機械仕掛けの君   作:ORC機関

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River side sunset

「お姉ちゃんキーック」

派手に吹き飛ぶ容疑者、あれは痛そうだ。

「お姉ちゃんパーンチ」

もう一人の男が宙を舞った。

パトロールの途中、休憩の為立ち寄ったコンビニで私達は強盗に巻き込まれた。

私は魅力的な商品棚と睨めっこをしているとデカい怒鳴り声が店内に響いた。

覆面をつけて店員に銃を向ける強盗だった。

コンビニの駐車場でも比較的目立たない影の所の駐車スペースに停めておいた為、彼らは私達に気づいて居なかった。

お巡りの居る時に仕掛けるなんてつくづく運の悪いヤツ。

どうしたものかと思案している矢先、動き出したのは沙百合さんだった。

「金を出せ!はやく…」

十八番のセリフを言いかけると男は吹き飛んだ。

そうして今に至る。

二人は床に伸びており抵抗する素振りは見られない。

沙百合さんはキメポーズをするとご機嫌そうに鼻で笑った。

「お姉ちゃんの前では造作もないですね」

メイド服のロングスカートをたくし上げ、白いニーソの足を色っぽく見せつける沙百合さん。

何してるんですか、沙百合さん?

そんな彼女になんともいえない残念な気持ちを胸に抱きつつ男二人に手錠をかけた。

こんな残念なのに一撃で沈められた彼らに少し同情した。

二人を応援に駆けつけた地域課に引き渡し、報告を終えてコンビニを後にする。

店員のお姉さんからドーナツをタダでもらえた、ラッキー。

私はご機嫌にパトカーに乗車した。

アイスコーヒーをホルダーに入れドーナツに齧り付く、やっぱコレだよな。

沙百合さんはドーナツの入った箱をご機嫌そうに抱えていた。

私は貰ったドーナツを食べ切ると車を発進させる。

穏やかな午後の日差し、終業まで後少しだ。

交差点を曲がり、川辺の道路を行く。

日差しに水面が煌めいていた。

残念ながら今回の件で報告書を書かなければならない。

少し憂鬱になりながら署へと戻るべく車を走らせる。

「おかわりは要りますか?」

チラリと横を見ればドーナツを片手にこちらを見る沙百合さん。

多分、食べさせたいのだろう。

「貰おうかな」

私は片手を彼女へ差し出す。

ドーナツを受け取る為だ。

「ぶーん」

彼女がそう言うと手元のドーナツを口元へ飛来させる。

沙百合さんは何かと付けて食べさせる事をしてくる。

彼女曰く小さい頃の私への餌付けがクセになっているようだ。

「私の手からケイが食べてくれるのがなんて言うか気分が高揚すると言いますか…」

なんとなく昔に気になって聞いてみた時、恍惚とした表情で語る彼女を覚えている。

私が大きくなっても変わらないようだ。

「アナスタシアちゃんの話では明後日は雨のようですよ」

アナスタシアちゃん、家に置いてある音声AIアシスタントの事だ。

沙百合さんの友達、たまに私達の知らない言語で会話し始める。

「えー、雨かあ」

私の嫌そうな声に彼女は小さく笑うと彼女が再度ドーナツを口元へ飛来させる。

「傘、忘れないでくださいね」

「忘れるのはいつも沙百合さんでしょ?」

「傘は一つでいいんです」

私の抗議に少し嬉しそうな沙百合さん、雨の日は彼女が傘を忘れる為いつも一つだ。

そんなこんなで署の駐車場に辿り着く、アキトやナオのパトカーが止まっている事から既に事務所へ戻っているのだろう。

定位置へ停車し、パトカーから降りる。

片手のアイスコーヒーをひと啜り、甘い口の中が洗い流されていく。

これから砂糖濃度が濃い場所に戻るのだ、気を引き締めないと。

隣を見れば助手席から降りた沙百合さんが片手のドーナツを食べ切っていた。

あれ?それ私の食べかけでは?

私の視線に気まずそうに目を逸らすと足早に入り口へ向かう。

車を施錠し彼女の後を追う、西陽が署を照らしていた。

 

「お兄様、この名刺はなんですか?」

「飲み屋のものです」

「では何故女性の名前と電話番号が書かれているのですか?」

「音読してあげてもいいんですよ?」

「…」

「お兄様、この間のお留守番、私すごい寂しかったんですよ」

「だから答えてください、この間の退勤後にどちらに行かれたのでしょう?」

「…キャバクラ」

「お兄様!!!」

事務所に戻れば小さく縮こまっているアキトと仁王立ちしている霞、どうやらお説教の最中のようだ。

「おかえりー」

ナオがパソコンと睨めっこしながら出迎える。

そんな彼の背後では燕が頭に鼻を埋めて深呼吸していた。

流石のマルベリーも背後で苦笑いしている。

「カオスすぎるだろウチの事務所」

思わず私の口からそうこぼれ落ちる。

「何があったのさ?」

私の問いにマルベリーが答えた。

「アキト様はパトロールの後お姉様が風俗店の名刺を私服の内ポケットから発見し、お説教中です」

「奥様は旦那様が業務で構って頂けなかった為、あの様に…」

丁寧な解説に私は頭を抱えた。

「そういえば、地域課のサクマ様がいらっしゃいました」

あ、そうそうとマルベリーが私に報告を上げる。

多分、強盗の件だろう。

「了解、ありがとう」

彼女に感謝を述べて自分のデスクに戻る。

サクマさんの書き置きに目を通す、コンビニ強盗のお礼とサギリ峠の後始末は順調に進んでいるようだ。

視線を上げれば沙百合さんは貰ったドーナツを配っていた。

そんな彼女を横目に報告書を作成する。

今日という一日が終わろうとしていた。




お兄様のお説教リスト
・煙草
・酒
・約束を忘れる
・キャバクラ←New

アキトくんの負け、通勤用ジャケットになんて不用心ですね。
なんで負けたか次回までに対策と共に考えといてください。
ほな、いただきます(某CM)
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