その日のヒーロー基礎学は、"人命救助訓練"。
広大な敷地を持つ雄英高校では、学校内の移動にもバスが使われることがある。
数日前に決まった委員長、堤の声に従って並ぶ。
到着したバスは前半分が対面式の座席になっていた。
並び順も意味がなくなったので適当に座る。
バスが発車すると、生徒達は各々雑談を始めた。
天駆が緑谷にそう尋ねる。
緑谷の独り言に理解が追いつかない生徒達。
A組生徒達は、"色々あった"で済ませられる緑谷の言葉に彼がやはりあの伝説のヒーロー"デク"であると謀らずも再認識させた。
あの日、突如現れた敵達。
因縁が巡り、大規模な大戦へと発展した。
死柄木弔__又の名を志村転狐。
救えなかった心残りと、最後の一撃の拳の感触は昨日のことのように思い出せる。
緑谷は窓の外の景色を見ながら思いを馳せた。
──
バスが停車すると、そこは巨大なドーム状の建物だった。
まるで関西の大型テーマパークのような、様々な施設を備えた一大空間。
少し前に大幅アップデートをむかえたようで、その名も、
みんな変わらずUSJと呼んでいるようだが。
確かにこの広さはそれだな…と思う生徒たちの前に2人の人物が現れた。
その再会を尻目に13号が挨拶をし出した。
皆さんご存知とは思いますが、僕の個性は"ブラックホール"。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。しかし同時に、簡単に人を殺せる力でもあります。皆さんの中にも、そういう個性を持つ人がいるでしょう。
超人社会は"個性"の使用を資格制にし、厳しく規制することで、一見成り立っているように見えます。……ですが、一歩間違えれば容易に人を殺めてしまう、そういった"いきすぎた個性"を個々人が持っているということを忘れないでください。特に君達の代はそういう個性が多い。それをうまく活用して人々を助けられる術を身につけましょう!」
現実を突きつける13号の言葉に、生徒たちは知らずに居住まいを正し、真剣な表情へと変わる。
その様子を見て、13号は内心安堵していた。
きちんと自分たちの力に向き合える子供たちを見て。
授業初めの挨拶というかスピーチが終了し、早速救助訓練が始まった。
初めは山岳救助の訓練。
崖下にはマネキンが怪我をした様子で寝転がっている。
そういうと、蛙吹は躊躇なく崖から飛び降りた。
生徒たちは焦って崖下に視線を向けるが、崖を蹴って減速しつつ迅速に崖下へと現着。
話している間にも蛙吹は要救助者に声をかけ、舌で巻きつけて崖を直角に駆け上がっていく。
崖を上り切ると、ゆっくりとマネキンを救護マットの上に乗せた。
──
初めに救助に挑戦する班は活真、照元、未蜘蛛、堤の4人だった。
対して要救助者役は総護、洸汰、の3名。
4人は救助の流れを確認する。
作戦会議が完了し、各自行動に移る。
未蜘蛛が出した糸で堤が崖下へと降りていく。
そう言った斬鉄の方を見ると、無駄に高いクオリティで悲惨そうな顔をしていた。
堤が手を翳すと、斬鉄は半透明の膜で包まれる。
そのまま台車に乗せられて上へと引き上げられていく。
そして洸汰と総護も手を翳される。
気がつくとすでに崖の上だった。
──
次に救助に挑むメンバーは天駆、威叫、玉城、宇多の4名。
天駆が宇多を抱えて『ジェットエンジン』で減速しながら着地する。
宇多が心地の良い歌を口ずさみながら、2人で要救助者をリフトに乗せようとする。
威叫の叫び声が崖下まで轟く。
薄々勘づいていたが、威叫は言葉遣いが悪く誤解されやすいだけで、根は優しく真面目なのだった。
──
次に救助に挑戦するのは総護、叶、洸汰、久世だった。
叶は崖下に向かって言霊を放つ。
崖下の救護役の暗陰、宇多、堤の意識は途絶えて眠りにつく。
総護は崖下に瞬間移動し、全員を収納。
崖上へと再び瞬間移動で戻り、全員をベットの上へと放出する。
その後は応急手当てや搬送を行う流れだが、訓練のためここで打ち止めとなった。
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次に挑戦するチームは来栖、鎖々木、又旅、斬鉄だった。
鎖々木は少し考える。
そして思いついた。
作戦を共有し、全員が納得して救助に取り掛かる。
4人は崖下へと来栖に包まれて飛び降りることで着地の衝撃を無効化し、素早く降下。
来栖、鎖々木、又旅の3人は要救助者の周りにスタンバイ。
斬鉄が脇差の刀で崖を斜めにまるでバターを切るように一刀両断。
そこから短刀を使い、階段を細かく形成していく。
そこから飛び散る瓦礫を3人が救助者に届かないように防ぐ。
来栖は大きな口を開けて向かってくる全てを飲み込み、
鎖々木は鎖を数十本出して全てを弾き、
又旅は卓越した身体能力で全てを撃ち落とす。
できた階段を3人がそれぞれ救助者を抱えて登っていった。
──
最後に挑戦するのは暗陰、永禮、森林、霧幻。
3人は同意して救助を決行する。
森林の出した蔓を同じく森林が生やした木の幹に固定して崖下へと降る。
暗陰は影で、森林は木を足元から成長させて簡易的なリフトを作り、崖上へ。
永禮は救助者を横抱きにしたまま軽くジャンプし、その軌道のまま崖上へと移動した。
全班の救助訓練が無事に完了したところで、13号が総評を述べ、その後チームを入れ替えてもう一度行い、第一回目の救助訓練は無事終了となった。