闘技場のモブ(自称)は今日も頑張る   作:富竹14号

11 / 20
 
 久しぶりに書くぞよ…ゼンゼロが魅力的過ぎる。

 因みにの補足…基本的にホロメンの強さはその世界に於ける上澄みに位置している(サポート特化のホロメンを除く)、逆に言えばこれとやり合えている奴も基本上澄み。


熱が入る

 

 

「───あはっ!」

 

 刀が振るわれる、下から上へと薙ぎ払うような一撃、鋭く放たれたその一撃を身体をズラして躱したその先で地面に斬り傷が生まれた。

 

 ズバンッと響く破壊の音、飛び出した破壊の奔流はその先にある尽くを斬り裂いて消える…そんな光景を、司は横目で見据えていた。

 

───剣撃…いや、理力の放出か。

 

 

 見据えた果てに辿り着いた結論、エネルギーを一撃と共に放出し、飛ぶ斬撃という形を以て対象を刈り取る…ここで大事なのは本人自身の純粋な剣術によって生み出された飛ぶ斬撃ではなく、あくまで理力を使用した言ってしまえば気円斬のような代物であるという点。

 

 何が違うと言うのか、理力の放出であろうが純粋な剣術であろうが斬れるものは斬れるのだから結局は同じであろうが等と、そんなことを宣う人間もいるにはいるのだろうが…断言しよう、まるで違う。

 

 何故ならそれは、剣術とは違ってどんな体勢からでも会心の一撃が撃ててしまうということに、他ならないのだから。

 

 

 斬撃が激突する、せめぎ合う両者の獲物はしかし牧村司の獲物が一方的に弾かれたことで勝敗を決する。

 

 理力の放出を織り交ぜた斬撃、本来であれば肉体強化の延長として躯力を流し込むはずのそれに理力を流し込むと言う異質なモノ…いや、恐らく他にも事例もありはするのだろうが、それでも珍しいと言わざるを得ない方法だった。

 

 弾かれる獲物に引っ張られるように後ろへと傾く身体、爛々と輝く瞳を滾らせながら百鬼あやめは傾いた体勢の司へともう一振りを叩きつけようと刀を振るう。

 

 当たればただでは済まない、それほどまでに高出力な理力放出、斬撃そのものの技量も低いか高いかで言えば後者に当たるその一撃は理力放出云々抜きにしても脅威であった。

 

 

「───ッッ」

 

 

 だから潰した。

 

 振るわれた刀、上から此方の頭をかち割ろうと迫る鬼の刀…その大元へと、それを握る手首へと牧村司は蹴りを叩き込んだ。

 

 下から上への蹴り上げ、手首の骨部分を狙ったピンポイントな一撃、崩れた体勢を寧ろ丁度良いと言わんばかりに利用した体重の乗ったその一撃は百鬼あやめの手から刃を手放させるには充分過ぎる程の一撃だった。

 

 骨に罅を入れたような感触、手首から生じた痛みにあやめは苦悶の表情を浮かべ、その目の前で司は地面へと転がった…崩れた体勢を利用した蹴りを放ったのだ、当然と言えば当然だった。

 

 バチャリと水溜りが跳ねる、大雨の中に僅かに響いたその音の後に更に響く硬質な音、手放され宙へと投げ出された刀が地面へと落ちたその音…それを合図に、両者は再び激突する。

 

 即座に起き上がった司、そこへと刀を振るったあやめ、振るわれた刃を曲刀で逸らして一撃を躱す。

 

 地面へと突き刺さるあやめの刀、真横で響く自身へと来るはずだった鋭いその音に少しの冷や汗を流しながら司はその手を地面へと叩きつけよ、そこから押し込んだバネが跳ねるように勢い良くあやめへとドロップキックを叩き込んだ。

 

 直撃し吹き飛ぶ身体、刀を地面に突き刺し勢いを殺して体勢を整えて前を向く、視界を上げると共に振り上げられた曲刀が目に映る、振り下ろされた一撃を弾いていなし、返す形で刀を振るう。

