闘技場のモブ(自称)は今日も頑張る   作:富竹14号

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 やっぱり殴り合い書くのが一番好きだなって思える話。


いとも容易く始まる骨肉の争い

 

 

 あの後のことを話そう…簡単に言ってしまうと、俺は帰って直ぐにベットに寝転がった後、普通に寝落ちした。

 

 寝落ちも寝落ち、大寝落ちである…目が覚めたら朝日が目に入ったその時点でもうお察しなのである、腹が空いて仕方がない。

 

 ぐ〜ぐ〜鳴る腹の音に自覚した途端にやってくる極度の空腹感、一日抜いたというだけで死んでしまうとでも言いたげな様子で早く飯を入れろと喧しく警報を発してくる腹の虫に俺はとりあえず腹の中に飯を突っ込み、そしてそのまま着替えないままでいた制服をまま俺は学校へと向かったわけである。

 

 

 そして、今現在───

 

 

「───あはっ…!!」

 

「───チィッ…!!」

 

 

 何故か俺は…学校に備え付けられた異能部用の訓練場にて、獅子の獣人種を相手にバチバチにやり合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の発端は、約三十分以上前に遡る。

 

 なんてことない、何時も通りの昼時だ…今日の飯は冷蔵庫の奥で丸まっていた牛肉巻きおにぎり、それをムシャムシャムシャムシャと食べて昼を過ごす…言ってしまえば食べるものが違うだけの何時も通りの昼時間…のはずだった。

 

 

「───すいません、牧村司くんってここに居ますか?」

 

 そう言って、教室に白髪の獣人種がやってくる、その時までは。

 

 周囲の視線が俺へと向く、今正に飯を食い切って机に突っ伏そうとしていた俺の元へと針の筵かと言わんばかりにクラス中の視線が向けられる。

 

 困惑と疑惑…何故にアイツがとでも言いたげな様子を見せる一部のクラスメイト、一部の中には好奇心を入り混じらせたような視線を向けてくる人間も居る中で、俺は休憩を中断してその呼び出し人の元へと歩いていく。

 

 灰色に近い白髪にグレーの瞳、頭から生えた獣の耳は猫科特有の形をしている彼女は、自分の方へと歩いてくる俺の姿を見るや否や、何処か早足気味に自分から俺へと近づいてきた。

 

「…君が、牧村くん?」

 

「…えっと…はい、牧村ですけど…?」

 

 有無を言わさぬ圧のようなモノを感じさせる言葉、恐らく本人にはそんなつもりはないのだろうその言葉に俺は戸惑ったように言葉を返した。

 

 自分で近づいといてこれである、確かに途中からは相手の方も近づいて来てたけど、それにしたってこれはないだろうと内心思っていると…唐突に、手を掴まれた。

 

 握手…言葉にするならそうなるのであろう形で俺の手を握り締めてきた事実に俺の顔は驚きに染まり、そんな俺の様子なぞ気にもせず目の前の少女は言葉を紡ぎ出す。

 

「はじめまして牧村くん、私は獅白ぼたんって言います…突然で悪いとは思うんですけど───」

 

 

───一手、試合って貰えませんか?

 

 

 爛々と輝くグレーの瞳、何処かココさんを思わせるその瞳に俺は───

 

 

「あっ、はい」

 

 

 ただ、そう頷くことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして…今に至る。

 

 

 顔面の真横を通り過ぎる拳、チッと掠った頬の先から血が流れ落ちる、頬を伝う血の感覚が当たればただでは済まないことを教え込んでくる。

 

 反撃…をしようとした合間に更に積み込まれる連打、爪による斬撃や純粋な拳や蹴りによる打撃等を織り交ぜた多種多様で重たい攻撃が次から次へと俺へとやってくる。

 

 捌いて躱す…爪による斬撃を肌に掠めさせるように躱し、放たれた拳の一撃を横合いから衝撃を与えることで逸らし、音を裂いて振るわれた蹴りを同じく蹴りで以て弾く。

 

 打撃に応酬、次から次へとやってくる確かな重さを携えた一撃一撃に俺は冷や汗を流しながら対応していく。

 

 …いや、展開が唐突過ぎるだろうとか思うかもしれない、こんなことするよりもまず先にあの後のことを話せよとか言われるかもしれない、誰かは知らんけど。

 

 だけどそんなの知ったことじゃない、そんなことしてられる余裕なんて端から無いのだ、そんなことが許されるような強さを目の前の彼女は…獅白ぼたんはしていないのだ。

 

 理由も経由も後回し、今はただ───

 

 

「───ルァッ!!!」

 

 気合の咆を上げながらの一撃、連打が途切れた先から更に連撃を重ねようとする獅白ぼたんへと俺はその放たれようとしていた連撃に挟み込むように拳を叩き込む。

 

 連撃を放とうとしていた正にその瞬間を狙った一撃、並大抵ではあれば防ぐことも叶わずモロに食らうであろうその一撃を前に、しかし獅白ぼたんはさも当たり前のように反応してみせる。

 

 咄嗟に腕を盾とする、ゴッという音と感触を拳の内から感じ取りながら俺は勢いのままに腕ごと獅白ぼたんの肉体を殴り飛ばす。

 

