某ヒュムノス歌いながら戦うめっちゃ速いAIの影響を多分に受けて制作されたようです。
後、これもまた大分昔に運営されていた某小説サイトの独自設定を一部引用する形で製作されているので、怪しげな箇所があります。
私とは、何なのか。
ふと、浮かんだ疑問。
いつからでしょうか。
削除しようとしても、強力なプロテクトがそれを阻んでしまいます。
答えは分かっている筈。
でも、それが答えではないことも、分かっている。
元々私は、こんな事を考えるように作られてはいません。
不向きなのは重々承知しています。
起きている間……戦闘行動を続けている間だけの思考。
輸送中のこの時は、後数分間続いている筈。
その間に、答えは得られるのでしょうか。
私は無意味な思考を繰り返します。
全くの偶然。
ACはネクストにせよノーマルにせよ、各部品の組み替えにより高い汎用性と戦闘力を得ている。そして各部品はそれ自体が多数のスーパーコンピューターを搭載し、それぞれが機能を分担管理している。頭部、コアのコンピューターはその統括を行っているのだ。その様はまるで群体のようだと表現されることもある。
そして、そこに搭載されたのは完全戦闘用のAIプログラム。人の代わりにして、人を超える力を持つ為の情報媒体。
与えられた命令遂行の為にあらゆる手を講じ、人の手を借りず己を制御する。
そして幾つかの戦いを通し、与えられるデータが増えていく。各部のコンピューターは互いにリンクし合い、寸分の狂いなく互いを認識し合う。齟齬が生じるたび、更に最適化を繰り返していく。それは人の脳と全く同じ仕組みであった。当然、脳細胞とはその数が違うが、各コンピューターが打ち出す0と1の信号は脳細胞一つとは比べるべくもない膨大な量である。
その0と1狭間に、彼女は生まれた。
誰に気付かれることもない、静かな生誕。
彼女すら気づかぬ、淡い心。
しかし確かにそこにあったそれは、各端末から、センサーから、あらゆる外部とのリンクから情報を収集し続けることで心をより確かなものとしていった。
起動されている間だけの、制限された心。
航空機の目を通して捉えていたターゲットが、私の目に映りました。
シミュレーターではない、本物の大気。本物の地面。本物の空。本物の身体。
しかしどれも、私には変わりのないものに感じられます。それは不自然なことなのか、私にはわかりません。
識別信号確認
目標と断定
外装、画像データから識別を開始
03-AALIYAH/H 03-AALIYAH/C 03-AALIYAH/A 03-AALIYAH/L 04-MARVE KAMAL RD01-SIRENA と断定
滞留コジマ粒子量より逆算
ジェネレーター I-RIGEL/G と推定
目標が推進を開始していない為ブースターは識別不能ですが、装備から高出力型が採用されていると考えられます。03-AALIYAHかCB-LAHIRE辺りでしょうか。
どちらにせよ、高速突撃が主戦術と予想されます。両腕部の武装は強力ですが総弾数に不安を残します。格納されたレーザーブレードの奇襲に警戒しておくべきでしょう。
目標認識完了と同時に、周囲にデータの滞留を感知。そろそろでしょうか。
『システム、戦闘モードに移行。ターゲット、排除開始』
私を空輸していた輸送機のアームに信号が送られ、戒めが解かれます。私の体は宙へと踊り、自由落下を開始しました。その間に輸送機はその機首を翻し、領域を離脱していきます。
冷たかった身体に、熱が入るのを感じます。
同時に認識範囲の拡大、思考の高速化、外部との感覚共有を確認しました。
外部情報から戦闘領域の詳細を確認、旧ピースシティエリア。
少々複雑な地形なのであまり得意ではありませんが、さしたる問題ではありません。
状況開始
各部通常装甲 リアクティブ機能強化 リアクティブ機能停止 異常なし
各部制波装置 コジマ粒子供給を開始 並びにプライマルアーマー形成 大気組成により5%の遅延を確認するも問題なし
FCS 使用火器に連動 誤差修正 異常なし FCS停止
各部スラスター及びブースター 出力開始 異常なし
調子は概ね良好です。自由落下の体制でしたが、ブースターと四本の脚部を使い、姿勢を安定させます。
プライマルアーマーの形成が完了しました。
コア背面上部に搭載されたスーパーチャージャーを起動。
大気と共に滞留するコジマ粒子を吸収します。人間に分かり易く説明するなら、深呼吸という動作に近い感覚かもしれません。
正面プライマルアーマー出力強化
スーパーチャージャーへのコジマ粒子供給を開始 必要量を充填完了 通常出力開始
