中指長姉はキヴォトスに転生する   作:HAL86

18 / 26

ユメ先輩とホシノのアマリアの呼び方を固定します。
ユメ→アマ(ねぇ)
ホシノ→(ねぇ)さん
今回短いけど許して


開戦の準備

-時期はヴァレンチーナとルチオがくる数ヶ月前-

 

「チッ……クズ共が、なぜあんな学校ひとつ潰せんのだ。」

 

机を指で叩きながら、イライラを隠さない恰幅の良いオートマタ——カイザー理事。

 

彼はアビドス高校の自治区を手中に収める計画を進めていた。

 

だが、小鳥遊ホシノとユメがまだ生徒会として残っている以上、下手に動けば連邦生徒会の目を引く。

 

不良たちに武器を支給し、雇い駒として放ったはずが、ことごとく返り討ちに遭い、出費だけが嵩む一方だ。

 

「おや? どうされたのですか、理事?」

 

背後から静かな声。黒服だ。

 

「黒服か……なに、少々アビドスを潰すのに手こずっていてな。あんな矮小な子供二人すら片付けられないとは……やはり、不良など信用できん。」

 

黒服が小さく笑う。それを聞いた理事は顔をしかめた。

 

「貴様……何を笑っている?」

 

「クックック……いえ、情報として彼女の存在を把握していると考えていたのですが、ご存知ないのですか?」

 

理事は眉をひそめ、首を傾げる。

 

「今、アビドス高校にいる『大人』が、アビドスを脆弱な城から堅固な城へと変えている張本人です。」

 

「何……?」

 

おかしな話だ。キヴォトスでは大人は子供より発言力が低い。ましてやアビドスは大人に騙され続けてきた。特にホシノは、大人に対する不信は計り知れない。

 

それが、アビドスに大人が介入しているという異常事態に、理事は頭を悩ませた。

 

「ふむ……つまり、その大人とやらいなくなれば、アビドスは落としたも同然か。」

 

理事は知っている。大人は生徒ほど頑丈ではない。銃で脅せば簡単に屈するはずだ。

 

「だが、念には念を入れて、奴に協力を『依頼』しよう。ここ最近、トリニティで頭角を現してきた新勢力な。」

 

しかし、彼は知らない。

 

アビドスにいるその「大人」——アマリアが、予想の遥か上を行く怪物中の怪物であることを。

 

そして、理事が依頼しようとしている相手も、同等の化け物であることを。

 

黒服は薄ら笑いを浮かべながら、静かに部屋を後にした。頭の中に、これから起こる惨劇が既に浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——とあるアビドスの裏路地——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——とまぁ、これがあなた方への彼の評価ですね。一企業の理事であるのに、この情報網の薄さは愚かと言わざるを得ませんね。」

 

黒服がため息混じりにアマリアに伝える。

 

アマリアは——

 

「ホシノとユメの居場所を壊そうとするカイザー理事……ね。」

 

_φ(・_・カキカキ

 

せっせと帳簿に書き込んでいた。

 

(中身が共有されても、バイトついでにブラックマーケットで情報を得たと誤魔化せばいいか)

 

「非常に癪だが、今回ばかりは感謝するよ。黒服。」

 

「いえいえ、これからも良好な関係を築いて行きましょう。クックック……」

 

「お前、ホシノ死なせかけてんの忘れんなよ?」

 

黒服は黒い霧を残して消えていた。

 

 

 

 

 

——黒服視点——

 

 

 

 

 

「クックック……やはりあの方とは良好な関係を築いていかなければ。」

 

思考に耽っていると、奥から足音が近づく。

 

「黒服、今日はいつになく機嫌がいいように見えるな。」

 

「おや、マエストロ。そんな貴方も少し機嫌が良いように見えますね。」

 

マエストロは静かに微笑み、理由を語り始めた。

 

「実は、最近私たち以外の『外の人間』と会ってな。私と同じで芸術を志す二人だったのだよ。」

 

全身が義体という背の高い男と恐らく女。

 

背の高い男は「カリスト」と名乗り、義体の中に臓器が透けて見え、骨と血と臓物でできた巨大な大剣を携えていた。

 

弟子を名乗る者は、まるでアイアンメイデンのような衣装に身を包み、同じく大剣を持っている。師弟仲は良好とのこと。

 

「それはまた、随分と興味深いですね。」

 

「あぁ、彼らは私たちの知らない技術を持っている。然り、彼らの芸術も驚嘆に値する。黒服、貴下も私と同じように興味深い人間と出会ったのではないか?」

 

「ええ、そうですともマエストロ。彼女の力と、彼女の世界の技術を探求することに、今は興味が尽きないのです。」

 

私の情報で彼女はどのような動きを見せてくれるのか……今から想像しただけでも、ゾクゾクが止まりませんねぇ。

 

 

 

——一方、アビドス高校——

 

 

 

「あぁ、疲れた。バイトも楽じゃないね。」

 

アマリアがバイトから帰宅する。

 

カイザーの情報を得るために数ヶ月空いたので、せっせと金を稼いでいた。

 

