ーJチームー
Jチームは宇多と森林
「さーてと、相手は斬鉄くんと霧幻くんっスか…」
「霧幻の"ゴースト"は警戒すべきだろうね。どの程度のものかわからないから対策の立てようがないけど…」
「そーっスね…斬鉄くんはどーするっスか?」
「斬鉄くんの個性もかなり強力だよね。攻撃性能に特化していると思う。守りは基本的に無効化されちゃうけど…苗木ちゃんの『植物種』の成長速度なら物量で押すこともできるでしょ?期待してるからね!」
「…!、うっス!」
霧幻の個性は鑑賞がほとんどできないが、本体に物理攻撃を加えると解けてしまうのが弱点と自己紹介の会話の流れで知っている。
斬鉄の個性は近接攻撃特化タイプ。どんなモノでも切断し、切断面をどこかに接着できるという。
後手を取らされると苦戦は必須だろう。
一方森林の個性は植物の種を生み出し、任意のタイミングで一瞬で成長させ、それを操る個性。
シンリンカムイの例がある通り、捕縛力は高い。
物量による防御力も高い。
宇多の個性は味方の支援と敵の妨害を得意としている。
Jチームの嫌な展開としては宇多が乗っ取られてしまうこと。
いかに2人を拘束するかが勝利への鍵となるだろう。
ーFチームー
Fチームは斬鉄と霧幻
「さて、相手は森林さんと宇多さんか…支援役と防御しながら中遠距離で攻撃できる兵士…厄介な相手だな。何か策はあるか?」
「え…と…ぼ、僕の個性は動きが遅いんだ…でも乗っ取れたら強い衝撃を与えられない限りは解けない。どっちかを拘束してくれれば乗っ取るから、そこから2人攻めたらいいんじゃないかな…」
「うむ、名案だな。となると狙うのは宇多がいいだろう。こちらを妨害されながら相手を強化することができるのは、常に不利対面を押し付けられているようなものだからな」
「う、うん…それと、僕は幽体離脱中は耳が聞こえなくなるんだ。だから簡単なサインを作ろう」
「わかった。夢幻君、君は思ったよりも頭がキレるようだね。頼りにさせてもらうよ!」
「う、うん…!」
──
開始の合図とともに両者は駆け出す。
霧幻は入り口近くの建物に身を隠し、個性を発動。
「案の定1人だね…」
「本気で行くぞ…」
「こっちこそ!苗木ちゃん!いくよ!」
「りょーかいっス!」
ヘッドマイクのスイッチを入れる宇多。
それと同時に森林の指先に種が出た瞬間にそこから四角い木の幹がギュインッと生える。
10本指から伸びる木材だったが、それを斬鉄は難なくサイコロ状に切断する。
「まじっスか!?」
「俺の1番得意な切り方は"賽の目切り"だ」
「食材じゃないんスよ!」
巧みな剣捌きで迫り来る角材を斬り進む。
どんどんと削られていく角材と距離。
「一旦引いて!」
宇田の指示で森林が幹を切り離してステップバック。
斬鉄相手に距離を詰められることは避けたい。
「一気に行くよっ!」
宇多の歌声がヘッドマイクに拡散されて戦場に響く。
心と身体を震わせる歌声が森林の力を漲らせた。
「お、おぉぉ!!なんかみなぎるっス!」
森林の動きのキレと個性の出力が上がる。
動きながら種をばら撒き、地面から根を伸ばしての物量攻撃が斬鉄に襲いかかる。
しかし、死角からの攻撃も身体を捩って見事に切り落として見せる。
その時、斬鉄の耳に不快な音が届いた。
「耳塞いで!」
「_!?〜〜っくッ」
不快感を感じる音階、いわゆる不協和音。
音の発生源は宇田の手元の鈴。
何やら特殊な形状をしている鈴を鳴らしたようだ。
その音を効いた瞬間、視界が歪み、頭痛が走る。
「隙ありっス!」
絶体絶命か。
しかし森林は突如として動きを止めた。
「苗木ちゃん!?今のうちに斬鉄くんを!」
宇田の指示が飛ぶ。