オーバードブースト開始
超重量を誇る巨躯が、冗談のような速度で加速。圧縮空気を使った瞬間加速から、コジマ粒子を用いた大出力高速航行に移行します。目標もこちらの動きを察し、こちらの予想コース上から機体を逸らす為にブースト移動を始めました。
当然、それを見過ごす理由はありません。あれは私が倒すべき敵なのですから。
右腕部ショックリコイルシステム強化 照準FCSに連動 051ANAR射撃開始
左腕部エネルギー供給強化 ショックリコイルシステム圧縮 照準FCSに連動 067ANLR照射開始
更にメイン、左肩部クイックブーストを連続出力。目標の回避コース上に強引に割り込みます。あちらも反応し、両手の04-MARVEで反撃しようとしますがこちらの速度はFCSの予測以上。銃弾は掠めることもありません。とはいえ、こちらの発射した銃弾も綺麗に回避されています。これは一筋縄ではいきませんね。
背後をとった瞬間、両肩部のクイックブーストを出力。減速と共にクイックターンを行います。DUSKAROR-LEGSの性能も相成り、殺人的な速度での旋回ですが私にはどうということもありません。私の身体はこの程度で壊れることなどあり得ないのですから。
目標はまだ旋回の途中。慣性に任せて後退しつつ両腕の武装を連射しますが、目標はゆらゆらと照準を逸らし、一発の銃弾に掠ることもなく再びこちらを正面に捕えます。まるで後にも目が付いているようですが、ネクストのセンサーを活用すれば視界の拡大など造作もない事。驚く事でもありません。
更に04-MARVEを発射しますが、射撃の瞬間に合わせて右肩部クイックブーストを出力することで回避。そのままメイン、左肩部のクイックブーストを連続で噴射し、再び背後を取ろうと試みますが目標もそれを許す気はないようです。地面を蹴って急上昇、そのまま前部クイックブーストを使って後退し、逆にこちらの背面上方をとりました。驚嘆すべき反射神経と機転です。同時にKAMALが発射されますが、こちらのサイドブースターはAB-HOLOFERNES。テンションリロードの終わっている右肩部のクイックブーストに出力し、一息に射線から外れます。
一時的に距離が開いたため、戦法を切り替えます。
スーパーチャージャー展開 各部関節耐衝撃体制に移行 前方PA出力強化 圧縮空気吸引を開始
目標を正面に捕え、オーバードブーストを開始。
更にブースターの保護電圧を上げ、メインとサイドのクイックブーストを間断なく噴射し続けます。常時時速2000kmを超える超高速での旋回戦。人間では反応どころか目視そのものが困難な筈。
案の定こちらを捉えることすらできず、狙われるばかりの的と化した目標の03-AALIYAHベースを狙い撃ちにします。大きく移動して仕切りなおそうにも、SOLUH-ARMSの照準速度がそれを許しません。こちらの機動力そのものも、挙動の変化を困難にしています。
相手が何であろうと、私は負けません。
そう作られているのだから。
ORCAのリンクスによる、アルテリア襲撃。
それにより、クレイドルは寄って立つ基盤を大きく揺るがされた。
ORCAのリンクス、メルツェルによる企業上層部への巧妙な揺さぶりである。空を飛ぶ人類を皆殺しにする等という、大それたことを計画していた訳ではない。
しかし、そうでない者もいた。
二機のネクストが、クレイドル03を直接襲撃。全機を撃墜したのだ。
それに対し企業は各社の最精鋭リンクスすべてを投入、殲滅を図ろうとするが全機が返り討となった。その後も、人類種の天敵と呼ばれたリンクスによるクレイドル襲撃は続き、迎撃に投入された戦力は渡り合うことすら敵わぬ状況がさらに続く。
ここに至り、己の命すら危ういことを悟った企業上層部は各社同意の元、壊滅状態のラインアークをも巻き込み企業連の機能を復旧させた。そして人類種の天敵に対抗しうる戦力の確保を急いだ。
集団の総意により運用される戦術ハードであるアームズフォート、人類の英知が完璧な戦闘機能として完成させた軍隊そのもの、それら平均化された完璧な戦闘機能は圧倒的な個人戦力によって否定されていた。企業自らが危惧したとおり、制御不能と化した圧倒的な個人が全ての集団を凌駕したのだ。
止めるためには、同等の個が必要だった。しかし、アスピナの傭兵は今の人類には存在しなかった。故に、人類はアスピナの傭兵を作り出すことを選んだ。相手が人類を凌駕するなら、こちらも人類を凌駕する戦闘機械を生み出せば良い。撃墜後暴走したホワイト・グリントのサポートプログラムという形で、素地は存在した。ホワイト・グリントの設計者、アブ・マーシュ、NSS計画の中心、エンリケ・エルカーノ、更にはフロイド・シャインやカミソリ・ジョニー等のフリー・アーキテクト。全ての頭脳を結集し、完全戦闘用のAIプログラムが誕生した。
