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めっちゃ嬉しい!だいすこ!!!
改めて読んでいただきありがとうございます。
半端者の粗品ですがこれからも楽しんでいただけるとと幸いです。
長く眠っていたようだ。
凝り固まった身体を起こして大きく伸びをする。
肩の傷が痛み、今までの事を思い出す。
巡回業務中に銃撃を受けて…その後は覚えていない。
思い出せる最後の記憶は辛そうに謝罪の言葉を口にしながら私を抱きしめる沙百合さん。
そういえば、彼女はどうしているだろうか?
辺りを見渡す、白い部屋に白いベット、腕に刺さった点滴と心電図モニターが一定のリズムを奏でる。
ベッド脇の床頭台には私の好物であるチョコドーナツと花瓶が置かれており、白い百合の花が生けられていた。
なんとなく、沙百合さんみたいだなと思った。
病室の窓から雨音が聞こえる。
静かな部屋に居ると世界に私一人になったような孤独感がゆっくりとやって来た。
いつも沙百合さんと一緒の為、尚更だ。
あの時の沙百合さんが脳裏を過ぎる。
なんだか心配になってきた。
ベッドの側にぶら下がっているスイッチが目に入る。
ナースコールだ。
私は思いっきり押し込んだ。
看護師たちが駆けつけたと思いきや大慌てで先生を呼びに行くと初老の医師が息を切らせながら登場した。
ヨシフミ先生だ。
膝に手を置きゼェゼェと荒い呼吸で苦しそうにしている。
彼のドールが背を撫でている。
沙百合さんに似た面影を持つ彼女の名は白菊。
沙百合さんの型式で得た運用データを元に開発された実質的後継機に当たる機体だ。
息を整えた彼は4日間昏睡状態だった事、沙百合さんが毎日欠かさずやって来ては活動限界ギリギリまで居た事などを教えると診察や問診を行い、嬉しそうに笑った。
「ヨシフミ先生、毎度毎度ご迷惑を掛けてしまい申し訳ありません」
私達の署附属の病院にお世話になるのは何回目だろうか。
私は段々と無理の効かなくなってきた彼に頭を下げた。
「いやいや、それが私の仕事なんだから」
「一つお願いするとしたら、彼女を気にかけてあげてくれ」
君の姉さんがずっと付きっきりだったんだよっと椅子に座る彼が私に微笑みかける。
沙百合さんの事だろう。
寂しくなった頭頂部を白菊が撫でている。
お前が原因か白菊。
ご機嫌そうな彼女から視線を逸らす。
「ミタケ君を心配してる人は君が思うより多いんだから…ね?」
先生は立ち上がるとファイルを私に差し出した。
リハビリの予定が入っている。
鉛玉一つでこの様だ、ドールのようにパーツを取り替えて完了とは行かない。
そうだったらよかったのにな。
感情の希薄な顔でダブルピースをした彼女が脳裏に浮かんだ。
ツカツカと足音が廊下から聞こえてくる。
先生はごゆっくりと言う言葉を残して帰っていく。
彼と白菊の入れ違いで見慣れた人形が入室する。
「ケイ…」
沙百合さんだ。
その表情は相変わらず希薄だが少し目が大きく開いている。
彼女から感じ取れる雰囲気には安堵と喜びを感じ取れた。
「えーっと?やっほー?」
こういう時ってどんな顔をしたらいいんだろうか?
私は一抹の気まずさを胸にぎこちない笑みを浮かべた。
彼女は俯くと無言のまま早足で近づいてくる。
あの時の対応が不味かったのだろうか?
