リューキュウ事務所の元に職場体験へ行った照元と白雲は、リューキュウの背中に乗ってパトロールをしていた。
「これが空を飛ぶ感覚か…気持ちいいね!いつもこんな感じなの?白雲さんも」
「いやいやいや、こんなにスピードは出ないよ!」
「ウチの場合は基本的に事件とか、大きな事故に対応することが多いわ。本当は街中で起きてる迷子の補導とかもしたいんだけどね」
「人形でパトロールすることもあるんですか?」
「もちろんあるわ。でも私の個性上、何か起きた時に近くに人がいるとワンテンポ遅れてしまう。だからそちらは他のヒーローやサイドキックに任せて私は空の上から全体を把握して報告をするのが平時の役割。適材適所ってやつね」
空を飛びながら、ヒーローのなんたるかや、自分が普段意識していることなどを説明してくれるリューキュウ。
2人はちょっとした課外授業を受けているような気分になった。
──
「なんでみんなついてくるんだろう…不思議!」
「なんか大行進みたいだ!」
「チッ、見せもんじゃねェぞ…交通の便が悪くなんだろーが…!」
波動ヒーロー・ネジレちゃんの元へ職場体験に行った久世と威叫。
学生時代から"床が抜けるほどモテていた"彼女だったが、ヒーローになった今はそれを遥かに超えて"モテすぎて宇宙の膨張速度が上がっている"らしい。
それを象徴するように、彼女が歩いた後ろを彼女目当てのギャラリーが参列する。
久世の言った通り、まさに大行進といった様子になってしまっている。
「…いつもこんなんなんすか?」
「んーん!下ではパトロールしないの!こんな感じで人が集まってきちゃうの。不思議!だからいつもは空を飛んで見回る感じだよ!」
その言葉を聞いて、職場体験だから自分たちに合わせてくれているんだと理解した威叫は、喉元まで出かかっていた文句を飲み込んだ。
しかし、周りを気にせずに動画や写真を撮ろうとする市民に対しては別である。
「どけっ!邪魔だ!!」
「__うわぁっ」
割り込むように身体を中に入れて最前列へ出ようとした男によって、男の子が押し出されて体勢を崩す。
「_よっと!…僕、大丈夫?」
久世は咄嗟に描いた綿を少年の転倒方向へと具現化して受け止める。
「う、うん…ありがと…」
その時、向かいの工事現場から鉄パイプが落ちる。
その下には子供を連れた若い女性が居た。
「_危ない!!」
「きゃあァァ!!」
咄嗟に子供の身体を庇うように覆い被さる女性。
一直線に彼女たちに向かって落ちる鉄パイプ。
「ウ"ァァアア!!!」
叫び声と共に、声がレーザーのような衝撃波となり、鉄パイプを消し飛ばした。
「おうコラ、ガキを吹っ飛ばすような輩も…騒いで交通を妨げる野次馬も…周りに迷惑かけるってとこだけなら捉えようによっちゃあ敵みてーなモンだよなァ…あの鉄パイプみたいに消し炭になりたいやつはそのまま着いてこいやァ…」
「__ひっ」
鋭い眼光に怯んだ少年を突き飛ばした男。
その周りの人達も、周りを見回して自分たちが迷惑をかけていることに気がつくと、大人しくその場から離れて行った。
「私とか警察が言ってもみんな聞こえないみたいだったのに!不思議!その目つきのお陰なのかな?ねぇねぇ、個性使う時と普通に喋る時ってなんか感覚違うの?不思議!」
「…俺ァ悪例っすよ」
「パステルも、爪がカラフルでかわいい!それが絵の具みたいになってるのね、不思議!薬指とか描きにくそうだけどなんでそんな上手なの?ねぇねぇ、元から絵は上手かったの?不思議!」
「あはは!確かに最初は薬指難しかったですよ!絵は元々それなりに上手かったみたいですね!でも絵って上手さっていうより思いを込めて描く方が大事な気がしますね〜!」
律儀に全て回答する久世と、最小限の回答をする威叫。
次々出てくる質問に久世が主に回答し、威叫はそれを静かに聞いているという構図が板についたところで1週間の職場体験は終了した。
──
「_ハッ!ヤァッ!」
「いいね!基礎トレを怠らないのは大切だよ!現場で最後に頼れるのは自分の身体だからね!」
永禮はガンヘッド事務所に職場体験に来ていた。
目的としてはウラビティが使用することで世に名を広げたG・M・Aを教わるためだ。
それを目的に彼の元に来るヒーローはここ数年で激増したらしい。
基礎がしっかりしているため、応用が幅広く可能なことと、ガンヘッドの指導の上手さにより習得までの期間が短いことが評判をさらに加速させた。
(声と仕草…かわいい…)
男性にしては高めの声と、女性的な仕草が屈強そうな見た目とのギャップをより強めている。
「エターナリアは個性を上手く使えばウラビティみたいにGMAをもっと昇華できるかもしれないよ!」
ウラビティはGMAに『無重力』を掛け合わせることで敵を無力化したり、一気に確保したりしている。
応用技としては軽くした敵をGMAで投げ飛ばし、『無重力』を伝播させて一網打尽するというものなど。
護身術の合気道や柔術から着想を得た相手の勢いを利用する動きが多いGMAはまさしく『無重力』との相性が良かった。
そしてそれは『流動』にも言えることである。
ガンヘッドは永禮を体育祭で見たとき、真っ先に指名を決めたという。
実際来てくれたことでかなり指導に熱が入っていた。
「じゃ、次は対遠距離個性に対しての立ち回りについて解説するよ!」
「はい!」
永禮の職場体験は基礎訓練とパトロール、最終日は個性を応用したGMAの構想を練るなど、有意義な1週間となった。