好奇心で首を突っ込んだら攻略難易度ルナティックの黒幕美少女に目を付けられた件 作:ああああああ
事件の真相が気になった語は、知り合いの伝手を頼り演劇部の部室に来ていた。
部室の中には、演劇部の数人の部員がおり、彼らは一様に疲れたような顔をして、今回の件について話し合っているようだった。語は演劇部の部長、高橋に声をかける。
「高橋先輩、少しお伺いしてもいいですか?」
語が切り出すと、高橋は少し驚いた顔でこちらを見た。彼とは面識があり、高橋の彼女と語が同じ部活なのだ。
「ああ、君は玲奈の後輩の……カタリくんだったかな?玲奈から聞いているよ。何か聞きたいことでも?」
高橋先輩の声には、まだ事件の動揺が残っているようだった。語は単刀直入に尋ねる。
「はい。先日の劇、面白かったです、だけど一つだけ気になることがありまして。あれは本当に演劇の演出だったんですか?僕には、どうもそうは思えなくて」
語の言葉に、高橋はため息をついた。
「正直なところ俺も困惑しているんだ。あの花火は、演出で使う予定だったものとは全く違うものだった。もっと火花が散る程度の安全なものを用意していたはずなんだが…」
高橋先輩は顎に手を当て、考え込むように続けた。
「あの花火は、火薬の量が明らかに多かった。それに、客席に向かって飛ぶように仕掛けられていたとしか思えない。誰かが意図的にやったんだろうな。演劇部に恨みのあるやつか………あの劇が失敗して喜ぶ奴」
「当日、花火の準備に関わっていた人って誰がいたんですか?」
語はさらに踏み込み、聞きこむ。
「部員を疑っているのか?君にそこまで話す義理が………」
「あの花火で一緒に来ていた妹がやけどをしました。軽度ですが、事情を知っておきたいです」
そう言うと、高橋は黙り込み腕を組んだ。真っ赤な嘘だが、無視はできない。そういう発言だった。
「主に小道具を担当していたのは、3年生の佐藤と2年生の木下。あとは、そこに座っている1年生の……田中だ。彼女も手伝っていた」
高橋の後ろには動揺を露にした女子生徒が座っていた。
彼女を見て、語の脳裏に、あの時舞台袖で見た女子生徒の姿が鮮明に蘇える。語は、感謝を述べ部室を後にした。外に出ると、日が傾いている。赤く染まる廊下を見てその名前を口にした。
「田中、ね」
知人の浮気は見ててきつい
1:イッチ
はい
2:名無しのパンピー転生者
うん
3:名無しのパンピー転生者
………うん
4:名無しのパンピー転生者
くそ
5:名無しのパンピー転生者
あー
6:名無しのパンピー転生者
はいじゃないが?
7:イッチ
びっくりした。最近行きつけのカフェの店主が浮気をしてて、まさか名字が田中だとは。娘がいるって?演劇部だって?絶対関係者じゃん。
8:名無しのパンピー転生者
闇が深い
9:イッチ
知りたくなかった。知り合いの浮気事情とか。10歳年下の女だし。これあいつ知ってんのかな?朝凪が噛んでるんか?教えて
10:名無しのパンピー転生者
完全にやってて草
11:名無しのパンピー転生者
何で?
12:イッチ
原作あるなら情報くれんか?マジで目的が見えない
13:名無しのパンピー転生者
へーき、へーき。主人公が来るまでの耐久だし、大丈夫やろ。原作だと犯行に気が付いた警官が消される描写があるけど、まだ起きてないから。ルート次第だから!
14:名無しのパンピー転生者
大丈夫か、それ
15:名無しのパンピー転生者
悪役が過ぎる
16:イッチ
このカフェ、朝凪に教えてもらったんや。仕組まれてる?
