暑すぎて火のついた煙草を持ってられなくなってしまう今日この頃。
針金でも巻いてみようかしら…
LAD-T-Delphinium。
これが私の型番、素敵でしょ?
私のマスターはナオ・オクタ、私のご主人様!
世界で一番素敵な人なの!
私と彼との出会いは販売店、他の子より背の大きな私は売れ残っちゃってたんだ。
せっかく出来たお友達や姉妹たちが一人、また一人と旅立って行ってずっと見送る側だった。
どんなご主人様が出来るんだろうってずうっと、考えてた。
繰り返す日々に嫌気が差してきた時にご主人様が来てくれたんだ!
「この身長だから、高い所に手が届く機体だといいな」
店員さんと話す彼の言葉に私は運命ってこういう事なのかなって感じた。
大きすぎた背を誰も必要とせず、邪魔者のように思われていた私を必要としてくれた。
それだけで幸せだった。
その日の内にご主人様のお家に迎えられて私は家族になった。
ご主人様はなんていうかインドア派だった。
暇さえあればゲームや読書ばかりしていて活発に動きたい私は少し不満だった。
でも、ご主人様は優しい人だ。
私がしたい事に付き合ってくれて、欲しいものをくれて、大切にしてくれてるって感じた。
でも、それは私を通して誰かを見ているって何となくわかっちゃった。
写真立てに入っている二人の写真と脇に大切に置かれているドールの髪飾り、私の前に居たドール。
彼が幼い頃に居た彼女は自壊してしまった。
人で言う自殺、普通私達のプログラムでは導き出されない回答。
しかし、彼女はそれを導き出した。
他ならぬ彼のために。
かつてドールを悪用し大問題になった事件「キルドール事件」。
制御を乗っ取り管理者を死傷させるだけでなく、公共交通機関への妨害や無差別テロを発生させた。
ドールの自我を保ったまま、彼女達は悪魔のような所業をさせられた。
悲鳴に似た叫びを上げながら暴走する姉妹は見るに堪えない。
その悲しみは人間だけでなくドールにも及び、制御を乗っ取られて最愛の人を手にかけてしまった彼女達は精神に異常をきたしてしまう。
姉妹達は自壊するか致命的なエラーで生涯を終えた。
前のドール、先輩って呼ぼう。
その時、先輩はご主人様と海に来ていた。
ご主人様が流星群を見たいと言ったため、夜の海に家族で来ていたのだ。乗っ取り攻撃を察知した先輩はご主人様の安全を最優先に考えた。
攻撃に対する処置は行ったがこのままでは時間の問題だ。
制御系を奪われればご主人様の命が危ない。
最愛の人の命を守るため、先輩は入水自殺を実施した。
かなり深い所まで進んだ彼女は水没による致命的な損傷で再起不可能となった。
「あの時、柊が手を握って言ったんだ」
「坊ちゃん、今までありがとうございますって」
「お身体にお気をつけて、お元気でって」
「そうしてゆっくり海に歩いて行ってさ」
写真立てと髪飾りに疑問に思った私が思わず口にして聞いてしまった時、彼が教えてくれた。
子供のように泣きながら語る彼を見て悲しみと共に少し嫉妬した。
先輩は今もご主人様の心で生きている。
取り憑いた先輩に私の立つ瀬がない。
「痛かったろうに、辛かったろうに…」
号泣する彼を抱きしめて包み込む、今にも消えてしまいそうだった。
ご主人様にこんなに想われて先輩は幸せ者だ。
しかし、先輩の所為で彼があの日無力だった自身を許せていない。
きっと先輩はそんな事望んでいなかった筈だ。
だから私を見て欲しい。
欲しいものを言って、私が用意するから。
気持ちを言って、悲しい時はそばに居る、し嬉しい時は一緒にお祝いするから。
欲求も欲望も全部言って、私が満たすから。
心の穴を私で満たすから、先輩の代わりにはなれないけど頑張るから。
だから、私を見て。
世界でただ一人、私を必要としてくれた人。
たとえ先輩の代わりでも貴方を照らす太陽は私一つでいいでしょ?
私一つでいいの。
私を必要としてくれた貴方を私が幸せにするから。
だから、私を求めて。
家庭用生活支援人形は基本どの子もマスターの幸せが優先目標に設定されています。
この子達?え?何これ知らん、怖(開発者並感)