好奇心で首を突っ込んだら攻略難易度ルナティックの黒幕美少女に目を付けられた件   作:ああああああ

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第11話

「えーと、買い出しリストの最終確認をしますね」

 

クラスでも小動物っぽいで有名な女子生徒、真田の声が放課後の教室に響いた。語は、窓際の席からリストを見ながら唸るクラスメイトを眺めていた。文化祭まであと3週間。クラスの出し物である劇の準備は衣装や小道具を作る段階であり、今日はそのための資材調達、いわゆる買い出しに行く日だ。

 

「大道具用のベニヤ板と、小道具の材料、あとは衣装用の布が少し足りないんだっけ?」

 

よく斎藤大紀と一緒にいるクラスの女子生徒、伊藤舞が質問した。舞はクラスの中で影響力が強い生徒だ。結芽も有名な美少女だが、クラスの中心ではない。

 

「そうだね、ベニヤ板はサイズが大きいから男子にも来て欲しいかも。布は繊細な色合いが重要だから、舞にいて欲しい」

 

「はいはーい、任せて。大紀もいいよね?」

 

舞が、長い茶髪を揺らしながら気の抜けた返事をした。彼女は見た目こそ派手なギャルっぽいスタイルだが、面倒見が良く意外と細かい作業が得意だ。

 

「いいけど、もう少し人手が欲しいな。衣装は劇の主役が着るわけだから風見と朝凪さんもどう?」

 

斎藤は爽やかな笑顔で言った。彼の発言力は、男子の中ではかなり高かった。特に断る理由がないので語は了承する。

 

「いいぞ」

 

「私もいいですよ」

 

「じゃあ、まずはホームセンターから。レッツゴー!」

 

買い出しは、語と斎藤が大型資材を、舞と結芽が布と小道具というざっくりした分担になった。真田は、全体の確認である。ただ、道すがら歩く位置は結芽と語、それ以外という風になった。

 

「劇の台本は読まれましたか?」

 

「ああ、個性的だったな」

 

語は遠い目をする。それは劇のストーリーが原作と乖離していたからだ。あそこまで行くと、ほぼ別の作品。そう言いたかった。結芽も苦笑を浮かべ同意した。

 

まず時代背景が現代の日本だ。美貌と優しさを持つ女子高校生の白雪。彼女の悩みは、人気モデルで毒舌な継母の存在だった。彼女は毎日SNSで「世界で一番美しいのは私!」と承認欲求を満たしていたが、フォロワーからの「白雪ちゃんの方が可愛い」コメントにブチ切れ、白雪を激しくディスり始めた。

 

耐えられなくなった白雪は、幼馴染に助けられ家を飛び出し、古びたシェアハウスに逃げ込む。そこに住んでいたのは、個性豊かで年上の七人のルームメイトたち。白雪は持ち前の家庭力で彼らの荒れ放題の家をピカピカにし、ヘルシーな食事を作ってあげた。最初は警戒していた七人も、白雪の優しさにすっかり心を開き、「姫」として彼女を守ることを決意。

 

しかし、継母は変装アプリや怪しいサプリ業者を装って白雪に接近した。そして、リンゴではなく、激マズ・スムージーを差し出し、白雪は倒れる。話を聞きつけた幼馴染がなんやかんやキスをしてハッピーエンドで終わりだ。

 

白雪は結芽の役であり、最後にキスするのかどうしようと語は溜息を吐いたが、そもそものストーリーがカオスである。

 

「これ考えたの伊藤だろ」

 

自分の名前が出たからか、前を歩く伊藤が振り返る。

 

「え?風見っち呼んだ?」

 

「劇の台本って誰が書いたか知っているか?」

 

「それあたしと演劇部で書いたんだー!すごくない!?」

 

「………ああ、個性的でユニークな台本だな」

 

「個性的とユニークは同じですよ、語君」

 

「黙れ、日本語と英語だから同じではない」

 

