NEXT AGE   作:やげん軟骨

7 / 47
第7話 夢に向けて

 

「_ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

 

早朝の裏山に数人の足音と呼吸音が響く。

 

早朝トレーニングは安らぎ荘のヒーロー志望達にとっては最早日課になっていた。

 

(総護)_ふぅ…」

 

(照元)お疲れ。調子良さそうだったじゃん」

 

ランニングを終え、タオルで汗を拭いながら水分補給をする総護に、同じくランニングを終えた照元が声をかけた。

 

(総護)まだまだだよ、3回もミスった。目標物があると大丈夫だけど、咄嗟のタイミングで何もないところに転移すると狙いから少しズレちまう」

 

(山車)俺もだ〜。くっつける場所ミスって枝が折れて落ちたわ」

 

(鎖々木)それよりトリお前、ルート急に変えるなよ。ぶつかりそうだったじゃねーか」

 

初めはただのランニングだったが、少しずつ街中から裏山へ、なだらかな道から起伏や岩場が多い道へとルートは変わっていった。

 

ただ走っているだけではなく、個性を使用しつつ走っている。

ちなみにこの裏山は安楽木の私有地の為、使用の許可も貰ってある。個性の使用も問題ない。

 

(円堂)いってェ!!」

 

鈍い音と共に叫び声のした方を見ると、円堂が木の幹に激突していた。

 

(尾崎)ちょっと大丈夫!?何してんのよもう…」

 

(円堂)×2(ダブル)がいけたから×3(トリプル)もいけると思ったんだけどなァ…」

 

円堂の個性"パワーリング"は、通過したモノの力を増幅させる。

それを利用して息を暴風へ、声を爆音波へと変えたり、物理攻撃を強化したりできる。

現在は移動に活用できないかと試行錯誤しているようだ。

 

(小玉)止まれないなら無理しないほうがいいよ。ブレーキがついてる車も急には止まれないんだから」

 

(円堂)50m走とかの障害物なしの直線ならいいんだけどな…」

 

(尾崎)×3(トリプル)以上は使える場面が限られそうね。ハマれば強いけど」

 

早朝トレーニングはお互い切磋琢磨し合いながら、気づいたことをアドバイスし合うという時間になっていた。

 

志望校が同じ者もいるが、安楽木からは良きライバルとしてお互いを高め合うという条件でこの場所の使用を許可されていた。

 

(蛍火)あ、シャワー浴びるならそろそろ帰らないと!朝ごはんに間に合わないよ!」

 

蛍火の声かけにより、全員は即座に訓練を終了し、急いで山を下っていった。

 

 

 

──

 

シャワーを浴び、服を着て食堂へと向かう。

 

炊き上がったご飯をよそい、おかずと共にお盆に乗せて席へと座る。

 

納豆をかき混ぜながらテレビに目を向けると、ヒーロービルボードのランキングが示されていた。

 

『1位は"ルミリオン"!流石、盤石ですね!』

 

『2位には若手のホープ、"ショート"がランクイン!破竹の勢いでランキングを駆け上がっていますね!』

 

『ダイナマイトは15位にランクダウンですか…初めは5位スタートだっただけに凄く下がったように感じますね』

 

『実力は確かなんですが、いかんせん口が悪いですからねェ。顔もヴィランっぽいですし』

 

ドッとテレビから笑い声が聞こえる。

今回のヒーロービルボードのランキングはかなりガラッと変わった。

2位にショート、7位にネジレチャン、9位にテンタコル、10位にファントムシーフと、かなり若いヒーローが台頭してきた。

 

テレビから流れる音を聞き流しながら白米をかき込む。

 

(安楽木)こらこら、皆さん、ちゃんとよく噛んで食べなさい。トレーニングでお腹が減っているのはわかりますが、いくら食べてもきちんと消化吸収できないと実になってくれませんよ」

 

「「「ふぁい」」」

 

身体作りはヒーローの資本。

忠告通りしっかりと噛んで胃袋へと食べ物を流し込んだ。

 

 

──

 

聞き慣れたチャイムが生徒達に放課を告げる。

大きく伸びをして、机の中にある教科書やノートを学生鞄に片付け、鞄を肩に背負って席を立つ。

 

(担任)あ、言い忘れてた!進路希望調査票、明日までだから出してない奴は明日持ってこいよ〜」

 

担任の言葉に青ざめる者が1人。

 

(蛍火)やっべ、まだ出してなかった」

 

そう言って机の奥に手を突っ込むと、くしゃくしゃになった紙が出てきた。

 

(鎖々木)おいおい、一応重要書類だぞ…」

 

(蛍火)へへっ、もう書いてあるから今提出してくる!」

 

(鎖々木)あ、ちょっとまっ__行っちまった…教科書で挟んでシワ伸ばしてから明日提出すればいいのに」

 

(総護)あれ、多分怒られた〜って萎れて帰ってくるだろうな」

 

案の定、しっかりと怒られたようで、2日水をあげていない植物のように萎れて帰ってきた。

 

(円堂)よっす、お疲れさん!…って烈火の奴どしたの?」

 

経緯を説明すると、円堂の顔からサァァッと血の気が引いていく。

 

(鎖々木)お前、まさか無くしたんじゃないだろうな?」

 

(円堂)い、いや!多分部屋にある!………ハズ…」

 

自身の無さげな語尾に、呆れながらも、明日提出できないより今日怒られて紙貰っとけと鎖々木に言われ、円堂は覚悟を決めて教室を出ていった。

 

 

(照元)お、皆んなお疲れ。今日は図書館で勉強してく?」

 

(尾崎)ウチらはこのまま直行するけど」

 

(総護)俺らもいくよ。この後円堂の骨を拾ってから連れてくから」

 

(照元)?、わかった!先いって席取っとくよ」

 

(小玉)また後でねー!」

 

その後、コッテリと絞られて命からがら進路希望調査票を貰うことができた円堂の尻をしばきながら、受験勉強をしに図書館へと向かった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。