 

 バチャバチャと響く足音と鉄の音、位置を入れ替えながら右から左へと、左から右へとを何度も何度も繰り返しながら互いに斬撃を叩きつける、徐々に徐々に加速を始めた刃達は次第に雨粒を切り抜くように自分達だけの空間を生成していく。

 

 

 

───あぁ…楽しいな。

 

 

 ふと、誰かが心中でそう漏らした。

 

 心底から楽しいと言うように刀を振るう、自身の内に溜め込んだその感情を発露するように全力で刀を振るう、火花を散らして互いに足場を求めながら何度も何度でも切り結ぶ。

 

 刃が頬を掠める、刃が腕を掠める、徐々に互いに間合いとタイミングを見極め直撃へと近づき始めた両者はまるで互いに見合わせたように強い一撃を叩き込み、鍔迫り合いを始めた。

 

 

───あぁ…本当に楽しいな。

 

 

 楽しい、本当に楽しいのだ。

 

 あの日見たあの光景と、あの日見たあの()()とこうして戦えている…最初は少し拍子抜けというかガッカリしてしまった部分もあったが…それも本当に最初のことだけだった。

 

 スイッチを入れたかのように速まった速度と鋭く尖った一撃一撃、放った斬撃も手慣れたように逸らし躱しいなし潰しで尽くを防がれ始めた…その姿にあやめは…あぁ、良かったと心底から安堵したのだ。

 

 良かった、強いままで、強いままの貴方でいてくれて…本当に良かった……と。

 

 刀で曲刀を弾く、鍔迫り合いを半ば無理矢理に終わらせて距離を取り、互いの獲物が届かなくなったその瞬間を狙ってあやめは一気に刀を振り抜く。

 

 理力の放出、斬撃の形を成してやってくる純粋な理力による一撃が間合いの外側へと弾かれた司へと襲い掛かる。

 

「───シャオラッ!」

 

 叩き潰した、放たれた理力の斬撃を司は自らの獲物ではなくあろうことか素手…しかも手傷を負っていたはずの右手拳で殴り潰した。

 

 地面へと轟音を響かせながら叩きつけられる理力の斬撃、上方向から炸裂した文字通り鉄槌が如き一撃は百鬼あやめの十八番を容易く塵芥へと変えてしまう。

 

 そんな司の元へと降りかかる更なる一撃二撃、振り抜かれた刀からやってくる鋭利な理力の斬撃が獲物を刈り取らんとその猛威を振るう、降り注ぐ雨粒達すらも綺麗に刈り取りながら迫るその一撃を司は疾走と共に躱した。

 

 駆ける司、追いかけるように迫り切断痕を辺り一面にばらまくあやめの斬撃、さながら鬼ごっことでも言わんばかりに繰り広げられる疾走と追跡の光景に辺りに被害がばら撒かれ始める。

 

 疾走する司に反応してあやめもまた疾走を開始する、理力の斬撃…その間合いからすら外れようとする司を追いかけながら先程弾かれたもう一振りを拾い上げ…そこへとやってくる、銀色に輝く投擲物。

 

「おわっ!?」

 

 驚きの声をあげながらも咄嗟に弾く、投げつけられた投擲物…ナイフやら短刀やらが弾かれたことで宙を舞って何処へなりとも消えていく。

 

 この夜闇でしかもこの量の大雨だ、街灯があったとしてもきっと探すのには苦労するだろう…そんなしょうもないことを考えたあやめの脳天に飛来する、見覚えのある曲刀。

 

「───いぃっ!?」

 

 死に物狂いの回避行動、見てはいけないものを見てしまったかのような声を上げながら百鬼あやめはズシャァッと野球のようにやってきた一撃を躱す、ズガァンッと先程居た場所から響く轟音と飛んでくる地面の破片がその威力を物語っていた。

 

 視線を上げる、投げ出すように躱した先から瞬時に体勢を整えて見上げたその視界の先では…司が、何かを高速で回転させていた。

 

