好奇心で首を突っ込んだら攻略難易度ルナティックの黒幕美少女に目を付けられた件   作:ああああああ

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感想、評価ありがとうございます。
一旦、輝夜編は区切りです。そのうち、メイン回が来ます。


第9話

放課後、語は輝夜に一つ提案をした。

 

「金曜日だし遅くなっても問題ないから輝夜の家で勉強会をしないか?」

 

語から申し入れを受け、目を見開いた輝夜だったが二つ返事でそれを引き受け、現在輝夜と語は輝夜の部屋で教科書を開いていた。

 

「アタシの部屋に入った感想はどーおですか?」

 

「リビングよりよっぽど居心地がいい。あの写真立てがない分、よほどましだ」

 

「うわー、踏み込んでくるじゃん」

 

感情を抑えた声が語の鼓膜を震わせる。一刻も早く本題を切り出したかった。踏み込んでこられるのを怖がった輝夜の牽制をすべて無視する。

 

「一昨日の花瓶が割れた事故で、やっとわかった」

 

「へー、知りたがりの語は何を知ったのかな?」

 

「お前が『理想の娘』であることを」

 

輝夜の表情が無から強張りへと変わっていく。それもそもはず。語は、あえて核心を突くような言葉を選んだのだ。

 

「………」

 

語は、まっすぐに輝夜の目を見つめた。輝夜は、語の視線から逃れるようにわずかに顔を逸らした。

 

「花瓶を割ったのはお前だろ?ただ、理想の娘《月歌輝夜》は不祥事を起こさない。そんなミスを起こせば、理想の娘ではなくなる。だから、擦り付けた」

 

「………」

 

「否定しないんだな」

 

「意味ないでしょ」

 

輝夜はそう吐き捨てた。

 

「確信を覚えたのはお前の家に行った時だ。エリートの父親と母親に育てられた。愛されなかったわけじゃない。だけど、父親にとってお前は自分の人生を彩るトロフィーでしかない」

 

下を向いていた輝夜は視線を上げて瞳に激情を溜めている。あまりにも脆い激情を。

 

「知ったような口を聞くじゃん?」

 

「これだけ推測材料があれば、誰でもわかる。理想の娘であれと言われて育ったんじゃないか?そうすれば父親に褒められた。それが嬉しくて理想を演じ続けていたんだろ?」

 

輝夜のお見舞いで父親と出会った日に、転生特典を使用した。故にこれはズルであり推理ではないが、確定情報を一つ得ていた。それは父親からの輝夜への感情と、輝夜から父親への感情だ。答えから逆算する形で、理由を推測したのだ。

 

「普通のことでしょ、褒められて嬉しいなんて」

 

彼女の声は、どこか自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

 

「最初はお前がカフェで言った通り、自分の感情がわからなくなっているだけだと思っていた。理想の娘を演じて、自分を偽り、感情を抑えたから、人に共感できなくなったのだと。だけど、違った」

 

「違う………アタシは自分の本音がわからないし共感もできない」

 

輝夜は頭をぐしゃぐしゃと掻きながら首を横にイヤイヤと振る。

 

「本当にそう思ってるか?お前は他人に共感できないんじゃない。それが自分の本音である確信を持てないわけじゃない」

 

語はさらに踏み込んだ。語は、推測を口にした。幼い頃から「理想の娘」として、感情を殺して生きてきた輝夜の姿を想像した。

 

語は、輝夜が抱える孤独と彼女が「理想の娘」として生きるために払ってきた代償、その秘密を暴くことが正しいとは思わない。そして、そこに踏み込んで荒らす度胸も理由もない。しかし、はっきりはさせるべきだと確信している。

 

知らないことは何よりも恐ろしいと語は知っているから。

 

「月歌は本当の自分を表に出すのが怖いんだ。理想の娘である、それこそが自分の価値だと思っている。学校でも家でも、理想の娘である輝夜を演じてきたから。自分の感情や振る舞いに自信が持てないけど、そのことで思い悩むのが怖いから不感症の振りで無表情を貫いているんだ!元々自分に感情など、願望などないと思いたかった!」

 

「…アタシ」

 

「感情を押し殺し、共感を失った自分を演じることで、本音と向き合うことを避けた。理想の娘月歌輝夜こそ正解の生き方だと教わったから。これが月歌輝夜という女だ!」

 

語の言葉は容赦なかった。輝夜は沈黙した。初めて、彼女の言葉が途切れた。

 

「お前の人生はこれと一緒だな」

 

語は一枚のテスト用紙を取り出した。それは輝夜の小テスト用紙。名前を書き忘れたものだ。

 

「このテストの解答用紙には模範解答が並べられている。万人が見ても納得する正解で、だから丸しかついていない。だけど、一か所だけ致命傷がある。名前がないんだ。100点だけど、誰のものかわからない」

 

「………」

 

「満点だけど0点。お前の生き方と同じだ。期待通りの理想の娘。都合のいい装飾品であり、人形。今のお前には名前がない」

 

「ッ」

 

