闘技場のモブ(自称)は今日も頑張る   作:富竹14号

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 ちかれた…スイッチ2に落選したでござる。


血染め

 

 

 熱線が駆け抜け、火花が飛び散る。

 

 響き渡る重い銃声、スライドから射出される薬莢が軽い音を立てながら地面へと落ちて転がって行く…そうして発射された火の性質を持った弾丸の尽くを躱しながら、司はぼたんへと斬り掛かった。

 

 ガギンッと響く鉄の音、振るわれた曲刀をぼたんは拳銃によって受け止める、ギャリギャリと鉄が削れるような音を響かせながら両者は互いに鍔迫り合う。 

 

「ズルい獲物持ってるじゃないか、俺もそういうの欲しいなぁっ…!!」

 

 口から出てくるのは嫉妬の籠もった羨望の言葉…心底から羨ましいと、妬ましいとその瞳をかっ開きながらそう宣う司に獅白ぼたんは堪えきれぬと言わんばかりに笑い声を漏らす。

 

「ハハッ、何を言うかと思えば……君だって人のことは言えないでしょうにっ!!!」

 

 お前だって良い能力(モノ)を持っているじゃないかと、良い得物を持っているじゃないかとぼたんは司の腹を蹴り飛ばして無理矢理距離を取る。

 

 受けてみて分かったその質の良さ、鉄の重さと鋭さから感じるその匠の技とも呼ぶべき技術の片鱗、さも当然のように持ち出された挙げ句に自身へと振るわれたその上質な得物…それを、自身を媒体として取り出せると言うのだ、どうしてそれで他人を妬めよう。

 

 銃を構えて引き金を引く、ズガンッという音を立てて銃口から炎の魔弾が吐き出される。

 

 

 

───『獅子ノ心臓(レグルス)』は炎の特性を持った弾丸及び熱線を放つ際に、所有者の躯力を消費する。

 

───『獅子ノ心臓(レグルス)』の放つ弾丸は二種類…タメの無い通常威力の物と溜めの必要な高威力の物…当然ではあるが威力がある後者の方が消耗は激しく、逆に通常の弾丸は大して躯力を消費しない。

 

 

 

 炎の性質を持った弾丸が司の頬を掠める、ジュッと焼けるような音と共に側を過ぎ去った弾丸…自身の肉体に傷を付けたソレには目も暮れず、司はその手にある得物を下から上へと踏み込みながら振り上げる。

 

 地面を擦り上げ火花を散らしながら振り上げられる曲刀、赤熱した鉄の色へとその身を変色させながら迫る刃をぼたんは身体を横に倒すことで躱した…数本の髪の毛が、宙を舞う。

 

 交差する視線、火花が照らす互いの視界の中で司は透かさずぼたんへと蹴りを叩き込む。

 

 体重を込めた横腹蹴り…振り上げた体勢から流れるような動作で放たれたその蹴りをぼたんはまともに喰らう…が、その蹴りを意にも返さぬようにぼたんは司の顔面へと拳を叩きつける。

 

 クロスカウンター…そう呼ぶには少々泥臭く叩き込まれた互いの一撃、両者揃って僅かに後方へとたたらを踏み、互いに歯を噛み締める。

 

 未だクロスレンジ、互いの武器が平然と届くような距離…銃口が向くのと刃が振るわれるのはほぼ同時だった。

 

 銃口を弾くように曲刀が叩きつけられる、火花と鉄の音を鳴らして逸らされる銃口、それと同時に放たれる弾丸と銃声、カシュッと飛び出る薬莢がその事実をより明確に意識させる。

 

 そこから更に司は前進、弾いた銃口の先へと突き進むように刃を滑らせ一気に前へと押し出ようとするが…それを許す獅白ぼたんではない、刃が前へ出るよりも先に前蹴りを司の足へと太腿へと打ち込み足を止める。

 

 唐突に入った太腿への一撃、反射的に打ち込まれた側の足が後方へと下がる、その隙を逃さずぼたんは拳銃を置くように投げ捨て近接戦に移行、飛び膝蹴りを司の顔面へと放つ。

 

 放たれる鋭い膝蹴り、咄嗟に両腕を交差させて防いだその一撃は本人が知るソレよりも遥かに重い、受けた衝撃で後方へとたたらを踏みながら下がってしまい、そこへと風を裂きながら振り抜かれる獅白ぼたんの回し蹴り。

 

 

「───ァァァッッ!!!」

 

 声を張り上げながら回し蹴りへと放つ蹴り、たたらを踏んで踏み止まった状態という不安定な姿勢から放たれた身体全体を使った蹴りはだがしかし、張り上げた気合が故かぼたんの蹴りを容易く叩き落とす。

 

 不安定な姿勢からの蹴り、そしてそれによって自身の一撃が叩き落されたことに獅白ぼたんの目尻が広がる、そこから反応するのかと露骨に驚いたような表情を浮かべたぼたんへと司は獣のように思い切り飛びついた。

 

 両腕両足全てを使用したタックル染みた全力の飛び掛かり、さしもの獅白ぼたんもつい先程まで武器を振り回して戦っていた人間がこのような方法で突っ込んでくるとは思っていなかったのか反応が僅かに遅れる…そして、その僅かな遅れは致命的な隙でもある。