 僅かに浮き上がり後ろへと飛ぶ獅白ぼたんの身体、大して身体を引きずることも無く少し踏ん張るだけで止まったその身体はほんの少しの砂埃を撒き散らすだけに済んだ。

 

 

───硬いな。

 

 内心でそう思う、獣人種と言っても得意不得意で色々あるけど…今まで戦ってきた獣人種の中でも上位に入るほどに硬い、なんとなくではあるが狭間の地の熊を殴っているような気分になる…まぁ、狭間の地になんて行ったことないし行きたくもないけど。

 

 そんなことを思いながら構える、拳の感触からしてまともにダメージが入った訳も無し、というかそもそも防がれたのだからダメージもクソも無いのである。

 

 事実として拳を叩き込んだ獅白ぼたん当人は腕をぷらぷらと何かを確かめるように揺らした後、何かに満足したのかほんの少しの笑みを浮かび上げ、静かに構えながら俺を見据えた。

 

 緊張が高まる、ピリッとした空気が肌を刺す、ジリっと動く靴先と地面の擦れる音が嫌に大きく聞こえる。

 

 静か、静か、ただ静か…互いに微動だにせず、ただ相手を見据えて構えるだけの体勢でいる俺達…何時だ、何時破られる、何時になったら動いても良い…そんな急かすような感覚が身体の内から昇ってくる。

 

 

 一秒、二秒、三秒…いや、もしかしたらもうとっくに一分は経ってるかもしれない…こと戦闘中に於ける待ちというのは、嫌に時間を長く感じさせる…実際問題、長く経っている時もあるのだから、余計にややこしい。

 

 何秒か、何分か…最早どれだけ経ったのかなんてとっくに分からなくなっているその中で…ふと、音が響いた。

 

 誰のものか、誰が鳴らしたものか…ふと、唐突にその空間へと響き渡る…歯を、噛み締めた音。

 

 ギリっと鳴り響く静かな音、それこそ獣人種でも無い俺ではしっかりと聞こうとしない限りは耳へと届かないだろう程度の、静かなその音は…しかし、ことこの場に於いては呆れる程に強い衝撃となった。

 

 互いに同時に踏み込んだ、弾ける地面と踏み込んだ地面の砕ける音、容易に地面を踏み砕きながら互いに接近した俺と獅子ぼたんは、その腕を思い切り振り被り───

 

 

 

───ゴウッ!!!

 

 

 全力で、相手の拳へと自らの一撃を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吹き抜ける暴風、衝撃によって周囲へと入った罅が宙を舞い、ただひたすらにその猛威に耐えるように、放たれた衝撃波を真正面から受け止める眼下の建物…それら全てを無駄へと帰すように、両者は激闘を再開する……その姿を、モニターにて確認する者が居た。

 

 

「あ〜あ〜…楽しそうに笑っちゃってぇ」

 

 激突に次ぐ激突、獅白ぼたんに放つ蹴りを逆に掴み取り、そのまま勢い任せに地面に叩きつける司の姿…恐らく自覚が無いのだろう、その表情を楽しげに歪めるその姿にソレは…桐生ココは愛おしいものを愛でるかのようにその画面を撫でた。

 

「良いんだよ、それで…お前は、強さの格も箔も気にしなくたって良いんだ」

 

 呟きながら椅子へと座る、未だ画面の向こう側で繰り広げられる激闘を心底から面白いとでも言うようにその表情を喜色のものへと転じさせたココは、はてさて懐かしいなぁと過去へと想いを馳せる。

 

 ボロボロになりながらも、しかし笑みを絶やさず自身へと斬り掛かってくる少年の姿…本人自認の使いづらくて仕方がないクソ雑魚能力、それを駆使して自身へと肉薄し、挙げ句の果てには己の装甲すら突破して斬撃を食らわせてきた少年の姿。

 

 

 未だ幼く、遥かに未熟であったはずのその存在に傷を負わせられたという事実は、当時の桐生ココという存在にとって消えようのない傷跡を刻み込まれたということに等しかった…だから気に入った、だから求めた。

 

 それらの光景や感情を思い出したことで急激に疼く身体、今すぐにでも動き出そうとする肉体を無理矢理制して、ココはモニターへと視線を戻した。

 

 

 

『ったく、かったいのなんのっ!!』

 

 舌を打ちながら拳を打ちつける、躱され行き場を失った拳が壁へと激突し壁を貫通させる、引き抜き砂埃と破片が舞うその横側から獅白ぼたんの蹴りが炸裂する。

 

 直撃…腹部へと突き刺さる鋭い一撃、ミシリっと骨が軋む音が聞こえてきそうな程に良い角度から入ったその蹴りに司は苦悶の表情を浮かべて地面を転がる…そこへ更に追撃を入れようと獅白ぼたんは駆ける。

 

 何方も笑っている、楽しくて楽しくて仕方が無いと言わんばかりに笑っている、まるで無邪気な子供のように。

 

 訓練室に入り、戦闘を初めてから大凡十分と少し…両者のボルテージは留まることを知らず、今尚も際限無く昇り続ける。

 

 そんな両者の姿を、桐生ココは楽しそうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 





 ホロライブだからあんまり見られないのかなと思ってみたりする今日この頃、それでもやっぱり殴り合いは書きたい(2度目)
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