中指長姉はキヴォトスに転生する   作:HAL86

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9章でマティアスが言ってた「年頃の女の子は人形を持っていると仲の良い兄弟に聞いた」って言ってたけど、これってリカルドのことだったりしないのかな?

にんにくえあさん誤字報告ありがとうございます。


中指子方、アビドスへ。

「俺たちだけで?ウチもめっちゃ頑張って戦ったんだけど?」

 

 グレゴールの声に不満を漏らすのは、元中指子方で現在LCの捕虜として扱われているキラである。

 

 自身の父であり、中指親方のマティアスに上半身と下半身をなき別れにされたが、ホンルが打ち込んだ治療薬とLCによる懸命な治療で一命を取り留めた。

 

「キラさんがいなくても大した差はなかったでしょうから、グレゴールさんの言い分にも一理あります。」

 

 その言葉にキラは顔と仕草でめいいっぱいの不服を表す。その後少しの会話が続き、イシュメールが報告のために通ってきた場所を通る。

 

「……あれ?」

 

 しかし、通ってきた場所から反対側の位置に再びイシュメールが姿を現した。どうやら、出口は閉じてしまったらしい。

 

 その後、囚人達が討論をし、良秀の阿頼耶識を使って脱出した。またこれで良秀の中の◽️◽️◽️の記憶が切り刻まれる。

 

 なんやかんやあって、LCB一行はバスに帰還し、ホーエンハイムとキラがLCBに別れを告げ、バスを降りようとした瞬間——

 

ブー!!ブー!!ブー!!

 

 バス内にけたたましい警報音が鳴り響く、ワルプルギスの夜が来たと囚人達は思ったが、今回全く状況が違っていた。

 

 緑色に変わるはずの色が今回は水色、まるで巣の中で見る綺麗な空色になっていた。

 

<ゴーン!!(な、何が起きてるの!?)>

 

 ダンテが大きく時計を鳴らして戸惑う。そのままファウストに顔を向けるが、彼女の表情もいつに無く焦っているように思えた。

 

「…ファウストは全てを知っていると思っていましたが、今回の事柄に関しては前例がありません。」

 

 ファウストもこう答えるしかない。所謂全くの未知。しかし、この状況に興味を示した者が1人いた。

 

「君でも知らないことがあるのだな。俄然、この現象に興味が湧いてきた。」

 

 ホーエンハイムが言葉を吐いた。彼は、ワルプルギスの夜の報告は受けているだろうが、実物を見たことはない。

 

 それに、それ以上の異常事態は彼の探究心に轟々と燃える炎を灯してしまったようだ。

 

「おい!時計ヅラ!なんか、ダンジョンの裏口が変わってんぞ!」

 

 ヒースクリフが怒鳴り声に近い声をあげ、ダンテを呼ぶ。それに呼応するように囚人達は一斉にその扉の前に集まる。

 

 そこには、透明だが青い。透き通るような扉があった。

 

<カチカチカチカチ(これは一体?)>

 

 ダンテが首を傾げて、扉に触れようとする。そこに、ウーティスが我先にと割って入る。

 

「不用意に触れるのは危険です、管理人様。ここはこのウーティスめにお任せください。」

 

 そういい、ダンテの静止を振り切る前にウーティスがその扉に触れる。すると——

 

バチンッ!!

 

「うっ!!」

 

 まるで電流のようなものが走り、ウーティスの腕を弾き飛ばした。

 

「ふむ。まるで、囚人番号12番が入るのを拒んでいるように見えるな。」

 

 ホーエンハイムが興味深そうに扉を見つめる。その隣では、キラがその扉に釘付けになっていた。

 

(なんでだろう。ウチなら、あの向こうへ行ける気がする。)

 

 そうは思ったが、行動はしなかった。勝手な行動をすれば自分の立場がどうなるか危うかったからだ。囚人達が順々に扉に触れていく。次々に弾かれ、ホーエンハイム、ダンテさえも弾かれた。

 

 しかし、1人だけ弾かれない囚人がいた。

 

「……はっ、俺か。」

 

 良秀だ。囚人の中で唯一扉に触れても反応しなかった。これを見て、キラも扉に触れた。

 

「ハハ、マジ?」

 

 キラにも無反応だった。この光景を見たホーエンハイムは面白そうに仮説を立て始めた。

 

「今現在囚人番号4番と捕虜だけが、この扉に触れてもなんの反応も示さない。それは、恐らく2人が共通の特徴を持っているからであろう。」

 

 その言葉を聞いて、2人は顔を見合わせる。そして、気付いたように良秀は笑い、キラも少し複雑な表情を浮かべる。

 

「それは——「どちらも指の関係者、だからでしょうね。」……肝心な部分をわざわざ横取りとは、少し無粋ではないかね?」

 

