中指長姉はキヴォトスに転生する   作:HAL86

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原作開始です。


原作開始0章プロローグ
優しい先生と怖い先生


 

——何が起こった?

 

良秀は頭の中で自問自答した。

 

 急な光に包まれたと思えば、今は電車に揺られている。

 

 左側には背の低い大人らしき人物が座り、目の前には脇腹から出血している青い髪の女性がいた。

 

 夕日に照らされた髪が眩しく輝いている。出血量は深刻そうだったが、彼女の表情は穏やかで、どこか余裕さえ感じさせた。

 

「私のミスでした。」

 

女性は何かを語り始めた。

 

 要するに、自分の選択よりも大人の選んだ道の方が正しかったと気づいた、という平坦で面白みのない話だった。

 

「……今更図々しいですが、お願いします。先生方。」

 

——先生方だと? 俺も含まれているとはどういうことだ?

 

声に出せない疑問が、次々と浮かぶ。

 

 責任の所在や選択の意味など、良秀には全く身に覚えのない話ばかりだった。

 

「私が信じられる大人である、あなたなら……

この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。そこへ繋がる選択肢は、きっと見つかるはずです。だから先生……どうか。」

 

 子供の未来を託す——そんな言葉に、良秀の記憶の片隅が疼いた。

 

子供?それなら俺にも◽️◽️◽️が…◽️◽️◽️……?誰だったか……?

 

「……い方。……生方。……先生方!」

 

「!?」

 

良秀はハッと目を覚ました。

 

 そこは清潔なオフィスで、彼と先生は大きなソファーに座っていた。

 

「そこまで熟睡なさるとは、お二人とも相当お疲れだったのでしょう。」

 

エルフ耳の少女がこちらを見つめる。

 

先生はまだ爆睡中だった。

 

「……警戒されるのも無理はありませんね。ここは、あなたのいた世界とは違うのですから。」

 

 良秀は即座に刀へ手を伸ばしかけたが、妙な気配を感じて動きを止めた。

 

「それではお二人とも、私についてきてください。安心してください、危険はありませんから。」

 

少女は形ばかりの笑顔を浮かべた。

 

良秀も不自然な笑みを返す。

 

「ハッ……そう言って安全じゃないことなんて腐るほどあるのさ。それと、せめてついてきて欲しいなら名乗れ。」

 

「そうですね。失礼いたしました。私は七神リン。連邦生徒会の主席行政官を務めています。」

 

その間も先生は爆睡中だった。鬱陶しくなった良秀が頰を軽く叩いて起こす。

 

『痛ぁ! な、なに?』

 

お•う。(起きろウスノロ)早く来い。」

 

「お•う?追うってこと?ちょ、待って!私何も説明されてないんだけどぉ!」

 

 何やかんやで三人はエレベーターに乗り、上階へと向かった。ガラスの向こうに広がる景色を、良秀は黙って見つめていた。

 

(都市……ではないな。こんな場所は絶対にない。)

 

 空は青く澄み、街並みは美しく、科学技術もそれなりに発展している様子だった。

 

(うぉー。ここすっごい綺麗な街並みだなぁー。)

 

一方、先生は能天気に景色を楽しんでいる。

 

 そんな中、エレベーターの扉が開くと、四人の生徒が駆け寄ってきた。

 

「ちょっと待って! 代行! 見つけたわよ! 連邦生徒会長を呼んできて!」

 

「首席行政官、お待ちしておりました。」

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求しています。」

 

 我先にと疑問をぶつけてくる生徒たちに、良秀は辟易し、先生は困惑していた。

 

 天使のような輪っかを持つ彼らを、先生は「可愛い」としか思っていないようだったが、良秀は新しい「強化施術」かと警戒を強めていた。

 

「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」

 

リンも大きなため息をついた。

 

「こんにちは、各学園からわざわざここまでお越しくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」

 

 リンの毒を含んだ言葉に、生徒たちは憤りを露わにし、一触即発の空気になった。

 

事の次第は単純だった。

 

 連邦生徒会長の失踪により、サンクトゥムタワーの行政制御権が停止。

 