「びっくりするほど、バカな返しですね」

 

「喧嘩は買うぞ、朝凪」

 

そんな二人を眺める斎藤、舞、真田は顔を見合わせる。

 

「ねーねー、気になってんだけど、ぶっちゃけ聞いていい?」

 

「どうぞ」

 

結芽が頷く。

 

「二人は付き合ってんの?仲いいよね」

 

真田は顔を背け耳を傾けつつ、距離を取った。斎藤はイケメンスマイルで答えを待っている。舞は好奇心に完全に身を任せたことを少しだけ後悔した。

 

結芽の表情から誰も感情を読み取れないからだ。

 

「付き合ってないぞ」

 

語は明確な答えを出した。それは紛れもない事実だからだ。あと、沈黙に殺されそうだっから。

 

軽い笑みとともに放たれたその言葉に、舞が「そっかー」と頷いて笑う。それ以上、誰も深くは突っ込まない。

 

沈黙に耐えかねた真田が、視線を明後日の方向に流す。そして、一言つぶやいた。

 

「あ、つきました」

 

 

 

 

 

先に買い出しを終えた語と斎藤は、自販機前でまだ会計を済ませていない女子組を待っていた。語は買ったばかりの麦茶のペットボトルを開け、ごくりと喉を鳴らす。

 

「ベニヤ板って意外と重いな。俺、斎藤とは違うからこういう重たいもの持つの得意じゃない」

 

斎藤は炭酸飲料の缶を片手に、壁にもたれかかる。

 

「僕も得意じゃないよ。サッカー部ってそんなに筋トレしてないから」

 

「いやいや、俺なんてスマホより重いものは持てないぞ」

 

「現代っ子だね」

 

斎藤は苦笑している。語のボケは通じなかったようだ。

 

「でも筋トレしておいて損はないかもね。隣町、また少し物騒らしいよ」

 

「ヤクザがどうとかって噂だろ?」

 

「うん、うちの母さんが言ってた。最近ニュースにならないだけで、ちょっと前にドンパチがあったらしい」

 

斎藤は缶のプルタブをカチカチと弄ぶ。

 

「へえ。親が警察官なんだよな?」

 

「そうだよ、僕は警察官になる気はないけど勧めてきて面倒なんだ」

 

「中学の頃の将来の夢は警察官じゃなかったっけ?」

 

「中学一年生の時の授業で書かされた調査用紙?よく覚えているね?」

 

語と斎藤は同じ中学だった。ただし、二人ともほとんど接点はなかったが。

 

「お前は目立ってたからな」

 

「停学になりかけていた語がそれを言うのかよ」

 

斎藤は少し呆れたような声色だ。

 

対する語は物理的に耳を塞ぎ、人の黒歴史を晒すなと非難する。意に介さず、斎藤は目線を合わせず遠くを見る。

 

「僕なんかと違ってさ、語みたいな人の方が向いていると思うんだ」

 

「危ない仕事なんてやりたくないな。それに斎藤みたいに周囲とうまくやれるタイプの方がやっぱり向いていると思うぞ?」

 

「コミュ力は経験次第で最低限は取り繕えるよ。僕以上に得意な人は多いし、一番大事なものが僕には不足してる」

 

「大事なもの、ね。推理力的な?」

 

「いざって時に周りに流されず動けるかどうか、かな。僕は…派手でコミュニケーションが少し得意なだけだから」

 

そう言って笑う斎藤の顔は、なぜか少しだけ引きつっているように見えた。語は言葉を探したが、特に返す言葉も見つからず壁にもたれかかる。

 

「………なあ、斎藤。楽しい話しようぜ」

 

「そうだね………胸と尻どっちが好き?」

 

「楽しい話っていうか猥談じゃん。修学旅行まで取っとけよ」

 

「僕は胸が好きで尻は大好きだ」

 

「無視して続けるのか…」

 

高校生としてはオーソドックスな会話ではある。

 