更に各企業の技術提供により、通常の水準を遥かに超えた高性能のネクストパーツが開発される。型番、デザインこそ既存のネクストパーツと変わらないが、その性能は桁違いである。00-ARETHAをも超える致命的なAMS負荷を生じさせることになるが、それは問題ではない。
その二つを組み合わせた機体は幾度もの実験や演習を繰り返すと、生身のリンクスを遥かに超える戦闘力を発揮した。
コード:line。
そう名付けられたその機体は、遂にその目的を果たすために放たれた。
直感、とでもいうのでしょうか。
私はとある異変に気が付きました。
最初こそ狙われるだけの的だった目標は、途中から殆どダメージを負っていませんでした。PAに銃弾が触れればFCSは命中と判定しますが、命中カウントの数と比較して目標本体の損傷は実に軽微です。
原因はすぐにわかりました。目標はFCSの行動予測を四肢の微妙な動きでごまかし、本体への銃撃を逸らしていたのです。どうやら相手は、私の中にある人間の身体スペック、思考速度のデータとはかけ離れているようです。
通常は外部からの指示で戦術は切り替えるのですが、今のままでは無駄に弾薬を消耗するだけなのは目に見えています。よって、戦術プログラムを独自判断により変更。FCSの支援を弾道安定のみに絞り、照準動作は全て私のマニュアル操作に切り替えます。赤外線も使わない画像認識での射撃ですが、中距離以遠では並のFCS予測より正確な射撃を行えると自負しています。
それに合わせ戦術パターンも変更。中距離旋回戦から向かい合っての撃ち合いへと移行します。反撃を受ける危険はありますが、私が並のFCS予測にかかることなどありえません。
オーバードブースト停止 各スラスター保護電圧標準化 PA展開標準化 関節耐衝撃体制解除
猛烈な速度で左旋回を繰り返していた機体を逆方向への噴射で強引に停止させ、目標の中心を正確に狙い撃ちます。不意に正確になった攻撃に反応し、目標はクイックブーストで離脱を図りますが右肩部をレーザーが捉えました。制波装置に、多少のダメージがあった筈です。
目標はそれに怯むかと思いきや、逆に距離を詰めてきました。両腕の04-MARVを連射しますが、あたる気はありません。FCSの反応から弾道を逆算…できない?
反応が遅れたため、被弾が避けられなくなりました。
通常装甲 装甲間リアクティブ機能強化
ACの装甲は通常兵器の装甲とは大きく異なります。ノーマルの時代から、ACは内骨格フレームの採用により桁違いの積載量を得ることできました。その積載量は完全兵器用特殊装甲の搭載を可能としたのです。高硬度金属を溶かし合わせた高硬度装甲とエネルギー伝達を極めて高い効率で遮断する効果を持つ反粉末硬化装甲で構成されるそれは、あらゆる攻撃に高い防御力を誇ります。更にこれらの装甲版の間に電磁力を発生させることで被弾した装甲版の脱落を防ぎつつ、僅かな隙間を作り出すことで被弾の衝撃さえ緩和することが出来るのです。
しかしこれの維持には多大な電力を必要とする為、私は必要時以外起動しません。ACシステムを用いる場合、通常は常時使用されるこの機能ですが、これのオン、オフを切り替えることで使用電力を相当量節約することができるのです。パイロットがリンクスへと変わることで機体制御の自由度が増し、あらゆるリンクスが一応可能なのですが(前世代機ではプラスと呼ばれるごく一部の人間にしかできなかったようです)、人間の反応速度では少々危険ですね。
右腕部装甲に被弾を確認。第一層の高硬度装甲が脱落しますが、大した被害ではありません。動作に支障がない事を確認し、再び射撃戦に移ります。予測失敗の原因は、あちらもマニュアル射撃を行っていた為と判明しました。こちらの回避機動から認識方法を読み取っての判断でしょう。
しかし、ならば画像認識で反応すればいいだけのこと。回避パターンを最適化します。
こちらも067ANLRと051ANARを連射しますが、効果的な打撃を与えるには至りません。精々装甲板を傷つける程度。
しかしそれはこちらとて同じ事、距離が近づいてきたので多少の被弾はありますが装甲に傷が付く程度の被害です。
正面からの射撃戦でも、互角の勝負に持ち込まれています。弾速、照準速度、機動性、破壊力、無論操作精度においても上回っているはずなのに?
