【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい   作:ぱちぱち

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女子日本代表招集 2回目

 テレビのニュースでは五月病が話題に上がるようになったが、学生には別の意味で五月病を発症しそうなイベントがやってくる。そう、中間テストですね。

 

 コーちゃんもあすみちゃんもしっかり予習復習を行うタイプだから問題ないんだけど、我が幼馴染どもの長兄であるケーちゃんがね。お姉ちゃんは残念です。あれだけ勉強に付き合っているというのに、こんな簡単な問題も解けないなんて……!

 

 

「いやぁ。数学とか意味不っすよ」

 

「数学はね。公式を頭に叩き込めばそれを当てはめるだけで大体解けるように出来てるんだよ?」

 

「いや、この計算方式に関する感想とかありましたけど」

 

「それは先生の趣味でしょ。そこは未記入以外何かいても1点くれるんだから落としちゃだめだよ……」

 

 

 ケーちゃんの勉強に付き合ったり、最強ハラキリトルシニアで春季大会を蹂躙したりげいのーじんとして変なCMに出たりと忙しい日々を過ごしていると、あっという間に夏が間近にやってくる。今年も激動の夏が始まるなぁと思っていたら、女子代表からの招集が来た。

 

 あれ? 女子世界大会は来年の筈だけどなんだろう。

 

 

「お、リトルシニア選抜のMVPじゃん! おっひさ~」

 

「リリーナさんだ! おっひさしぶりでっす! M大どうです?」

 

「地獄!」

 

 

 集合場所に行ってみると、一年ぶりに顔を見たラテン系の大女が元気に手を振ってきた。他の人はまだ来てないみたいだね。うん、最年少が最遅刻って体育会系で一番気まずいルートは回避できたみたいだ。

 

 久しぶりに会ったついでに聞きたかったことを聞いてみたんだけど、リリーナさんが進学したM大女子野球部は非常に練習が厳しく毎日死にそうな目にあっている、とマシンガンのように愚痴が飛び出してきた。さすがはM大、女子でもそんなに厳しいんだなぁ。

 

 どういう練習をしてるのかを聞いてみたら、科学トレーニング半分根性論半分って感じらしい。米国式のトレーニングで成長してきたリリーナさんにはそこがもう信じられないのだとか。

 

 

「あとさあとさ! 明らかにあーしよりヘタクソなのにやたらとこうるさくてえらそーな奴が多い! いやあーしの練習見るよりお前が練習しろよって感じ!! F〇CK!!」

 

「F言語は不味いよリリーナさん」

 

「あ~。でも気持ち分かるわぁ……男子に色目使ってる奴とかなにしに野球部に入ったのって感じ」

 

 

 いつの間にか来ていた佐竹さんがリリーナさんの愚痴にうんうんと深く頷いていた。佐竹さんも今年で大学4年生。大学野球の先輩としてリリーナさんの言ってることに結構な共感を覚えてるみたいだ。

 

 まぁ典型的な日本人って見た目の佐竹さんとリリーナさんや僕の愚痴は若干違う気もするけどね。やっぱり見た目が違うって、結構大きなポイントというか。なんなら僕、あすみちゃんとトロ子ちゃん以外の同年代の女子野球選手とはほとんど付き合いないもんね。

 

 こないだ連絡先を交換した佐渡ヶ島選抜のかんなちゃんとかは連絡取り合ってるけど、まだ友達って呼べるほどの関係でもない。こんど東京に試合に来るときは会う予定だから、その時くらいに距離を詰めていきたいね!

 

 

「いや、あんたの場合は同年代の子らが気後れするでしょ」

 

「同年代女子にあまちゃんが居たら私もキツかったと思うわ」

 

「なんでだ! あんまり高圧的にならないようフレンドリーに徹してるはずなのに!」

 

「そういうとこも含めて怖いんだよあまちゃん。あまちゃんくらいの実績積んでたら普通高嶺の花なのにやたらフレンドリーじゃん。距離感わからんて」

 

「ぐぅ」

 

 

 佐竹さんの言葉にぐうの音も出なくなりそうだったので、精一杯の抵抗としてぐうと声を漏らしておく。こ、これで何も言えなくなったという不名誉な状態は脱した筈……!

 

 しかしそうか。僕、同年代の子に怖がられてるのかもしれないんだね……まぁリトルシニアにまで上がってくる女子選手は大体友達になれてるし、やっぱり男子に交じって野球してる有名人って先入観が悪さをしてるんだろう。いっしょに野球をすれば大体の人は友達になれるはずだから、今は距離がある同年代女子とだって一緒に野球をすれば仲良くなれる筈!

 

 忙しすぎてそんな時間はかけらもとれないけども。学校にリトルシニアに北埼玉デッドボール、更に更にげいのーじんとしてのお仕事も入るんだからスケジュールに余裕なんてありませんよ、ええ。

 

 そして今回の招集でそのキツキツの予定が更にアップアップになりそうだしね!

 

 

「大変ですねぇ、権藤さん。例の野球遊具のCM面白かったですよ」

 

「真久部監督! その発言はちょっと煽られてる感じがしますよ真久部監督!」

 

 

 先日撮影したGive me Zipとかいう野球遊具のCMは、ネット配信メインという物珍しさもあってか放送を開始してそれほど経ってないのにかなりの知名度を獲得しているみたいだ。

 

 そしてその遊具を見た誰も彼もが僕に「あれは練習器具じゃねぇ笑」ってメールを送ってくるんだよね。止めろよ、そんな正論パンチは聞きたくない! 聞きたくないんだ!

 

 

「さて、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。昨年は皆さまの尽力により世界大会を制覇することができました。大変喜ばしい成果です」

 

 

 そこまで言って真久部監督は皆を見回し、最後に僕に視線を固定して口を開く。

 

 

「しかし、成果を出したら次が求められるのが世の常であります。実は国際野球機構から要請があり、世界中で機運が高まっているマキュウブームにかこつけて、野球人気を獲得するために各国の代表チームと試合をしてほしいそうです。ええ、皆さんが言いたい事はわかります。分かりますが、ただで国外旅行に行けるチャンスくらいに思ってくれて構いません。あとは魔球のサンプルケースを増やすため毎試合魔球を投げてほしいと要望がありましたが…………権藤さん、できますよね?」

 

「あ、はい」

 

「良かった……本当に」

 

 

 不安そうな真久部監督の言葉に思わずそう答えると、真久部監督は心底といった様子で安堵のため息を吐いた。よっぽど言い含められてたんだろうと予測できる言い回し。というか完ぺきに僕を狙い撃ちにした要請じゃん。いや、僕としては望むところだけどね?

 

 というかこれ明らかに国際野球機構側が魔球の受け入れをどうするかで出てきた提案じゃないかな。去年の世界大会からそろそろ一年が経つけど、米国の超有名大学のすっごい博士たちでも原理が解明できなくて国際野球機構側も魔球に関する声明が出なくなってきてるし。世界各国で魔球を投げて実績を作れば今後も魔球を使える可能性が上がるかもしれないし、この練習試合で容認の方向に世論が進むなら僕としては断るって選択肢はない。

 

 それにこの条件ならまだ見ぬ強豪相手に! 毎試合投げられるって事じゃないか! 問題はリトルシニアの大会ともろに期間が被ってることとトロ子ちゃんくらいしか受けられるキャッチャーが居ないって所だけど……トロ子ちゃんはむしろバッチコイって感じで気合入れてるし、まま大丈夫だろう。

 

 ところでその練習試合って流石に夏休みですよね? 僕ら義務教育組は流石に……あ、もう根回しはすんでる? 仕事はやいですね……

 




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