7月も下旬に差し掛かり、夏祭りの季節が到来した。
週末、夜道を赤提灯が照らし、神輿と山車が道を行き交う。
男達の汗と野太い掛け声が夜の街へと響いていた。
「おうおう、今年も来やがったなァ?」
訪れた屋台は射的だ。
総護はここの常連で、毎年のように訪れては景品を乱獲していたことで、店主ともすっかり顔馴染みだ。
3年ほど乱獲されたところで、総護のみ専用ステージを設定するほどである。
距離が伸びたり、的が小さくなったり、障害物が出来たりと、専用ステージは毎年のようにアップデートを重ねていった。
とはいえ、ここの社的店主は景品詐欺や的を接着して落とさないようにしたりはしないフェアな人物だったため、総護もこの挑戦を楽しんで受けて立っていた。
わざわざ店の後ろに5年目以降は専用ステージを作るほどの力の入れ用だったが、今回は更に訳が違うようだった。
暗幕を解くと、距離は10m、加えて障害物と的自体が不規則に動くギミック付きのステージが姿を現した。
完全にこのステージ代の方が高くつく筈。
今年の祭りの収支だけでは元など取れないだろう。
それでもいいと言う店主の心意気と総護への気持ちを感じる。
手元には拳銃型のガスガンが2丁。
このガスガンもこの店主の店から獲得したものだ。
本来、射的はコルク銃で行うものだが、距離を離した時に流石にフェアじゃないと言うことで、ガスガンの使用が許可された。
総護は2丁のガスガンを構えると、右端から順に次々と不規則に動く的を同じように不規則に動く障害物の間を縫って正確に的を撃ち抜いていく。
「「「おぉ!!」」」
この対決はこの祭りの軽い風物詩のようになっており、このステージギミックも実は隠れたファンからの出資により助けられていたりする。
的を全て落とした総護は、手元のガスガンを収納する。
射的店主は的の上方向を指差す。
そこに目を向けると、裏にある家の屋根の上に、小さな的が準備されていた。
加えて障害物が上へとリフトアップし、その窓の前を不規則なタイミングで横切るギミックも追加されている。
総護は狙撃銃型のガスガンを取り出すと、銃口を向けてスコープを覗く。
ポイントサイトが通る一瞬、引き金を引き、弾が放たれる。
しかし、弾は障害物に弾かれた。
総護は個性で鉄の棒を出し、出し切ることなく空中で固定する。
そこに膝をかけて蝙蝠のような姿勢になる。
観衆がざわつく。
2射撃目。
屋根の窓ではなく地上の的があった部分の少し上へと弾を放つ。
3射撃目。
銃を狙撃銃から拳銃に変えて同じ弾道で放つ。
4射撃目
再び屋根の的を狙うが、またもや障害物に阻まれる。
総護の呟きが聞こえた射的店主は背中にドッと汗をかくのを感じた。
5射撃目。
放たれた弾の弾道は的との直前上より少し上。
最後の最後で集中力が切れたか、そう思えた。
しかし、弾は弧を描き、障害物の上をすり抜けて的に見事にヒットした。
BB弾を生み出すエアガン・ガスガンは飛距離を伸ばすためにバックスピンによるマグヌス効果を利用している。
それを応用し、銃の向きを逆さにすることでドライブ回転を生み出し、障害物の上を超えて的へと命中させた。
観衆の声が神輿の声を打ち消すほどに夜の空に響き渡る。
今夜の釣果は、毎年同様乱獲。
まさに大漁であった。