体験期間の1週間を終え、生徒たちは各々得たものを胸に教室に集まった。
「おぉ!永禮、ガンヘッドの事務所はどーだったよ?」
「おはよ!ひたすらパトロールと訓練だったよ〜…でもおかげでだいぶ鍛えられたよ!今なら来栖くんも投げられるよ…!」
コォォと何処かで見たことがあるような呼吸法で構える永禮のらしくない姿にクラスが和む。
「暗陰はツクヨミのとこだろ?どーだった?」
「得るものが多かったな。敵との直接戦闘はなかったが、自分の得意を押し付ける立ち回りをみられたのは収穫だ」
「相変わらず固ェのな」
「来栖と島乃はMt.レディだっけ?」
「おう!」
「比重としてはかなり実践が多かったかなァ。トップヒーローの現場を間近で見られていい勉強になったよ!」
「ニュース見たよ!暴走車両を止めてお手柄だったって!」
「それ、俺も見た。結構話題になってたし」
「私もネットニュースで見た!活躍先越された〜」
クラスメイトに囲まれて褒められた活真は照れ笑いをする。
来栖も楽しかったと口角を上げているようだった。
「飯田はインゲニウムだろ?」
「そう!ま、叔父さんだしね〜、やり易かったよ!自由に動きすぎて注意されたけど…固いんだよね天哉兄は」
「まさに身内って感じだな」
楽しげに会話しているが、1人だけ登校していない者がいる。
「そういや御門はどうした?」
「?、まだ来てないみたいだな」
「ルミリオンのとこでしょ?どんな経験したのか聞きたかったのにな〜」
ガラガラッと扉が開き、緑谷が入ってきた。
「みんな、久しぶりだね!」
そう言って教卓につく。
「みんな揃ってるみたいだね!それじゃ、ホームルームを_」
「_先生、総護がまだ来てないです」
鎖々木がそう進言すると、思い出したように口を開いた。
「_あぁ、彼なら今アメリカだよ!」
「「「ア、アメリカァァ!?!?」」」
突然の発言に驚くクラスメイト。
「アメリカってUSA!?米の国と書くあの!!?」
「ドユコト!?」
「実はね、ルミリオンへの依頼で一緒に渡米した時に偶然アゲート・メノウに会ったみたいでね」
「アゲート・メノウって米国の現No.1ヒーロー!?」
「そこでアゲート・メノウに気に入られたみたいで、今は彼女のもとで職場体験を延長してるよ」
「マジ!?」
「いいなぁ」
「ずりィなァ…」
凄いと素直に認める者、羨ましいと思う者。
それぞれが総護に対し、違う思いを持ったのだった。
──
「さて、今日のヒーロー基礎学は対仮想敵との戦闘訓練だ。職場体験で得たものを見せてみろ」
オールマイトに連れられ、グラウンドに出るとすでに待機しているロボ敵達がいた。
「ニンゲン、コロス!」
「マッサツ!」
「キカイノジダイダ!」
「相変わらず殺意に溢れてやがんな」
「でもまぁ…敵が人間じゃねぇなら…」
それぞれ、自分の実力を思い切り見せつけるように敵を撃破していく。
ただ撃破しているだけでなく、その内容は立ち回りが入試に比べて効率的になった者、苦手を克服しつつある者、個性の使い方に幅が出てきた者が現れていた。
体験先で何か掴んだのだろう。
その中でも特に進化したのは…
「行くぞッ!」
水を圧縮して噴霧放出することで最小限の水量でフライボードのように推進力を得る。
掌を後ろに向けて空を飛ぶその姿は、まさに"爆裂ヒーロー・ダイナマイト"そのものだった。
「はぁぁ!!」
空中から圧縮した水弾を放ち、高い威力により仮想敵を破壊する。
「クタバレッ!」
「!、__おわっ」
仮想敵の反撃に反応して水圧で身体をズラして回避するが、空中姿勢を崩す。
大きな音を立てて点灯した洸汰。
追い討ちとばかりに瓦礫が頭に遅れてゴツンと落ちてきた。
「くっそ〜」と頭をさすりながら立ち上がり、手のひらをグッパッと握ったり開いたりして感覚を確認する洸汰。
攻撃に反応したことで瞬間的に身体に力が入り、思ったよりも力が入ってしまったことで水圧が強かなりすぎてしまったようだ。
「出水スゴッ!!」
「成長率が凄いな」
「空中軌道…幅が広がるね…!」
「"ダイナマ"みてェ!」
(出水少年が行ったのは爆豪少年のところか…彼は自分ができるだけじゃなく要点を教えるのうまかったからな…学生時代は言葉遣いが荒すぎて相手が慣れるまで伝わらなかったが…流石というべきか)
他にも…
(_私も、強くなりたい!)
