせていく。2人は、服を脱がせた瞬間、みるみる内に青い顔になる。終いには絶句、口を押さえて固まってしまう。
「なんなのよ…この傷の痕は……!」
後から色々持ってきたカヨコやハルカでさえ、アルから出てきた言葉を心の底から理解できていた。
痛々しいなんていう表現が生ぬるく感じるほどの古傷がルチオの体には深く刻み込まれていたからである。
「…ごめんなさい。少し取り乱したわ。今は治療が先決よ。」
アルがいち早く冷静さを取り戻し、自分の部下達に促す。鶴の一声のように、他のメンバーもそれぞれ作業に取り掛かった。
-ルチオの夢の中-
僕は、師匠に裏路地で拾われた子供だったそうです。師匠曰く、ただの気まぐれ、それ以上でもそれ以下でもないと。
僕は拾われた時、少し希望を抱きました。これ以上苦しまなくて済む、マシな暮らしができると。
そんな儚い希望を信じた結果、僕を待っていたのは地獄の日々、何度も血反吐を吐き、地面を転げ回り、体に傷という形で技術を刻み込まれた。
最初は、必死に食らいついていた。師匠の恩義に報いるため、自分の存在価値を示すために。
しかし——
あ?少し剣先が当たっただけでなんで倒れてんだ?偉そうに…さっさと立ちな!
ドゴッ!!
なんで殴られるとわかっていながら、いちいち構えを変えるんだ?覚えた側から忘れるな、とにかく体を動かせ!
ルチオ、お前は教本だ。いずれヨシヒデに使われるためのな。
帰ってきたのは僕を道具としか思っていないような言動と果てしない暴力の渦、この扱いをされてもあの時は仕方ないと思っていた。
いつか師匠は僕のことを見てくれると信じていたから。
なのに——
言っただろう、ルチオ。お前か何年努力しようと…。
ドガッ!
アタシたちのヨシヒデに追いつくにはまだまだ遠いってな。
見てわかっただろ?今のお前のレベルがどれだけ酷いかを…
結局、役目を全うする時まで師匠が変わることはなかった。単に自分が未熟でパレルモを満足に扱えないただの木偶、一つの道具に過ぎなかった。
この襲撃でハッキリとしたことは、僕はもう師匠に認められることはないのだろうという諦念のみだった。
僕の中では、この時期に押し殺したはずの感情が常に濁流のように渦巻いていた。
希望は絶望へ
愛は憎悪へ
恩義は殺意へ
最後の戦闘…僕が死ぬ少し前の回想が流れる。この世界に来て、重症を負った時と同じ程度の疲労を感じた、前の人生で最後の戦闘。
あまりの苛烈さに僕は膝をついていた。2刀の内1刀を思わず手から離してしまうほどに。
何度言った?そんなデタラメなところじゃなくて、心臓!心臓を狙えって!
師匠の怒号が飛ぶ。冷静さを失ったような怒号にまた殺意が募る。
何度も手本を見せてやったろ、なぁ!?
だが、この言葉には背けない。
いや、従うことしかできない。
僕は拾われた身、真心を込めて従う義務がある。
だからお前は教本から抜け出せねぇんだよ…
………教本として存在できないのなら…一体僕には…何が残るというなのだろうか。
少し遡って、師匠がソファに横たわって寝ていた光景が回想によって現れる。
今なら、殺せるんじゃないか?
長い年月を経て、蓄積された小さな殺意が僕をこの考えに至らせた。この襲撃を凌ぎ切ったら、自らの手で師匠を殺そうと固い決意を心の中で固めた。
けど、ついにそれは実行されることなく、僕は命を落とした。いつか、こんな日が来るとはわかっていた。
この世界に来た時に、最初に感じたことは「変わらない」だった。裏路地、騙し、奪い合う。唯一違うことは、僕以外死が身近にないこと。
だからこそ、僕にとっては、抗争自体は都市の裏路地より過酷だった。師匠に拾ってもらわなければ、こんな人生を都市でも送っていたのだろうと思うと、なんとも言えない皮肉と少しばかりの恩義を感じてしまう。
このどうしょうもない矛盾、気持ち悪さが本当の意味で心を蝕んで行く。当てどころのない不安が募る。
便利屋として雇ってもらったはいいものの、早々に重症を負い、また死を悟った。また暗い闇の底で死ぬのだと吐き気がしそうなくらい自分を…この世界を憎んだ。
けど、この闇の底で僕が見たのは希望の光だ。まるで恐れを知らない振る舞い、堂々たる態度。師匠と違って、彼女は慈愛に満ち、尚且つ仲間に慕われていた。
僕に宿ったのは、ささやかな嫉妬と膨大な羨望。彼女達と行動を共にしたいという、僕の抱いた初めての欲望。それが、叶わないのは残念という他ならない。
あの傷なら、どうせもう死ぬだろうから。
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-便利屋side-
「どどどどど!どうしましょう!止血はしたけど、一向に目覚めないわ!」
アルが慌てふためき、ムツキが静止する。
「まぁまぁ、落ち着いてよアルちゃん。そんなすぐ起きるような容体でもないし。安心して待ちなよ。」
ムツキの言葉にハルカは提案をする。
「あ、あの…近くの病院に連れて行くのはど、どうですか?」
「無理だね。」
ハルカの提案をカヨコは否定する。
「この人はブラックマーケットにいた時点でまともに受け入れて守られるかすら怪しい。身分のわからない…恐らく「外の人間」なら尚更ね。」
「す、すみません!すみません!出過ぎた真似を!こ、ここで死にます!」
ハルカがまた自己嫌悪に陥ったので、他の3人で少しずつフォローする。
「師匠…」
「え?今この人…喋って」
アルが寝言に気づいた瞬間、ルチオが目覚める。
「!!」
ルチオは飛び起き、近くにあった剣を回収し臨戦体制に入る。一瞬にして凍りついたような空気が事務所を包む。
剣を握りしめた手は震え、必死に周りを見渡し、視覚的情報を拾い集める。息は依然として荒く、呼吸するたびに冷や汗が額から噴き出す。
“少しでも動いたら斬る”
という雰囲気の中、ルチオはようやく倒れた時の記憶が浮かんでくる。便利屋の面々の姿を見て、僅かに瞳が揺らぐ。
「…ここは?」
しかし油断はできない。都市では利益でもない限り、基本見ず知らずの他人を助けるなんてまずしない。悪ければ死体漁り、良くてもみぐるみを剥がされる。
そんな都市での常識が、ルチオの剣の切先を下げることを許さない。
「ちょ!ちょっと待っ、きゃあ!!」
ドテッ!!
