【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい 作:ぱちぱち
勝利ルートと敗北ルートのどちらが良いかでアンケートを取りますので、こっちが面白かったと思った方に投票してください。
ハーメルンのアンケート+カクヨムのコメントで声が多かった方のルートで続きを書こうと思います
誤字修正、でぃせんと様、somey様、so-tak様ありがとうございます!
『私たちは今、凄いものを目にしている! 公式戦はこの大会が初出場の白帯が、今! 栄えある
決勝戦の相手は一ノ瀬選手という、あすみちゃんの身長にトロ子ちゃんのガタイを組み合わせたようなすっごい女の人だった。これで大学生か。すごいな、日本。すごいすごいと語彙力がない小学生みたいな感想になったけど、人間は自分の想像を超えた場合ただただ感嘆するしかないって事だよね。
僕もここまでの横幅はいらないけど、あすみちゃんみたいな身長が欲しいよ。あの娘180を超えた辺りから鈍化したけど、気づいたら2~3cm伸びてたなんて事がザラだったからね。
僕にぶん投げられた一ノ瀬選手は最初茫然としてたけど、審判に声をかけられて投げられたって実感がわいてきたんだろうね。目から大粒の涙を零しながら開始線に戻ってきた。互いに礼をして、試合は終了。この瞬間、女子柔道無差別級の国内王者権藤あまねさんが誕生したわけだね。ふんすふんす
いやぁ。野球の大会とはまた違う感覚だけど、優勝ってのは何度しても良いよね。
「お疲れ様です! あまちゃん、柔道の国内女王に! これは凄い話題性だよ!」
「あ、プロデューサー兼カメラマンさん。今日は北埼玉デッドボールの方じゃないんですね」
「ああ。まぁ、あまちゃん番だからこっち優先なのよ」
そして大きな大会の勝者には当然のようにインタビューが待っているわけだけど、そこでカメラと共にやってきたのはよく知る顔の人物だった。そういえばこの人、ワールドツアーの時もオリンピックの時もバリバリついてきてたからなぁ。国内の大会だったらそりゃあ居るよねって感じだ。
今日は北埼玉デッドボールの方でもバリバリ試合やってるからそっちはどうなるのかなって思ってたんだけどそっちは部下の人がまわしてるんだって。プロデューサー兼カメラマンさん、いつの間にか随分と出世してるみたいで自由に使えるスタッフが結構な数居るらしい。北埼玉デッドボールの撮影が始まった当初はプロデューサー兼カメラマンさんだけで回してたのになぁ。しみじみ。
「あまちゃんとしては今後はどう活動する予定だい?」
「僕はやっぱり根っこは野球選手なんで。甲子園出場を目指してそっちが優先ですけど、それ以外の時間で色々やりたいなと思ってます。せっかくの高校生ですしチャレンジ精神でいきたいなと」
「皇杯は高校生関係ないけどね」
僕の抱負を耳にしてプロデューサー兼カメラマンさんが苦笑する。ま、まぁいいでしょ。その辺は。僕だって今回の大会でもらえるポイント狙いで出場したようなもんだけど、流石にそれは口にしない。甲子園と時期が被らないなら出場しても良い。僕の優先順位は変わらないからね。
ただまぁ、3年後のオリンピックについて今から盛り上がる人たちを見てると野球代表兼柔道代表を狙ってみるのも良いかなって気持ちはあるかな。僕ならそんな選手が居たら面白いって思うし、その競技に興味がわくからね!
「まぁでもあまちゃんの今回の出場はね。甲子園に向けてって意味だと大正解だと思うよ」
「そうです?」
「うんうん。まぁ、悪いようにはしないから僕らに任せといて」
プロデューサー兼カメラマンさんは悪そうな笑顔でそう言った。悪いようにはしないからって大体悪いようにしかしない人が言ってる気がするけど、まぁプロデューサー兼カメラマンさんは僕も信頼してる大人の一人だからね。その彼がこんな事を言うからにはなにかしらあるんでしょ。
インタビューを受けた後、偉そうな人のありがたいお言葉の後にメダルとトロフィーを貰った。これは純喫茶アンデッドに飾ってある僕の輝かしい勝利の歴史(トロフィー棚)に飾っとこうっと。さて貰うもん貰ったし帰るかなーと着替えをしていたら、決勝で戦った一ノ瀬選手が僕の肩にぐいっと手を回してきた。
「おう、権藤。ちぃと面かせや」
「うっわ一ノ瀬さん明らかにヤンキーが絡んでくる絵面っすよ」
「やかまし。飯奢ってやるから来いって」
今時こんな絡み方ヤンキーでもそうやらねぇよって絡み方で声をかけてきた一ノ瀬さんにそう素直に感想を告げると、一ノ瀬さんは非常にバツの悪い顔で目を逸らしながらそう魔法の言葉を口にする。体育会系の人間にとって年上からの奢り発言にはね。抗えない魔力があるんだよ……!