「俺は顔かな」

 

「語って意外とそういうこと言うよな」

 

「男子高校生だからな。みんなこんなもんだろ」

 

「顔で言えば、うちのクラスでは朝凪さんか舞とか?」

 

「ノーコメント」

 

相変わらず返す言葉が見つからずただ麦茶を一口飲んだ。遠くから他のメンバーが呼ぶ声が聞こえる。

 

「あ、終わったってさ。続きは修学旅行だね」

 

斎藤が先に立ち上がり、会計を終えた面々の方へ向かっていった。

 

 

 

 

 

事件は、文化祭1週間前に放課後の教室で起こった。生徒のほとんどは足早に帰路につき、教室に残っていたのは、語と結芽、木坂に数人の生徒だけだった。その中に、斎藤と真田と例の呪い水の噂を笑い飛ばしていた男子生徒、藤井がいた。

 

真田は舞たちのグループに所属しているが、普段はおとなしい女子生徒だ。コミュ力はあるが、どちらかといえば小動物系の女子生徒だ。しかし最近は様子がおかしかった。おとなしいというより、挙動不審。顔色が悪くいつも誰かに怯えているように見える。そんな彼女が藤井に話しかけるのを見て何人か少し驚いた。

 

「ねえ、藤井くん。これよかったら飲まない?」

 

そう言って真田が差し出したのはプラスチックのボトルだ。よくスーパーなどに置いてある水筒である。

 

中には、底に少しだけ水が残っている。

 

「なんだよ、それ」

 

藤井は不審そうな顔をしたが、真田は少しどもりながらも続けた。

 

「昨日舞たちと呪い水を作ったんだ。みんなで泊まって遊んでたから盛り上がって作ったんだけど、結局誰も飲まなくて、藤井君SNSに挙げたいって言ってたから」

 

「はっ、なんだよ?ビビってんのか?馬鹿馬鹿しい。そんなもん信じるかよ」

 

藤井は笑いながらペットボトルを受け取り、動画を撮影し始める。呪い水は罪人を罰するとされる都市伝説。飲んで体調を崩さなければ罪人ではないということで、それを飲み干すチャレンジが流行っていた。

 

「巷で流行の呪い水シリーズ始めまーすw余裕っしょ」

 

彼が一口飲もうとした。その瞬間、真田が紙コップの束を目の前に置いた。

 

「お腹壊すと危ないし、全部は飲まない方がいいかも」

 

「おい、いいもんあるじゃねえか!せっかくだからみんなで飲もうぜ。呪いがどうなるか面白そうじゃん」

 

藤井の言葉に、彼の友人が面白がって集まってきた。

 

藤井はそう言って、その水を紙コップに注ぎ始めた。最初に、自分の分を注ぎ次に彼の友人たち、そして最後に真田の分まで注いだ。

 

藤井は真田の分も渡すと、満面の笑みで言った。

 

「ほら、真田も。お前が持ってきてくれたんだから、ちゃんと飲まねーと」

 

真田は震える手で紙コップを受け取った。

 

「じゃあ、いくぞ!」

 

藤井がそう言って、紙コップを掲げた。彼の友人たちもそれに倣った。そして、全員が同時にその水を飲み干した。

 

それを見届けてから真田はスナック菓子を配り始めた。塩辛で有名なお菓子である。

 

「あ、気が利くじゃん」

 

周囲はそれを受け取るが、彼は断った。

 

「俺、今口内炎があって染みるんだよな」

 

その言葉を聞いてから真田は、邪悪な笑みを浮かべていた。

 

その翌日、藤井は病院に運ばれた。理由は不明だが、ひどい腹痛と嘔吐、そして全身の発疹が出たのだという。病院の診断は原因不明であり、数日間寝込んで様子見のため追加で数週間の入院が決定したのだった。

 

噂は一気に広まった。なぜなら彼以外の生徒は誰も体調を崩さなかったからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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