17:イッチ
安心できないんだよな。学校では確かに関わってこないけど、家に来た実績をスルーできない。
18:名無しのパンピー転生者
邪悪や
19:名無しのパンピー転生者
>>12 印象的な悪役シーンは一個だけ。生徒会が校則変更の会議をする時、反対した生徒を脅して、全員賛成でうれしいよのシーンは悪役過ぎだ
20:名無しのパンピー転生者
第二体育館を燃やしてその罪を後輩に着せたやつとか、色々ある
21:名無しのパンピー転生者
>>12 とある先輩に頭が何故か上がらず、ぐぬぬってなる
22:名無しのパンピー転生者
私服が可愛い
23:名無しのパンピー転生者
因縁つけてきた生徒の飯に下剤を盛ってその隙に事件を誘発させ、アリバイを潰したとか
24:名無しのパンピー転生者
人気だけど、マイナーなギャルゲーだからわからん
25:名無しのパンピー転生者
殺人事件を誘発させて、治安を悪化させたラスボス
26:名無しのパンピー転生者
基本自分の手は汚さない
27:名無しのパンピー転生者
内面の掘り下げはあるけど、ネタバレは控えます
28:名無しのパンピー転生者
髪の毛に自信あり。褒めると好感度が上がるはず
29:名無しのパンピー転生者
手が冷たい
30:名無しのパンピー転生者
負けず嫌い、浮気判定がきつい
31:名無しのパンピー転生者
追うより追われる方が好きだけど追うのも悪くない。追いついたら弄んで壊すタイプ
32:名無しのパンピー転生者
結論はやべー女
語はとあるカフェに結芽を呼び出した。二人が入店したことで内部は満席になった。目で数えると、席数は10席だ。若者向けの店なのかと思っていたが、実際の客層は幅広い。二人連れが多いが、いちばん賑やかなテーブルは4人連れで、一人客もちらほらといる。
「意外ですね。君がこんな洒落たカフェを知っているとは」
「一言余計だ」
落ち着いて店内を見渡すと、しつらえはモノトーンを基調にしていて飾り気がなく、どことなくメルヘンチックな外装に対して、内装はシックな感じがした。ショーケースの向こうはガラス壁になっている。
「それで?何が聞きたいのでしょうか?」
「答え合わせだ」
そう言うと結芽は微笑んで、長い黒髪を揺らしながらこくりと頷いた。自分が答えを知っているという決めつけを肯定した。
「………犯行方法は想像の域を出ないが証拠は見つけた」
「話してみてください」
「犯人は小道具係の田中だ。外部犯じゃない」
「何故?」
「………これは推理とは呼べないこじつけだ。それでも聞くか?」
「………」
無言でニコリと笑う結芽。語はコーヒーを頼んで足を組む。
「まずあの花火が発射された時、拭いきれない違和感があったんだ」
結芽は先に頼んだケーキにフォークを差し込む。
「あの時飛び出した花火は一発を除き全部左右の壁に発射されていた。間違っても観客に危害が加わらないようにしてあったんだ」
そうでなければ大きな騒ぎになっていた。
「だけど、一発だけは違った。明確に俺たちの頭上を越えて一人の観客を狙ったようにさえ思えた。偶然と思えなかったから、仮説を立てた。目的は特定の誰かを狙うものだと」
「その一人とは?」
「名前はわからない。だけど、とある女生徒とよく似た顔だと気が付いた。そもそも、あの場所には基本的に学校関係者と保護者、生徒の友人しかいない。大人であれば、前者だ」
辿り着いたのは偶然だった。
「小道具係の田中とよく似た顔だった」
「………随分と女性の顔を覚えるのが得意なようで」
「脱線した。特定の誰かを狙った花火だとすれば準備が必要だ」
結芽の茶々をスルーして続ける。
「花火をピンポイントに当てるためには動作確認を行う必要がある。しかし、それを見られるわけにはいかないはずだ。だから、一人でホールを訪れることになる。案の定、段取りの最終確認で下見に来たやつがいた。受付と守衛に聞けば一発でだった」
「なるほど、それが田中さんだと…」
推測に穴があり、裏付けが薄い。だけど、田中が罪悪感を抱いていたことは、転生特典で見えていた。
「証拠っていうのは休日に一人で会場の下見に来ていた記録のことだ。ちなみに、外部犯を切り捨てた理由は、単純な話、小道具に触れるやつは運営と演劇部内だけだからだ。花火は劇の終盤の要で小道具係が何度も確認していたと高橋部長が言っていた。だから、絵演出用の花火を他の花火に入れ換えるなら劇の最中。これは外部の人間には難しい」
別の花火を持ち込んだ方法は、想像だが中身を事前に入れ替えたのだろう。持ち込む上で、演出用の安全な花火が入った箱の中から、複数の安全な花火を抜き取り、その分だけ本物の花火を補充した。見た目の変化を最小限に抑えるため、花火のサイズや形状が似たものを選べば不可能じゃない。
「わからないのはやはり動機だ。何せ、推測できるそれらしい情報がない。だから、これはただの想像に過ぎない。まさしく言いがかりだ」
「………それにしては自信がありそうですね?」
