時間割を確認すると、次の時間はヒーロー情報学になっている。
だが、先生は違うはず…
「今日のヒーロー情報学は特別授業!少年少女達には…"ヒーローネーム"を決めてもらう!!」
「「「おぉ〜!!!」」」
色紙を配りながら、オールマイトは続ける。
「ヒーロー活動をしていく上で、ヒーローネームは大切だ。そのヒーローを表すものだからな!"名は体を表す"。ここでつけたヒーロー名が卒業後そのままってことも多い…真剣に考えるように!」
「俺あっためといたのあるぜ!」
「候補はやっぱ考えるよな」
「どうしましょう…」
………
…
15分後。
「じゃ!そろそろ出来た者から発表して行こうか!」
「「「!!?」」」
発表形式であることを聞かされ動きが固まる。
互いが牽制し合う空気の中で、玉城は最初に立ち上がり、迷い無く壇上に歩いた。
「俺のヒーロー名はァ…『超スーパーウルトラミラクルハイパーグレートアクジキング』だァ!」
(((小2かよ…!!!)))
「長いと覚えにくいし呼びにくいぞ!かっこよくても覚えてもらえなかったら悲しいだろう?シンプルにしてみようか!」
「えー、カッケーのに…ンじゃ、【アクジキング】で!」
出端からかなりこれからの空気を乱すヒーローネームだったが、オールマイトはあくまでも真面目にアドバイスを行った。
玉城が降りて、次は来栖が飛び跳ねながら壇上に登った。
「俺のヒーロー名は…蜘蛛男ヒーロー【イトナ】」
「名前か…因みに少年の名前に込められた意味を聞いてもいいかい?」
「糸は一本ではすぐ切れてしまうが、紡いでいけば強靭になる。最初は細い糸でも徐々に紡いで強く成る。これが俺の名前とヒーロー名に込める意味です」
「よろしい!採用だ!」
玉城の初手でおかしくなりそうだった空気は少し戻ってきた。
続いて壇上に登ったのは照元だった。
「俺のヒーロー名は、【ダークライト】です!」
「いいね!個性と君自身を関連づけたいい名前だ!」
クラスメイトからの評価も良く、ようやく自分のヒーロー名を出しやすくなったと皆が安堵した。
「照兄、そっちにしたんだ」
「うん、こっちの方が俺らしいかなって」
席に戻ってきた照元に総護は話しかける。
と慣れば自分も、と手を挙げた。
「…はい」
「はいっ御門少年!」
皆の視線に複雑な表情を浮かべながら教壇に立ってボードを裏返す。
ヒーロー名はもう決めていた。
「ヒーロー名は─【オールセイバー】」
「「「!!」」」
「ヒーロー名には自分を知ってもらう意味のほかに、願いや意思を込めることもある。御門少年、それが君の"覚悟"ということだね?」
「…はい。俺の名前はあなたが由来だそうです。だったら俺も、あなたのように全てを守れるヒーローを目指します…!」
「やめてくれよ…オジさん、感動しちゃうじゃないか!!」
オールマイトは興奮して一瞬だけムキッ!とマッスルフォームに変化すると、すぐにボフンと元に戻る。
スーツの肩口はあまりの体型の変化によって破れてしまっていた。
そこから、着々とクラスメイトたちは名前を発表していった。
威叫の【ウォークライ】
又旅の【マタタビ】
暗陰の【シルエット】
叶の【コトノハ】
鎖々木の【チェーンジェイル】
斬鉄の【アクソクザン】
堤の【ファスキクルス】
活真の【アクティヴェリオン】
宇多の【メロディーライン】
霧幻の【レイス】
久世の【パステル】
永禮の【エターナリア】
と順調に発表は続いていく。
「僕のヒーロー名は…【ヴェノム】!」
「来栖少年、それはやめておこうか」
「えー、じゃあ【スライム】で」
(((まんまかよ…!!)))
来栖の某怪物を彷彿とする名前は即座に却下され、もう片方の候補だったみたまんまの名前に決まった。
「残っているのは出水少年と飯田少女の2人か…」
「因みに2人とも候補はあるの?」
緑谷が2人に向けて尋ねると、天駆はうーんと首を傾ける。
「ウチ、代々ヒーロー家系なんですけど、みんな【〜ニウム】って名前で…【インゲニウム】とか【デルフィニウム】とか…」
「うーん……ラテン語由来かァ…じゃあソムニウムとかどうかな?」
「ソムニウム?ってどんな意味?」
「"夢"って意味だよ。お兄さんたちを追いかけて大空を駆ける君にはピッタリじゃないかな?語呂は少しもじってヒーローらしく【ソームニウム】とか…」
「》うん…それいいですね!はいオールマイト!私、ヒーロー名【ソームニウム】にします!」
「えぇぇ!いいの?僕が言ったことだけど…」
「いいんです!気に入ったんで!」
天駆は満足げな顔でヒーロー名を書いたボードを見つめていた。
「最後は出水少年だね。候補はあるのかい?」
「…はい。実は決まってて…覚悟を決めてました」
洸汰は前へ出ると、教壇の上にダンッと勢いよくボードを立てた。
そこに書かれていたのは、【ウォーターホース】。
彼の両親のヒーロー名だった。
「洸汰くん…きっとご両親も喜ぶよ!」
緑谷にそう言われると、洸汰は少し照れながら席へと戻っていった。
──
「職場体験は一週間。肝心の職場だけど、指名のあったものは個別にリストを渡すからその中から自分で選択してね。それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なるし、得意としている活動も違う。もちろん憧れで選んでもいいし、自分の得たいものが確立されているならそれを基準に選ぶのもいいと思う。僕は職場体験で多くの経験をしたし、自分が成長できたと思う。だからよく考えて選んでね!」
期限は今週末。残り2日と少ない猶予を与えられ、昼休みを迎えた。
──
「うわ、御門紙の量ヤバッ」
「本当ですね…目を通すのも大変そうです」
「なんでこんな来てンだよ!?ズリーぞ!」
「そりゃ、ワープ持ってて荷運びいくらでも行けるヤツならみんなサイドキックに欲しいだろうよ」
山のような事務所の名簿で意気消沈している総護の頭の上で何やら話しているクラスメイト。
口から出る魂を霧幻が押し込み、永禮が背中を摩って声をかける。
「大丈夫?手伝おうか?」
「いや、いいよ。永禮もすごい量もらってたろ?…それに、行くところはもう決めてあるんだ」
総護は職場体験の希望調査票に記したヒーロー事務所をみんなに見せる。
「な、なにィ!?」
「どれどれ…No.1ヒーロー・ルミリオン!?」
向かうのは、No.1の現場だ。
──
ー職場体験当日ー
都内のビルが並ぶ中、一つだけ異色の雰囲気を漂わせる建物。
総護はインターホンを押そうとすると…
「_ようこそ!」
「_うぉ!」
入り口の天井から顔が"落ちてきた"。
建物の1番上には"1000万"を捩ったロゴ。
No.1ヒーロー・ルミリオンの事務所だった。
「_歓迎するよ!」
「よろしくお願いします…!!」