 ホーエンハイムが仮定での結論を言おうとした瞬間、ファウストが割って入る。その後、LCB定期検診のような皮肉合戦が始まったので、囚人達は放っておいた。

 

<カチ…カチ…(良秀、どうするの?)>

 

ダンテが良秀に問いかける。それを聞いた良秀煙草に火をつけ、鼻で笑う。

 

「き•あ。」

 

「えっと、まだむずいわ。」

 

「…興味はある、でしょうか。」

 

 キラは未だに良秀の略語を訳すのは難しいようで、結局シンクレアが訳す。そして、良秀が扉を開ける。その瞬間、廊下を埋め尽くす光が全員を包む。

 

「な、何!?」

 

 ロージャが眩しそうな声を上げる。徐々にだが光が収まり、目を開けられるほどになってきた。今のはなんだったのかと、あたりを見回す。そして、違和感に気づく。

 

「りょ、良秀君がいないのである!?一体どこへ行ったのであるかぁ!!」

 

 ドンキホーテが叫び、良秀がいなくなったことに気づく。続いてイサンも声を上げる。

 

「キラなる者も、跡形もなくなり果てにけり」

 

 キラの姿も消えており、先ほどの扉は青いままだが、この不可解な現象に皆頭を抱えた。

 

<カチ…(良秀、君は一体どこへ行ったんだ?)>

 

囚人達には単純な疑問の声が、ホーエンハイムには虚しい時計の針の音が聞こえただけだった。

 

—————————————————————

 

「っ!?痛ぅ…何が?」

 

 キラは後頭部を摩りながら身を起こす。周りを見渡すと、雪が降る砂漠と化した静かな街が目に入った。

 

「嘘……ウチもしかして、外郭きちゃった?」

 

 キラは焦った。かつて自分の親だったマティアスからも外郭の危険は耳にタコができるほど聞いてきた。ほぼ遺跡とかの話であったが、危険性を理解するには十分すぎるほどだった。

 

「やっば…とりあえず、それっぽい建物見つけないと。」

 

-子方移動中-

 

「ハァ、ハァ、さっむ!!マジ寒すぎ!あり得ないんだけど!」

 

 ブルブル震えながら、両腕を手で摩り続ける。自分の歯がガチガチと鳴る音を聞きながら、

 

「ん?こ、ここって、が、学校って言うとこだっけ?」

 

 寒さで回らなくなってきた呂律を必死に回しながらも、学校を見つけたので、中を覗く。

 

「いやぁ、参ったねー。ちょっとやりすぎちゃったかな?」

 

「ホシノちゃん、明らかにやりすぎだよ〜。手当してあげないと。」

 

「……」

 

「ホシノやっぱ強い、もう一回やる。」

 

 校庭にはピンクの髪が少し伸び、雰囲気が若干柔和になったホシノと学校を卒業後、アビドス高校のOGとなったユメ、その後ろで黙っているのは、セイント•ネフティスの令嬢十六夜ノノミ、ホシノに勝つ為勝負に挑み続けるシロコの姿だった。

 

(うわぁ、何あのちっちゃい子やば。私より強いんじゃないの?めんどいけど、別の場所探すしかないなぁ。)

 

 振り返ってその場を立ち去ろうと一歩を踏み出したとき——

 

ドッ!

 

「痛ッ!」

 

 何かにぶつかり、キラはその場に尻餅をつく。イライラしていたこともあり、鬱憤を晴らすかのように声を荒げる。

 

「ちょ、どこ見て歩いてんの!?少しは周りを…気に……し………」

 

 上に見上げるほど、声の勢いが失速していく。そこには、ここに来る前の都市にしか存在しない人間が目の前に立っていたからだ。

 

「んん?新入生か?大丈夫か?」

 

 手を差し伸べてくるその人に僅かばかり震えて、キラが言葉を発する。

 

「その刺青は…中指……なんでここに!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、アマリアの雰囲気が一気に変わる。目に映るほどの殺意を纏い、キラも一気に冷や汗が流れる。

 

(この威圧感…まるでパパみたい…!)