 

 押し倒す、僅かに遅れた意識をそのままにその身体を司は地面へと押し倒す、マウントを取って足で肉体を押さえつけ、何時からそうだったのか何時の間にやら掌から生えていた柄を掴み取り一気に引き抜く。

 

 血が飛び散る、引き抜かれるのと同時に顕になる血に塗れたその刀身、短く刃渡りも少ないその小刀を司は容赦無くぼたんへと荒々しく振り下ろす。

 

 迫る刀身、心臓を抉り取ってやると言わんばかりの全力で持って突き立てられようとしているその刀身を獅白ぼたんは白刃取りの要領で受け止める。

 

 受け止められた刀身、知ったことかと司は体重を乗せながら力を込める、奥へ奥へと行けと言わんばかりに強く強く押し込まれそうになるその小刀をぼたんは必死の表情で食い止めていた。

 

 汗が滲み出る、込められた力の重さに呆れた笑いが出そうになるが、そんなことをすれば一気に押し切られると分かっているだけにそれが出来ない。

 

 刃が滑る、ズリズリッと押し留める手を滑りながら徐々に徐々にぼたんの肉体へと刃が進んでくる、幾らマウントを取って体重を込めているからと言ってこうも力負けするかとぼたんは歯を噛み締め…仕方がないと決断した。

 

 片手を刃から離す、片手を空手にする…その瞬間、一気に刃が自身へと到達し皮膚を貫き刃が突き立てられる、異物が身体の中に侵入してくる感覚と痛みを味わいながら獅白ぼたんは空手となった右手を司の身体へと伸ばす。

 

 瞬間…獅白ぼたんの手に収まる、灰銀の拳銃。

 

 

「───『獅子ノ心臓(レグルス)』ッ!!」

 

 その名に答えるように放たれる熱線、通常よりも溜めを短くした簡易的な高出力の弾丸が司の腹部を撃つ、突如として肉体に奔った衝撃にさしもの司も耐えきれず後方へとその身体ごとふっ飛ばされる。

 

「ッッ!? ゴホッゴボッ…!!」

 

 ふっ飛ばされてから痛みに気付いたのだろう、ふっ飛ばされて地面に尻餅をついた司は驚愕の表情を浮かべながら咳き込んだ、本当に唐突にやってきた衝撃と痛みと息苦しさに脳内が混乱していた。

 

 そしてそれはぼたんも同じこと、脂汗を大量に浮かべたぼたんは自身に深く突き刺さる直前だった小刀を抜き取り投げ捨てる、荒く息を吐きながら迸る痛みに耐えて、獅白ぼたんは『獅子の心臓』のマガジンを交換する。

 

 ジャコンッと装填されるマガジン、時間にして僅か二秒そこら程度であろう獅白ぼたんのリロードタイム、それを終えたぼたんは直ぐ様その銃口を牧村司へと向けて───

 

 

「───『血染(ちぞめ)纏い』」

 

 

 先程掌から引き抜いた小刀、それに己の血を纏わせる司の姿を、ぼたんは捉えた。

 

 纏わせられた宿主の血液、指を這わせるように刀身をなぞるその指を追うように刀身へと血が纏わりついていく、ぽたりっぽたりっと液体の状態を保持したまま刀身を泳ぐその色は、何処までも鮮烈的な赤さを持っていた。

 

 ぽたりぽたりと滴り落ちる赤色の液体、血管がそのまま通っているのかと問い質しくなる程ににドクンっドクンっと脈打つその刃、何処か美しさすら感じさせる程のその色に不思議と心奪われる者も少なくはない。

 

 弾丸が放たれる、溜めを必要としない通常威力の代物が躊躇無しに放たれる、恐らく溜めを入れれば一気に近づかれて斬られかねないと判断したが故の行動であろうその銃弾へと、司は一息に刃を振り抜いた。

 

 瞬間、伸びる血染めの刃…一瞬、ほんの一瞬、振るわれたその瞬間だけその射程範囲を伸ばした血の刃は放たれた弾丸に接触するなり、その弾頭を切り裂き真っ二つとする。

 

 ヒュンッと脇へと逸れるぼたんの弾丸、時間にすればほんの一瞬のやり取りでしかないその一連の流れを、しかし明確に認識していた獅白ぼたんはやはり呆れたように口を開く。

 

「本当にどの口で───」

 

 

 自分を弱いと口にするのか…そう言葉を続けることすら許さずに牧村司は…血染めの怪物は掌から更なる得物を取り出しながら此方へと向かってくる。

 

 取り出すのは刀…合口拵に加工された打刀、武骨でこれと言った装飾も無いその刀を自身の掌から血液ごと引き抜いた司はそのまま居合斬りでもするかのように獅白ぼたんへと斬りかかる…そして、そんな姿を間近で見せつられた獅白ぼたんは…決断した。

 

 

「───『ネメア』」

 

 

 自身の本領…その一端を開帳することを。

 

 

 

 

 

 





 ねみぃ
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