もちろん、犯罪行為は避けている。アビドスの二人に迷惑をかけないためだ。

 

「お帰りなさい、姉さん。」

 

「おうホシノ、最近自然に『姉さん』呼びできるようになってきたな。嬉しいぞ!」

 

ホシノは顔を赤くして睨む。照れ3割、怒り7割。なお、アマリアは照れてるだけだと思っている。

 

「アマ姐お帰り! 疲れたでしょ? これ飲んで!」

 

ユメが栄養ドリンクを差し出す。アマリアは一気に飲み干し、家族の労りに感無量の表情を浮かべた。

 

「まぁ、それより本題だ。これを見てくれ。」

大きな紙を広げる。

 

「!……姉さん、またブラックマーケットに行ったでしょ。」

 

「まぁまぁ、聞けって。私たちを散々苦しめたカイザーを潰すためには、念密な計画が不可欠なんだよ。そのために、あんな場所にまで行って情報を集めてたんだぞ?」

 

嘘である。情報の9割は黒服提供だ。

 

「けど、アマ姐、カイザーを潰すと言っても、どうやって?」

 

ユメが首を傾げる。

 

「最近、カイザー理事が不審な動きをしているらしい。アビドスの自治区に戦力を散らしているんだ。」

 

ホシノは疑問を抱く。

 

生徒会を持つ学校に強襲などすれば、企業側が連邦生徒会に潰されるのは自明。

 

なぜ自滅まがいの行動を?

 

「何故こんなことを? 相手は相当な馬鹿か、とんでもない無能かのどちらかですね。」

 

(どっちもあんま意味変わんなくね?)

 

(ホシノちゃん最近口悪くなってきちゃったなぁ、少し今度構ってあげよう)

 

「いいえ、結構ですユメ先輩」

 

「思考読まれた!?」

 

そんなやり取りの合間に計画が固まる。

勝利条件は三つ。

1. 自治区の死守

2. アビドス高校占領の阻止

3. カイザー理事の失脚or破壊

 

「…………これ、私たち三人じゃ無理じゃないですか? 明らかに人手足りませんよ?」

 

「あぁ、全く足りないぞ。」

 

「は?」

 

「アマ姐……もう少し頑張れそうな計画を立てて欲しいなぁ。」

 

アマリアは手をヒラヒラさせながら笑う。

 

「最初から三人でやるなんて言ってないだろ?」

 

「「え?」」

 

アマリアが「入れ」と言うと、奇妙な服を着た女子生徒たちが数十人現れた。

 

「我ら! 元ヘルメット団所属の者です! 数ヶ月前は大変申し訳ございませんでした!」

 

一斉に土下座。現場はカオスオブカオス。

 

「えっと、姉さん、この人たちは?」

 

「結構前に帳簿買いに行った時に襲撃してきた奴ら。こいつらの引き渡し人から戦力として借りてきた。」

 

ホシノとユメは不安げ。

 

以前二人であっさり蹂躙した元ヘルメット団が、本当に役立つのかと言う疑問があったからだ。

 

「おいお前ら。お前たちが生きているのは、契約主の契約と私による訓練の成果だ。そして、待ち望んだ今回が初任務だ。末端共、私が最初に教えたことを言ってみろ。」

 

“は! ミスは即ち死! ミスは即ち死! ミスは即ち死!”

 

「そう。」( ̄ v ̄)b

 

別の意味で狂気を感じた二人。

 

なお、撃退時より人数が減っていることに、二人はまだ気づいていない

 

「学校の護衛はユメとこいつらに一任させる。それがベストだ。」

 

「わ、私ですか? アビドスを守るんだったら、なんだってしますよ! この大楯で全てを守り切って見せます!」

 

アマリアは頼もしい気概に嬉しさを覚える。

 

「ユメ先輩……がむしゃらに頑張ることよりも、もう少し相手を疑うことを覚えてください。」

 

「せっかく気合いを入れたのに酷くないホシノちゃん!?」

 

「それに関してはそうだな。」

 

「ひぃん……アマ姐まで……」

 

「それじゃあ私は姉さんとやるんですか? その理事って奴を。」

 

アマリアは頷く。

 

ホシノとアマリアが二人で手を組めば、カイザーコーポレーションなど負けるはずがない。

 

——そう、カイザーコーポレーションだけならば。

 

「ホシノ、今回はかなり辛いことになるかもしれないから。充分に用心しておけ。」

 

「えっ? それってどういう——いや、私たちより圧倒的に強い姉さんが言うってことは相当だね。」

 

「あぁ、だが安心しろ。姉ってのは……家族のために少しくらい傷ついても、痛くないもんさ。」

 

トリニティのあいつが絡んでくるなら、間違いなく厄介になる。

 

アマリアは、それが実現しないことを願っていた。

 

しかし、運命は残酷だ。

 

カイザー理事の依頼は、既にその男に渡ってしまっていたのだから。





リサンよぉ、お前は一体何が出来ないんだ?欠点がFurioso replica打ち切る前に敵が死ぬことくらいしかねぇじゃねぇか。

???「久々に俺っちの出番やんけ!待たせすぎやろ!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。