機械仕掛けの君   作:ORC機関

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娯楽がなさすぎて書き物が娯楽となって来てる。
ヤニよかいいんだろうけど…


新しい仲間

「奥様、旦那様、珈琲はいかがですか?」

「わー!飲む飲む!」

「あー、ども」

機動任務部隊の事務室に賑やかな声が響いている。

ナオと燕、そして彼の新しい家族のマルベリーだ。

マルベリーの件は話せば長くなる。

サギリ峠の事件で彼女は逮捕され、ナオを監禁した件と人形損壊罪の容疑が掛けられた。

しかし、OSの解析を行なった結果、彼女は保安警備機体である事が判明した。

サギリ峠の大部分は亡くなっているとはいえ主人様と呼ばれた者の所有する土地である。

つまり、捜査のためとはいえ私達は意図せず住居の不法侵入を犯していたのだ。

彼女の役割は不法侵入者の確保、無力化。

だから燕とナオは気絶、監禁されたのだ。

主人様と一緒に眠ったあの人形が屋敷の全ての管理者だった事もあり、彼女は利用された立場である事も考慮して法的処分の取り下げられた。

異常な言動や行動はOSのバグや前管理者の書き換えが原因であったらしく、リペア後に引き取り先探しが始まった。

しかし、本人の熱烈なる要望でナオへと所有の話がやってきた。

引き取り手がない場合は初期化されスペアパーツにされると説明された彼は複雑な顔で承諾し現在へ至る。

最初の頃は燕が彼女の事を受け入れていなかったがしばらく経過した今ではとても仲良くなっていた。

そのせいで砂糖を吐きそうなイチャつきがさらに濃度が濃くなっており、事務室の珈琲が今までの倍で消えていった。

私は二人に挟まれて潰れかけてるナオを見るのにも飽きて来ていた。

「ういー」

「ただいま戻りました」

事務所にアキトと霞が戻って来る。

朝の緊急対応から今戻ってきたようだ。

「おかえり、霞ちゃん!」

「お姉様、お疲れ様です」

フランクに手を振る燕と対照的に深々と頭を下げて出迎えるマルベリー、霞は困った顔をしている。

あの時霞がマルベリーを確保したのだ。

彼女との熾烈な近接戦を行なったあと、ボコボコにして手錠を掛けている。

その手前、マルベリーからしたら怒らせたらいけない先輩と認識してるのだろう。

「マルベリーさん、やめてください」

困惑して小さく縮こまってしまった霞がマルベリーにお願いしていた。

「いえ、新入りの手前止めるわけにはいきません」

彼女の言葉にさらに困った顔でアキトを見上げた。

彼は肩を竦めてみせる。

「さぁ、お姉様どうぞ此方に」

慣れた所作で彼女のデスクに誘導すると手際良く飲み物が出される。

置かれたのはパンケーキとオレンジジュース、彼女の好物だ。

まるで借りて来た猫の様にマルベリーと机の上に置かれた物を交互に眺めた。

「アキト様はアイスコーヒーでよろしいでしょうか」

アキトは机に買い物袋を置き、椅子にドカリと腰を落として背を預け、首を縦に振る。

マルベリーが給湯室へ消えてゆく。

「ナオ、職員所有人形雇用制度の申請は通ったか?」

アキトはマルベリーが居ない事を確認してナオに聞く。

「通った、後は装備と基礎訓練教育」

珈琲を啜りながら彼は答えると書類に視線を落とす。

「マルベリーちゃん前職が保安だけあって私より優秀だよ?」

座るナオを背後から抱きしめながら言う燕、少し複雑そうな顔をした。

それ以外は相変わらず通常運転だ。

「お前は民生品だから改修と調整で時間食ったんだ、気にすんな」

「お兄様の言うとおり、生活支援型と保安警備型じゃあソフトも材質も違いますから…」

アキトの言葉に霞が同意する。

彼女はパンケーキを小さく切ってはアキトの口元に運ぶ、パクリと食べると彼は首を縦に振った。

美味しいらしい。

霞も食べ始める。

「料理も家事もできてさらに武装も扱える…無理に職員雇用しなくても良かったんだぞ?」

アキトの言葉にナオが苦笑いする。

「他ならぬ彼女の要望だよ、旦那様のそばに居るのが私の役目だそうで」

彼はコーヒーを啜り書類にサインをする。

「燕、お前はどうなんだ?先輩としては複雑だろう?」

「それは違うよ、二人で幸せにするんだよ」

相変わらずニコニコと笑顔を振り撒く燕。

「うげぇ、砂糖吐きそう」

そう言うと口元に押し付けられるパンケーキを食べるアキト。

ご機嫌そうに霞の顔が蕩けた。

「マルちゃんはね、憧れてたんだよ」

少し寂しそうな表情で語りだす燕。

警備保安用の彼女は来る日も来る日も巡回ばかり、装いこそメイドだが役割は警備ドローンと同じ。

彼女の中のLAD(生活支援人形)としての役割は必要とされていなかった。

しかし、館の主人様は優しい方で警備ドローンの彼女にも優しい言葉をかけて労った。

それは彼女にとって劇薬だった。

自分もいつか素敵な主人を見つけて仕えたい。

それは彼女の役職上残酷だが不可能に等しい願いである。

そんな憧れに近い感情を胸に何年も待ち侘び、ついに出会ったのがナオであった。

「人に必要とされないのはとても辛いんだよ、同時に必要とされる喜びってとてつもない幸せなんだ」

私もそうだったから、と彼女は語る。

「えぇ、必要とされるのなら私は愛人の枠で構いません」

思わず全員が給湯室の入り口に視線を向ける。

マルベリーが飲み物を乗せたトレーナーを片手に佇んでいた。

「私はそれで良いのです、十分幸せですから」

アキトの前に優しくアイスコーヒーを置く。

「あー、その…悪かった」

気まずそうに彼は謝罪すると彼女は手元で口を隠しながら笑う。

「心配するのは無理ありません、私もそうしますから」

そう告げるとナオの傍へと戻り待機している。

欲しかったものを手に入れた彼女はもう無敵なんじゃないかな?

沙百合さんが淹れた珈琲に口をつけた。

とても甘く感じた。

「沙百合さん?砂糖何本入れた?」

思わず彼女に問いかけるとムッとした顔をする。

「0本です、甘い訳ないでしょう」

彼女にマグカップを渡すと訝しげに口をつけた。

「ブラックコーヒーじゃないですか」

複雑そうな表情の彼女、どうやらブラックコーヒーも無力化されてしまったようだ。




因みにマルベリーは燕と同じぐらいデカいです()
そして姉貴認定される霞、なぜ強いのか?そら戦隊ヒーローごっこの賜物ですよ(男の子がいるドールの宿命)
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