『さァさァ!そろそろラストスパートのお時間だぜ!?決勝に出れるのは4チームだ!奪い合え卵共ォ!』
「くっそー!キリがねぇ!!」
円堂と角張の周りには無数に舞う罠の仕掛けられた紙と、水晶の間を隔てるように滞留する毒の霧。
角張の攻撃もカウンターで弾かれる。
かと言って無理やり突っ込んで行っても毒を喰らうだけ。
「嵌罠の奴、ムカつく顔してやがるなァ!!」
「腕が逝かれるの覚悟で1発デカいの打つしか…」
「待て!照元がタイミングまで攻め続けてくれって言っていたろ。大技はタイミングまで溜めとけって」
「……タイミング…そっか!」
「なんかわかったのか?どういうことなんだ?」
「わかんねー!でも光にぃが言うならなんかあんだろ!そのタイミングとやらまで攻め続けるぞ!」
角張のさまざまな弾種を円堂が威力を増幅させて放つが、ことごとく罠紙によって防がれてしまう。
「ハァッハッハァー!君たち、無駄だって気づきなよ!!色紙くんと僕のコンビの包囲網は越えられないのさ!!」
「嵌罠ァ、それってフラグっていうんだよ?」
「バカッそんなこと言うなって…」
そんな彼らの目の前に、黒い球がゆっくりと進んできていた。
「なんだありゃ?」
「あ、なんかやな予感」
ピタッと空中で止まると、様子を変える黒い球。
傍聴して引力を発生させ空気を吸い込み出した。
「これは…まず__」
紙を持っていかれないように抵抗するも、引力には逆らえずに辺りに対空させていた紙と毒霧は全て黒い球に吸い込まれてしまった。
「いけェェ!!」.
「絶対"ココ"だなァ!!!」
全身全霊の角張の最大サイズキューブが、円堂の『ブーストリング』×3によって超増幅され、放たれる。
『角張&円堂の超火力コンビにより最大出力だァァ!!!』
会場を照らす閃光と共に、毒液を固体化させた分厚い壁を打ち抜き、水晶の左上を抉った。
その空いた風穴の先に視点を合わせる叶。
『壊れてッ!!』
_バキンッ
水晶全体に突如ヒビが入り、再びパリンと音を立ててバラバラに砕け散ってしまった。
──
「__来たか…封斗、飯田…!準備は万端みたいだな」
「当たり前だ…1位から引き摺り下ろしてやる…!」
城戸・深岩からギリギリまで吸い取って強化された2本の鎖の先端が水晶に迫る。
「させないよっ!」
だが、永禮の『フロウ』によって軌道をずらされ、鎖の先端は奥の壁へと突き刺さる。
それと同時に、天駆の加速の乗った飛び蹴りも別方向から襲いかかった。
永禮の守備範囲を抜け、砂に守られた水晶に迫っていくが…
「甘いな」
天駆の攻撃は分離した砂によって受け止められてしまった。
──
「天駆さん、速いですわね。流石飯田さんのご親族ですわ!」
「いちおー聞くけどどう言う間柄なの?」
「姪だ。兄さんの娘なんだ。小さい頃は速く走れなくて泣いていたが…今では空中なら飯田家の中でもトップだろうな!」
「封斗くんの個性もやべェな!拘束だけじゃなくて火力もあるとか羨ましいぜ」
──
『速い速い速いィ!!飯田の超速空中機動からの攻撃が御門チームの水晶を狙う!!だが防ぐ…これも…これも防ぐ〜!!B組・砂原!まさに鉄壁ッ!!」
「硬ったいなァ!!」
「チッ、想像以上だ…!」
鎖々木の強化された鎖が再び水晶に向かって放たれるが、同じように永禮がそれを逸らす。
しかし、それを加味してもう一度鎖の動きを変えて水晶へと迫る。
「_!、ごめん抜かれた!」
「_任せろ」
鎖の横に斬鉄が姿を現す。
鎖を切断した瞬間に再びワープさせ、もう片方の鎖も断ち切る。
──回想──
「斬鉄、俺の剣になってくれ」
「?俺は人間だぞ」
真顔で答える斬鉄に力が抜ける3人。
「わかってるよ。例えの話だ。俺がお前を各チームの水晶の前とか攻撃された時に切って欲しいものがある時にその場所にワープさせる。斬鉄は目の前にあるものをすかさず斬ってくれ。お前の反応速度ならいけるはずだ」
「なるほど。俺が擬似的にお前の武器となるわけか。守りはどうするんだ?」
「砂原の変幻自在かつ強力な砂の壁に、永禮の『フロウ』で軌道を逸らせる。お前は自陣にワープした時以外は攻撃に専念してくれ」
「わかった。御門、俺を使ってみろ!!」
──
「_出張辻斬りサービスでございます」
「ご苦労マイソード!またよろしく!」
再びワープしてその場から消える斬鉄。
総護は完全に斬鉄を自分の武器として扱いきっていた。
──
「…どうする?その様子だとお前はもうさっきほどの水は出せないだろ」
不知火は再び巨大な炎の槍を生成する。
「出水、避けろ!巻き込まれるぞ!!俺がなんとか止めるから!!」
来栖は炎の槍の目の前にいる洸汰に声をかける。
しかし、洸汰は脱水のせいか、意識が朦朧として声が届いていなかった。
(__あれ……なんか、聞こえる……来栖…?何、言ってんだろ……まァいいや……今は、とにかく……炎の槍を、止めなくちゃ…)
