「おいコラ泡群ァ…"アレ"どーなってやがる?」
威叫と泡群の目の前には素画の姿が2人あった。
瓜二つなど、そんな次元ではない。
紛れもなく同一人物。
「"アレ"は改身の『擬態』だ。目で見てスキャンしたモノに擬態できる。そんでもって擬態元の個性も使える。今の奴らは実質素画が2人ってことになる…!」
──
改身 未玖
個性 擬態
スキャンしたあらゆるものに擬態することができる!
擬態元の能力もそのまま使えるぞ!
スキャンする時は目に力を込めると発光する!
まさにカメラのフラッシュだ!
ピンボケとかは関係ないぞ!
──
「まぁ、関係ねェ…ぶち破るだけだァ!!」
「そう__だなッ!!」
──
泡群 裂太郎
個性 起爆泡
起爆性のある泡を生み出す!
起爆性と粘度を調整することでクッションとして利用することもできるぞ!
基本触れるな危険だ!
──
威叫のボイスレーザーと、泡群の『起爆泡』が素画チームの水晶を目掛けて放たれる。
だが、2人の素画による『ピクセル』で生み出された防壁がそれを阻む。
「…この程度か」
「…まじあぶね!結構抉られてんですけどー」
「…チッ、どいつもこいつもチョーシに乗りやがって…!」
『出水チーム・威叫&泡群の攻撃が素画チームを襲う!しかし2人の素画による防御壁がブ厚い!!ぶち破れるかァ!?」
『防御力の高い素画の『ピクセル』が改身によって単純に倍になってる。完全に守りに入られると攻めるのは難しいだろうな」
──
一方、暗陰は不知火チームに攻めに出ていた玉城に加勢する。
「玉城、どうだ?」
「暗陰!ダメだ、守りが堅ェ…」
不知火チームは攻撃に3人出ているため、防衛に残っているのは黒野のみ。
暴食魂は一定の量を喰らうと消えてしまう。
黒野は黒く染まった両手から『黒煙』を出し、それらを固めて防御壁を生成し、物量によって玉城だけでなく他チームの攻撃をここまでほぼ完封していた。
(喰らったのは初手の御門チームによる斬鉄の瞬間移動辻斬りのみ)
