機械仕掛けの君   作:ORC機関

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ワルプルギスの夜

装甲車が派手な音を立てて正門を突き破る。

ジャンクヤードの建物からマズルフラッシュが光り銃撃が始まった。

「アキト!突っ込むぞ!」

私達のパトカーも敷地へと滑り込む。

後続の部隊も続々と殺到していた。

「こちら765号車、容疑者が発砲!繰り返す容疑者が発砲!」

「容疑者は複数人で自動小銃を装備!至る所に居るぞ!」

先陣を切った装甲車からの報告、ヤツら金があるようだ。

我々もパトカーを盾にして応射する。

「こちらCP了解、銃器対策班を派遣した現地にて待機せよ」

つまり、彼らが到着するまで動けない事が確定してしまった。

機動任務部隊なんて大層な名前だが業務内容は何でも屋、専門職には勝てっこない。

パトカーに隠れながら顔を出し銃撃しては引っ込めてを繰り返し、さながら私達はモグラ叩きの様だ。

「ナオ、どうにか出来ねぇか?」

車の影に身を隠し肩の無線機に叫ぶ彼と守る様に覆い被さっている霞。

私はと言えば沙百合さんに首根っこを掴まれ彼と同じく身を潜めている。

「あー、できる事と言えば狙撃ぐらいだけど」

「奴らの頭を出させなければ十分だ」

「かしこ鞠」

彼が返事を返すと遠くから銃声が複数響いた。

銃撃が止み静かになる。

「ナオ、助かったぜ」

「効果判定は不能、油断しないでね」

燕ちゃんからの報告に視線を建物へと向ける。

「283号車、前進する!」

外に待機していたパトカーが敷地に侵入し人員が展開する。

「283…サクマの兄貴じゃね?」

佐久間さん、私達の先輩で地域課の高速機動隊に所属している。

「げぇ、本当だ瑠璃の姉貴も一緒じゃない?」

私は思わず口に出してしまった。

彼のドールである瑠璃は普段はふわふわとした柔らかい印象の性格をしているが怒ると怖い。

過去の事件捜査で彼と共に無茶な追跡をした際に私達三人は霞、瑠璃、沙百合さんにお叱りを受けた。

その時一番怖かったのが瑠璃だったのだ。

「アキト!ケイ!大丈夫か!」

パトカーから降車した彼がこちらに駆け寄って来た。

保安官の帽子であるキャンペーンハットとサングラス、茶色の制服の胸にはバッジが付いていた。

彼の相棒の瑠璃は三歩後ろをついて来ている。

彼女の手には防弾シールドが装備されていた。

「なんとか生きてます」

「兄貴、危ないっすよ!」

堂々とした歩みに私とアキトは声を上げる。

狙ったかの如く銃声が響き、彼の足元近くに土煙が上がった。

「わっ!わっ!」

ひょこひょこと交互に足を上げ弾を避ける彼の前に瑠璃が飛び出した。

防弾シールドを構え彼を守るとサクマさんは私達のパトカーに滑り込んだ。

「兄貴、このままじゃキリが無いんでガス叩き込みません?」

アキトの提案に霞が目を輝かせ、笑顔で擲弾銃を取り出した。

確かにこのまま籠城されてはたまったものじゃない。

「ルリもそれが一番だと思います」

防弾シールドを構え敵を観察する瑠璃はアキトの意見に同意した。

サクマさんはキャンペーンハットを被り直した。

溜息を一つ吐いて無線機の通話ボタンを押す。

「キング、ガスの使用許可を」

「こちらキング、使用を許可する」

局長の返答にアキトがニヤリと笑うと霞にハンドサインを送った。

霞のリボルビンググレネードランチャーがポンポンと気持ちいい音を奏でる。

窓を突き破り室内に撃ち込まれたソレは本来デモ鎮圧用の催涙弾だ。

暴露すると目の痛みによる涙、鼻水、咳が止まらなくなる。

人体への害は無いが呼吸困難を起こす可能性はあった。

建物内から咳や咽び泣く声が聞こえてくる。