しかし、森林が向かったのは斬鉄の方ではなく、宇多の方だった。
「_え!?苗木ちゃ__」
予想外の動きに反応が遅れる。
森林の右手の指先から木材が伸びて宇多を拘束した。
「よし、確保っす!」
「まさか…霧幻くん!?」
「_なに!?」
「あ、ば、バレちゃったか…」
Fチームの勝利となった。
──
「宇多、まんまと敵の策にやられたな?想定外を想定しとくのもヒーローには必要な要素だ。今回ので身に染みたな?」
「はい…」
「味方を強化する、敵をデバフするなんつー個性持ちなら、俺なら真っ先に殺す。後方支援だけが自分の役割だと思うんじゃねぇ。自分の身は自分で守れるよう近接もできるようにしとけ」
「はい…」
「森林、個性の使い方は悪くねぇ…だが宇田のバフで身体の動きが良くなったせいか、攻撃が単調だった。あれじゃ斬鉄じゃなくても経験豊富な相手なら決定打は打てねぇ。種子の成長が任意ならもっと有利な場所を作る、時間差をつける、誘い込むとか考えろ。ゴリ押しも時には必要だがな、場面を考えろ」
「はいっす…」
「斬鉄、テメェは攻撃力に自信があんだろーがそのやり方にゃ限界あんぞ。猪突猛進だけじゃなく、一旦引く選択肢も持て。最後に"勝つ"ためにな」
「はい…!」
「霧幻、テメェの課題ははっきりしてんな?乗っ取った時に止まったアレ、バレるやつにはすぐバレんぞ。個性の読み取りかなんかしてたんだろうが、動きながらやれ。モノマネはまぁまぁだが、口調を真似するだけじゃ不十分だ。もっと事前に相手を観察しろ。まだクオリティ上げられんだろ」
「は、はい……」
唯一自信のあったモノマネの部分まで言われてしまった霧幻は深く項垂れる。
「……チッ…おい霧幻、オールマイト真似てみろ」
「_えっ、でも_」
「_でもじゃねェ、やれ!」
「は、はいぃ!」
煮え切らない態度に一喝した爆豪。
言われた通り、霧幻はオールマイトのモノマネをする。
「もう大丈夫…なぜって…?私が来た!」
「「「おぉ〜」」」
なかなかのクオリティに、A組は感嘆の声を上げる。
「どーよ?オールマイトオタクの緑谷先生?」
「うーん、よく出来てたと思うけど、強いて言えば胸の張りが足りないかなァ。声色も似てたけど、オールマイトはもっと声に張りがあって強いんだけど安心させるような声なんだ。あと目線は下じゃなく前だね。全体的に力と自信に満ち溢れている感じが足りない気がする」
緑谷の的確な分析が一息の間に一気に飛び出した。
「__だ、そうだ。重度のオタクのコイツだからここまで気づけてるが、ある程度の仲なら違和感くらいは持つだろうな。はっきりいうとお前にはまだ自信が足りてねぇ」
「うっ…」
かなり喰らってしまったのか、再び萎れていく霧幻。
「あーもう、見とけや。__『もう大丈夫!なぜって?私が来たァァ!!!』__こーやんだよ。わかったか?」
爆豪による突然のハイクオリティなモノマネが披露され、一瞬時が止まったような静寂がモニタールームを包む。
(((う、うますぎる…)))
「かっちゃん…プッ、ちょっと、いきなり…やめっ…プフッ」
「あ"!?何笑ってんだ出久てめェ!!」
爆豪は異様な空気を拍手と共に爆発を起こし、爆音で無理やりリセットした。
「だが、斬鉄の反応を見る限り、元々の作戦は宇多を乗っ取る作戦だったんだろう。柔軟に場面に対応して乗っ取る相手を切り替えたのは良かった。あとは機動力だな。乗っ取るまでが味方負担すぎる。早く動けるモンを乗っ取って移動時間を短縮してみろ」
爆豪の容赦のないが的確な講評を聞き、グサっと胸に言葉が刺さったものもいるようだが、4人とも今後へのモチベーションは上がったようだった。