【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい   作:ぱちぱち

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誤字修正、半開き様、でぃせんと様ありがとうございます。


番外編 国際野球ワールドカップ 4

「解せぬ」

 

 

 カナダ戦の翌日。昨日は大活躍だったし各種ニュースサイトは私の話題で沸騰中だろうなぁむふふとか思いながら最新式のスマートフォンでネットにつないだところ、私の名前で出てくるニュースは全てがピンクだった。

 

 あ、色がピンクって意味じゃないよ? お色気って意味のピンクね。

 

 

「えーと、こっちのスポーツ専門ニュースサイトは『世界一のセクシー選手』でこっちの大手新聞社のWEB版は『視線を釘付け! 新世紀のマ○リン・モンロー』かぁってやかましい! 私は野球選手だっつーの!」

 

 

 おかしいな。どこを見ても9回3点差で登板して三者連続三振に切って取った日本の守護神の記事が見当たらないぞ? 代わりに目に入るのは前回のオリンピックで世界に衝撃を与えたセクシー女優?の記事ばっかりだ。そのセクシー女優?が170km/hの速球投げてるんだけどどこのニュースも胸のボタンがはじけ飛んだ瞬間の画像しかあげてないんだけども。

 

 ……というか、こんな一瞬しかタイミングがない写真をなんでどこの報道も出せてるんだよ。角度的に同じ写真が一枚もないから、多分これ全部別のカメラマンが撮ったものだよね。

 

 もしかしたら私は、とんでもない連中に目を付けられてるのか……? こ、このままじゃあくびした瞬間まで写真に撮られて晒されるかもしれない! イエロージャーナリズムはそういう事をする! 私は詳しいんだ!

 

 

「普段の君なら大丈夫だよ。そういう心配はもっと成長した時に取っておいた方が心の余裕に繋がるんじゃないかな」

「今の私にはそこまで魅力がないって言ってる???」

 

 

 あんまりにも心配になったのでお金の力とかこう、裏側で権力を用いて火消しをしてもらおうとブライアン伯父さんに相談すると、伯父さんは優しい表情でそう私に告げた。な、なんて失礼な親戚なんだ。もうすぐJDになろうという可愛い姪っ子を捕まえてこの言葉! カーッ! 従兄のルイといいこれだから山田の男は! 女心が良く分かってないったらないよ!

 

 

「でも、ルイは君のチームメイトの、ほら。トロコちゃんって子と交際してるんじゃなかったっけ」

「あ、ちょうちょ」

 

 

 伯父さんの言葉を必殺『空をちょうちょが飛んでるの』で回避する。あ、危なかった。今の言葉をまともに受けていたら従兄妹連中で唯一恋人がいないという現実を直視する事になったからね。

 

 いやぁ、まさかね。まさか同世代恋愛弱者筆頭とも呼ばれていたあすみちゃんがケーちゃんと付き合う事になるなんて思ってもみなかったよ。しかも甲子園決勝で自分が逆転打を打ったら付き合ってくれとケーちゃんに言って、本当にランナー背負った三くんからタイムリー打っちゃうんだもんね!

 

 あれはもうスタンディングオベーションだよ。恋する乙女の本気を見せて貰っちゃったからねぇ。それを受け入れて笑顔で交際宣言するケーちゃんも中々カッコよかった。まぁ、おかげで従兄妹の中で私だけが恋人なしになっちゃったんだけど。

 

 あ、ルイとトロ子ちゃんはルイが日本に留学してきた去年から付き合ってるよ。あの二人はルイの方がベタぼれでねぇ、トロ子ちゃんが押し負けるという珍しい光景が見れるから楽しいんだ、見てると。

 

 ……もしかして、こんな風に考えてるから私って恋人が出来ないんだろうか。これまで色んな男女を見てきたけど、男も女も恋愛的に好きになった事ってないんだよね、今生だと。

 

 ま、まぁ。高1の夏まで前世の意識が残ってたから、多分、その辺が原因で自分の性別が分からなくなってるとか迷子になってるのかもしれないし。今後に期待だよね! 今後に!