呆然とする意識と、チカチカして暗くなりそうな視界の中、その中で洸汰は本能的に思考する。
今出せる水分量で、あの炎の槍を止めるにはどうしたらいいか?と言うことを。
先ほどまで使っていた大量の水をぶつけて軌道をずらす方法はもうできない。
__ムリ…?……無理か…?
暗くなった視界の中で、強烈に記憶に焼きついた景色が流れる。
あの日__ヒーローに憧れた日。
___俺のヒーローは__諦めなかったよな…
キッと洸汰の目に光が宿る。
掌じゃなく、指先。
それも人差し指1本に、1点に集中する。
「んなろォォ!!!」
指先、1点から放った高圧の水で腕を振り抜いて横薙ぎにする。
不知火の放った炎の槍を両断し、更にその奥にいた不知火の頬を掠める。
「_!」
「…ハァ、ハァ…」
不知火の頬を血が伝う。
虫の息だと思った相手の一撃に、驚いた不知火。
『残り1分!!』
プレゼント・マイクの残り時間のカウントが会場に響く。
「_チッ、そろそろ"アレ"が来るな…戻るか」
不知火は自チームの水晶へと戻っていった。
その他のチームはそれぞれ敵の水晶目掛けて全身全霊の攻撃、または自チームの水晶を粉骨砕身の覚悟で防衛する。
『残り30秒!!』
各々の個性が会場を飛び交い、最早カオスと化した空間。
そんななか、1人のヒーローが気づく。
「_?、なァ、なんか暗くね?」
「…そうですわね……この時間帯にしては……_アレは…!?」
「まさか…」
「……マジ?」
空を見上げると、暗雲が立ち込め、ところどころが薄く発光している。
『10秒前!!__5!4!3!2!1!__』
「___できた…__特大の、喰らえェ!!」
競技開始から少しずつ作り上げてきたステージを覆う規模の雷雲。
自チーム以外の9チーム全ての水晶目掛けて閃光と轟音と共に降り注いだ。
『ら、落雷ィ〜!?タイムアップの寸前、突如として雷がステージに降り注いだァ!この規模、この威力…白雲、強すぎだろォ!!』
『今ので一気に結果が塗り替わるだろうな。どうなった…?』
観客の視線は、ステージと電光掲示板に注がれる。
砂埃が晴れ、現れた結果は……
『1位!開幕速攻から試合中各場所で暴れまくり、自チーム水晶も無傷!まさにぶっちぎり!御門チーム!』
「ッッシャァ!!」
「よしっ」
「うぉぉッ!!」
「……グッ」
総護、斬鉄、永禮は大きく喜び合い、砂原は静かに拳を握った。
『続いて2位!終盤まで全員で守りに徹し、最後の最後に落雷による特大攻撃で大逆転しやがった!高木チーム!』
「狙い通りだな」
「やったね!」
「僕様のおかげだろう?」
「うん、モガミンよくやってたよ〜」
当初の計画通りことが進んだことを高木は心の中で安堵し、白雲は純粋に喜んだ。
最上は手鏡を片手に自分の美しさに酔いしれ、五色は最上をおだてつつ白雲と健闘を讃え合った。
『3位!多くのチームから得点を量産!メンバー間の相性と相乗効果で強さを見せつけた!不知火チーム!』
「3位か…まぁ、相性だな」
「不完全燃焼だわ〜」
「チッ、クソがァ!!」
「落ち着け、纏井」
不知火は結果をすんなりと受け入れ、江練は前半で実質退場してしまったためあまり実感が湧かず、纏井はフラストレーションの塊と化し、黒野はそれを落ち着けていた。
『最後4位!強力な個性を合わせた連携技で魅せてくれたなァ!照元チーム!』
「みんなのおかげだよ!ありがとう!」
「光にぃ、やったなァ!!」
「よっしゃァ!!」
「〜〜ッ!」
照元はみんなに感謝を伝え、円堂はそんな照元と肩を組み、角張は喜びを爆発させ、叶は声には出さないが両手をブンブンと振って喜びを表現していた。
「…く、そォッ…」
「届かなかった…か……」
対して、届かなかった者たちは悔しさに拳を握りしめた。