原作開始です。
優しい先生と怖い先生
——何が起こった?
良秀は頭の中で自問自答した。
急な光に包まれたと思えば、今は電車に揺られている。
左側には背の低い大人らしき人物が座り、目の前には脇腹から出血している青い髪の女性がいた。
夕日に照らされた髪が眩しく輝いている。出血量は深刻そうだったが、彼女の表情は穏やかで、どこか余裕さえ感じさせた。
「私のミスでした。」
女性は何かを語り始めた。
要するに、自分の選択よりも大人の選んだ道の方が正しかったと気づいた、という平坦で面白みのない話だった。
「……今更図々しいですが、お願いします。先生方。」
——先生方だと? 俺も含まれているとはどういうことだ?
声に出せない疑問が、次々と浮かぶ。
責任の所在や選択の意味など、良秀には全く身に覚えのない話ばかりだった。
「私が信じられる大人である、あなたなら……
この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。そこへ繋がる選択肢は、きっと見つかるはずです。だから先生……どうか。」
子供の未来を託す——そんな言葉に、良秀の記憶の片隅が疼いた。
子供?それなら俺にも◽️◽️◽️が…◽️◽️◽️……?誰だったか……?
「……い方。……生方。……先生方!」
「!?」
良秀はハッと目を覚ました。
そこは清潔なオフィスで、彼と先生は大きなソファーに座っていた。
「そこまで熟睡なさるとは、お二人とも相当お疲れだったのでしょう。」
エルフ耳の少女がこちらを見つめる。
先生はまだ爆睡中だった。
「……警戒されるのも無理はありませんね。ここは、あなたのいた世界とは違うのですから。」
良秀は即座に刀へ手を伸ばしかけたが、妙な気配を感じて動きを止めた。
「それではお二人とも、私についてきてください。安心してください、危険はありませんから。」
少女は形ばかりの笑顔を浮かべた。
良秀も不自然な笑みを返す。
「ハッ……そう言って安全じゃないことなんて腐るほどあるのさ。それと、せめてついてきて欲しいなら名乗れ。」
「そうですね。失礼いたしました。私は七神リン。連邦生徒会の主席行政官を務めています。」
その間も先生は爆睡中だった。鬱陶しくなった良秀が頰を軽く叩いて起こす。
『痛ぁ! な、なに?』
「
「お•う?追うってこと?ちょ、待って!私何も説明されてないんだけどぉ!」
何やかんやで三人はエレベーターに乗り、上階へと向かった。ガラスの向こうに広がる景色を、良秀は黙って見つめていた。
(都市……ではないな。こんな場所は絶対にない。)
空は青く澄み、街並みは美しく、科学技術もそれなりに発展している様子だった。
(うぉー。ここすっごい綺麗な街並みだなぁー。)
一方、先生は能天気に景色を楽しんでいる。
そんな中、エレベーターの扉が開くと、四人の生徒が駆け寄ってきた。
「ちょっと待って! 代行! 見つけたわよ! 連邦生徒会長を呼んできて!」
「首席行政官、お待ちしておりました。」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求しています。」
我先にと疑問をぶつけてくる生徒たちに、良秀は辟易し、先生は困惑していた。
天使のような輪っかを持つ彼らを、先生は「可愛い」としか思っていないようだったが、良秀は新しい「強化施術」かと警戒を強めていた。
「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」
リンも大きなため息をついた。
「こんにちは、各学園からわざわざここまでお越しくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。」
リンの毒を含んだ言葉に、生徒たちは憤りを露わにし、一触即発の空気になった。
事の次第は単純だった。
連邦生徒会長の失踪により、サンクトゥムタワーの行政制御権が停止。
各学園の治安が急激に悪化したのだという。矯正局から「七囚人」と呼ばれる不良生徒が脱獄し、不正戦車の流通が2000%増加、スケバンたちの犯罪率も急増——まさに滅茶苦茶な状況だった。
しかし、その中でも特に深刻な問題は……
「指という組織の介入によって、治安の維持が難しくなっています。」
その言葉に、良秀の殺気が一気に溢れ出した。周囲に悪寒が走る。
「おい、長耳。指について今すぐに答えろ。」
「リンです。」
ドスの利いた声で詰め寄る良秀に、リンは背に嫌な汗を流しながらも淡々と説明した。
二年前にトリニティに降り立った親指のカポを名乗るレイホン、ゲヘナを蹂躙した大剣の男、数々の生徒を攫い指名手配中の狂った芸術家二人……。
「わからんな。死んだあとここに来たとでも言うのか?」
良秀の空気がさらに悪化する中、彼女は懐からタバコを取り出した。
「先生、ここ禁煙です。」
「
「……何を言っているかは分かりませんが、先生方以外は未成年ですので、どうか控えてください。」
未成年という言葉に、良秀の動きがピタリと止まった。
そのままタバコを懐にしまい、わずかに申し訳なさそうな顔をする。
「そういうことは早く言え。」
「そ、それよりお二方は何者なんですか!?」
青い髪を短いツインテにした生徒が騒ぐ。
リンは説明するために口を開いた。
「ええ、紹介が遅れました。このお二人は連邦生徒会長が推薦した大人です。このお二人が、フィクサーとなってくれることでしょう。」
「フィクサー?」
先生が首を傾げる横で、良秀が即座に苦言を呈した。
「フィクサー?そんな面倒なものは——」
すると、一つのホログラムが点灯した。尻尾を生やした桃色の髪の少女が映っている。
「サンクトゥムタワー付近で矯正局を脱走した生徒が大暴れしるから〜ヘリとかの移動手段出せないんだよねー。あっデリバリー来たから通信切るねー。」
「………」
ビキビキッ!
