出張ばっかの仕事ついてたんでほんと時間ないっす。助けてくれよ。金ねぇし……熱には……嘘はつけねぇッ
薄暗い路地裏で、人を屠る。
殴る、蹴る、殴る、蹴る、殴る。
まるでそれしか能がないように。
「げほっ……がっ……」
大男が這い蹲るその前にはボロボロに薄汚れた服にその汚れすらも美しく映る白髪の子供がいた。
「有り金を置いていけ、殺しはしない」
「このクソガキぃ……舐めたマネしてく…」
ゴキッ
寝転んでいる男の腕を彼女は呆気なく足で踏み、折った。
「がっ……ぁああッ!?」
「どうした、その舐めたガキにここまでされてまだ自尊心があるお前には驚きだ」
その姿を見下ろす目は、真っ赤な炎のように、だが凍てつくような鋭かった。
男は痛みに歯を食いしばり耐えながら彼女を睨み付ける。
「はっ……俺には組織がバックで着いてんだ…俺に何かあれば真っ先にお前は殺される!」
あくまで此方が優勢だと譲らない男の姿に溜息をつきながら、心底下らないと更に冷めた目を向ける。
「そうか、それが最後の言葉でいいか?今際の際だぞ?」
男の最後の視界は、振り落とされる踵によって真っ暗になった。
──────────
「……コレだけあれば今週は生きていけるな」
先程の男から財布を盗み取り中身を確認しながらフードを被り直す。
まさか死んだらこうして女に生まれ変わるとは思わなんだ……
しかもめっちゃ治安悪い世界って俺前世でそんな悪い事……してたような気もするけどまだまだまともな社会人だった気がするよ。
ま、この膂力があればこうやって強奪出来るから問題はねぇけどなぁ〜
その思考が既に悪人に染まってるのはこの世界に入ってからと言い訳させてくれ。
だって産まれたら捨てられて尚且つスラムスタートですよ兄貴……まともに生きろって言われてもほっくほくな日本からこの世界に越してきたらそりゃそうなるさ。
「ほっほーう、お前さん……1人か?」
後ろから声を掛けられた、即座に構え後ろを振り向く。
視界に入ったのは白髪のオッサン……しかも敵意はない。
「……身なりが綺麗だな、てっきり私を追いかけて来る残党だと思ったが」
少しだけ肩の力を抜くが警戒は解かない、この場所では命取りになるからだ。
「がっはっは!そらお前さんここでは有名だからの、そら警戒心たっぷりか!」
大声で笑うこのオッサンは、手に掛けていた紙袋からサーモンサンドを1つ取り出して此方へ向ける。
「どうだガキンチョ、少しだけ話をしないか?」
「……さっきの男よりは話が出来るなら歓迎だ」
……ま、少なくとも人を殴る事がないのは有難い限りだしね。
「俺はジャックってんだ、お前さんは?」
「名前なんて、持ってない」
「んじゃ、ナイトウォーカーとでも呼ぶか」
さっきよりはマシな広場で今にも壊れそうなベンチに2人座りながらサーモンサンドを齧る。
ていうかそんな渾名着いてたんだオレに……夜にこうやって追い剥ぎしてるからそんな名前になっちまったんだろうなぁ……
「真っ当な人間では無い裏の人間のみ襲う義賊のような人間、それがこの名前……お前さんのスラムの異名さ」
「……義賊になったつもりはないよ、私は日々の生活でいっぱいいっぱいなだけさ」
確かにそういう輩しか狙わないのはある、ただの一般人を襲ってもどうせ虚しいし、元は俺もそっちだったのだ、罪悪感が少ない標的の方が少しでもマシになる。
それが私(俺)の信念だった。
「それでも、それに救われた人間が居るって事だ。いい事だろ?」
「下らないな、私はただのスラムのガキだ」
「謙遜も嫌味になるって知ってっか?……お前の場合は硬すぎんだよ、気ぃ楽にしてみろ」
それも無理な話だ。
出来るならとうにやっている、無理だからこうやって力で解決してしまうのだから。
「ま、それが出来ねぇってんなら俺ん所来い」
「……何故そうなる?」
「色々あんだろ、お前にも時間と場所が必要って事だ」
……今こうやって追い剥ぎしてもいずれ限界が来る、そっちの方がまだ生きていける可能性は高い……か
「こんな私で良ければ、構わない」
「交渉成立ってか、よし着いてこい。紹介したい奴らがいんだよ」
「……いきなりか」
確かにこのオッサンだけとは言ってなかったけど、ついて行っていいもんかね部外者が。
「安心しろ、アイツらもお前と一緒だよ」
……なるほど、コイツかなりのお人好しと見た。
「……宜しく頼むよ、ジャック」
──────────
「─────ん……」
「……起きたのね、良かったわ無事で」
んぁ?何で目の前に朱鳶が居るんだ?俺はさっきジャックに買い物を頼ま……いや、夢だったのか。
そういえばさっきリンと朱鳶に偶々遭遇してその後ビデオを借りに……あぁ。