瑠璃が拡声器をサクマさんに渡すと彼は容疑者達に呼びかけた。

「野郎ども、お前らは完全に包囲されてんだ!」

「おとなしく投降してお縄に付きやがれ!」

ハリウッド映画のような彼を横目に私は建物の中を伺った。

窓に人影は見えず、格納庫の扉は閉まっている。

「こちら銃器対策現着、裏口より侵入する」

対策班が突入を開始し、事件は片付く事だろう。

その時格納庫の扉が爆破されて吹き飛んだ。

中の催涙ガスが流れ出て来ている。

「警戒しろ」

霧の向こうに蠢く大きな影、その巨体が顕になった。

作業用のパワースケルトンが足音を響かせ現れる。

まさかの登場にサクマさんはサングラスを外し、目を凝らした。

中世の鎧を連想させる手製の装甲、背中にタンクの様なものを背負い手元には筒が握られている。

「ケイ!」

「ユウイチさん」

沙百合さんと瑠璃が声を上げて私とサクマさんを引き倒す。

私達の上を大きな炎が通り抜けた。

「アチ、アチ!」

サクマさんはキャンペーンハットのつばに引火した炎を叩いて消すと被り直した。

「チクショウ!この帽子高いんだぞ!」

車の影からサクマさんが叫ぶと再び頭上を大きな炎が通り抜ける。

「生命反応無し、起動信号を確認」

「武装ドールです!」

沙百合さんが叫ぶと霞が回転弾倉の中身をぶち撒ける。

空の薬莢が音を立てて地面を転がり、彼女は素早く弾薬を装填する。

40mmHE、催涙ガスでは無く殺傷能力の高い擲弾だ。

「お兄様!」

「まかせろ!」

アキトのXM177E2が吠え、霞が移動する。

私は閃光手榴弾を取り出した。

「アキト!」

私が彼の名前を呼ぶと射撃の手は止めず、此方に一瞬視線を向けて頷く。

「世界に光あれ!」

ピンを抜いたソレを鋼鉄の化け物に全力で投射する。

アキトがパトカーの陰に隠れ、サクマさんがサングラスを掛け直す。

眩い閃光、耳が痛くなるような炸裂音が世界に顕現した。

「沙百合さん!」

ヤツは動きを止めた、彼女の名前を叫ぶ。

「お姉ちゃんにお任せください!」

彼女の手にはスパス12コンバットショットガンが握られている。

12ゲージスラグ弾が装填されていた。

散弾銃が待ってましたと言わんばかりに火を吹いて目標の体勢を崩す。

この隙を瑠璃は見逃さなかった。

素早い身のこなしで躍り出た彼女はシールドによる近接攻撃を実施。

怪物がうつ伏せに倒れ込む。

「霞ちゃん!」

「はい!お姉様!」

瑠璃が跳躍し距離を取る。

霞の40mmHEが心地よい音で射出された。

榴弾は弧を描き背部のタンクで炸裂し爆発する。

離れた位置でも熱風が頬を撫でた。

「こちら銃器対策班、内部は制圧」

「被疑者を確保した。」

銃器対策班からの報告が上がり、ひとまず事件は解決した。

パトカーから恐る恐る顔を出せば黒焦げになったドールの残骸が視界に入る。

ホッと胸を撫で下ろした。

私は隠れていたパトカーの側面を確認する。

火炎放射器が当たったドアは焼け焦げ変形してしまっている。

車内もよく燃えてしまったようだ。

「大丈夫?」

無線越しにナオが心配そうに聞いてくる。

「パトカーがお釈迦になった事を除けば大丈夫」

あぁ、始末書ものだ。

余りの出来事に空を見上げる、私を笑うように星が瞬いていた。

「ケイ、私も謝りますから」

視線を下げれば心配そうな沙百合さんと目が合った。

「俺らは仲間だからみんなで姉貴に怒られに行くぞ」

「そうですよミタケさん」

アキト達もそう言ってくれた。

持つべきものは友なのかも知れない。

「え?俺も含まれてるの?」

苦笑いする瑠璃とサクマさんの困惑した声がジャンクヤードに響いた。




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