リンのこめかみに血管が浮き上がり、余裕の笑顔が消えた。
『大丈夫? 深呼吸でもする?』
良秀の隣にいた大人が優しく宥める。リンは少し落ち着きを取り戻した。
「大丈夫です。少し問題が発生しましたが、たいしたことはありません。」
呼吸を整えたリンはじっと生徒たちを見つめ、不敵に笑った。
「丁度ここに、各学園を代表する立派で暇そうな方々がいるので心強いです。」
「「「「え?」」」」
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が必要です。では、行きましょう。」
「ちょ! ちょっと待ちなさいよー!」
リンがさっさと歩き出すのを、生徒たちが慌てて追いかける。
『あれ? もしかして私、結構空気?』
「黙っているからだろう。」
—D.U.外郭地区・シャーレ部室付近—
ヒュォォォォ……
ドカァァン!!
「……はっ、頭がいないとこうも好き勝手できるのか。素晴らしいな。」
『何言ってるんですか! すごく危ないですよぉ!』
阿鼻叫喚の戦場を、良秀は芸術的だと評し、先生は縮こまっていた。
「お二人は隠れていてください! ここは私たちが抑えま……きゃ!」
青髪の少女・早瀬ユウカの鳩尾に弾丸が命中する。良秀は即座にユウカを引き寄せ、遮蔽物へ移動させた。
普通なら致命傷のはずだったが、ユウカは痛がるだけで血を流していない。
「いったぁ!! あいつら、JHP弾なんて使ってるんじゃない!?」
「怪我はないのか? 全くと言っていいほど?」
「えっ……はい。多少痛みを伴う程度ですけど。」
良秀は笑みを浮かべると、岩陰から飛び出し、不良生徒たちに向かって駆け出した。
「ちょ! 先生!」
ユウカが止めるより早く、別の先生の声が響いた。
『みんな! 私の指示を聞いて欲しい。』
「はい!? 先生が戦闘指揮をするんですか? ……まあ、確かに先生ですし……」
「分かりました。これより先生の指揮に従います。」
『うん。みんなありがとう。それじゃあ、一刻も早く彼女を助けよう。』
「もちろんです! さぁ、行くわよ!」
先生も生徒たちを見て、戦うことを決意した。
シャーレには戦闘に制約がないと聞いていたので、それを早速活用するつもりらしい。
「げっ! なんか変な奴が突っ込んでくるぞ。」
「刀ぁ? そんなん持って何になるんだよ! 撃て!」
「敵を前にして喋るとは、随分余裕だな。」
良秀は刀を抜かず、刀身で打撃を加えながら不良生徒たちを気絶させていく。
ダンテの鎖の影響で能力は低下しているため、銃弾を撃たせる前に倒すように上手く立ち回っている。
「す、すごい。生身なのにあんな身のこなし……一体何者なんでしょうか?」
『私も今日初めて会ったからわからないよ。ユウカ! 少し引いて、ハスミの援護を!』
先生の指示は一つ一つが的確で、先ほどの苦戦が嘘のように盤面を制圧しつつあった。
『スズミ! 彼女のところに閃光手榴弾を!』
「分かりました。」
手際よくピンを抜き、良秀の方へ投げ込む。良秀は瞬間的に目を閉じたが、他の不良生徒たちはそうはいかなかった。
「あああ!痛い目がぁぁ!」
「芸術を見せてやろう。」
良秀は冷たく言い放つと、刀を幾度も叩きつけた。攻撃が終わる前に、相手はあっさりと気絶した。
「おい、まだ終わってないぞ。」
他の不良生徒たちにも攻撃を仕掛ける。
先生の的確な指示で生徒たちも戦いやすくなっていたが、生身で前線を維持し続ける良秀の存在が殊更大きかった。
「先生の指示に従ったら、いつもより戦闘がやりやすくなったような?」
「私もそう感じるわ。」
やはり連邦生徒会長が選んだ二人だと、生徒たちは実感していた。
「雑魚どもは片付いた。さっさとシャーレとやらに向かうぞ。」
良秀の呼びかけに、生徒たちは元気よく返事をしてついていく。
しかし、良秀を含め全員が気づいていなかった。
「く……クソ。このまま……行かせるか。」
まだ動ける不良生徒が一人、残っていた。
チャキッ!
『!?……危ない!』
間一髪で先生が気づき、良秀が反応した。先生を狙った銃弾が発射される直前、良秀は先生を抱きかかえて回避行動を取る。
しかし——
ダンッ!
「……チッ。」
良秀の右腕が赤く染まっていった。
銃弾をまともに受け、かなりの出血を伴っていた。
「は……ハハ! そうだ! このまま、もう一人も撃ち抜いてやる!」
不良生徒は銃を構え直し、再び先生に照準を定めた。
「今度こそ死ねー!」
「「「「先生!!」」」」
良秀は瞬間的に刀を投げようとしたが、その動作を止めた。
なぜなら、その瞬間に彼の目の前には——
都市で見慣れた男が、武器を構えて立っていたからだ。
ザンッ!!
「え……は……?」
ガンッ!
その男はバスターソードで不良生徒を袈裟斬りにした後、強烈な蹴りで吹き飛ばした。
「少し、油断が過ぎるんじゃないか?」
人差し指神託代行者—リアンその人だった。
「……リアン……!」
「少しばかり振り回したな、愛しい娘。また会えて、俺は本当に嬉しいよ。」
二人の歪んでねじれた再会は、キヴォトスという学園都市によってもたらされてしまった。
再会です。
原作開始時の先生は?
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良秀、お前が1人で先生になるんだよ!
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良秀と男先生
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良秀と女先生