アルが弁解しようと慌てて前に出ようとするが、足がもつれて盛大にこける。絶妙な緊張感の無さにルチオの警戒度がほんの少し下がる。
「勘違いしないでね。ここは私たち便利屋68の事務所。あまりにも重症だったから、ここで手当してたの。危害を加えるつもりはないよ。」
冷静に武器を離し、両手を上げて無害なのを伝えるカヨコ。
「まぁまぁ、落ちついてよお兄さん。もう追っ手はいないからさ。」
ニコニコしながらヒラヒラと両手を上げるムツキ。いつでも飛びかかれるように構えているが、オロオロと怯えるハルカ。
こんな連中が自分を悪いように扱うとは思えなくなったルチオはやがて、ゆっくり息を吐き、剣を床に置いた。力なく膝をつく。
「すみません。取り乱しました。」
声は小さく、疲れ果てている。体中の包帯が血で滲んでいるのが改めて目につく。さっき治療したはずなのに、もう少しで開きそうな傷口が痛々しい。
アルはホッと胸を撫で下ろしつつ、いつもの調子を取り戻そうと胸を張る。
…腰はまだ少し震えている。
「ま、まぁいいわ。助かったんだし文句ないでしょ?貴方、名前は何ていうの?ブラックマーケットであんな大怪我してたんだから、ここの人じゃないのはわかるけど…」
「…僕はルチオと言います。」
一呼吸間を置いて、それだけ答える。
「えっと、やっぱり外から来たのかしら。」
「…わかりません。気づいたらここに…」
自分が死んだからここにいると言う話は伏せた。仮に話しても妄言だと吐き捨てられることが目に見えていたから。
「助けていただいて、ありがとうございます。僕のことはお気になさらずとも大丈夫ですので…これで。」
ルチオは立ち上がり、事務所を出ようとするが、体が傾くのを感じる。
「ダ、ダメです。ま、まだ動いちゃ…」
ハルカが駆け寄る。
「出血が完全に止まりきってないから、安静にしてて。大人しく横になっていた方がいいよ。」
ルチオは「結構です。」といったが、ムツキに捕まり、ホイホイとソファーに寝かされた。そのまま、ムツキがルチオに質問する。
「まぁまぁ、せっかくこんな状態なんだし、お喋りしてもいいんじゃない?さっき寝言で、師匠って言ってたけど誰のこと?私気になるなぁ?」
ルチオの視線が一瞬鋭くなるが、すぐに元に戻る。
「……貴方には関係ありません。」
明らかに素っ気ない返事にムツキも地雷を踏んでしまったかどうか心配になる。
「一応確認したいんですが…ここは「都市」ではないんですか?」
この質問に、便利屋は皆困惑した。どう言う意味かルチオに聞いてみたが、「知らないなら良いです。」の一点張りだったので、それ以上追求はしなかった。
気のせいだろうか…彼の表情に一瞬だけ、安堵の表情が浮かんだのは。
「…前と違って、ある程度は自由に生きれる世界ですか。」
ルチオはアルの背に光を見たことを思い出した。負の感情ではない、羨望を無意識にアルに向けていた。
「勝手で申し訳ございませんが——」
普段なら絶対に動かない口がこの時は勝手に動いていた。いや、動かないはずがなかった。
「僕を便利屋として仲間に入れてくれませんか?」
「……へ?」
「「「……え?」」」
唐突な宣言に、4人は困惑の意思を示す。先ほどまで空気を冷たくする程、敵意を向けていた男が急に仲間になりたいと言い出したのだから。
「い…一応理由を聞いても良い?」
アルがさりげなく聞く。
「僕は今まで、人間としての生活することができませんでした。ある人の教本となるために、師匠から道具のように扱われてきましたから。」
「!?…だからその傷を…」
アル達はルチオの傷の正体に察しがついたが、ルチオは構わず続ける。
「ですが、僕は…少し変な物言いになってしまいますが、貴方が僕を助けてくれた時、光が見えたんです。」
アルは何を言ってるかわからないようだ。
「貴方には、自由がある。それに、それを振り翳せる力を持ちながら、仲間に慕われて行動する貴方が、輝いて見えたんです。」
アルは褒められてることはわかったのか、顔が赤くなっていく。
「だから、ここに入りたいと僕は思いました。」
アルは小さな声で了承した。カヨコが「そんな簡単に入れて良いの?」と言ったが、アルはもう取り消すつもりはないようだ。
ルチオは晴れて、便利屋の一員となった。ルチオの顔は、心なしか少し晴れ、瞳にも微かな光が宿り始めていた。
欠片交換する気で時前に400個用意していたにも関わらず、ガチャを回す愚か者なんてHAL86…お前くらいだろう。ボニャテッリ家はお前から狂気を取り上げる。
1週間なんて待てるわけねぇだろうが!
蜘蛛の巣勢力来たから、タイトル変えるかも。