射撃訓練の時もかなりご立腹だった事を思い出す。
「あー!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「対応ミスってごめんなさい!射撃の練習2倍にしますから!」
無言で近づいてくる彼女に反射的に言葉が出てきていた。
みっともなく手で頭をガードする。
拳骨の一つで済むだろうか、私は衝撃と痛みに備えて目を瞑った。
私に襲いかかったのは衝撃でも痛みでもなく、柔らかな感触だった。
柔らかな香りと暖かな熱量に恐る恐る目を開ける。
沙百合さんは私の頭を胸に抱いて髪に顔を埋めていた。
「よかった…貴方が無事で…」
まるで空冷型補助冷却器である擬似肺の中を満たそうとするように深呼吸する。
彼女はすごく不安だったのだろう、大切に想ってくれている事に胸の奥が暖かくなった。
でもお風呂とか入れてないからちょっとやめてほしいな。
「気が狂いそうだった…このまま目覚めなければ…私…」
さらに深呼吸をする彼女、沙百合さんの臭気センサーは高性能だからマジでやめてほしいかな。
「お風呂入れてないから身体汚いよ」
私は遠巻きにやめてほしいと伝えてみる。
「ケイ素が不足気味でしたので濃厚で最高です」
少しうっとりした声色が頭上から降ってきた。
「せめてお風呂に入らせてよ」
「じゃあ、お風呂の残り湯は私がもらいますね」
「保存用を取った後、そのお湯でうどんを食べながら私が浸かります」
私の言葉に彼女はそう返した。
段々と呼吸が粗くなって来ている。
「きも」
沙百合さん、流石にそれはどうかと思うよ?
私は労いの気持ち込めて彼女を抱きしめて背中を撫で摩った。
「心配かけてごめんね、沙百合さん」
彼女の事だ私が眠っている間に不安や責任で辛い思いをしたんだろう。
私の言葉に彼女は声を殺すように涙声で呻いた。
人形に感情はない。
しかし、経験や人間関係から学習し得たデータは彼女達を限りなく人へと近づけていく。
人間の成長と同じ、私達との交流で造られたそのデータは最早感情であった。
同型機種でも全く同じ個体が居ないのはその為だ。
背中を撫でる度にピクリと反応する沙百合さん、小さく切なそうな声が漏れ出て来ている。
あれ?思ってたのと違う反応だぞ?
白菊が静かに扉を開けるとあっとした表情を見せた。
違うんです白菊さん!私は安心させたくて!
何かを察したのか満面の笑みをこちらに向けると人差し指を口元に当てる。
彼女は気付かれないように無音で扉を閉めて行く。
違うんです白菊さん!声抑えてねじゃないんです!誤解です!
思わず撫でるのをやめると名残惜しそうに声を漏らした。
私の頭が沙百合さんから開放される。
「終わりですか?」
物欲しそうな目でこちらを見ている。
彼女は一度甘え始めるといつもそうだ、爆発すると気が済むまで止まらない。
今回の一件を考えると尚更だ。
「まず、私が眠っていた間の事を知りたい」
「どうなったの?」
沙百合はベット脇の丸椅子に腰掛けた。
どうやら局長指揮下で捜査が行われたらしく首謀者は無事逮捕されたとの事だった。
アキトと霞ちゃんが頑張ってくれたようだ。
彼らだけでなく、地域課や捜査部門、装備備品課も協力してくれたらしい。
車で逃走を図った首謀者を逮捕してくれたのは高速機動隊のサクマさんだそうだ。
何でも屋として様々な部門を手伝っていた為、みんな協力してくれたらしい。
何でも屋として頑張ったのは無駄ではなかったのだ。
「ケイ、本当にこめんなさい」
沙百合さんが頭を深々と下げた。
「私がしっかりしていれば…お姉ちゃん失格です」
下げたままの彼女の頭を優しく撫でる。
今回ばっかりは運がなかったとしか言いようがない。
犯人の奇襲攻撃だったし、彼女は医療型ではない。
あの時にできる最大の処置があったお陰で私はこうして生きている。
彼女は出来る最大の事をした、これ以上求めるのは酷な話だ。
「沙百合さんの所為じゃないよ、むしろ沙百合さんのお陰でこうして助かったし」
「そんなに思い詰めないで」
私の言葉に彼女は顔をあげると思い詰めた表情が和らいで笑みを浮かべた。
すると彼女は頭をこちらに向けて差し出した。
頭を撫でて欲しいようだ。
その日、私は迷惑をかけてしまった彼女の要望に応えて終わった。
なんて事のない一日だった。
霞「お兄様が悲しんでる!私がなんとかしてあげなきゃ!」
後日、アジトに催涙ガスキャニスターが襲いかかったそうな