雄英高校入学式前日。
安らぎ荘のヒーロー志望の卵たちは荷造りを済ませ、出立の準備をしていた。
長く過ごした見慣れた部屋から物がなくなり、自分の過ごした面影がなくなった。
真っさらになった部屋を見て、少しセンチメンタルになりつつも、部屋にお別れを告げる。
数名を除いてパンパンのキャリーケースを引きながら、自分の靴を履き、外にでる。
すると、そこには施設の子供達と安楽木が待っていた。
「皆んな…」
「いよいよ、出立ですね…」
安楽木はゆっくりと前へ歩き円堂の前で足を止めた。
「輪倶くん。君の真っ直さ、明るさは人を笑顔にする才能があります。それはヒーローとして素晴らしい才能だと思います。意外と周りをよく見ていて、不器用ながら気遣いのできる優しさにはみんなが助けられました。そんな君に、これを__」
安楽木から手渡されたのはスマートウォッチだった。
「耐久性に優れた多機能タイプです。君は少しばかり時間にルーズなところがありますからね。リマインド機能もありますから、忘れ物もしないように」
「うっ…はい……ありがとうございます!」
痛いところを突かれてしまい、怯んだ様子の円堂だったが、スマートウォッチをつけ、笑顔で感謝を伝えた。
「陽向さん。君は明るくみんなを照らすまさに太陽のような存在でした。その笑顔でこれからは市民の皆さんの太陽になってください。君にはこれを」
安楽木から小玉に贈られたのは向日葵の形をしたペンダントだった。
「貴方の好きな花でしたね。まさに陽向さんを象徴するような花だと思います」
「ありがとうございます!」
ペンダントを首に掛けると、上の花びらのギミックに気づき、それを押すと向日葵の中心がピカッと光った。
「九狐さん。しっかり者で世話焼きな貴方は子供達によく慕われていましたね。"余計なお世話はヒーローの本質"。オールマイトの言葉です。きっと素敵なヒーローになれますよ。君にはこれを」
安楽木から尾崎に高級ドライヤーと櫛のセットが手渡される。
「ここのドライヤーでは尻尾を乾かすのに時間を要して困っていましたよね?風量がかなり強くできるものを選びました。櫛もといて、毛並みも大事にしてあげてくださいね」
「〜〜ッ……はい…」
尾崎は涙を堪えながら箱を受け取った。
「封斗くん。君はいつも冷静で周りをよく見ている。態度には出さないですが、本当は誰よりもみんなのことを気遣ってくれていましたね。窮地が陥ったとしてもきっと君なら大丈夫だと思わせてくれます。それが人々の安心になることを願っていますよ。君にはこれを」
安楽木から鎖々木にはブルーライトカット眼鏡が贈られた。
「最近、受験勉強で遅くまで勉強したり、画面を見たりしていて、少し目が疲れていたでしょう?それをするなとは言いません。地道に努力できるところは君の良さであり強みですから。ですが、自分の身体のことも気遣ってあげてくださいね」
「ありがとうございます…使わせてもらいます!」
鎖々木が眼鏡をかけると、みんなの方を向く。
まさにインテリといった風貌に変わった鎖々木をみて噴き出す面々。(似合ってはいる)
本人は鏡を見て気に入った様だった。
「鳥餅くん。好奇心旺盛な君は、一歩目を踏み出す力があります。一歩目と言うのは踏み出すには勇気や覚悟が必要です。でも君はその一歩目を難なく踏み出せる。これはとても素晴らしい才能だと思います。そんな君にはこれを」
安楽木から鳥餅にはギターセットが贈られた。
「最近、よく動画を見てましたよね?ですが、これに夢中になりすぎず、やるべきこともやること。君は進むのが早いが故に抜けてしまうこともありますから、注意ですよ」
「まじか…!ありがとうございます!」
動画でよく見ていたギターを手にすると、山車はピックでジャララランと弾き、更にテンションを上げていた。
「烈火くん。君は大雑把に見られがちですが、本当は色々なことに気づく方でしたね。細かいところに気づけるのは、君が色々なことにちゃんと目を向けられるからだと思います。様々なことにひたむきに向き合うことは、誰でもできることじゃない。ヒーローとして、人々に向き合ってくれたら嬉しいです。君にはこれを」
安楽木から蛍火にヘッドホンが手渡された。
「君は音楽が好きでしたね。スピーカーと迷いましたが、移動中にも聞ける方がいいと思ったのでこちらにしました」
「これ…欲しかったやつ!ありがとうございます!」
重低音から高音までなんでもござれな高品質モデル。
価格で言うと万は余裕で超えるようだ。
「光輝くん。包み込む様な寛容さはまさにみんなの頼れるお兄さんでした。私の目には君は名前に負けないくらい光って見えていましたよ。君にはこれを」
安楽木から照元に間接照明が手渡された。
「寮の設備がどんなものかがわからなかったのですが、ベッドサイドテーブルにおいて使えるものにしました。身体が資本のヒーローにとって睡眠は大切。しっかり安眠してくださいね」
「ありがとうございます!」
暗所恐怖症の照元にとってはかなりありがたいプレゼントだった様だ。
「総護くん。"皆んなを守りたい"と言う思いが誰より強い君にとって、ヒーローは天職でしょう。君はまさにこの世代の中心だった。やると決めた時の君は強い。どんなことからも人々を守れる最高のヒーローになってくださいね。君にはこれを」
総護に贈られたのはトラックに積まれた山のような武器の数々だった。
「君に電化製品は渡せませんからね。鍛治士の古い友人から試作品として作った刃のついた武器を譲り受けました。贈り物としては少々変かもしれませんが、君のヒーロー活動に活きるものを選びました。君らしく頑張ってくださいね」
「…はい!ありがとうございます!」
その後、ちびっ子達からも色紙を貰い、彼らが作る花道をハイタッチしながら進み、安らぎ荘と別れを告げた。
「……頑張ってくださいね。立派に成長して顔を出してくれる日を待っていますよ」
安楽木は天を仰ぎながらそう呟いた。