【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい   作:ぱちぱち

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誤字修正、でぃせんと様、モルゲンスタイン様ありがとうございます!


台湾代表VS?

 台湾スイーツは最高でした。まる。

 

 

「さすがに他に言う事あるでしょ?」

 

「いやぁ、前回と違って観光できたのは良かったねぇ」

 

「そうじゃないんだよなぁ」

 

 

 ワールドツアー3国目。去年から含めると3度目の台湾の地にはなんと北埼玉デッドボールの皆様が現地で待っていた。そういえば金ちゃん監督が応援に来るとか言ってたよね。という訳で今日はいつものように金ちゃん監督と組んで試合実況と解説だ。

 

 試合をしているのは台湾代表チームと、なんと北埼玉デッドボールだ。アジア圏では抜群の知名度を誇る社会人野球チームに台湾の人たちも声援を送ってくれている。所属する一人としてはありがたい限りだね。

 

 なお、僕がお仕事をしている間も他の日本代表メンバーは台湾観光をしている。テレビカメラもないから今日はあっちは完全オフだ。羨ましいぞちくしょう! でも僕が居るところには基本カメラが来るから、僕のオフは物理的に無理なんだよね……人気者だからちくしょう!

 

 

「あ、芸人のバリバリさんが打った。センターとレフトの間に上手く落としましたね。最近スイングスピード上がってるし筋トレ頑張ってるみたいだなぁ」

 

「活躍したらその分目立つからねぇ。アイツは多分本業よりテレビに映ってるから。うち所属の芸人もなんだか普通の野球選手みたいになってきたね」

 

 

 社会人野球に所属する野球選手(本業芸人)だからね。アマでもかなり上の方でやってるんだからそりゃ真剣にやれば上手くなるでしょ。北埼玉デッドボールに参加してる芸人さんやげいのーじんさんはげいのーかいでも肉体派として有名になってきてるみたいで、SARUTOBIみたいな体力自慢が集まる企画なんかでも大活躍してるみたいだし、自分のキャリアに繋がってるから頑張ってるんだろうね。

 

 あ、ブーさんが打った。本当にいいバッターになったねブーさん。

 

 

「ところで僕らの会話は今台湾語に同時翻訳されてるわけだけど台湾の皆さんになにかお言葉ないの?」

 

「その事実を今はじめて聞かされたんですけど???」

 

「ほら、あまちゃんも外国向けの実況解説は初めてだろうし、緊張したりしないようにね」

 

「代表チームの実況解説ならもうちょい空気読んだんだよ! いつものノリでうちの選手弄り倒してただけになってるでしょ!?」

 

「あ。そうだねぇ、じゃあ向こうの選手の解説もお願い」

 

「いきなり!? えー、今ブーさんに打たれた恩投手は内外の出し入れが上手い人ですね。外に逃げる球を上手く使ってストレートを実際以上に良く見せるのが上手です。問題としてはこの出し入れに自信があるからか今のところこれを多用してしまってリードが読まれてる印象ですね。ブーさんはそこを狙い打ったみたいです」

 

「……台湾の皆さん、これが権藤あまねです」

 

 

 おかしいな。頑張って解説したのに金ちゃん監督が何故かどや顔で僕を指さしてるぞ。と、というか実況やるんなら事前に教えてよ! 相手チームが去年対戦した時とあんまり変わってないからまだよかったけど、知らないチームが相手だったらまともに解説なんてできないからね!?

 

 金ちゃん監督はそんな僕の抗議もどこ吹く風とばかりに流して、最終回になったら「ピッチャー交代、ゴンドー」を宣言した。途端に沸き上がる球場、覚悟を決めた表情のブーさん、お目目をキラキラさせる相手バッターという日本の市民球場みたいな情景がグラウンドに広がっていく。

 

 仕方ないなぁ。お約束を発動した以上、期待に応えなければげいのーじん足りえないからね。いつも以上に派手にやるよ、と視線でジェスチャーしたらブーさんが全力で首を横に振ってきて、その仕草に会場内が笑いに包まれていく。

 

 うん。うんうん。このチームに所属して2年目に突入したけど、やっぱりこのゲームの最後。幕引きのお仕事は楽しいね。

 

 

――というわけでガチャですよ女神様!

 

【はい、はい権藤あまねさん。女神は待ちわびていましたよ、一週間も!】

 

 

 灰色の世界で女神様に声をかけると、女神様はいつもよりも多めに期待を込めてか。頭上に浮かぶガラガラを握る手もかなり力強く握り込まれている。

 

 元の世界に戻り、最初の投球。これはもう決まってる。先日からこっち、新しい球種として認められた飛球シリーズだ。国際野球機構ではライズボールと判断されているコレは、現状まだ僕一人しか投げることが出来ていない。ただ原理的に他の魔球と違ってまだ説明できるから魔球扱いではないコレは、この夏に対戦したどの国の人にも好評だった。

 

 一球目はただ伸びる飛球ストレート。相手バッターはここからここまで跳ねたよ! とジェスチャーで伝えながら後ろの観客席に向かって叫んでいる。完全に手を出す気はないみたいだ。なら、まぁ安心だね。ブーさんの顔は真顔になってるけど。

 

 二球目は同じく飛球シリーズと見せての、エベレストフォーク。浮き上がり、ストライクゾーン内を通って急降下するこの球は見栄えが良いから〆に投げても喜ばれる球だ。相手バッターは同じようにジェスチャーでここからここまで落ちた! とアピールをして、観客席を盛り上げてくれる。あ、もしかしてそういう魂胆で打席に立ってる? それならそれでオッケーだね。

 

 さて、次だ。

 

 顔が死んでいるブーさんに向けて、僕が投じたボールは眩しいばかりの神聖な光を纏っていた。まるで天使が羽ばたいているかのように神々しく光りながら、ゆっくりとした動きでミットに向かって飛んでいく。打とうと思えば打てるだろうに、相手バッターは打席内で一歩後ずさり、そのボールを見送った。

 

 そしてそのボールを死んだ顔で受け止めたブーさんが光に包まれた。ボールを覆っていた神々しい光がブーさんを包み込むと、ブーさんの体に異変が起きたのだ。死んでいた目に活力がよぎり、全身の筋肉が膨張。膨れ上がった筋肉によりプロテクターが爆発するようにはじけ飛び、神々しいオーラを纏ったブーさんの肉体が露になる。

 

 

【魔球プロテイン! 神々しいオーラを纏ったボールを受け取ったことによりキャッチャーが強化され相手はその威風堂々とした姿に恐怖し死ぬ!】

 

――これ相手が打ったらどうなります?

 

【相手のバッターが強化されますね】

 

――永久封印でお願いします。

 

【な、なにゆえ!?】

 

 

 なにゆえじゃないんだよなぁ。相手に強化くれてどうするんだって話だよ。まぁ、相手側のバッターも完全にお客様モードだったからよかったけど。それに最終回でキャッチャーを超絶強化しても意味がないというかね。

 

 ま、まぁ良いか。最後のバッター相手にちゃんと三振取ったし、今日のお仕事は終了だね。そろそろお約束のアレ行ってみよう。

 

 

「スリーアウト! ゲームセットお疲れ様ー」

 

「「「いやいやIYAIYA!!」」」

 

 

 なんか金色のオーラ纏ってるブーさんに目がくぎ付けのまま、観衆と選手一同からのツッコミがグラウンドを飛び回る。うんうん、今日もいい仕事をしたなぁ!!




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