再び大量の血を生み出し、その血を纏うことで巨大な"真紅の化身"と化したヴァンパイアは周りを囲うサイドキックたちを蝋燭の火を吹き消すかの如く腕を軽く払った風圧で蹴散らしていく。
その巨躯に加え、さらに血を集めることで巨大化した拳にやる攻撃がアゲート・メノウを襲う。
アゲート・メノウは『断層』で攻撃の軌道をズラす。
横からその拳に手を触れて、『断層』で切り離す。
ボタボタと垂れる血。
しかし、その血が棘となってアゲート・メノウに襲いかかる。
片腕、片脚を負傷しながらも、うまく立ち回ってヴァンパイアと交戦するアゲート・メノウ。
ヴァンパイアは断層でズラされることも考えて血を変形させて追尾されることも頭に入れた上で再び拳に血を集めて攻撃を蹴り出す。
アゲート・メノウは空間に『断層』で複雑な亀裂を作り、その亀裂によって発生した強烈な衝撃波がヴァンパイアの血の鎧を身体から引き剥がし、その身体ごと吹き飛ばした。
もう周囲に民間人はいない。
建物も半壊し、あまり周りに気を使う必要もなくなった。
それによって、アゲート・メノウの制限されていた個性の威力が最大限発揮される。
身体が浮いた瞬間、バンジーの『ゴム』で身体を拘束し、ヴァンパイアの真下の地面を『断層』によって2方向に競上がらせ、トランスフォームの『変形』によって挟みこむ。
自分の身体から刃のように出した血液で『ゴム』を切断し、怪力で自分を挟む地面を打ち砕いた。
反撃しようとしたその時、視界にキラリと光る"何か"が映った。
妙に目が離せない、無視できない"何か"。
そちらに目を向けると、こちらに銃口を向けた少年の姿。
視界に映る"彼"は、折れた腕を土で作った添木でとゴムで作った固定具でぐるぐる巻きにしてなんとか動けているような状態だった。
あの状態で、何が出来るとも思えない。
万が一"彼"の銃弾を喰らったところで、すぐに回復出来る。
銃を握る右手に力が籠る。
銃の隙間から光が漏れ出すが、極限に集中していた総護はそんなことは気にしていなかった。
力を目一杯込めて引き金を引く。
とてつもない反動と共に総護の身体からは血が噴き出し、後方へと吹き飛ばされた。
発光する銃弾は宙に浮いたヴァンパイアの身に迫る。
ただの直感に過ぎない。
そう一蹴して仕舞えばそれまでだが、そんなに簡単に割り切れなかった。
現在は空中にいるため、避けるのは間に合わない。
となれば防ぐしかない。
ヴァンパイアは即座に血を前方に放出して固め、強固な盾を生成する。
しかし、その盾を弾丸は糸も容易く貫き、勢いそのままにヴァンパイアの左腹部に風穴を開けた。
──
呼吸をするたび軋むような痛みを発する肋骨とかなり重症の左腕と左腕までとはいかずとも、確実に骨は折れているであろう右腕。
そんな状態で何をしようと言うのかとバンジーは総護を止めるが、総護は折れている右腕でバンジーの袖を掴む。
バンジーは総護の目を見て喉元まで出かかっていた反対の言葉を詰まらせた。
言っても聞かないだろうし、この方法が現状、最も打開の可能性が高いことも確か。
──
力が抜けていくのがわかる。
周囲に散った血も制御を失って地面へと自由落下していく。
再生も鈍り、身体が思うように動かせない。
地を抉るほどの衝撃波がヴァンパイアへと放たれる。
2発目のエア・クウェイク・インパクトを生身でまともに喰らったヴァンパイアは意識を完全に刈り取られた。
──
アゲート・メノウは右脚を引き摺りながら、勝利の功労者である総護の元へと駆け寄る。
ヴァンパイアの拘束と身柄の受け渡しを終えたバンジーも総護の元へと近づくが、総護は地面に横たわって動かない。
アゲート・メノウとバンジーはほっと胸を撫で下ろす。
アゲート・メノウは自分の衝撃波が切り裂いた曇天から覗く青空を仰ぎ、笑みを浮かべた。