 

 

「ところであまね。君に写真集のオファーが来てるんだけど」

「え、またですか。未成年の写真集ってよくないと僕ぁ思うんですけど」

「いや、大人になった姿で撮りたいそうだよ」

「絶対にノウで」

 

 

 伯父さんから結構なギャランティを提示されたけど、私はガンとして首を横に振る。そんなもん出したら余計にセクシー女優扱いが酷くなるに決まってるじゃん! 断固拒否だよ、断固拒否!

 

 

 

 

 さてさて、そんなこんなであれこれ打ち合わせやらを済ませていくと時間は過ぎていく。ここでちょっと言いたいのは、色々な仕事はあるけどあくまでも私は野球選手だ。当然野球をするのが仕事であって、自身のプレイで観客をわぁっと沸かせたり相手チームの応援を黙らせるのに最高の満足を覚える性質なんだけどもね。

 

 

『おおっと三振! アメリカ代表サンシャイン、悔しそうに天を仰ぎます。AMACHAN、今のプレイはどうだったのでしょうか!?』

『そうですねぇ。今のプレイはプエルトリコ代表の投手が上手だったというべきでしょうね。二球連続で速い球が来ると、打者はどうしても目が速い球になれてしまいます。これ、実は結構厄介でして、次に来る球が遅いと分かっててもバットを振るタイミングが早くなっちゃったりするんですよ。だからサンシャイン選手は遅い球を警戒してちょっとだけ打席の前の方に移動してたんですが、それが罠だったんですね。それまでよりも若干速い速球に振り遅れてしまったんです』

『なるほどぉ。流石は世界一野球に詳しいコメディアンと名高いAMACHANですね。私は野球はそれほど詳しくありませんが、とても良く分かりました!』

『私は野球選手なんですがね???』

 

 

 なんでついさっきまで抑えの守護神として登板してた投手を他の試合の解説に回すのか。これがなんとも理解できないんだよね。いや、実を言うと理由は知ってるんだよ? ブライアン伯父さんから仕事を振られた時にちゃんと理由は確認してあるから。言ってしまうと、これは二匹目のどじょうなわけだ。オリンピックの。

 

 3年前、当時中学3年生だった私は上海オリンピックで頑張った。まぁ本当に頑張った。日本選手団の広告塔としてマスコミ対策に追われ。選手としてはMVPに選ばれ。更に更に何故か男女野球の解説を一時期は全部私がやって。挙句の果てには野球限定だけど宣伝広告のプロデュースまで行った。

 

 最初の二つは兎も角、後の二つはやった自分が言うのもなんだけど意味わかんないよね。なんで当時の私はこれOKって言っちゃったんだろ。ノリかな……?

 

 ま、まぁとにかくだ。この試合も解説もプロデュースも全部私! な体制で行った上海オリンピックは野球という競技としては過去最高の注目度と来場者数だったらしく、中華の方ではこの成果によって何故か私は『雨音老師』と呼ばれてネットミームになってるらしい。全部こいつで良いじゃんって意味の時に使われるんだって。良くねぇよ。

 

 なんて考えながらもお口は絶好調でぺらを回し、気づけば試合は7-8でプエルトリコ代表の勝利で終わっていた。優勝候補のアメリカ相手に大金星と言っても良いだろう。と、いうかアメリカ代表のピッチャーが酷すぎる。4番にあの子が座ってるのに打ち負けるって相当だぞ。

 

『いやぁ、この試合は派手な打ち合いの見ごたえのある試合でしたね! 特にアメリカ代表の4番は女性の身でありながら3ホーマーと大活躍でしたが残念な結果となりました』

『派手な試合というのは同感ですが、4番のあの子は今すぐプロに行っても通用するレベルなんで意外性はなかったですね。援護に応えられなかったアメリカ投手陣はなんとか立て直したい所だと思います』

『なるほど! そういえばアメリカ代表の4番スチュアート選手はAMACHANと同じく北埼玉デッドボールの出身でしたね!』

『それどころか同じ学校の野球部ですよ、アンジーは』

 

 

 相方につけられたアナウンサーの言葉にそう返答をして、グラウンドで整列する選手たちに目を向ける。その中の一人。並んだ両チームでひときわ小柄な体躯なのにひときわ打ちまくった小さな巨人は、私の視線に気づいたのかちらっとこっちを見て、小さく手を振ってきた。

 

 ついに男子の方の国際大会にまで出るようになったか、アンジー。着々と女メジャーリーガーへの道を歩んでるなぁ。

 

 

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