闘技場のモブ(自称)は今日も頑張る   作:富竹14号

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 ライバーを登場させるけど…漫画で書いてあっただけの口調をほぼそのまま転用しているので、イメージと違うかもしれません…というか確実に違うでしょうので、そこら辺はご注意ください。


会長と俺

 

 

『あ〜、もしもし〜?司ー?』

 

 鳴り響いたスマホのコール音、扉を開いて直ぐに掛かってきたその通知の音に俺は気怠げにスマホを取り出して通話を開始する、背後から聞こえてくる扉の閉まる音と共に聞き馴染んだ声がスマホから聞こえてくる。

 

 因みに、司って言うのは俺の名前だ…牧村(まきむら)(つかさ)、それが俺の名前だ。

 

「はいはい、俺ですよ…どうかしましたか、『会長』」

 

『それやめろよ〜、もう会長じゃないんだからさぁ』

 

 自宅のアパート、その階段を降りながら会話を続ける、以前までの関係上から使っていたその呼び方で呼んだ俺に対して、彼女は何処か照れくさそうな声色でそう言ってくる。

 

 階段降りきりながら道を曲がる、目的地となる高校を目指しながらも通話は切らず、馴染み親しんだその人との会話を俺は楽しむことにした。

 

「今でも形式上は会長でしょう? 呼び方的には別に間違ってない気がするんですけど」

 

『そうだけど、お前絶対に前と同じ感覚でその呼び方使ってるだろ? 悪いことではないけどなんかむず痒いんだよなぁ』

 

 なんですかそれ…とクスッと笑いながら言葉を返す、あっ、今笑ったなぁっ!? 電話越しからおふざけ的な意味での怒り声が聞こえてくるのを尻目に俺はふぅ〜っと息を吐き出した。

 

「それで? こんな朝っぱらからどうしたんです?」

 

 足を止めることなく投げかけた質問、会長自身もこの時間帯には俺が登校を開始していることを知っているはず、その上でこうして連絡してきたって時点で何かをあると思った方が良いだろう。

 

 基本的に誰かの私生活を邪魔したがらない人だ、それが学校であれ遊びであれ夢の為であれ、どんな形であろうとそれは変わらない。

 

 そんな俺の言葉に会長はあぁ、そうそうと正に今思い出したかのような口調で俺へと言葉を投げかけてくる。

 

『ちょっと今からこっちに来れる? あんまり時間は取らないからさ』

 

 投げかけられたのは招集の言葉、出来れば来れないかなぁ…と言った来れなかったら来れなかったで別にいいやとでも言いそうなその言葉に軽さに、俺は───

 

「…少し待っててください、直ぐに行きます」

 

『おう、待ってる』

 

 そう言って通話を切って、俺は本来の目的地とは逆の方向へとその足を進める…俺のボスが待つ、その場所へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闘技場…と、呼ばれる場所がある。

 

 世間一般的には言うのなら闘いを行う為の場、古代ローマを発祥とした剣闘士競技や野獣狩り等と言った行事が行われていた公共施設…闘いの場という意味では、ここもその例には漏れない。

 

 時刻は7時と50分そこら…出た時間を考えてみるとそれなりに時間が経ったこの場所では朝っぱらの時間とは思えない程にワンサカと人が動いてはまた動くということを繰り返していた。

 

 ワンサカと動く人混みの中を縫うように進む…物を持ちながら歩く人の邪魔にならないように当たらない位置へと自分の身体を調整しながらスルリスルリと人混みの中を抜けていく。

 

「アレッ? 牧村さんじゃないですか、今日は学校じゃなかったんですか?」

 

 頭上から声を掛けられた、見上げてみればそこに居たのは屈強な男性、テラテラと光るスキンヘッドにタンクトップを着込んだその男は心底珍しいモノを見たとでも言いたげな顔で俺の元へと向かおうとしてくる…そんな彼に対して、俺は笑みを浮かべながら応答した。

 

「いや、普通に学校ですよ? ただ、さっき会長に呼ばれちゃいまして」

 

「あぁ〜、なるほど…だったら早く向かったほうが良いですよね…会長は多分、支配人室にいると思いますよ」

 

 

 そう言って大らかに送り出そうとしてくれる彼にありがとうございますと一言だけ添えて俺は再び歩き出す…次の試合も楽しみにしてますから〜っと背後から響いてくるその声に笑みを浮かべながら、俺は目的地へと足を進めた。

 

 目的の場所に近づくにつれて段々と人混みが薄れていく…その事実を感じつつもコツリッコツリッと靴音を響かせながら、俺はその一室へと辿り着く。

 

 扉の上にデカデカと書かれた支配人室と書かれたその扉、その扉を軽く二回程ノックする、ノックの際に小気味の良い木製の音が静かに響くその中で、扉の奥からどうぞ〜っと間延びした声が聞こえてくる。

 

 声に誘われるように扉をあける、ガチャリっと響くドアノブの音と静かに開かれる扉の音、あまり大きな音を立てないように行われれたその一連の動作の向こう側に、その人は立っていた。

 

 真っ先に目に入る正面に存在するガラス張りの壁、その向こう側を覗き込むように立っているその存在へと俺は躊躇無く声を掛けた。

 

「来ましたよ、『ココさん』」

 

 視線の先の主へと声を投げかける、俺の言葉にご苦労さんと返答した会長はゆるりとした動作で俺の方へと振り向いてくる。

 

 靡くオレンジ色の長髪に頭の横らへんにニョキッと生えた角、紫色なのか赤色なのかよく分からない色と色を混ぜてそのまましたような瞳に整った顔立ちにニカッとした笑顔を浮かべたその姿が嫌に似合う。

