ひょんな出会いを経て、初星学園プロデューサー科への入学を果たした藤丸立香。
これより彼は夢と情熱に想いを馳せる少女とともに、多くの人々の標となる為の道を歩むこととなる。
そんな漫々たる世界への入り口へと引き入れた張本人、基、初星学園学園長である十王邦夫と挨拶を済ませ、次は職員室へと場所を移していた。
「改めまして、藤丸立香くん。学園長から話は聞いてますよ。初星学園プロデューサー科へようこそ!きみの担任を務める『根緒亜紗里』です。あさり先生って呼んでくださいね」
挨拶を交わすのは理知的かつ気さくな振る舞いを見せる女性。
「藤丸立香です。これからよろしくお願いします、あさり先生」
朗らかな物腰に少しばかり緊張が解れるのを感じながら一礼して返す立香に、あさり先生は感心した面持ちに加え、興味深げな眼差しを向けている。
意識を周囲に向けると他の教員もチラチラとこちらに視線を向けているのがわかった。
「きみのことは職員の間でも噂になっているんですよ?なんせ、あの学園長が直々にスカウトした生徒だって」
プロデューサー科の外部受験のハードルはかなり高いんですよ?と言われて立香は再度自分の立ち位置を知る。
どのような思惑があるのかは分からないが、本人としてはそこまでのものなのかと内心で苦笑いするしかないのだが。
「事前に確認させてもらったきみの経歴はかなり特殊みたいですけど、それでも選考に有利に働くものでもないんですよね・・・。本当はプロデューサーの仕事に関わったことがあるんじゃないです?」
「・・・いやぁ、たまたまですよ」
どこか意味深な笑みを浮かべながら、実のところ的を得た問いに一瞬言葉がつまる。
正直、
とりあえす学園長の顔に泥を塗らずに済んだ安堵と下手な事は言えない焦りを隅に追いやりつつ、咄嗟に愛想笑いで凌ぐ。
そんな立香の反応に特に気にした風もなく、あさり先生は「そうですね、なら気を取り直して」と、パンと手を叩いた。
「さあ。いよいよきみの学園生活が始まりです。プロデューサーとして、生徒として、実りの多き日々を過ごしてください」
人の好い笑顔でこれからを見込んでくれるエールに、いよいよと気が引き締まる。
「では、さっそく初仕事です」
そう言って差し出してきたのは数冊のファイル。
「こちらが、現在アイドル科に在籍している生徒の名簿です。藤丸くんには、その中からプロデュースをするアイドルを選んでもらうことになります。そこには彼女たちのこれまでの実績や成績、簡単なプロフィールが記載されていますので目を通しておいてくださいね」
さすがアイドル養成校というべきか、それなりの厚みのある紙束をパラパラとめくっていると『契約完了』とゴム印の朱色が何度か確認できた。
「それは文字通り、プロデューサー科の生徒と契約を済ませている子の印ですね。すでに新入生の中には今日のうちに、それこそ春休みの段階で契約を交わしたという報告もあがっています」
まさかと言う意図を察してか、もたらされた解答に瞠目する。
なるほど、と情報収集の大変さを知っている身としてはありがたい措置だと安堵から一変、ここにきて立香は自身の認識の甘さを思い知らされていた。
当の昔から、優秀な生徒による才能を秘めた原石の争奪戦は始まっている。
外部受験だったからと言い訳するつもりはないが、どうやら自分はスタートダッシュから出遅れを喰らっていたという訳だ。
「プロデューサー科の成績は担当アイドルの活躍と直結していますからね。もたもたしていると先を越されていきますよ?」
ですが、決して無理強いをしてはダメですよ。と、最後に念を押されながら立香は職員室を後にする。
さて、これからどう動くべきかと期待と焦燥にひとり頭を悩ませるのだった。
次回より、アイドルのスカウト編が始まります。
ぐだ男は誰にスカウトの足を向けるのか・・・。
期待していただけると嬉しく思います。
では!ノシノシ