 各学園の治安が急激に悪化したのだという。矯正局から「七囚人」と呼ばれる不良生徒が脱獄し、不正戦車の流通が2000%増加、スケバンたちの犯罪率も急増——まさに滅茶苦茶な状況だった。

 

しかし、その中でも特に深刻な問題は……

 

「指という組織の介入によって、治安の維持が難しくなっています。」

 

 その言葉に、良秀の殺気が一気に溢れ出した。周囲に悪寒が走る。

 

「おい、長耳。指について今すぐに答えろ。」

 

「リンです。」

 

 ドスの利いた声で詰め寄る良秀に、リンは背に嫌な汗を流しながらも淡々と説明した。

 

 二年前にトリニティに降り立った親指のカポを名乗るレイホン、ゲヘナを蹂躙した大剣の男、数々の生徒を攫い指名手配中の狂った芸術家二人……。

 

「わからんな。死んだあとここに来たとでも言うのか?」

 

 良秀の空気がさらに悪化する中、彼女は懐からタバコを取り出した。

 

「先生、ここ禁煙です。」

 

お•だ。(俺の勝手だ。黙っていろ。)

 

「……何を言っているかは分かりませんが、先生方以外は未成年ですので、どうか控えてください。」

 

 未成年という言葉に、良秀の動きがピタリと止まった。

 

 そのままタバコを懐にしまい、わずかに申し訳なさそうな顔をする。

 

「そういうことは早く言え。」

 

「そ、それよりお二方は何者なんですか!?」

 

 青い髪を短いツインテにした生徒が騒ぐ。

リンは説明するために口を開いた。

 

「ええ、紹介が遅れました。このお二人は連邦生徒会長が推薦した大人です。このお二人が、フィクサーとなってくれることでしょう。」

 

「フィクサー?」

 

 先生が首を傾げる横で、良秀が即座に苦言を呈した。

 

「フィクサー?そんな面倒なものは——」

 

すると、一つのホログラムが点灯した。尻尾を生やした桃色の髪の少女が映っている。

 

「サンクトゥムタワー付近で矯正局を脱走した生徒が大暴れしるから〜ヘリとかの移動手段出せないんだよねー。あっデリバリー来たから通信切るねー。」

 

「………」

 

ビキビキッ!

 

 リンのこめかみに血管が浮き上がり、余裕の笑顔が消えた。

 

『大丈夫? 深呼吸でもする?』

 

良秀の隣にいた大人が優しく宥める。リンは少し落ち着きを取り戻した。

 

「大丈夫です。少し問題が発生しましたが、たいしたことはありません。」

 

 呼吸を整えたリンはじっと生徒たちを見つめ、不敵に笑った。

 

「丁度ここに、各学園を代表する立派で暇そうな方々がいるので心強いです。」

 

「「「「え?」」」」

 

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が必要です。では、行きましょう。」

 

「ちょ! ちょっと待ちなさいよー!」

 

 リンがさっさと歩き出すのを、生徒たちが慌てて追いかける。

 

『あれ? もしかして私、結構空気?』

 

「黙っているからだろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—D.U.外郭地区・シャーレ部室付近—

 

ヒュォォォォ……

 

ドカァァン!!

 

「……はっ、頭がいないとこうも好き勝手できるのか。素晴らしいな。」

 

『何言ってるんですか! すごく危ないですよぉ!』

 

阿鼻叫喚の戦場を、良秀は芸術的だと評し、先生は縮こまっていた。

 

「お二人は隠れていてください! ここは私たちが抑えま……きゃ!」

 

 青髪の少女・早瀬ユウカの鳩尾に弾丸が命中する。良秀は即座にユウカを引き寄せ、遮蔽物へ移動させた。

 

 普通なら致命傷のはずだったが、ユウカは痛がるだけで血を流していない。

 

「いったぁ!! あいつら、JHP弾なんて使ってるんじゃない!?」

 

「怪我はないのか? 全くと言っていいほど?」

 

「えっ……はい。多少痛みを伴う程度ですけど。」

 

 良秀は笑みを浮かべると、岩陰から飛び出し、不良生徒たちに向かって駆け出した。

 

「ちょ! 先生!」

 

 ユウカが止めるより早く、別の先生の声が響いた。

 