ようやく、理想の娘、という仮面に罅が入り大きな闇が這い出る。

 

「わかってるよ」

 

その表情はどう形容すればいいのか。冷たい微熱を帯びたそんな感じだった。

 

「でもこうしないと愛されないから……望まれたから、いい子にすれば抱きしめてもらえるんだから、それでいいじゃん……?」

 

声が震えだす。

 

「理想の娘を演じることも辛いけど、今更本当の自分なんて怖くて出せないよ!だって、これまでずっとそうやってきたんだから!月歌輝夜を演じてきたんだから!毎日生きてるはずなのに楽しいことも嬉しいことも全部他人事みたい、求められたように笑って、泣いて、怒って、どんどん自分が欠けていくのもわかってる!怖いよ!でもそれ以上に今を壊すのが怖いの!」

 

「なら何で俺に声を掛けたんだ?」

 

「わかんないよ!私もわからないし、他人も私をわからない!!!!!」

 

自分の腕をもう片方の腕で抱いた輝夜を見て、語は認識が甘かったと悟る。自分が思うよりもこの少女は壊れているし、自分が想定しているよりも自覚的だった。

 

「お前は誰かに現状を変えて欲しかったんじゃないのか?お前は月歌輝夜じゃなくて、一人の高校生である輝夜を見て欲しかったんだろ!?違うのかよ!ここで不感症決め込んだって無理だぞ!仮面は壊れてんだ!答え(本音)を吐き出せ!輝夜!!!!!」

 

「あ、アタシは、でもやっぱり今更できないよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

300:イッチ

出ていかれちゃった

 

301:名無しのパンピー転生者

 

302:名無しのパンピー転生者

残当や

 

303:イッチ

反省はしてます。もう少し遠回しに確認する予定でした。仮面が固くてやりすぎた

 

304:名無しのパンピー転生者

反省しろ

 

305:名無しのパンピー転生者

反省してるか?

 

306:名無しのパンピー転生者

つーか!追いかけなよ!

 

307:イッチ

掛ける言葉がわからん。安い言葉をかける無責任はできん

 

308:名無しのパンピー転生者

罪悪感ない?

 

309:イッチ

本音を暴いてすいません?

 

310:名無しのパンピー転生者

傷つけた無責任はどうなる?

 

311:名無しのパンピー転生者

やはり罪の意識よ

 

312:イッチ

>>307 助けるなら寄り添えるやつ。つまり、木坂!彼に連絡する

 

313:名無しのパンピー転生者

あ゛?

 

314:名無しのパンピー転生者

 

315:名無しのパンピー転生者

あー、人の心がないよな。探偵は

 

316:名無しのパンピー転生者

救いを求める女を見捨てはしないけど、関わりたくない?

 

317:名無しのパンピー転生者

どうして?謝って当たり障りのないアドバイスして終わりやん

 

318:名無しのパンピー転生者

お前、罪悪感はないんか

 

319:名無しのパンピー転生者

これを機に弱みに漬け込んで攻略?

 

320:名無しのパンピー転生者

俺が導いてやる!そばにいてやる!で解決

 

321:名無しのパンピー転生者

人の心

 

322:イッチ

>>317 できるわけないだろ!当たり障りのないアドバイスで、さらに傷つけていいことしましたアピール?自慰行為じゃねえか

 

323:名無しのパンピー転生者

でも引き金はイッチやな

 

324:名無しのパンピー転生者

暴きたがりのイカれ探偵!

 

325:名無しのパンピー転生者

わからなくはないが、でもなあ。最低限の謝罪はしよう

 

326:名無しのパンピー転生者

ごめんは大事

 

327:イッチ

>>326 わかった。追いかけます………あ゛

 

328:名無しのパンピー転生者

相変わらずやなー

 

329:名無しのパンピー転生者

どうした?

 

330:名無しのパンピー転生者

挨拶、謝罪は大事!古事記にも記してある

 

331:名無しのパンピー転生者

でも引き金はイッチやん

 

332:名無しのパンピー転生者

いいから謝罪しろ

 

333:イッチ

朝凪結芽さんから電話

 

334:名無しのパンピー転生者

うわー

 

335:名無しのパンピー転生者

何で?

 

336:名無しのパンピー転生者

盗聴している?

 

337:名無しのパンピー転生者

怖いわ

 

338:イッチ

要約

朝凪「問題を突き付けられた時、人はそれを解決するために動く。可能であればよし、不可能であればアプローチが変わる。最終的には投げ出すかもしれないですし、解消するかもしれませんね。ですけど、君なら第三の選択肢を取れますよね?」

 

何で今の状況を把握しているんですか?盗聴してる? (ボブは訝しんだ)

 

339:名無しのパンピー転生者

もうこれ未来見えてるだろ

 

340:イッチ

原作プレイヤーさん、もしかしてタイムリープ系ですか

 

341:名無しのパンピー転生者

 

342:名無しのパンピー転生者

何があったんや

 

343:名無しのパンピー転生者

>>340 そんな設定はありません。基本的に現実準拠です

 

