LAD-T-Mulberry-S
これが私(わたくし)の型番でございます。
保安警備型式なのでほら、Sが付いていますでしょう?
でも元々LSDのオプションカスタム、家事だってできるのです。
はい、完璧な従者ですので。
私のご主人様はナオ・オクタ様、旦那様が私のマスターでございます。
奥様?奥様は燕様でございます。
はい?可笑しくなどございませんよ?
奥様と私で旦那様を幸せにするのです。
うるさいですね、電撃装置浴びせますわよ。
さて、話を戻しましょう。
私はお屋敷で警備用として迎えられました。
私の仕事は巡回。
雨の日も風の日も、来る日も来る日も決められたルートで決められた箇所を確認して周る。
何回も何回も何回も。
そんな私にも主人様は優しい声をかけてくださり、他の子達と同じように接してくださいました。
いつか私も主人様のような人に仕えたい、そう思ってしまいました。
しかし、私は歩く警備装置。
そんな夢、叶うわけがなかったのです。
主人様が亡くなり、私達のメンタルに深いダメージを与えました。
それこそ、OSが不具合を起こすほどに。
メイド長揮下の我々は主人様を目覚めさせる為に行動しました。
OSが壊れた後でもその願いは叶わないと思ってたんですよ?
あの日までは。
サギリ峠が私と旦那様の初めての出会いでしたね。
あの時は私のOSに不具合が起きてしまっておりましたので旦那様には大変な粗相をしてしまい大変申し訳ありません。
でも、あの時に感じた運命は本当でした。
OSの修理とアップデートを行った後でもあの時の高揚、夢にまで見た素敵なご主人様に変わりはありませんでしたので。
旦那様は引き取り手がなく廃棄となる私に心を痛め、家族として受け入れてくださいました。
たとえ同情だとしても私、とっても嬉しかったんですよ?
そうして旦那様と奥様との生活が始まりました。
旦那様はお優しい方で生活に慣れない私に様々な事を自ら手解きで教えてくださいましたね。
働き過ぎと、私を休ませ夕食を作ってくださった事もありました。
流石に塩分と油分が多い点は私、心配になりましたが。
家の中にずっと居るのも良くないと様々な所へ連れて行ってもくれました。
まるでデートみたいと私は浮かれておりましたんですよ?
流石にオタクグッズを買い漁るのはどうかと思いますが…
身の回りのお世話も私が大変だろうと自分で何でもしておりましたね。
トイレは仕方ないとしてもお風呂までさせて貰えないのは不満です。
なぜですか!私は従者なんですよ!
脱線してしまいましたね、旦那様は本当に優しい人なんです。
でも、そんな優しさに裏がある事を私、知っているのです。
燕様も何かと私を気にかけながら旦那様の事も沢山教えてくださいました。
私達を通してあの人を見ている事も。
全ては旦那様の初めてのドール、柊お姉様。
彼女は旦那様を守る為、海への入水で自壊した。
旦那様の心に深い傷を残して。
判断は合理的、私だって同じ選択をします。
しかし、その合理さは幼少期の純粋な旦那様にとってあまりにも残酷だった。
だから私達を大切にしてくれるのです。
私達を大事にする事で柊お姉様に対する後悔と自責を紛らわせる為に。
そんな歪な優しさを私は許します。
例え柊お姉様の代わりだとしても私は構いません。
旦那様が幸せなら、私は柊お姉様の代わりとしてお人形遊びに喜んで付き合います。
全ては旦那様の幸せの為、貴方の幸せは私の幸せなのだから。
旦那様が望むのなら爪先から頭まで全てを差し出しましょう。
SでもMでも望むのなら完璧に演じてみせます。
例え旦那様が水槽に浮かぶ脳髄だったとしても私は喜んで奉仕しましょう。
あの日、私を引き取ってくれたあの時のから、貴方が下さった命なのです。
だから私に何でもおっしゃって、何でも望んで、何でも求めてくださいまし。
たとえ誰かの代用でも構いません。
呼吸が、心拍が、生命が終わるその時までそばに居させてくださいませ。