「……倒れたのか、私は」
「リンはびっくりしてたけど過労だって聞いた瞬間怒ってたわよ、当然私もだけど」
「すまない、最近は忙しかったんだ」
業務による業務ですっかり疲労困憊だった俺は後半休を無理矢理取らせてもらって昼御飯を終えたらすぐ寝る予定だったが……
……ん?そういえば胸ポケットに入れていたメモと勤務表……あ
「勤務表見させて貰ったわよ、37連勤ってどういう事か説明して貰ってもいい?」
「あー……それは…その通りなんだが」
不味い、まさか今まで隠していた仕事のスケジュールが見られるとは……不覚である。
「前も言ったけど、労働基準法を度外視してるわよこれは」
「君に言われたくはないな、朱鳶もそこまで休んでないだろう?最近は忙しくて帰れなかった記憶があるが」
「それでもコレよりはマシよ、ザンニー……いい加減治安局に移りなさい。ココよりはマシな筈よ」
やっぱりバレたら勧誘すると思った…相変わらず心配症で家族みたいに優しく接するヤツめ。
……でーもホロウちょこちょこ出歩いてるオレにとってはかなーり不味い提案でしてねぇ朱鳶の姉御ぉ〜
「別に弱みを握られている訳でもない、単純にこの仕事が好きなだけさ。……上司は嫌いだが」
人のモノを守る為に生きるってのもそんな悪くねぇんだわ、壊してた前と違って。
「……はぁ、分かったわよ。だけどいい?また倒れたら貴方の銀行に治安局権限で殴り込むからね」
「……それは勘弁してもらいたいものだね」
それはそれは……キツい話だねぇ……ブリンガー局長も中々ズブズブなんだよウチの上司と。
最近は切り捨てる予定だったが。
……というか今気付いたけどこの感触朱鳶さん膝枕してます???
─────
朱鳶side
相変わらず彼女はよく無理をする。
『馬鹿じゃないの!?一人で乗り込むなんて』
『荒事には慣れてる、それに私は傷付いてはないだろ』
『そんな簡単な事じゃないでしょおバカッ!』
学生時代、彼女は品行方正であったが少し荒い部分もあったのを認めましょう。
喧嘩を売られたら流されるが今回は私が巻き込まれた事でザンニーは介入してきた。
今は改善されつつあるけれど、身内絡みになると平気で自分自身を使い潰す事がある。
『……ザンニー?』
『あぁ、朱鳶か』
『おぉ、ザンニーさん!……凄い酷い隈だけど大丈夫?』
ついさっきの彼女を見た時は戻った本当に酷かった。目線がブレブレで隈も取れるのか分からないぐらい深く何時もより姿勢も崩れていた。
片手には何時ものエナジードリンク……まさか毎日飲んでる訳ではないわよねぇ……
『……問題ない、所で君達は買い物か?』
その後少しフラフラなのにも関わらず私達の買い物に付き合い、その後一緒に店長さんの所でビデオを借りる話になった時─────
『……ぁ』
ガシャンっとビデオの棚にもたれかかってそのまま床へと倒れ込んだのだ。
『ちょっとザンニー、だい……ザンニー!?』
私は倒れていた彼女を抱き抱え、頸動脈と呼吸を確認しつつ驚きで声が出せないリンに声を掛けた。
『え、あ、ザンニーさん?』
『救急車ッ!早く急いでッ!!』
『う、うんッ!』
ドタバタとチラホラ居た客もザンニーに安静な体制を取らせたあと何か手伝える事はないかと真摯に向き合ってくれた。
『ありがとうございます!欲しいのはタオル、お湯、呼吸系統は無事ですのでAEDは不要です』
その後、無事医者に見せてもらい、過労との事で入院を勧められたのだが
『すまないが、明日仕事があってね…生活リズムはどうにかするさ、すぐ眠るだけで良くなるからさ……頼むよ朱鳶』
私の腕を掴み懇願するザンニーに押し負け、薬を処方して貰った後ザンニーは泥のように眠った。
「……ほんと、無理してばっかで…身内にはとことん甘いんだから……」
ザンニーは話した後すぐまた眠りにつき寝息を静かに立てている。
そんな彼女の髪を指で撫でるようにサラサラととおしながら、心配そうに見つめる。
「これ以上酷くなったら私の家に連れ込むからね」
その時の私の目は笑ってなかったという話だ。……リンに見られていたあの時の私…バカっ!
あー、やっぱりしっかり寝ると違うなぁ!
やっぱ迷惑掛けて倒れたくないもんだ、反省、反省!!
……ジャックも言ってたもんなぁ、命だけは駄目だって、アレだけは忘れない。
今度墓参りでも行ってくるかぁ、2人連れて。
あ、今は3人……だったか?
「……相変わらず凄まじい邪気を纏うな、姉弟子」
……後ろからなんか聞き覚えある声が聞こえた気がする。
このまんまキャラ単品でいくか、そろそろストーリー路線走らせていくか迷ってます。
……ストーリーに混じらした方いい?