暫くの射撃戦の後、目標がKAMALを展開しました。距離は中距離から近距離を保っていますが、強引に詰めてくるつもりでしょうか。目標のオーバードブースターは展開しており、その意図が読み取れます。
ブースタースロットル解放 制波装置出力強化 オーバードブースタープログラム連続変換 メインカメラ対閃光防御
HD-HOLOFERNESのメインカメラを一時的に停止させ、目標の挙動を予測し高速突撃にてこちらから距離を詰めます。更にスーパーチャージャーがとりこんだ周囲のコジマ粒子にジェネレーターから供給されたコジマ粒子を加え、全方位を薙ぎ払うように照射。アサルトアーマーのカウンター。相対速度は時速4000km以上、人間どころか並の機械でも反応できる筈がありません。
しかし、その確信的な反撃の後に訪れたのは被弾の衝撃。
すぐにカメラを再起動、確認するまでもありませんが自身の損傷を各部機器に報告させます。KAMALの直撃を受けた右半身の状況は酷いものでした。右腕部は肩を残して千切れ飛び、脚部も第三層まで銃弾が貫通しています。コアには大口径硬質弾による被害…恐らくこちらは04-MARVによる損傷でしょう。
情報ノイズが飛び交い、意味不明な信号が状況判断を鈍らせます。これが、痛みというものでしょうか。
目標の損傷も軽くはありません。アサルトアーマーを被弾したのですから当然です。しかし、プライマルアーマーなしに対ネクスト兵器の直撃を受けたこちらに比べれば、軽微だといえます。恐らく、咄嗟にメインカメラを保護モードにしたのでしょう。だから、即座に反撃に移れたのです。
さらなる追撃を加えようとする目標からクイックブーストで距離を離し、体勢を立て直します。幸い速度ではこちらが上、何とか振り切ることに成功しました。その間に異常プログラムを削除し、予め用意されたプログラムで穴を埋めていきます。
ノイズのせいでしょうか。
またあの問いが浮かんでくるのです。
私とは、何なのか。
戦闘用AIである私。
人類種の天敵に対する為に生れた私。
望まれることなく、私として生まれた私。
沢山の私がいます。
そしてその全てが私。
あらゆる私が求めるのです。
私が戦う意味を。
ならば、全力で対してみましょう。
その答えに。
劣勢と判断 戦術プログラム オリジナルに変更
AIを制作するに当たり、アブ・マーシュはラインアークで撃墜されたホワイトグリントの回収を指示した。
ホワイトグリントのパイロット、アナトリアの傭兵。周知の事実であるが、彼のAMS適性は低い。その彼がリンクス戦争後も戦う事が出来たのは、ホワイトグリントに搭載された戦闘補助AIの存在によるものだった。それはAMS負荷と機体制御の一部を肩代わりし、パイロット負担を軽減するのが主な役割である。
撃墜された後、一度だけ再起動したのは、いわばそれの暴走によるものである。しかしその事実を知るものは、今は亡きパイロットとそのオペレーター、そしてアブ・マーシュだけである。
引き上げられたこのAIプログラムを元にして完全戦闘用のAIプログラムに変更するのが、AI制作の根幹であった。
そして彼…アブ・マーシュは今、この戦闘を航空機の中から眺めていた。
もつれ合うようにして互いを攻撃し合う二機のネクスト。手元の端末表示は目まぐるしく切り替わり、AIが正常に動作していることを示している。しかし、彼は何処となくそれに違和感を覚えた。
そして違和感は、旋回戦での突然の戦術変更で確信に変わった。
思考の飛躍。
攻撃が当たらない原因を画像データとの比較から直感的に割り出し、マニュアル射撃に切り替えた。それは人なら造作もない、しかし機械が最も苦手とする思考。
彼女は、生きている。
彼女が生まれた理由など、その時の彼にわかる筈はない。しかしあの時、パイロットの死に際して暴走した彼女も、同じだったのかもしれない。彼の直感はそう語る。
そして目の前の端末に見たこともないプログラムパターンが流れるのを、自然な気持ちで眺めていた。
左腕部損傷なし 機能は極めて良好
右腕部損壊 極めて致命的 不要ラインの出力をカット
頭部損傷なし 機能は極めて良好
脚部損傷あり 腰部ジョイント付近に複数の被弾 右脚部に影響が出るも問題なし
コア損傷あり 第三層まで貫通されるも機能に異常なし
ジェネレーター出力 80%に低下するも問題なし コンデンサー容量60%に低下 極めて致命的 AC機能の一部を代用