「………高橋部長曰く、今回は普段は目立たない田中が、他の奴らを押しのけて 脚本を書いたそうだ。これはお前も知ってるはずだ」
「ええ、田中さんに招待されましたから」
「何故今回、名乗りを上げたのか。脚本を作ったこと自体に意味があるのか、それとも脚本の内容自体に意味があったのか。演出にもかなり口を出したらしい。だからおそらく、後者なんだろう。この物語自体に固執する必要があった?こう仮定すれば筋は通る」
田中が犯人であることは確信がある。
「ならこの脚本にはどんな意味があるのか?題材は浮気。そして偶然にも田中の母親が父親と離婚し、新しいパートナーがいると聞いた。だからこそ、これは母親に対しての批判なんじゃないか?」
そうだとすれば辻褄が合う。あの時発射された花火のうち 他の花火は全てあらぬ方向に散ったのにもかかわらず1つだけピンポイントに客席に飛んだのがある。狙われていたのは田中の母親だった。
沈黙がその場を支配する。ジャズのBGMと他の客の会話だけが空間を満たしていた。
「答え合わせをしたい、ということであれば私ではなく田中さんに問うべきではありませんか?」
「他人の領域に土足で踏み込めるほど、証拠も熱もない」
その言葉を聞き、結芽は感情の読めない目で彼を眺める。そして、ゆっくりと外を見た。
「前回と違って、今回は君が言う通り推理とは呼べないものでしたけれど正解ですよ」
視線を彼に戻して一つの疑問を投げかける。
「その上で1つ質問をしましょう。何故、花火を使ったのだと思いますか?たまたまということもあるでしょう。しかし、意味があるとすれば一体それは何でしょうか?」
「注目を集める手段として有用で安価だったから?」
彼にはその位しか思いつかなかった。しかし、目の前の少女は確信を持っているように見えた。
「フフ、劇の中で浮気をされた奥方が零していましたよね。花火は終わりの象徴でもあると」
ああ、確かに言っていたなと語は思った。
「花火は、何かのお祝いや祭りの最後に打ち上げられることが多いですが、裏を返せば終わりを告げる象徴とも捉えられます。彼女は、母親の再婚によって父親との過去や家族の形が終わってしまうと感じているのかもしれません。劇のクライマックスという象徴的な瞬間に重ね合わせ、強烈な印象を与えることで、母親に無言のメッセージを送ろうとしたのではないでしょうか」
「………」
「『お母さんの新しい人生は、私たち家族の終わりを意味するんだ』というように」
「感傷的だな」
「私も乙女なのです」
胸の前で両手の指を組み、微笑を向けてきた結芽にもう一つ気になっていたことを問う。
「で?どこまで知っていたんだ?俺を連れ出したんだからここまでは予測通りなんだろ?事件のトリック含めて首謀者か?」
結芽は不服そうな顔をした後、頬を膨らませ拗ねたようにそっぽを向く。
「私は背中を押しただけです。こんなつまらない事件は起こしません」
「全部田中の独断?」
「いつか見た推理小説のトリックを教えました。ですが、動機から実行まですべて彼女の独力ですよ。私は家庭内の相談を受けただけです」
そう言うと、結芽は席を立った。外を見ると日が落ちかけており、夜の気配が迫ってきていた。
「そろそろ店を出ましょう」
「ちょっと待て。まだ俺の質問の答えを聞いていないぞ。俺を連れ出した目的は何だ?」
「アハッ」
口角を上げた少女が振り返る。直後、右腕にするりと腕が巻き付き、ぎょっとして振り返る。すると、息が掛かりそうな距離に愉しそうな表情をした結芽の顔があって、再度ぎょっとした。反射的にのけ反るも、腕をガッチリ抱かれているせいであまり意味はない。
「………私も君を暴いてみようかと思いまして」
目の前には、芸能界でもなかなか見ないレベルの美少女の顔。しかし、恐怖が勝った。
「あっそう。それで?俺をわかったか?」
「少しだけ。可哀想な女の子に同情しつつも真実を暴いて満足することがわかりました」
右腕はしっかりと結芽に搦めとられており、二の腕辺りには胸の感触までしっかりと伝わってくる。だというのに………彼の心臓を跳ね上げたのは青少年の健全な衝動ではなく、生物としての純粋な危機感だった。
「悪意がある言い方だ。俺は万能じゃない。目についた奴を助けるなんてヒーローにはなれない」
「では言い方を変えましょう。他人に踏み込むことを避けたように見えました」
とびっきりの美少女に腕を抱かれているというのに、気分はさながら猛獣に組み付かれた飼育員だった。体が熱くなるどころか、スーッと冷たくなっていく。そのくせ背中の汗がすごい。
「………」
「わかっていたのでしょう?知っていたはずです。私が教えたカフェに行けば、離婚の話に行きつき、そしてその原因は父親にあることを知るはず」
「ッ!それは…」
「君はそれとなく伝えることができた。だけどしなかった。今回の推理も暴くだけ暴いて何もしない。誤解なさらないでくださいね?これはただの分析ですから」
そう言って語から離れると結芽は店を後にした。
テーブルに残っていたコーヒーを飲み干すと、一言感情を零した。
「苦いな」