『みんな! 私の指示を聞いて欲しい。』

 

「はい!? 先生が戦闘指揮をするんですか? ……まあ、確かに先生ですし……」

 

「分かりました。これより先生の指揮に従います。」

 

『うん。みんなありがとう。それじゃあ、一刻も早く彼女を助けよう。』

 

「もちろんです! さぁ、行くわよ!」

 

 先生も生徒たちを見て、戦うことを決意した。

 

 シャーレには戦闘に制約がないと聞いていたので、それを早速活用するつもりらしい。

 

「げっ! なんか変な奴が突っ込んでくるぞ。」

 

「刀ぁ? そんなん持って何になるんだよ! 撃て!」

 

「敵を前にして喋るとは、随分余裕だな。」

 

 良秀は刀を抜かず、刀身で打撃を加えながら不良生徒たちを気絶させていく。

 

 ダンテの鎖の影響で能力は低下しているため、銃弾を撃たせる前に倒すように上手く立ち回っている。

 

「す、すごい。生身なのにあんな身のこなし……一体何者なんでしょうか?」

 

『私も今日初めて会ったからわからないよ。ユウカ! 少し引いて、ハスミの援護を!』

 

 先生の指示は一つ一つが的確で、先ほどの苦戦が嘘のように盤面を制圧しつつあった。

 

『スズミ! 彼女のところに閃光手榴弾を!』

 

「分かりました。」

 

 手際よくピンを抜き、良秀の方へ投げ込む。良秀は瞬間的に目を閉じたが、他の不良生徒たちはそうはいかなかった。

 

「あああ!痛い目がぁぁ!」

 

「芸術を見せてやろう。」

 

 良秀は冷たく言い放つと、刀を幾度も叩きつけた。攻撃が終わる前に、相手はあっさりと気絶した。

 

「おい、まだ終わってないぞ。」

 

他の不良生徒たちにも攻撃を仕掛ける。

 

 先生の的確な指示で生徒たちも戦いやすくなっていたが、生身で前線を維持し続ける良秀の存在が殊更大きかった。

 

「先生の指示に従ったら、いつもより戦闘がやりやすくなったような?」

 

「私もそう感じるわ。」

 

 やはり連邦生徒会長が選んだ二人だと、生徒たちは実感していた。

 

「雑魚どもは片付いた。さっさとシャーレとやらに向かうぞ。」

 

 良秀の呼びかけに、生徒たちは元気よく返事をしてついていく。

 

 しかし、良秀を含め全員が気づいていなかった。

 

「く……クソ。このまま……行かせるか。」

 

まだ動ける不良生徒が一人、残っていた。

 

チャキッ!

 

『!?……危ない!』

 

 間一髪で先生が気づき、良秀が反応した。先生を狙った銃弾が発射される直前、良秀は先生を抱きかかえて回避行動を取る。

 

しかし——

 

ダンッ!

 

「……チッ。」

 

良秀の右腕が赤く染まっていった。

 

 銃弾をまともに受け、かなりの出血を伴っていた。

 

「は……ハハ! そうだ! このまま、もう一人も撃ち抜いてやる!」

 

 不良生徒は銃を構え直し、再び先生に照準を定めた。

 

「今度こそ死ねー!」

 

「「「「先生!!」」」」

 

 良秀は瞬間的に刀を投げようとしたが、その動作を止めた。

 

なぜなら、その瞬間に彼の目の前には——

 

 都市で見慣れた男が、武器を構えて立っていたからだ。

 

ザンッ!!

 

「え……は……?」

 

ガンッ!

 

 その男はバスターソードで不良生徒を袈裟斬りにした後、強烈な蹴りで吹き飛ばした。

 

「少し、油断が過ぎるんじゃないか?」

 

人差し指神託代行者—リアンその人だった。

 

「……リアン……!」

 

「少しばかり振り回したな、愛しい娘。また会えて、俺は本当に嬉しいよ。」

 

 二人の歪んでねじれた再会は、キヴォトスという学園都市によってもたらされてしまった。





再会です。

原作開始時の先生は?

  • 良秀、お前が1人で先生になるんだよ!
  • 良秀と男先生
  • 良秀と女先生
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