「無駄だ。お前らにここは通させない」
そこに、かなりダメージを受けた様子の纏井が帰ってきた。
「纏井、戻ったか」
森林にやられっぱなしなのが許せないのか、今にも噴火しそうな様子の纏井。
「おい黒野、『黒煙』寄越せ!あンのやろう…絶対ェ借りは返すからなァ…!!」
「全く、人に頼む態度じゃないぞ。こっちも今忙しいんだ。…はぁ、言っても今は耳には言ってないな…」
黒野は黒煙を新たに生み出し、固形にしたものを纏井に渡す。
纏井はそれを受け取ると、シュルリと黒煙を纏う。
「玉城、お前の個性で奴をぶち抜く方法がある。聞いてくれ」
「_!、なんだ!聞かせろ!」
「とにかく1点集中だ。『暴食魂』を1列に並べて1点を狙って放つ。そうすれば消えた先からロケット鉛筆方式で奴の壁を削る!」
「なるほど!まかせろ!!」
玉城は『暴食魂』を最大数の10個生み出す。
それらを直列に並べて一気に発射した。
「いっけェ!!暴食魂、ロケット鉛筆ッ!!」
ダサい名前は置いておいて、威力は本物。
黒野も黒煙の壁を削れるたびに生成して防ぐ。
1個、2個、3個と暴食魂が消えていき、とうとう10個目も消えてしまった。
「あ"〜!!」
「いいぞ、あとは任せろ!」
暗陰の鋭く尖らせた影が暴食魂タマシイの開けた風穴に追い討ちをかける。
「_!!」
「貫けッ!!」
渾身の一撃。
壁はもう薄く、水晶まではあと一歩。
だが、最後の壁が突如爆発し、影を吹き飛ばした。
『玉城&暗陰の連携攻撃ィ!しかし、それを完璧に防いでみせた!?どんだけだよ黒野ォ!?』
「やるな…今のは危なかったぞ…」
すぐに開けた穴も周りの黒煙が集まるようにして塞がっていく。
「渾身の連携攻撃も俺の壁を越えられない。お前らにここは通させない」
「…あぁ、素直に凄いよお前は………………
___今回は俺たちの勝ちだけどな」
__バキンッ!
『なんだァ!?纏井が自チームの水晶を破壊!?裏切りかァ!!?」
「纏井!何やってる…!?」
「何って?水晶壊してんだよ!!」
そのまま黒野に襲いかかる纏井。
黒野も虚をつかれたため一撃をもらってしまう。
『一体どうしちまったんだよ!?」
『得点は暗陰チームに入った。恐らく纏井に霧幻が憑依してるな』
『味方に化けて奇襲かよ!?よくバレなかったな!」
『乗っ取った相手の情報を読み取って口調や仕草を真似られるんだろう。黒野はしてやられたな』
──
一方、不知火チームの攻撃により水晶の半分を破壊されてしまった島乃チームには焦りの色が見えていた。
「くっ…このままじゃ…」
火傷に爛れていた皮膚が光と共に消えていった。
手をグッパッと握る開くを繰り返し、回復度合いを確認する。
幸い、特に問題はなさそうだった。
問題は得点と時間。
このまま守りに入っていては勝てないのは必至だった。
「島乃くん!攻めに行ってくださいッス!」
「……そうだね、守ってるだけじゃ勝てない。又旅さんに加勢してくるよ!」
「頑張れッ!」
宇多のバフを受け、活真は駆け出した。
「むぅぅ…!守り堅いなァもうッ!」
長い髪を振り翳すB組男子・最上によって又旅の攻撃は今のところ封じられてしまっていた。
「フン、僕様の美しき髪による守りはまさに鉄壁。君じゃあ突破は出来ないよ!」
「ちょっとモガミン、私たちを忘れてはいないかね〜?」
「奴に言っても無駄だ。自分しか興味がないからな」
「まぁまぁ、調子が上がってくれるならそれでいいよ!」
──
最上 美春
個性 靭髪
髪の毛の先端から太さ0.1ミクロンの伸縮自在の触覚を張り巡らしており、それらを伸ばし自由に操る能力を持つ!
これらの触覚は驚異的な強度を誇り、攻撃や防御に利用されるぞ!
散髪はしないんだってよ!ドライヤー大変そうだな!
──
「又旅さん!」
「島乃!かなり厄介ね…最上と白雲と五識の連携で守りがガッチガチな上に、高木に触れられたら1発アウトだもん」
「確かに、これを1人で攻めるのは骨が折れるね……僕も加勢するよ。連携していこう!」
活真と又旅の高身体能力コンビが高木チームに迫る。
最上の靭髪が張り巡らされ、2人を包囲する。
跳躍し、地を滑り、身を捻り、躍動しながら距離を詰めていくが、2人の真上に突然局所的に豪雨が発生し、その場所に髪が集結し弾き飛ばされてしまう。
「くっ」「ンニャッ!」
『白雲による集中豪雨により出来た隙を逃さない最上との見事な連携プレー!やるなァ!』
「あぁ…そうだな…』
マイクには少し鼻を啜る音が入っていた。
「思った以上だ…この守りの中でよく高木くんに触られずにいてくれたね…!」
「避けるのは得意だからね…でも、このままじゃ…」
活真は高速で思考を回す。
現状を打開できる唯一の案は…
「宇多さん!!全力のバフを又旅さんに!!」
「_!りょーかい!!」
宇多の魂のこもった歌声が会場に響く。
又旅の力が漲っていく。
体躯は少し大きくなり、牙と爪が鋭く光る。
「_!なんか変わったね。モガミン、気をつけて」
「言われるまでもない!」
一斉に駆け出す2人。
同じように最上の髪による防御が2人の行手を阻む。
しかし、今回の2人は直列に並んでいた。
前衛の又旅が鋭い爪を振り翳し、髪を切断して前進していく。
「_!?僕様の髪を!?そんな、ありえないィィ!」
髪の毛一本で法定速度の車を止められるほどの強靭さを誇る最上の髪。
しかし、それを容易に切断していく宇多による最大強化を受けた又旅。
「うらァァァ!!!」
『又旅が突然パワーアップ!?猪突猛進の勢いで最上の髪をぶち破りながら進んでいくゥ!!」
『チームメイトの宇多によるバフだな。それにしても、ここまで強くなるとは…』
「白雲!カバーを!」
「わかってる!」
動きが速すぎて狙いが定められないため、範囲攻撃での集中豪雨を2人に浴びせる。
しかし、2人はその豪雨地帯を既に突破してしまっていた。
「僕様の美しいキューティクルがァァ!!」
悲痛な叫びを上げる最上をよそに、高木と五色が立ちはだかる。
又旅を捕まえようとした五色は、右へ左へと超高速のステップで躱わされる。
又旅は捕まえられないと踏んで後ろの活真に狙いを定めていた高木だったが、活真の予想以上の加速と体捌きによって鍵を刺しに行った右腕を取られる。
「君はそう来ると思ってたよ…!」
そのまま右腕を引かれて重心を崩されると、右脚で大腿側部を蹴られ、その勢いのまま放り投げられてしまった。
「「もらったァ!!」」
2人の爪と足が水晶を捉え、高木チームの水晶は残り1/3となった。
──
「活真くんやるなァ!」
「チッ、ムカつく戦い方してやがる…」
「ありゃ誰かさんの影響だろうなァ」
「お、噂をすれば…」
そういって振り返ると、緑谷が立っていた。
「_みんな!久しぶり!」
「おぉ!元気してたか?」
「うん!みんなの活躍、ばっちり追ってるよ!」
「先生、どうだ?」
「だいぶ慣れたかな。楽しいよ!それより…みんな、ありがとね…!」
「したくてしたことだ。感謝されたくてしたわけじゃねー」
「この口が治ればチャートも上がるのにね」
「あ"!?」
「なーなー!今日___すんだろ?」
上鳴が緑谷に尋ねる。
「……いや、今日はしないよ」
「「「_!!」」」
「あ"?何言ってんだてめーは。今日はガキどもが主役の日だろーが。コイツがその注目奪うような真似すっかよ」
「確かに……」
「……そーだな、じゃあまだお預けか」
「でも近々させてもらうつもりだから!」
──
鎖々木は電光掲示板に記された現在のランキングに目を遣る。
「鎖々木、行くよね?」
「あぁ。勿論狙うのは__」
「「1位のチームだ…!」」