 それは銀色だった、それは細かった…ブオンッブオンッと風を切りながら回転し振り回されているソレは誰がどう見ても鎖であり、そしてその先に取り付けられていたのは…先程まで司が自身へと叩きつけていた見覚えのある曲刀だった。

 

 地面を斬り裂き、傷を付ける…馴染ませるように振るわれた曲刀と鎖の感触にうん…と満足そうに頷いた司…そしてその姿にあやめは我慢出来ぬと言わんばかりに、思わず口を開いた。

 

 

「───それそういう風に使うものじゃない余っ!?」

 

 

 まるで唐突に振られたボケに咄嗟にツッコミを入れたかのような反応、何処かゆるふわな雰囲気を背負ったあやめのそんな言葉に司はキョトンっと首を傾げて…唐突に、鎖を振るった。

 

 無数の回転からのあまりに唐突な薙ぎ払い、遠心力と勢いに乗せられた一撃が接触した地面を削り取りながら百鬼あやめを刈り取らんと迫る…避けるのは無理だと思った。

 

 地面に刀を突き立てて曲刀を受け止める、火花を散らして激突した曲刀の一撃に思わずうめき声を上げてしまう…それほどまでに、重い重い一撃。

 

 ミシリっと軋む刀の軸、突き立てた刃が放たれた威力に負けて地面をくり抜いていく、このまま受ければ折れてしまうのではないかと思わせられる。

 

「ッッ…!!」

 

 受け切れない…そう判断したが故に百鬼あやめはそこから飛び退いた…地面に突き立てた刀を引き抜き、それと同時にやってくる圧力に身を任せて曲芸のように回転する。

 

 流れに身を任せての回転、刀の峰へとその身体を倒すように体重を預け、受け流す形で曲刀の一撃を流しながら身体を回転させて勢いを殺す…そうして一撃を躱した先で地面へと着地する。

 

 まともに受けたら危ないな…そんな考えが頭を過る中でまだだと言わんばかりに曲刀が振るわれる。

 

 今度は真正面からの真っ直ぐとした一撃、ガインッと音を立てて蹴り飛ばされてきた曲刀がまるで弾丸のように自身へと突っ込んでくる…そんな一撃を今度のあやめは弾いた。

 

 重く響く鉄の感触、ビリリッと腕に響く一撃の重さに苦悶の表情を浮かべて厄介だなと考えながら…それでもと、ふとしたように考える。

 

 

 

 どうして、何故…彼は未だに、あの『槍』を使わないのだろう?…と。

 

 溢した不満、口から漏れ出ることなく心中にて零されたその不満は、しかし百鬼あやめの内に深く留まり続けている。

 

 それもそのはずだろう…何故なら彼女は知っているのだ、牧村司が密かにやらかしたとある一件、その一部始終を。

 

 

 かつて、とある展示会にて発生した籠城テロ事件…それを警察がやってくるまでの約三十分の間に瞬く間に全滅させた正体不明の『鬼神』…その暴れっぷりを。

 

 

 

 

 





展示会テロ籠城事件
 
 とある大きな博物館にて行われた展示会を狙って行われた籠城事件、館内に居た制圧、人質に取り、自ら警察に通報したことで発覚した事件。

 人質の解放条件はとある『遺物』の譲渡であったが…何も知らずに入ってきたらしい黄色いカッパを来た誰かを制圧しようとした際に逆に返り討ちにされたことで、その条件を伝える前に事件が終結した…警察は当時、返り討ちにされたらしい人間の取り調べによって初めてその目的を知ったと言う。

 因みにそれらの光景を唯一目撃していた当時の百鬼あやめとその記憶を読み取ることで当時の詳しい情報を得たらしい警察官曰く…『鬼よりも鬼らしい』暴れっぷりだったらしい。

 それらの情報から異名…というより正体不明の存在に付けるコードネームに近い形で『鬼神』と言う名が定着した。

 …因みに、その際に振り回していたのが当時展示会に飾ってあった方天画戟のレプリカであったこともあってか、呂布と言う渾名で呼ばれていた。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。