アゲート・メノウの下での仕事はとてつもなくハードスケジュールだった。
常に飛び回って一日中敵の制圧。
州から州を跨ぐこともしばしば。
食事はハンバーガーを航空機の上に仁王立ちしながらとっている。
航空機の上はメノウの断層によって空気の層を作り、快適空間に保たれていた。
_ピピッ
通知音がなった。
何か情報が入ったようだ。
サイドキックの【トランスフォーム】から総護のスマートウォッチにも情報が転送され、その情報を空中ウィンドウに映し出し、スクロールして目を通していく。
ヴァンパイア
個性 吸血鬼
血液を操る能力と、驚異的な再生力、人外のパワーを持つ。
血液を脳に打ち込み、生物を操ることができる。
そうしているうちにも目的地に着いたようだ。
着地して街を見ると、細切れになったビルや抉り取られたように歪んだ壁や地面が広がっていた。
アゲート・メノウの顔を見ると、みたことないほどに真剣な表情を見せた。
避難させるということは相当な相手なんだろう。
総護はサイドキックの【バンジー】と共に、民間人の避難誘導へと駆けた。
──
街はまさにゾンビ映画のパンデミックのような状態になっていた。
頭に血を撃ち込まれた民間人が操られ、怪力によって近くの民間人を襲う。
とんだ地獄絵図だ。
バンジーは手からかなり頑丈な『ゴム』を放ち、操られた民間人を無傷で拘束していく。
脳のリミッターを強制的に外されてかなりの怪力を誇る彼らだが、このゴムは無理やり破ることはできないようだった。
ジタバタと抵抗する彼らを収納する。
ヴァンパイアの制御範囲は半径約4kmほどらしい。
おそらくそことは隔絶された空間に収納されたことで血の制御能力を失い、気絶したと思われる。
収納することで完全に無力化できることを確認した総護は、次々とバンジーがぐるぐる巻きにした者たちを片っ端から収納していった。
──
_ゴゴゴゴゴゴッ!!
避難が完了したと思ったら突然の地震。
避難するように言われたが、嫌な予感がしていた。
現場に着くと、そこにはビルも何もない。瓦礫が広がって平野が広がっていた。
アゲート・メノウを見ると、右腕と右足がボロボロになっている。
内側から張り裂けたような奇妙な裂傷だった。
ヴァンパイアの周囲には数十人の老若男女が生気を失った目でフラフラと立ちすくんでいる。
全員の頭に血が付着しており、ヴァンパイアの血によって操り人形にされているようだ。
アゲート・メノウが手を地面に突き、断層で攻撃をしようとすると、民間人を自分とアゲート・メノウの間に移動させて盾にする。
左脚に受けた傷が、近くの女性の首から血を吸うことでみるみるうちに再生していく。
ヴァンパイアは血を大量に体外へ排出すると、無数の巨大な刃に造形して射出した。
"断層"で攻撃を逸らそうが、奴の射程範囲内ならばいくらでも追尾してくる。
当たれば内側から炸裂して右腕・右脚のように損傷は免れず、頭にあたれば操り人形になってジ・エンド。
窮地に追い込まれたアゲート・メノウだったが、速報から飛来した数多の武器が血の刃を撃ち落として行った。
さらにその武器はヴァンパイアの元にも向かってきていた。
ヴァンパイアは冷静に手元にいた女性を盾にするが、寸前でその武器は消える。
そして突如左頬に衝撃が走る。
反応できず、受け身も取れずに吹き飛ばされる。
_ガッ!
右手で女性を保護しつつ、ヴァンパイアを蹴り飛ばし、周囲に民間人を固めた性悪防御網からヴァンパイアを引き離した総護は、左手に握られた銃の引き金を引く。
しかし、左手血を固められて盾にされ、攻撃を防がれる。
「_!!」
_スパッ!
操られた民間人による、ヴァンパイアの血で作られたナイフでの奇襲。
一般人としてはあり得ない動きの速さと鋭さ。
切られた髪がパラパラと宙を舞う。
間一髪で躱したが、前情報がなかったら対応できなかった。
殴られた頬をさすりながら感心したように体制を立て直すヴァンパイア。
総護は右手に銃を取り出し、民間人の足元に放つ。
足元から凍結していき、動きを止めた。
しかし、無理やり動いて拘束を解く。
足の皮が剥がれようと、動きは一切鈍らない。
民間人数十人の一斉攻撃を回避する。
氷結弾は効かない。
あまり傷つけたくもない。
となれば…
総護は弾倉をリロードして通常弾に切り替え、民間人の手元にある武器を撃ち落としていく。
小さい頃に憧れた大きい背中。
存在だけで人々を安心させる圧倒的な力。
自分の名前の由来になったヒーローと、あの日自分に光をくれたヒーロー。
2人のヒーローに誓って逃げるわけには行かない。
武器を失った民間人は、総護にのしかかるように全員が襲いかかる。
全員がのしかかった瞬間、どこかに吸い込まれるように民間人と総護の姿が消えた。
再び首元に衝撃と共に電撃が走る。
一瞬の硬直の後に背後を確認するが、ヒーローの姿は見えない。
刹那、右腹部に再び衝撃と電撃が走る。
続いて背中、左腕、右裏腿、左上背部、右頬…
何処からかわからないが死角からヒット&アウェイされていることは確かだった。
織り交ぜられた爆裂弾によって身体の一部が欠損するが、すぐに再生してしまう。
再生してはいるものの痛みは感じるようで、ストレスが溜まったヴァンパイアは目の色を変えた。
トランスフォーム
個性 変形
触れた物質を変形させる。
最近はアゲート・メノウの後処理に個性を使用することが多い。
バンジー
個性 ゴム
ゴムを生成する。
形状や硬度は自在。
※アゲート・メノウが日系アメリカ人という設定は、