NEXT AGE   作:やげん軟骨

45 / 47
第39話 期末試験①

 

── 叶 & 宇多 VS プレゼント・マイク

 

(宇多)耳が、壊れる……!!」

 

試験場γの森の中。

試験会場の出口からは轟音が鳴り響いていた。

 

がっと腕を掴まれたと思ったら、叶が背後に引き寄せていた。

耳元で少し強めに囁くように、叶は言霊を発する。

 

()音よ、消えて!』

 

すると、二人の周りの空間から突如音が消えた。

 

(宇多)!、〜〜〜?〜〜!?」

 

叶が助けてくれたことを理解し、感謝を伝えようと声を出そうとするが、全く声が出ないことに驚く。

 

()自分の声も聞こえなくなっちゃうんだ。びっくりさせてごめんね]

 

そう、声が出ないのではなく、自分の声すら聞こえないのだ。

地面に文字を書いて筆談で会話を始めた。

 

(宇多)ありがとう、助かったよ]

 

()ううん…それで、これからどうしようか?]

 

期末試験は、各生徒の課題や欠点を突くような組み合わせになっている。

叶&宇多ペアは、相手に声を伝えることで効果を発揮する個性である。

そのため、プレゼント・マイクの爆音の声量によって上書きされてしまうとうまく効力を発揮できないのだ。

 

(宇多)あの声を止めさせられたらいいんだけど…]

 

()そしたら……]

 

 

 

 

「ったく相変わらず(プレゼント・マイク)暇だなァ」

 

耳をポリポリとほじりながらあくびをするプレゼントマイク。

 

あーあー、っと軽く喉のチューニングをしてからすぅっと息を吸ったその時だった。

 

森影から大量の木の葉がプレゼントマイクに襲いかかった。

 

「お、物量攻撃(プレゼント・マイク)かァ?でも葉っぱなんかじゃ__」

 

"たかが葉っぱ"と鷹を括っていたプレゼントマイク。

しかし、横を通り過ぎた1枚の葉が、自分の頬を切り裂いた。

一気に背中に冷や汗をかくのを感じると、すぐに回避行動に出た。

 

「オイオイオイ!(プレゼント・マイク)危ねェ〜!!葉っぱにしてはやけに鋭いなァ!?」

 

この葉っぱは叶の言霊により鋭利な刃物と化している。

それが目の前を覆い尽くすほどの物量で襲ってくるとなれば、たまったものではない。

 

そして、爆音波攻撃が止んだこの瞬間を彼女らは待っていた。

 

()_追って!』

 

その言葉と共に木の葉はプレゼントマイクを追尾する。

 

「うぉぉ!マジ(プレゼント・マイク)かァァ!!」

 

プレゼント・マイクの個性は、口を向けた方向に最大の出力を発揮する。

しかし、身体にハンデとして錘をつけられるこの状況で追われている状態では振り向くのは危険である。

 

(宇多)〜〜 」

 

声が止んだことで宇多の歌声がプレゼントマイクの耳に届く。

不協和音で構成されたメロディにより、鼓膜から三半規管を刺激して平衡感覚を鈍らせる。

 

「_!?、ッとォ(プレゼント・マイク)やべ、まっすぐ走れねェ…!」

 

しかし、足を止めれば身体はズタズタに切り刻まれる。

プレゼントマイクは叫んで周りの音をかき消しながら走り続ける。

 

()_黙って 』

 

突如耳元で囁かれるように話された一言。

発生源は木の葉に紛れて飛ばされていた小型のスピーカー。

そして声の主は叶だった。

 

「_〜!?(プレゼント・マイク)〜〜〜〜ッ!!」

 

口が縫い合わせたように開かなくなり、声帯を振動させることができず空気が素通りする。

文字通り、声を奪われた。

 

そこに追い打ちをかけるかの如く宇多歌声によって平衡感覚を失って転倒し、木の葉の大群がプレゼント・マイクを襲った。

 

(宇多)やったね!」

()_コクリ」

 

二人は笑顔でハイタッチしながら(ゲート)を通過した。

 

 

── 堤 & 又旅 VS テンタコル

 

(障子)隠れてないで出てこい。そこにいるのはわかっているぞ」

 

複製腕のうちの一つが口になって堤と又旅に向けて告げられる。

 

(()予想以上の探知能力…!)

 

(又旅)これは、やるしかなさそうだね…!」

 

又旅は柱の壁から飛び出して障子に迫っていく。

死角からの攻撃だったが、障子は複製腕で軽々と受け止めた。

 

(障子)索敵に全振りした俺に死角はないぞ」

 

鋭く尖った爪を避けて手首を掴み完璧に受け止めた障子は、そのまま柱に放り投げる。

 

又旅は猫特有の柔軟性で空中で状態を捻り、柱に着地してそのまま跳ねるように動き回って撹乱する。

 

不規則なタイミングでの攻撃と、反撃の前に離れるヒット&アウェイ。

しかし、障子はこれを完璧に捌いていく。

 

(障子)_なるほど、マタタビが俺の注意を逸らしているうちにファスキクルスが(ゲート)を潜る作戦か」

 

「_!?(堤・又旅)

 

自分たちの狙いが完全にバレていることで動揺が走る。

 

(障子)まあ、悪くはないが…」

 

パシッと再び手首を掴む。

そして今度は又旅の鳩尾に拳を打ち込む。

 

身体がくの字に曲がった瞬間、四つ脚を全て複製腕で掴み、拘束した。

 

(障子)これで仲間は捕まった。ヒーローを呼びにいくのもいい。だが、その間マタタビは生きていられるかな?」

 

()_!!」

 

突きつけられた残酷な選択肢。

戦闘能力で障子に敵うとは到底思えない。

となれば、戦えるヒーローを呼びにいくのが定石であり、この場の自分ができる最低限の役割。

 

だが、それをすれば又旅の身が危ない。

 

(()考えて…考えなさい堤保乃香…!この状況ならどうするが正解なの…!?)

 

 

(障子)_出てこないか。なら心苦しいが、今の俺は敵なんでな。すまん」

 

ドスッと鈍い音をたてて又旅の鳩尾に拳がめり込む。

 

()_!!」

 

口から液体が飛び出し、抵抗しようにも手足を掴まれていて何もできない又旅。

 

(障子)_早く出てこい………仕方ない、なら、もう1発…」

 

拳を作ったタイミングで、左上方に作っていた耳がピクリと反応した。

 

こちらに向かって駆け出す堤を本体の目で視認。

迎え打つ体制をとる。

 

(()これが、今の私にできること…!)

 

ポーチから取り出した半透明の膜で包まれた何かを障子の傍に放り投げる。

 

()_解除!」

 

『保存』の膜が消えて地面に接触した瞬間、閃光と共に強烈な爆音が試験会場を響かせる。

 

(障子)_ぐおォォッ!」

 

障子の複製腕で作られた臓器は自分のものよりも性能がいい。

それを逆手に取り、堤は音光爆弾で隙を作った。

 

障子にそれを悟らせないために耳栓をしていなかったため、耳から血を流しながら又旅を救出、『保存』し、そのまま(ゲート)へと駆け抜けていった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。