NEXT AGE   作:やげん軟骨

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第35話 職場体験⑥

 

(ヴァンパイア)奴は逃したが…まぁ全身の骨は折れている。ろくに動けんだろう…驚いたが、奴はもう脅威じゃあない。あとはこの小蝿どもだな」

 

再び大量の血を生み出し、その血を纏うことで巨大な"真紅の化身"と化したヴァンパイアは周りを囲うサイドキックたちを蝋燭の火を吹き消すかの如く腕を軽く払った風圧で蹴散らしていく。

 

(メノウ)お前の相手は私だ!!」

 

(ヴァンパイア)俺が小狡い手しか使えないと…?舐めるなァ!!」

 

その巨躯に加え、さらに血を集めることで巨大化した拳にやる攻撃がアゲート・メノウを襲う。

アゲート・メノウは『断層』で攻撃の軌道をズラす。

 

横からその拳に手を触れて、『断層』で切り離す。

 

ボタボタと垂れる血。

しかし、その血が棘となってアゲート・メノウに襲いかかる。

 

(メノウ)もう、そんな攻撃は喰らわん!」

 

片腕、片脚を負傷しながらも、うまく立ち回ってヴァンパイアと交戦するアゲート・メノウ。

 

(フォーム)準備OKです!避難も完了しています!周囲の5km範囲には民間人は居ません!」

 

(ヴァンパイア)小賢しいわァ!!」

 

ヴァンパイアは断層でズラされることも考えて血を変形させて追尾されることも頭に入れた上で再び拳に血を集めて攻撃を蹴り出す。

 

(メノウ)エア・クエイク・インパクト!!」

 

アゲート・メノウは空間に『断層』で複雑な亀裂を作り、その亀裂によって発生した強烈な衝撃波がヴァンパイアの血の鎧を身体から引き剥がし、その身体ごと吹き飛ばした。

 

もう周囲に民間人はいない。

建物も半壊し、あまり周りに気を使う必要もなくなった。

それによって、アゲート・メノウの制限されていた個性の威力が最大限発揮される。

 

(バンジー)そらきた!!」

(フォーム)押し潰すッッ!!」

 

身体が浮いた瞬間、バンジーの『ゴム』で身体を拘束し、ヴァンパイアの真下の地面を『断層』によって2方向に競上がらせ、トランスフォームの『変形』によって挟みこむ。

 

(ヴァンパイア)効かんわこの小蝿共がァ!!」

 

自分の身体から刃のように出した血液で『ゴム』を切断し、怪力で自分を挟む地面を打ち砕いた。

 

反撃しようとしたその時、視界にキラリと光る"何か"が映った。

妙に目が離せない、無視できない"何か"。

そちらに目を向けると、こちらに銃口を向けた少年の姿。

 

((ヴァンパイア)_なんだ…!?奴は満身創痍のはず…)

 

視界に映る"彼"は、折れた腕を土で作った添木でとゴムで作った固定具でぐるぐる巻きにしてなんとか動けているような状態だった。

あの状態で、何が出来るとも思えない。

万が一"彼"の銃弾を喰らったところで、すぐに回復出来る。

 

((ヴァンパイア)_なのに…何故、こんなに悪寒が止まらない!?)

 

(総護)_1発だ…この1発に全てを込める…!!」

 

銃を握る右手に力が籠る。

銃の隙間から光が漏れ出すが、極限に集中していた総護はそんなことは気にしていなかった。

 

(総護)_喰らえェ!!」

 

力を目一杯込めて引き金を引く。

とてつもない反動と共に総護の身体からは血が噴き出し、後方へと吹き飛ばされた。

 

発光する銃弾は宙に浮いたヴァンパイアの身に迫る。

 

((ヴァンパイア)_何だ…!?この弾丸は何かヤバい気がする…!)

 

ただの直感に過ぎない。

そう一蹴して仕舞えばそれまでだが、そんなに簡単に割り切れなかった。

現在は空中にいるため、避けるのは間に合わない。

となれば防ぐしかない。

 

ヴァンパイアは即座に血を前方に放出して固め、強固な盾を生成する。

 

しかし、その盾を弾丸は糸も容易く貫き、勢いそのままにヴァンパイアの左腹部に風穴を開けた。

 

((ヴァンパイア)…やはり、この感触…"(シルバー)"か…!!)

 

──

 

(バンジー)奴の弱点ってなんだ!?」

 

(総護)ハァ、ハァ、…おそらく、"銀"、です……このシルバーのブレスレットに触れた瞬間、奴から力が抜けて、血の制御も、〜〜ッ、失いました…!」

 

(バンジー)なるほど…"銀"か…物語の設定と同じってわけだな!?」

 

(総護)すぐに、俺をフォームさんの所へ連れてってください…!」

 

(バンジー)ダメだ!お前は早く治療を_」

 

呼吸をするたび軋むような痛みを発する肋骨とかなり重症の左腕と左腕までとはいかずとも、確実に骨は折れているであろう右腕。

そんな状態で何をしようと言うのかとバンジーは総護を止めるが、総護は折れている右腕でバンジーの袖を掴む。

 

(総護)このネックレスを『変形』で弾丸に加工してもらいます…それを打ち込めば…もしかしたら隙を作れるかもしれません…!」

 

(バンジー)だが、そんな状態じゃ__」

 

(総護)『変形』で土の添木を作って『ゴム』で縛り付けて固定してください!1発なら奴の腹元にぶち込んで見せます!!」

 

(バンジー)_!!」

 

バンジーは総護の目を見て喉元まで出かかっていた反対の言葉を詰まらせた。

言っても聞かないだろうし、この方法が現状、最も打開の可能性が高いことも確か。

 

(バンジー)わかった。俺たちが必ず隙を作ってやる。お前はソレを待て!勝負は1発だ…頼んだぞ!」

 

──

 

力が抜けていくのがわかる。

周囲に散った血も制御を失って地面へと自由落下していく。

 

再生も鈍り、身体が思うように動かせない。

 

(メノウ)幕引きだ…ヴァンパイア!!」

 

地を抉るほどの衝撃波がヴァンパイアへと放たれる。

2発目のエア・クウェイク・インパクトを生身でまともに喰らったヴァンパイアは意識を完全に刈り取られた。

 

 

──

 

(メノウ)_おい、セイバー!無事か!?」

 

アゲート・メノウは右脚を引き摺りながら、勝利の功労者である総護の元へと駆け寄る。

ヴァンパイアの拘束と身柄の受け渡しを終えたバンジーも総護の元へと近づくが、総護は地面に横たわって動かない。

 

(バンジー)_お、おい__」

(フォーム)__大丈夫です。過労で気絶して寝てるだけですから」

 

アゲート・メノウとバンジーはほっと胸を撫で下ろす。

 

(バンジー)……全く、無茶しやがって」

 

(フォーム)でも、助けられちゃいましたね〜」

 

(メノウ)_あぁ、彼はまさに"ヒーロー"だった…!」

 

アゲート・メノウは自分の衝撃波が切り裂いた曇天から覗く青空を仰ぎ、笑みを浮かべた。

 

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