NEXT AGE   作:やげん軟骨

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第18話 救助訓練

 

その日のヒーロー基礎学は、"人命救助訓練"。

広大な敷地を持つ雄英高校では、学校内の移動にもバスが使われることがある。

 

()移動も授業の一貫です!しっかり気を引き締めましょう!」

 

数日前に決まった委員長、堤の声に従って並ぶ。

到着したバスは前半分が対面式の座席になっていた。

 

(未蜘蛛)珍しい形だな」

(宇多)確かに!」

(暗陰)ま、テキトーにすわろーぜ」

 

並び順も意味がなくなったので適当に座る。

バスが発車すると、生徒達は各々雑談を始めた。

 

(宇多)楽しみだね!」

(活真)ね!どんな感じの場所なんだろ」

()資料によると、雪崩、崩落、暴風雨などあらゆる災害や事故を想定されて作られた空間らしいです。維持と運営に一体いくらかかるんでしょう…」

 

(天駆)せんせー!先生の頃はどんな訓練だったんですかー?」

 

天駆が緑谷にそう尋ねる。

 

(緑谷)えぇ…!?僕たちの頃か……」

 

(天駆)……?デク先生?」

 

(緑谷)__あ、いや、なんでもないよ。思えば、あの時が始まりだったんだなって思ってね…」

 

「「「(1-A)???」」」

 

緑谷の独り言に理解が追いつかない生徒達。

 

()…飯田さん、先生が1年生の頃の救助訓練って、確か敵連合が初めて攻めてきた時じゃ…」

 

(天駆)__あ、ごめん先生!そんなつもりじゃ…」

 

(緑谷)_あ、あぁ!気にしないで!確かに色々あったけどね…その後になんだかんだで全員で補講することになったよ」

 

A組生徒達は、"色々あった"で済ませられる緑谷の言葉に彼がやはりあの伝説のヒーロー"デク"であると謀らずも再認識させた。

 

 

あの日、突如現れた敵達。

因縁が巡り、大規模な大戦へと発展した。

 

死柄木弔__又の名を志村転狐。

救えなかった心残りと、最後の一撃の拳の感触は昨日のことのように思い出せる。

 

緑谷は窓の外の景色を見ながら思いを馳せた。

 

 

 

──

 

バスが停車すると、そこは巨大なドーム状の建物だった。

 

(玉城)すっげー!ここがUSJかァ!」

 

まるで関西の大型テーマパークのような、様々な施設を備えた一大空間。

少し前に大幅アップデートをむかえたようで、その名も、"ウソの(U)災害や(S)事故(J)ただし(T)どんな時も(D)LIFEを思って(L)"という相変わらずかなりギリギリを攻めた名前へと変わっているようだ。

みんな変わらずUSJと呼んでいるようだが。

 

確かにこの広さはそれだな…と思う生徒たちの前に2人の人物が現れた。

 

 

(宇多)スペースヒーロー"13号"と梅雨入りヒーロー"フロッピー"だ!」

 

(蛙吹)緑谷ちゃん、貴方相変わらず縁に恵まれてるわね。見知った顔が沢山」

 

(緑谷)蛙吹さん、今日は協力ありがとう。そうなんだ、僕も驚いてるよ…」

 

(蛙吹)あら、梅雨ちゃんと呼んでくれないのね」

 

(緑谷)え!?あぁ、ごめん梅雨ちゃん!」

 

(蛙吹)無理しなくていいのよ。ケロケロ、このやりとりも久しぶりね」

 

その再会を尻目に13号が挨拶をし出した。

 

(13号)えー、始める前にお小言を1つ2つ、3つ……4つ。

皆さんご存知とは思いますが、僕の個性は"ブラックホール"。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。しかし同時に、簡単に人を殺せる力でもあります。皆さんの中にも、そういう個性を持つ人がいるでしょう。

超人社会は"個性"の使用を資格制にし、厳しく規制することで、一見成り立っているように見えます。……ですが、一歩間違えれば容易に人を殺めてしまう、そういった"いきすぎた個性"を個々人が持っているということを忘れないでください。特に君達の代はそういう個性が多い。それをうまく活用して人々を助けられる術を身につけましょう!」