まぁ一ノ瀬さんも他の大会とかでバリバリ優勝してる一流選手だし今時お礼参りもないかなーとは思ったけど、野球選手なら兎も角柔道家の沸点があんまり分からないからね。念のためにこの大会に誘ってくれた柔さんに一言、一ノ瀬さんと飯食って先に帰りますって伝えると、それなら私もという事で急遽3名でご飯を食べに行くことになった。もちろんこの場合は最年長の柔さんが財布を出すことになる。当たり前だよねぇ。
一ノ瀬さんは大学生だからあんまり財布にダメージが行くものは頼めないけど、立派な社会人でいい会社に勤めてる柔さんの財布には無茶を言えるからね。へっへっへっ。高校生の胃袋は無限大だからね。こういう小狡さもないと満腹はなかなか味わえないんだよ……!
「それでなんで誘ってくれたんです? お礼参り?」
「しないわ! んな事!」
「んー、ごめん一ノ瀬ちゃん。私ちょっと怪しいと思ったからついてきたんだけど」
「えぇ……柔先輩、そりゃないっすよ……」
僕の弾丸ストレートな質問に一ノ瀬さんはそう叫ぶが、柔さんも怪しいと思ってたと口にすると途端にしょぼんとした顔を浮かべる。あ、思った以上にストレートな性格だね。疑って悪い事したかな?
でも試合後に負けた相手。しかもほとんど付き合いのない相手を飯に誘うなんて疑ってくださいって言ってるようなものだからね……実際は単に不器用な人っぽいけどさ。
それでどういう理由で呼び出したのかと思ったら、幾つかの理由があったみたい。まず柔道界にいきなり降って湧いた他のスポーツのスター選手がやたらと目立ったからってのが一つ。実際に対戦したからこそ一ノ瀬さんは僕の強さを肌で体感したけど、それが分からない人が今回の優勝を懐疑的に見てなにごとか言ってくるかもしれないから、それに注意しろって言いたかったらしい。
あとは、単純に柔さん以外に会場に知り合いも居なさそうだし、ロッカールームでぽつーんと着替えしてる僕に年長者として声かけておくかと思ったのが一つ。この時点で僕の中で一ノ瀬さんはめちゃめちゃ不器用な人だなって評価が固まった。
そして最後に、これは選手としての質問というか確認だったんだけど、今後どういう風に柔道と向き合うのかを尋ねられた。今回の大会で国内無差別級の女王として君臨する事になった訳だけども、野球が本業だと口にしてる僕がどう動くかは誰にも分からないからね。一ノ瀬さん的にはその辺を知っておきたいらしい。
「甲子園期間は野球に専念するってマジか? 今日、戦って思ったけど日本の最重量級でお前より強い奴いないぞ? 今から頑張れば夏の世界選手権にも出れる目があるかもしれないのに」
「それよりも甲子園を優先したいんです。子供のころから、そのために生きてきたんで」
「そっかぁ。ならありがたく私が世界獲ってきてやるよ!」
一ノ瀬さんは勿体ない、勿体ないと口にしながらも、非常に嬉しそうな顔でそう言った。本当に不器用な人だな、この人。ちょっと好きになってきたかもしれない。
そんな僕と一ノ瀬さんとのちぐはぐなやり取りを、柔さんはけらけらと笑いながら見物していた。あ、忘れてた忘れてた。この人の財布にダメージを与えないとね! という訳でこっちのメニューのここからここまでお願いします!
アンケート結果で内容を変えるため次の更新は21日になります。
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