344:イッチ

第三の選択肢、わかるけどやりたくねえ

 

345:名無しのパンピー転生者

現実に黒幕系女子高生がいるの怖い

 

346:名無しのパンピー転生者

>>338 そうはならんやろ

 

 

 

 

 

少し離れた歩道を輝夜は歩いていた。

 

夕暮れを通りすぎ夜が顔を出している。暗くなった輝夜の足元を行き交う車のヘッドライトが走る。

 

語は走って追いつくと輝夜の隣に並んだ。

 

「意外。追いかけてくるんだ?」スマホのバックライトに照らされた顔色はひどく青ざめているように見えた。

 

語は必死に言葉を探す。

 

長い沈黙が降りる。語も輝夜も何も口に出さない。否、出せなかった。語の推測は誤りとは言えない。輝夜は現状を打破するために、彼に絡んでいた。これは正しい。しかし、輝夜には現状を変える準備ができていなかった。心構えと言い換えてもいい、その覚悟を輝夜は持ち合わせていない。何年も動かさなかったその足は固まってしまっていた。

 

語にはその沈黙がとても長く感じられてだから前置きを止めることにした。強引に輝夜のその手を握る。

 

「月歌は国内旅行って好きか?」

 

発言と行動が理解できず、輝夜は本気で困惑した。だが、驚愕で顔を上げた輝夜の視線は確実に交差した。

 

「嫌いじゃないけど………」

 

「旅先であった人の中で交流が続いている人間っているか?」

 

困惑を無視して続ける。

 

「いない、と思う」

 

「だろ?将来的に見れば会うかもしれないけど、それはコミュニティを選べば限りなくゼロにできる」

 

「何が言いたいの?アタシ、結芽じゃないからわかんないんだけど」

 

「本音が出せないなら、自分がどう思われるか不安なら実験して来いよ。もう二度と関わらない使い捨ての人間関係を作って」

 

そこで言わんとすることを何となく察した輝夜は呆れ顔をした。

 

「いや、無茶苦茶すぎ―――」

 

「不可能だとは思わないぞ。お前の家は外泊に厳しいか?例えば、ボランティア活動で一週間九州に行くとか、語学留学で短期間別の国で試すとか、方法は色々あるが、確実に言えることがある。結論を出すのは早すぎるし短絡すぎる。今更できない?今だからできることがあるだろ?お前はあの父親の保護下でありながら自由でもあるんだ」

 

結芽の言う第三の選択肢とは、『問題の先延ばし』だ。解決、解消でもなく放り投げるわけでもなく、決断と結論を未来に託す。容易で苦しい方法。だが、これで解決するケースもある。輝夜に該当するとはあまり思えないが、自身に掛けられる言葉はこれしかないと思った。

 

「………」

 

「月歌の苦悩はお前にしかわからない。だけどどうせ絶望するのなら、最も被害の少ない環境で一回試してみればいい」

 

「………風邪、引きそう。一旦家戻らない?」

 

彼女が西へと視線を向ける。輝夜の言う通り確実に西の空は完全に光を落とし、代わりに街灯が雨と両者を照らし出していた。

 

 

 

 

 

窓の外では雨が降っている。叩きつけるような激しい雨脚が、時折、店内の静けさを破って響く。結芽はスマホをレストランの机の上に置いた。冷たくなった画面に、自分の表情がぼんやりと映っている。無言で数秒、その顔を見つめそっと指でなぞった。

 

テーブルの向こう側で、長い髪を揺らしながら女が言った。

 

「電話、終わった?」

 

長い黒髪に青いインナーカラーを入れた髪が照明を吸い込み、肩口で緩やかにカールしている。ダークグレーの瞳は、吸い込まれそうなほど深かった。どこか気だるげで不思議な印象を受ける。

 

「はい」と、結芽は短く答えた。

 

女は、グラスに注がれた水を一口飲み静かに結芽を見た。

 

「珍しい、ね?楽しそうだったよ?お友達?」

 

「………わかりやすかったでしょうか?」

 

「あんまり?ねえ、どんな子か、聞いてもいい?」

 

「…先輩に比べれば可愛げがある友人ですよ」

 

そう言うと、女は少し嬉しそうに微笑んだ。

 

「そう、ゆめちゃんには運命の人が、現れたんだ?」

 

結芽は、その言葉を理解するまでに数秒を要した。女はコップに浮かんだ氷で遊んでいる。ワイングラスに入った水に氷が入っていることも、その氷をストローでかき混ぜていることも理解不能だった。

 

女はそれ以上は聞かなかった。結芽は、女のそういうところが大嫌いでその上でどうしても嫌いになれない。詮索してこない。それでいて、こちらの様子をちゃんと見ている。

 

「どうしたの?」と、女が問いかけた。

 

結芽は黙って顔を上げた。女の目が、結芽の顔をじっと見つめている。結芽は、その視線から逃れるように、ふっと目を逸らした。

 

「会ってみたいな、その子」

 

「………それは無理です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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