 

現実を突きつける13号の言葉に、生徒たちは知らずに居住まいを正し、真剣な表情へと変わる。

その様子を見て、13号は内心安堵していた。

きちんと自分たちの力に向き合える子供たちを見て。

 

 

 

授業初めの挨拶というかスピーチが終了し、早速救助訓練が始まった。

初めは山岳救助の訓練。

崖下にはマネキンが怪我をした様子で寝転がっている。

 

(13号)じゃあまずは僕たちがお手本を見せますね!フロッピー、お願いします」

 

(蛙吹)わかったわ」

 

そういうと、蛙吹は躊躇なく崖から飛び降りた。

生徒たちは焦って崖下に視線を向けるが、崖を蹴って減速しつつ迅速に崖下へと現着。

 

(又旅)は、早い…!」

(未蜘蛛)流石だな…」

 

(来栖)又旅も未蜘蛛も出来んじゃねーの?」

 

(又旅)ウチも着地には自信あるけど、途中の身のこなしが凄いと思う。万が一瓦礫が崩れても救助者に当たらないようなルート選びをしてる」

 

(未蜘蛛)俺だったら糸を使って安全に降りるからな。壁には張り付けるけど、あそこまで素早くはいけない」

 

 

話している間にも蛙吹は要救助者に声をかけ、舌で巻きつけて崖を直角に駆け上がっていく。

 

(未蜘蛛)みろ、救助者のマネキンが全然揺れてない。舌を操作して揺れを相殺してるんだ。流石、トッププロは違うな…」

 

崖を上り切ると、ゆっくりとマネキンを救護マットの上に乗せた。

 

「「「(1-A)おぉ〜!!」」」

 

(13号)こんな感じで自分たちの個性をうまく活用して救助してみてください!個性が有用ではない場合でも役割を探してサポートをすること!それでは、グループ分けして行っていきますよ!」

 

 

──

 

初めに救助に挑戦する班は活真、照元、未蜘蛛、堤の4人だった。

対して要救助者役は総護、洸汰、の3名。

 

4人は救助の流れを確認する。

 

(活真)作戦、どうしようか?」

 

(照元)今回、僕の個性はあまり活かせそうにないからサポートに回るよ」

 

()私が下に降ります。『保存』なら要救助者の状態を悪化させることなく上へと運べますから」

 

(未蜘蛛)俺は糸を出そう。照元は引っ張り上げるのを手伝ってくれ」

 

(照元)わかった」

 

(活真)じゃあ僕は引き上げの手伝いと個性で救助後の応急手当てをするよ」

 

作戦会議が完了し、各自行動に移る。

未蜘蛛が出した糸で堤が崖下へと降りていく。

 

(総護)お、やっぱ堤が来たか」

 

(洸汰)じゃあ島乃は上で引き上げと簡易的な治療だな」

 

(斬鉄)おい、俺たちは要救助者だぞ!もっと深刻そうな顔をしろ!」

 

そう言った斬鉄の方を見ると、無駄に高いクオリティで悲惨そうな顔をしていた。

 

()みなさん、お待たせしました。今から私の個性で覆います。その間の意識はないですが、安心してくださいね」

 

堤が手を翳すと、斬鉄は半透明の膜で包まれる。

そのまま台車に乗せられて上へと引き上げられていく。

 

そして洸汰と総護も手を翳される。

気がつくとすでに崖の上だった。

 

──

 

(13号)それでは、次の班やってみましょうか!」

 

次に救助に挑むメンバーは天駆、威叫、玉城、宇多の4名。

 

(天駆)役割どうする?」

 

(玉城)俺の個性は使えなそうだ!」

 

(宇多)私の力でできそうなことは個性で痛みを緩和させることかな…」

 

(威叫)チッ、なら飯田、お前が宇多を抱えて下に降りろ。救助は早さが大切だ。俺と玉城(このバカ)で引っ張り上げる」

 

