『洸汰くん大丈夫?忘れ物してない?』
「大丈夫だって。いつまでも子供扱いすんなよな」
『そうだね、爆豪さんによろしくね!』
電話を切ってポケットに入れ、マップを確認する。
洸汰が着替えの入ったキャリーケースとコスチュームの入ったアタッシュケースを持って向かった先は、都会のど真ん中に建てられた爆発の煙のエフェクトが屋上に飾られたビルだった。
「オウ、来たな。さっさと入れや」
意外にも自ら出迎えてくれた爆豪に促され、中へと入る。
爆豪の発する無言の雰囲気によるプレッシャーに耐えきれなくなり、洸汰は話を切り出した。
「あ、あの…これ、信乃さんとエリから」
手土産を渡すと爆豪はそれを受け取る。
「…エリは元気かよ?」
「は、はい!世話焼きで、さっきも失礼のないようにって電話してきて…」
「……」
その時、少しだけ表情が柔らかくなった気がした。
事務所に入り爆豪がデスクに座ると、洸汰は資料を提出する。
爆豪はその資料を受け取り、サッと目を通すと机の脇に置いてしまった。
「てめェは何しにここに来た?」
「_!何しにって…」
じっと正面から目を見て爆豪は続けて問う。
「…体育祭を通して何を思った?」
「…自分の力の無さを痛感しました」
「_そうだなァ。てめェは有利相性の"火"に対して正面から火力で負けた。チームが勝てなかったのも、本戦に出場できなかったのも、てめェの力不足だろうな」
「……ッ!!」
洸汰は拳を握り締め、奥歯を噛み締める。
まさに自分が思っていたことを、正面から投げつけられた。
改めて遠慮なく言われると悔しさでおかしくなりそうだった。
「それを踏まえて…てめェはここに何しに来た?」
「……」
すぐに答えない洸汰の焦ったさにイライラを募らせるが、緑谷に「かっちゃんは威圧するから生徒も本音を言いにくい」と言われたことを思い出し、大きく息を吸い込んで気持ちを落ち着かせる。
「てめェの目指すヒーローはどんなだ?"デク"に憧れたんじゃねェのかよ!?だったら答えは決まってんだろーが!!……もう一度聞く。てめェは何しにここに来た…!?」
「_…強くなりに来ました!」
「どのくらいだ?火を消せれば満足か?」
「_いいえ…緑谷兄ちゃんみたいに…いや、"デク"よりも、"ダイナマイト"よりも強くなるために!!」
その言葉を聞き、爆豪はニィッと口角を上げた。
「おし、職場体験を受け入れてやる。ただし、一切容赦はしねェ。全力でついてこいやァ!!」
「_!、はい!!」
──
ダイナマイト事務所はサイドキックを雇わず、彼1人で運営されている。
実際のところは希望者は殺到したのだが、面接時の彼の圧と口の悪さで全員が泣いて辞退したらしい。
「敵だ!」
「_な、はやっ…」
迅速な敵撃退や捕縛を得意とし、敵の騒ぎを聞きつけると爆速で飛来し、敵を瞬時に制圧する。
「_すンません!!魔が差しただけなんだァ!」
「ケッ、骨のねェ奴だな」
「ハァ、ハァ、ハァ…」
現場に追い着くと、既に敵を制圧済みだった。
今度は通信で応援要請が届くと、その場から爆風で飛び去っていく。
「ハァ、ハァ…くそッ…!」
呼吸が荒れて痛む肺を気合いで無視して爆豪の後を追った。
──
職場体験1日目は爆豪の後をひたすら追いかけて街を走り回るだけで終わった。
事務所の更衣室の椅子で白くなっている洸汰の元にデスクワークを爆速で終わらせた爆豪が現れた。
「おし、これから訓練すンぞ」
「_…え…?…これから…?」
「あンだよ?俺を超えるってなァ口だけか?」
「いいえ…!やりましょう、今すぐ…!」
訓練場に向かうと、様々な施設があった。
屋内にはジムなどの筋トレルームやサウナなどがあり、屋外には広場のような場所と爆風で黒焦げになった仮想敵がいた。
「ウォーターホース、てめェの課題には気づいてっか?」
「個性の威力不足…?」
「まァ、間違っちゃいねェな。てめェの課題は"圧縮"だ」
爆豪は掌を爆発させて加速した。
「コレがフツーに爆波して移動した動きだ。ンで、これが__」
爆発の音が幾つも重なったように聞こえると、先ほどとは比べ物にならないほどの加速で移動した爆豪。
「コレが"圧縮"した場合の動きだ。自分の最大火力を"圧縮し、留め、一気に解放する"。てめェがコレを習得すりゃ、可能性は一気に広がンだろ」
「"圧縮"…」
「第二種目の最後、火のヤツに放った一撃は、近いモンがあった。あの感覚を思い出せ」
「……はい!!」
洸汰の職場体験の1週間は、パトロール→訓練→爆睡をひたすら繰り返す1週間となった。