「〜〜 」
_ドスッ!
_ドゴッ!
「背負い投げに近接格闘!?」
「2人とも武闘派転身かよ!?」
近づかれても自分へのバフと格闘技術によって対処が可能になった宇多と、個性を近接に応用して相手を投げる術を習得した永禮。
この辺りの伸びが著しい。
「各々、職場体験で得られたものがあったようだな!今後もそれを活かせるように努力を続けるように。以上!」
そう言って授業を締めた。
──
「いやぁマジ別人だろ出水!戦闘スタイルまんま"ダイナマイト"じゃん!」
授業後の更衣室。
着替えながら先程の戦闘訓練について話す。
「まだまだだよ…水圧での空中制御がまだ不安定だし」
「そのあたりは"ダイナマイト"には何て言われたんだ?」
「いやなんか、「ガキン頃から出来たから知らねー。見て勝手に覚えろ」って」
「うわー、デク先生もよく話してるけど、マジでセンスの塊なんだなあの人」
「どっちにしろ、身体で覚えなきゃ咄嗟に動けないねーとも言われた。代わりに手本は頼めば舌打ちしながらも何回も見せてくれたよ」
「存外、面倒見がいいんだな」
「口は悪いけどね…」
そんな中、突然「えぇ!?」という驚嘆の声が聞こえた。
「なんだ?」
「どしたよ?」
「なになに〜?」
活真はプルプルと震える手でスマホの画面をみんなに見せる。
スマホはネットニュースの画面。
そこには新たなヒーローがアゲート・メノウとともに最高級指定敵・ヴァンパイアを制圧・捕縛したという記事が載っている。
そのヒーローの名前は、"オールセイバー"だった。
「お、オールセイバーって…」
「あぁ、御門のヒーロー名だ…」
一同は驚きを隠せなかった。
同級生が米国No.1ヒーローと前線で戦っているのだから。
ーアメリカー
アメリカで1番大きい病院、マサチューセッツ病院のVIP室。
「容体は?」
「左腕全体の複雑骨折と右上腕骨の骨折と橈骨のヒビ、その他肋骨5本のヒビと骨折、腹部刺創傷ですね。治癒系の個性持ちが全力で対応させていただきます。2〜3週間はかかると思いますが…万全の状態で復帰できるよう、務めさせていただきます!」
ほっと胸を撫で下ろすメノウ。
ノックをして病室に入ると、個性によって果物を食べていたフォークを収納→放出→収納…をぐるぐる回すように繰り返してジャグリングをしていた。
「おぉ"セイバー"!その様子だと回復は順調みたいだな!」
「えぇ。まぁ、見ての通り両腕はまだ使えませんけどね」
フォークを元の皿の位置に放出して戻し、アレ○サのような音声認識AIにテレビをつけるように頼む。
こんなものまで配備されているなんて、さすがVIPだと意識が戻ってからは感心したものだ。
「そういやまだ渡してなかったな!…はい、コレ」
渡されたのはヒーロー資格仮免許。
当たり前だが、表記は英語だ。
(_うわー、ほんとに発行しちゃってるよ…)
一礼して収納して受け取る。
「お、お前のニュースやってるぞ」
ニュースで連日、大々的に戦闘の様子が報じられている。
新しく登場した若きニューヒーローの活躍にアメリカをはじめ、世界中が注目を集めていた。
「ちょっと大袈裟すぎませんかね?」
「いいや、自覚はないかもしれないが、お前はそれだけのことをしたんだ」
「運が良かっただけですよ」
「そう!それだよ!」
メノウはパチンッと指パッチンをしてこちらを指差す。
「運ってのは最後まで諦めないやつにしか降ってこない。お前はその運を手繰り寄せたんだ。"銀"をたまたま持っていたことも、それがネックレスだったおかげで致命傷を避けたことも、最後に気力で風穴ぶち開けたことも、全部お前の実力。それ以上でも以下でもない」
「……あったかい感じがしたんですよ」
総護は胸の辺りに手を当てる。
「あの時、懐かしいような、あったかいような感覚があって…力が無限に奥底から湧き出てくるような…」
「…それがお前の原点ってやつなのかもな。ほら、コレお前のだろ」
アゲート・メノウの手にはネックレスを無理やりトランスフォームの個性で整形して銃弾にした成れの果てがあった。
「ありがとうございます。これ、実は親の形見なんです」
ぎゅっと握りしめると、また温かい感触を感じる。
「光ってるな?あ、そういえば最後の一撃を撃つ時も、銃から光が漏れ出してたな。でもそれ、確認したけど純銀だろ?」
「えぇ。なんでなのかは俺もわかりません。でもなんか、懐かしいあったかさを感じます」
再び握りしめながら、温もりを噛み締めた。