(天駆)わかった、それで行こう!」

 

天駆が宇多を抱えて『ジェットエンジン』で減速しながら着地する。

宇多が心地の良い歌を口ずさみながら、2人で要救助者をリフトに乗せようとする。

 

(威叫)おいコラてめェらァ!!」

 

威叫の叫び声が崖下まで轟く。

 

(威叫)そいつは脚怪我してんだろ!その持ち方じゃ悪化すんだろが!!丁重に扱いやがれ!!」

 

((((1-A)真面目だ…)))

 

薄々勘づいていたが、威叫は言葉遣いが悪く誤解されやすいだけで、根は優しく真面目なのだった。

 

──

 

次に救助に挑戦するのは総護、叶、洸汰、久世だった。

 

(総護)下に降りるのは俺だけでいい。全員収納してここに戻ってくる。叶は要救助者を眠らせてくれ。出水は手当のために清潔な水を準備。久世は応急手当ての後に運搬するための手段を頼む」

 

__()コクリ

(洸汰)確かに、それが1番効率的だな」

(久世)了解!」

 

叶は崖下に向かって言霊を放つ。

 

()眠って』

 

崖下の救護役の暗陰、宇多、堤の意識は途絶えて眠りにつく。

 

総護は崖下に瞬間移動し、全員を収納。

崖上へと再び瞬間移動で戻り、全員をベットの上へと放出する。

その後は応急手当てや搬送を行う流れだが、訓練のためここで打ち止めとなった。

 

──

 

次に挑戦するチームは来栖、鎖々木、又旅、斬鉄だった。

 

(鎖々木)どうする?俺の鎖で引き上げてもいいが…」

 

(来栖)僕が包んで運ぶのもありだよね!」

 

(又旅)ウチが下に降りてリフトに乗せるのもありじゃない?」

 

(斬鉄)俺の個性は…今回は活きないか…?」

 

鎖々木は少し考える。

そして思いついた。

作戦を共有し、全員が納得して救助に取り掛かる。

 

4人は崖下へと来栖に包まれて飛び降りることで着地の衝撃を無効化し、素早く降下。

 

来栖、鎖々木、又旅の3人は要救助者の周りにスタンバイ。

 

(斬鉄)飛影ッ!!」

 

斬鉄が脇差の刀で崖を斜めにまるでバターを切るように一刀両断。

そこから短刀を使い、階段を細かく形成していく。

 

そこから飛び散る瓦礫を3人が救助者に届かないように防ぐ。

来栖は大きな口を開けて向かってくる全てを飲み込み、

鎖々木は鎖を数十本出して全てを弾き、

又旅は卓越した身体能力で全てを撃ち落とす。

 

できた階段を3人がそれぞれ救助者を抱えて登っていった。

 

──

 

最後に挑戦するのは暗陰、永禮、森林、霧幻。

 

(暗陰)どう役割分担するか…」

 

(森林)私、階段とか救助道具作れるっス!」

 

(永禮)救助者を一気に運べると思う」

 

(霧幻)…こ、この訓練では意味がないかもだけど…乗っ取ると相手の情報を読み取れる…だ、だから怪我の具合とかもわかるかも…?」

 

(暗陰)……よし、森林、蔦って出せるか?」

 

(森林)だせるっスよ!」

 

(暗陰)なら、下に降りるのは俺と永禮と森林だ。降りる時の安全を確保するために森林は蔓を出せ。降りたらそれぞれ1人ずつ崖上へと運ぶ。いいか?」

 

3人は同意して救助を決行する。

森林の出した蔓を同じく森林が生やした木の幹に固定して崖下へと降る。

 

暗陰は影で、森林は木を足元から成長させて簡易的なリフトを作り、崖上へ。

 

永禮は救助者を横抱きにしたまま軽くジャンプし、その軌道のまま崖上へと移動した。

 

全班の救助訓練が無事に完了したところで、13号が総評を述べ、その後チームを入れ替えてもう一度行い、第一回目の救助訓練は無事終了となった。

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