 

 男の俺よりも尚高いその身長、本人曰く180cmあるらしいその身長に負けず劣らずのグラマラスなモノを持ち合わせたその出るとこ出て、引っ込むとこは引っ込んでいる所謂ケツとタッパのデカい美女とも呼ぶべきその姿に出会ったばかりの頃の俺は目を逸らすしか無かったことを今になって思い出す。

 

 ゆらゆらと揺れる竜の尻尾、何処かニヨニヨとしたような表情を浮かべ、薄く笑いながら俺の元へと近づいてこようとするその姿に、俺はおもわずと言ったように後退った。

 

 

 『桐生ココ』…俺が諸々あって転校してきた学園のかつての生徒会長にしてこの闘技場の現支配人兼チャンピオン……そして、俺が中学の頃に参戦した大会に於いて、俺を完膚無きまでにボッコボッコにした……最強の竜人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「挑戦者…ですか? ……俺に?」

 

 

 戸惑いも隠さず、まるで意味の分からない言葉を叩き付けられたような反応を示す俺に対してココさんはにこやかな笑顔でおうっ…と一言返事を返してくる…あまりに軽く短いその言葉にその言葉に何と言えば良いのかと悩む俺にココさんは言葉を続けた。

 

 

「いきなりここに来たと思ったらお前の名前出してきてな? 何処にいるんだ何処で会えるんだ〜って闘技場中の人間に聞いて回ってな? そうこうやってる内に私の所に来て、顔合わせ早々に言ってきたのよ───牧村司と戦いたいから会わせてくれ…ってさ」

 

 どうだ、面白いだろ?…そう軽く言ってのけるココさんに俺は思わずと言ったように呟いた。

 

「…なんで、態々俺なんかを」

 

「さぁ? お前のファンか何かなんじゃないか?」

 

 思わず呟いた疑問の言葉、それに対して目敏く反応したココさんの言葉に俺は内心でそれは違うと否定の言葉を吐き出した。

 

 ここは闘技場だ、闘技場であるが故にそう言ったファンが付くことは確かにある…というか実際問題、俺の目の前にいるココさんとかこの前闘技場で大暴れに大暴れを重ねていた『湊さん』とか『沙花叉さん』とかにもそう言った人達はいる。

 

 こと此処に於いては…いや、多分此処じゃなくてもそうかもしれないけど、派手で綺麗でそれでいて強いって人達には根強いファンが付きやすいし、実際それでファンクラブなんかも出来ている…そして、だからこそ俺はココさんの言葉にあり得ないと断言出来る。

 

 何故か?…試合に出る度に突然静かになったり、俺が相手する奴等ばっかりが応援されてるなんてことが何度も続いていたら人気が無いことなんて嫌でも分かるってだけの話なのだ。

 

 さっき会ったスキンヘッドの人…仁村(にむら)さんに関してはそもそもが運営側の人だ、同じ運営側の人間だから俺のことを応援してくれたってだけに過ぎないし、歳が一回りも上なのに敬語を使ってくれていたのも単にそういう職業柄ってだけだ、俺に対してどうこうだからじゃない。

 

 だからこそ不思議で仕方がないのだ…別にそこまで有名でも無い、隠れた実力者的な人間でもない…言ってしまえばこの闘技場のモブに等しい俺なんかに何故挑戦なんてものを叩きつけてきたのかを…ココさんや湊さんに向けられるのは見たことはあっても、自分にそれが向けられるなんて考えてみなかったから、どうして良いのか分からないが故の困惑…というのもあるのだろうが。

 

 何故に、よりにもよって何故に俺なんぞに…そうやってウジウジウジウジと思考を重ねる俺に対してココさんはパンっと手を叩き合わせながら、凛とした目付きで俺へと言葉を投げかけてくる。

 

「っでだ…結局どうする? ……受けるか、受けないのか」

 

 後回しは許さない、今すぐここで答えろ…そう言った圧力を醸し出しながら告げられたその言葉に俺の口は考えるよりも先に動いていた。

 

 

「受けますよそりゃ…態々俺を指名して来てくれたんですから、受けなきゃ相手さんに失礼だし、無作法ってもんですよ」

 

 するりと無意識の内に飛び出た許諾の言葉、吐き出した後になってやってしまったっ…! とでも言いたげな表情を浮かべているのだろう俺に対して、ココさんはそれはもう美しいとしか表現のしようがないような満面の笑みを浮かべながら、ハキハキとした口調で逃げ道を無くすが如くこう告げる。

 

 

「じゃっ、向こうにもそう伝えておくからなっ! 日時は後で伝えるから!」

 

 そう元気良く告げたココさんは何故だか異様にご機嫌な様子でふんふんっと鼻歌を歌いながら部屋の外へと出て行った…後に残されたのは、するりと口から飛び出た自分の言葉に後悔する、俺の姿だけだった。

 

 

 

 

 

 

 





闘技場について

 一言で言うなら神室町みたいな街の下にある超デッカイ試合場、無数の人間がやってきては大量の金を落として血湧き肉躍る闘いをその目で楽しみ、賭けの対象とする為の場…因みに非合法だし下手したら表の方がレベルは高い…けど、旧支配人曰く表では見れないような別ベクトルの闘いが見れるのが此処の魅力らしい…なお、恐らく本作ではあまり出番は無い。



 
 ケンガンアシュラ、バキ、終末のワルキューレ(沖田VS須佐之男戦及びジャックVSヘラクレス戦)、クロヒョウの闘技場…少なくとも作者のイメージはこの四つ。

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