良秀式略語むずい。これできる人マジ凄いと思う。
「リアン……!」
良秀の中に、愛憎が激しく渦巻いた。
幼少期にお世話になった記憶と、大人になってからの復讐対象としての憎悪。相反する二つの感情が、彼女を苦しめていた。
「愛しい娘。そう睨まないでくれ。俺はもう蜘蛛の巣の一員ってわけじゃないんだ。」
その言葉に、良秀は内心で「そうだろうな」と思った。
「はっ、指令に与えられたことを全うできなかったのか? 指令だけのお前が、随分と滑稽じゃないか。」
「……言い返せない分、余計にここに来るな、娘。少し前の時より、ズキンとしたよ。」
二人の会話に、生徒たちは割って入ることができなかった。
リアンが「娘」と呼んでいることから親子関係かと思ったが、険悪な空気に言葉を挟めないでいた。
『えっと……二人は親子なんですか?』
先生だけが気まずそうに尋ねた。
雰囲気から穏やかでないのは分かっていたが、聞かずにはいられなかった。
ピピピピッ。カチッ。
リアンが無造作に端末を取り出す。指令の文字が浮かび上がった。
『ヨシヒデとの関係を言うこと。どこまで話すかは自由とする。』
リアンは神妙な面持ちで先生に向き直った。
「君が先生とやらかな? 質問の答えだが、俺と娘は血の繋がっていない、所謂義理の親子ってところさ。少し荒っぽいかもしれないが、娘の同僚となるなら、是非とも親交を深めて欲しい。」
「……チッ。」
『そ、そうなんだ。そ、そうだ! なんか思い出話なんか——』
「うるさい。もう喋るな。」
良秀の一言で先生の言葉が遮られた。
先生は軽率だったと内心で反省した。その後、良秀は踵を返したように指示を出す。
「さっさと行くぞ。こいつは恐らく、その場所とやらに向かうまで護衛としてついてくるんだろうから。」
「少し違うが、大方正解だよ、娘。」
その後の戦闘は比較的簡単だった。
先生の正確な指示のもと生徒たちが綻びを作り、リアンと良秀が鬼神のようにその綻びを崩壊させていく。戦車も不良生徒も、次々と破壊されていった。
「先生のお父様、大剣で戦車を二等分にしてたんですが……本当に人間なのでしょうか?」
『ハスミ、それはちょっと失礼だよ? まぁ私もびっくりしたけど、人間ではあると思うよ。……多分。』
先生も確証が持てていない様子だったが、気がつくと一行はシャーレのあるビルの前に到着していた。
「着いたようだな。ここまであっさりだと、物足りないどころか呆れてくるな。」
「お前は1発右腕に食らってるじゃないか。」
良秀がキッとリアンを睨む。
「ハハ……13歳のとき、初めて本気で怒られたことを思い出すな。あの時——」
ブシュュッ!
嫌な音を立てて、リアンの仮面から血が漏れ出した。
良秀以外の面々は、その突拍子もない出来事に凍りついた。
ジュュュ……
リアンが仮面に手を当てると、肉が焼けるような音を立てて出血が止まっていく。
「……どうやら、少し発言が過ぎたようだね。阿頼耶識の気に触ってしまったかな?」
カランッ!
阿頼耶識が一人でに怒ったように揺れた。それを良秀が撫でて制する。
「……フ、少しだけ気分が晴れたぞ。まだその傷に苦労しているなんてな。」
「あぁ、この傷は一生消えないだろうね。」
リアンはそっと自分の仮面を撫でた。
「でもな……娘。これだけは信じて欲しい。」
真剣な眼差しで良秀を見つめる。それは、愛娘を見るような慈愛に満ちた目だった。
「俺は、娘の親として……お前のことを愛し続けていることを。」
周囲の生徒たちは息を呑んだ。
その真剣さが、痛いほど伝わってきたからだ。しかし——
「
空気が地獄のように気まずくなった。
側から見れば、再会を喜ぶ父が娘にキレられている、どころではない光景だった。
(ど、どうしたものかな。この空気の中、生徒達は動けないだろうし、よし! ここは私がどうにかして場を和ませないと!)