 

 そう感じた瞬間、胴体に凄まじい衝撃が走る。キラはそのまま学校の壁に激突し、その場に倒れ込む。

 

「えっ何!?」

 

「ちょ、姉さん!何してんの!?」

 

「あ、相変わらず凄いですね…」

 

「……凄い」

 

 ユメは急なこと驚き、ホシノはまた校舎が壊れたことに怒り心頭に、ノノミは若干引き、シロコは少しキラキラした目でアマリアを見る。

 

「都市の人間をこの学区に置いておく訳にはいかない。大抵は殺しをなんとも思わない連中だから。」

 

 近づいてトドメを刺そうとする。その時、キラの腕の刺青が目に入るとアマリアは驚いて目を見開いた。

 

「ん?嘘だろ、これ私と同じ強化刺青だ。つ、つまり…私は家族を……えっ、どうしよう。」

 

 それからは大変だった。若干パニクッたアマリアを落ち着かせるために、ホシノとユメの2人がかりで宥め、ノノミはホシノとの戦いに敗れたホシノに肩を貸してあげた。

 

-数時間後-

 

「…ぅん…ここは…!?痛っ…マジで脇腹破裂したかと思った。」

 

 蹴り飛ばされ気絶したキラは保健室のベットで寝ていた。何となく既視感を感じていると、目の前の浅葱色の髪の生徒、ユメが目に入った。

 

「あっ、起きた?怪我大丈夫?アマ姐がごめんね。」

 

 ニコニコしながら、近づいてくるユメに警戒心が昂ったキラは相当な威圧と殺意をユメにぶつける。

 

「マジ最悪、何もわからず街は迷うし蹴られるし、で何?」

 

「ひぃん、凄い警戒されてる。」

 

 一年生の頃のホシノを思い出しながらいつもの情けない声を上げる。教室の扉がガラガラと開き、ホシノが入ってくる。

 

「起きた〜?災難だったねー。まぁ、こっちに来てよ。なにがあったか聞きたいしね。」

 

(そんな警戒心むき出しでよく言うなこいつ)

 

 キラは警戒心剥き出しのホシノを自分に勝るとも劣らない気配を感じる。それに、キラも警戒はしている。ここは敵の本拠地、自分がなにをされるかわかったものではないからだ。

 

「ホシノちゃん口調優しくなったねー。私と少し似てきたかな?」

 

「先輩うるさいですよ。黙ってください。」

 

「ひぃん、私には冷たいよー。」

 

 キラは2人を見ると、少し家族に近しい温もりを覚える。マティアスを頭に思い浮かべるが、すぐに首を振りホシノの後を追う。

 

 

 

 

 

-アビドス生徒会教室-

 

 

 

 

そこには、椅子にロープでギチギチに固定されたアマリアがいた。

 

「いやどう言う状況なんこれ?」

 

「さっき学校の壁壊したからねー。反省してもらってるんだよ。」

 

「い、いやホシノあれはお前たちの為を思って——」

 

「なら他にもっといい方法ありましたよね?わざわざ攻撃する必要ありましたか?」

 

「……ごめんなさい。」

 

「ア、アハハ。」

 

 中指長姉が詰問されている光景なんて都市で見れるだろうか、いいや見れない。そんなことを思いながら、キラは質問を投げかける。

 

「えっと、ウチ一応中指のキラって言うんだけど、長姉様であって…ますか?」

 

「まぁそうだが、もう今は違う。ここ、アビドスの長姉だ。」

 

「……は?貴方は中指っすよね?ていうかここ何処っすか?都市にこんな場所あるんすか?」

 

 はぁやっぱり、と言った感じで目元を抑えようとするアマリア、手が塞がってて無理だけど。

 

 キラには、ここは都市ではないことを諸々説明した。キラは面倒臭そうに唸った。

 

「うーわマジ最悪。ウチの大好きな月間フィクサーもないし、萎えるわぁ。」

 

「だけど行く当てないんだろ?なら、ここら辺に留まっとけばいい。それに、私以外の都市の人間で割と温和なのは珍しいからな。」

 

 キラは結局アビドスに留まることになった。その後、シロコに勝負を挑まれ軽くボコボコにしたら、ホシノが飛んできて喧嘩になりかけた。

 

 

 

 

 

 

-ミレニアム郊外-

 

 

 

 

 

 

ピピピピピ

 

空虚な電子音が響く。

 

「人差し指神託代行者リアン、このまま起き、この学園都市に散らばる人差し指伝令、代行者と接触し、協力関係を築け。期間は先生が来るまで。」

 

-別のミレニアム郊外-

 

目覚めた物の手のひらには一つの紙片があった。

 

「エスター、ヒューバート、グローリア代行者へ。ヤン伝令の居場所を突き止め、ヤン伝令を連れて、この学園都市にいる神託代行者と接触し、協力関係を築け。期間は先生が来るまで。」

 

「人差し指代行者◽️◽️へ。自らの概念を取り戻し、協力関係を築いた人差し指と合流せよ。期間は先生が来るまで。」

 

「ヤン伝令へ。人差し指と協力関係を築き、合流せよ。期間は先生が来るまで。」

 

さらに、最後には共通の文が刻まれていた。

 

「全人差し指構成員は、この学園都市にて一切の殺人を禁ずる。期限は……死ぬまで。」

 

他の指も次々と暗躍を始めていた。





最後の通り次回は人差し指回になる…はずだ。
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