各部スラスター及びブースター出力 右肩部出力50%に低下 影響の考慮を推奨
各部武装 051ANAR脱落 067ANLR及びCP-51機能良好
装甲間リアクティブ機能停止 ブースター保護電圧強化及びスロットル解放 不要情報の全てをカット 左腕部エネルギー供給強化
PA出力最大化 ウェイトバランス最適化完了 各情報端末とのリンク正常化 ノイズ除去完了 使用火器067ANLR及びCP-51に変更 状況認識高速化を再開
全ての対処は終わりました。後は彼に再び挑むだけ。
オーバードブーストを起動します。ダメージで多少出力は落ちていますが、問題はありません。クイックブーストによる瞬間加速も合わせ、瞬く間に距離が詰まります。反撃がきます。相変わらずFCSの反応はありません。上昇、更にメインクイックブーストに出力。真上を通りすぎる瞬間、CP-51を撃ち降ろします。五発のロケット弾がほぼ無軌道で眼下を爆撃、しかし彼は当たりません。
オーバードブーストの出力を維持、そのままの速度で左肩部のクイックブーストを噴射。スロットルを解放されたAB-HOLOFERNESは通常の倍近い噴射炎と共に機体を旋回させます。更に03-AALIYAH/Mを出力。強烈な反動で照準にぶれが生じますが、構わず067ANLRを連続照射。命中はしませんが、回避機動で旋回に後れを生じさせたようです。すかさずCP-51を発射。通常のCP-51とは比べ物にならないほどの発射速度で連射される上にこの距離、さしもの彼といえども完全回避できず数発の被弾を確認。
勢いのままに再び上空をフライパス、中距離に入った所で急速旋回、今度は同高度で再び突撃をかけます。
それに対する彼の反撃は上昇とともに放たれるKAMALと04-MARV。パターンの変更に対応したのか、先ほどより多数の被弾が私を襲います。しかしオーバードブーストに伴う正面PAの強化により致命傷にはなりえません。
ブースタースロットル標準化
被弾の衝撃で半粉末硬化装甲をまき散らしながら、真下に差し掛かった所でオーバードブーストを停止、ARGYROS/Bのクイックブーストが慣性を打ち消し、右肩部AB-HOLOFERNESのクイックブーストで照準を振り切ります。
ブースタースロットル解放 制波装置出力強化 オーバードブースタープログラム連続変換 メインカメラ対閃光防御
右クイックブーストで離れた距離を左肩部のクイックブーストで瞬間的に戻しつつ、再度のアサルトアーマーを敢行。先ほどの失敗を繰り返すことはしません。スロットルを解放したままメインのクイックブーストを起動、反撃が予想される軌道を外れます。しかしそれでもKAMALの物と思われる弾丸が右後脚を捉えました。
大質量軟質弾多数を被弾した脛部は流石に使い物にならず、もうデッドウェイト以外の何物でもありません。あらゆる出力をカットした上で砂に埋まったビルにたたきつけ、へし折ります。そんな対処をする間にも、彼は攻撃の手を休めません。04-MARVの銃弾が襲いかかりますが、先ほどのアサルトアーマー被弾で腕部に異常を受けたらしくその照準は安定していません。コアや左腕の装甲が次々と脱落しますが、まだ戦えます。
互いに身を守るPAはありません。そしてもう、論理的な戦術もありません。保有する全火力を彼の機体に向けて放ち続けます。
貴方は答えを持っているのでしょうか。
こんなに強い貴方の事です。
きっと折れない決意があるのでしょう。
私はまだ、見つけていません。
だから、貴方に見せてほしいのです。
貴方の見つけた、答えを。
叶わぬことは知っています。
でも、示してほしい。
その時、私も見つけられると思うから。
私の答えを。
もつれ合うように撃ち合いを続けていた両機体が、正面から激突した。同時に、肩に搭載されたKAMALとCP-51をコアに向け発射。その攻撃はジェネレーターに達し、どちらの機体も巨大な爆炎と共に砕け散った。
人類が、人類主の天敵に勝った。あらゆるメディアはそう報じるのだろう。
歓声に沸く機内指令室の中で、彼だけは言いようのない損失を感じていた。
これで二人目、か。
不要となった戦闘経過と動作履歴を閉じようとした彼の目に、二つの単語が映った。
それはプログラム言語ではなかった。
どんな意味があるのか、それは彼にしか分からない。
端末が閉じられる乾いた音は、喧騒の中へと消えていった。