先生が決意した瞬間、リンのホログラムが声を上げた。
「先生。今、この騒ぎを巻き起こした人物が判明しました。」
先生の思惑は見事に空回りしたが、今はそんなことを気にしている暇はなかった。
この騒動の首謀者は「狐坂ワカモ」という生徒だった。
百鬼夜行連合学院を停学になった後、矯正局に収監された「厄災の狐」。脱走ついでに今回の事件を引き起こした危険人物だという。
「数々の破壊行為を行ってきた危険人物です。くれぐれも注意してください。」
——シャーレ部室付近——
「あらら、連邦生徒会の方はまだ来ていないみたいですね。フフ……まぁ構いません。」
不敵に笑うのは、七囚人の一人——「厄災の狐」ワカモだった。
「あの建物に何があるかは存じませんが、連邦生徒会が大事にしているものと聞くと……」
銃を握りしめ、仮面の下で破壊衝動が渦巻いていた。
「壊さないと……気が済みませんね。」
フフフ……と笑いながらシャーレに向かうワカモ。しかし彼女は知らなかった。
ジャラジャラ……
「そこにいるのか?ヨシヒデ。」
ワカモのいるさらに遠くから自分など霞んで見えてしまうほどの「災厄」が、すぐそこまで迫っていることを。
「ようやく着きましたね! 先生方!」
ユウカが良秀と先生に向かって明るく声をかけた。
先生は『良かったぁ……』と胸を撫で下ろしたが、良秀はまるで物足りなそうな仕草を見せた。
「フン、銃を使ってこの程度とは……よっぽど武器に甘えてる証拠だな。」
良秀が悪態をつくが、先生が穏やかに言葉を返す。
『私は、銃を上手く扱えていないことは悪いことじゃないと思うよ。それは少しだけでも平和だったっていう、何よりの証じゃないかな?』
その言葉に良秀はため息をついた。今度はリアンも、諭すように言った。
「娘。ここは俺たちのいた都市じゃない。銃の扱いは置いておくにしても……戦闘が雑なのは至極当然じゃないかい?」
良秀は何も言わず、ただ黙って歩いていた。リアンの言葉を聞きたくない気持ちもあったが、胸の奥に小さなざわめきを感じていた。
『みんな、前から戦車とか色々来てるよ!』
先生の声で全員が前方に目を向ける。
トリニティから違法に譲渡された戦車と、不良生徒たちがワラワラと現れた。
先生の的確な指揮のもと、再び戦闘が始まる。その最中、不良生徒たちの塊の中心に異様な存在がいた。
火縄銃のようなデザインの武器を持ち、和服に狐面を着けた生徒——狐坂ワカモだった。
「あら、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛いこと。」
いきなりの挑発に、真っ先に飛びかかったのは良秀だった。
ガンッ!
鞘から抜かない刀を振り下ろすが、ワカモは銃身で軽々と防御し、いなし続ける。
「フン、少しはできるようだな。」
「あら? あなた、外から来た大人ですか? フフ……面白いですね。」
良秀の背筋に一瞬の悪寒が走った。
しかし攻め手を緩めるわけにはいかず、即座に追撃する。
「フフ……甘ちゃん、ですね。」
今度はさっきとは違い、いとも簡単に弾き返されてしまう。
「人の大人を壊すというのは、どんな感触なのでしょうか?」
ワカモが銃身を振り下ろそうとした瞬間、リアンが割り込んだ。
「迂闊だよ、娘。」
「チッ……余計なことを。」
「そういうな。それに、ここにあの時計はいないんだろう? なら、極力負傷は避けるべきだ。」
リアンは良秀を庇いつつ、バスターソードでワカモを弾き飛ばした。
「全く、邪魔ばかりしてくださいま……す……ね………」
ワカモの言葉が徐々に緩慢になっていく。
自らを吹き飛ばした相手の顔を見て——
「あら?」
一瞬で!
「あらあらあら?」
光もびっくりな速さで!!
「し……し、失礼しましたぁー!」
一目惚れした!!!
そしてリアンもびっくりする速さで逃げ出した。
この間、わずか7秒の出来事だった。
「………娘。こういう時、どんな顔をすればいいか、俺にはわからないんだ。」
「知らん。勝手にやってろ。」
『笑えばいいと思うよ。(ヤ ケ ク ソ)』
誰もこの状況を理解できず、立ち尽くしていると——
ドンッ!
鈍い音と共に、何かがこちらに向かって吹き飛んできた。
「今度は何よ!!」
ユウカが大声を張り上げる。全員が吹き飛んできた物体を見る。
「な、なぜ……ワカモが吹き飛んでくるのですか……!」
「信じられない……もう姿は見えないほど遠くに逃げて行ったはずなのに。」
先ほどリアンに一目惚れしたワカモが、凄まじい勢いで飛んできていた。
先生と良秀が慌てて駆け寄る。
『な、なにこれ? まるで鈍器で思いっきり殴られたような痛々しい痣になってる……!』
先生は痛々しさのあまり口元を押さえた。
ワカモの腕には一本の線状の大きな痣ができ、右頬が腫れ上がっていた。
「……おい、リアン。質問に答えろ。」
ピピピピピッ。
良秀が問い詰めようとした瞬間、リアンの端末が鳴った。
「質問に答えよ。ただし2回まで。期限はワカモを吹き飛ばした者が現れるまで。」
「いいだろう、娘。2回までなら答えられる。」
「1つ目だ。俺たち以外にも都市から来ている奴がいる。それは蜘蛛の巣以外にも限りなくいる。そうだな?」
「あぁ、合っている。俺たち以外にもこの地への来訪者がいる。」
良秀は小さく頷いた。
「2つ目だ。今からこっちに来るアイツを、こいつらを守りながら撃退できるか?」
リアンは少しの間、押し黙った。
彼でさえ即答できないほど難しい問いだった。
「……厳しいな。俺の予想通りの相手だとしたら、少なからず重症者を出してしまうだろう。」
リアンは続けた。
「娘。その守る者にお前も片足を入れているところを、しっかり自覚しなさい。」
良秀は軽く笑い飛ばした。
「困難に打ち勝つことこそ、また美しいものだ。」
その言葉が終わらないうちに——
ジャラジャラ……
大剣を背負った大柄な男が、ゆっくりと姿を現した。
「おぉ! やっぱりヨシヒデか! この左腕が傷んだから行動して正解だったな。」
中指の親方——マティアスが、その姿を現した。
勉強しなきゃ行けねぇのはわかってるんだけどよぉ…手が止まらねぇんだ。
原作開始時の先生は?
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良秀、お前が1人で先生になるんだよ!
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良秀と男先生
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良秀と女先生