もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

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コタツ

 

 

 

骨折が治ってから、外に出るとめっきり寒くなっていた。まだ白い息が出るほどではないが、街に並ぶ木からは緑が剥がれ落ち、わずかに残った茶色い葉だけが冷たい風に揺られている。擬人化したら多分エロい。

店の中を覗けば、まだ一ヶ月以上はあるというのにクリスマス一色。赤いオッさんにトナカイがそこら中でプレゼントを持っている。量産機か。

 

「寒ぃ」

 

思わずそう呟いてしまった。ネックウォーマーを少し上げて、鼻の下辺りまで被せる。

 

「今年は、大阪辺りまでチャリで行くか…」

 

「なによく分からないこと呟いてるの?」

 

聞き覚えのある声で振り返ると、我が鎮守府のボス。加賀さんが鬼の形相で立っていた。

 

「仕事もほっぽり出してこんな所でなにしてるのかしら?」

 

あぁ、ダメか…。少しくらい心の中でカッコイイ表現してみればサボっても平気かなって思ったんだけどなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府に連行され、執務室に放り込まれた。

 

「あ、提督お帰りなさい!」

 

そう元気に言うのは榛名、本日の秘書艦だ。

 

「榛名、余り提督を甘やかさないでくれる?私も探すの大変なんだから」

 

「へ?提督、隣の鎮守府の方と会議があるって…」

 

「それは嘘よ。逃げるための口実」

 

「提督?どういうことですか?」

 

こ、怖い!ハルさんはハルさんで怖いな!ハルさんなら許してくれると思ったんだけどなぁ…。

 

「まぁ、その…ほら、提督として街の様子見に行くのも悪く無いかなって」

 

「………」

 

「………」

 

「うん、すいませんでした」

 

はぁ…やだなー仕事。働きたく無いよー。

 

「じゃ、私は少しやることがあるから。榛名、提督をこの部屋から出さないでね」

 

「了解しました!」

 

加賀さんはそれだけ伝えると部屋から出て行く。

舐めるなよ。部屋から出ようが出まいが、サボる時はサボる。それが俺だ。

 

「ほら提督、大体は榛名がやっておきましたから残りはお願いしますね。榛名は提督が頑張れるように金剛お姉様に紅茶を頂いて来ます」

 

あぁ…やっぱ榛名はいい子だ。将来、いい子過ぎて損な役にならないことを祈ろう。さて、榛名も出て行ったし、俺は俺で頑張れるアイテムを引っ張り出すか。

言いながら、押入れを開いて布団と机とその足を出す。そして、ソファーを押して端っこに退かすと、コタツを組み立てる。コタツの中なら快適に仕事が出来るだろう。さて、コンセントを差してスイッチオン!

で、机の上の書類を束ねてコタツの上に移動。さーて、仕事するぞ!ちなみに俺は学生時代、コタツで勉強をして長続きした試しが無い。コタツに入ると、働く気が失せてしまう。そのまま後ろに倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

「提督ーお茶が入りましたよ?」

 

ガチャッとドアが開かれ、榛名が紅茶を持って執務室へ入った。が、いつもの机に提督はいなくて、代わりにソファーの前にコタツが出されている。

 

「提督ー?」

 

そのコタツの中で下半身を突っ込み、後ろに倒れて気持ち良さそうにすぅすぅと寝息を立てていた。はぁ…この人はまったく…そんなに気持ち良さそうに寝られたら起こすに起こせないじゃないですか…。

 

「おやすみなさい、提督」

 

仕方ないので書類は私が全部やってしまった。で、コタツの中に入る。提督の隣だ。で、提督の頬をツンツンつついてみる。あ、柔らかい…。ていうか寝顔可愛いかも…。癖になってしまい、ツンツンしまくってみる。

 

「ん……」

 

ヤバっ、起きちゃった?

 

「zzz……」

 

「ほっ……」

 

思わず安堵の息が漏れる。まったく紛らわしいなぁ…。

 

 

 

 

 

 

ヤバイヤバイヤバイ!ま、まさか今更寝たふりだなんて言えない!てかなんで隣!?コタツがなんのために正方形になってると思ってんだ!一辺に二人が入ったら狭いだろうが!しかも結局書類も榛名にやってもらっちゃったし…。

こ、心が痛む……。

てかさっきから頬ツンツンするな、恋人か己は。

 

「あ、金剛姉様に紅茶を入れてもらったんだった…」

 

うーわ…さらに起きるハードル上がっちまったよ…これで起きたら紅茶に釣られて起きました、みたいになるよなぁ…。てか榛名のツインドライヴシステムがさっきから腕にヒットアンドアウェイを繰り返してやがる…やめろ。マジ恥ずかしい。

いや、むしろ逆手に取ろう。榛名が入って来て寝苦しくて起きたことにしよう。そうと決まれば善は急げだ!と、思ったらまた執務室のドアが開いた。

 

「テートク!紅茶飲みましたカー?」

 

おぉう…もう……。

 

「って、榛名!なにしてるネー!」

 

「こ、金剛姉様!提督が寝てますので少しボリュームを…」

 

「へ?」

 

俺に目を向ける金剛。すると、トテテと駆け寄って俺の顔の近くにしゃがむ。で、鼻を引っ張られた。

 

「いででで!鼻取れる!鼻とれるから!クリリンのことかぁっ!」

 

「こ、金剛姉様?なにを…」

 

「提督、起きてましたよネ?」

 

ギクッて音がしそうな程、俺の肩は震え上がった。金剛の台詞に榛名がジト目で睨んで来る。

 

「や…寝てましたけど?」

 

「起きてましたよね?」

 

「おい、言葉遣いが標準に…」

 

「起きてましたよね?」

 

「起きてました……」

 

俺の自白に榛名がピクッと反応。さっきの怖い笑顔になった。

 

「や、違うんですよ。起きようと思ったのになぜか起きれなくてな。多分金縛り的なアレだろ。許さねぇぞ俺に金縛りをかけた奴!金剛、お前は金縛りを解いてくれたんだ。ありがとうな!」

 

「て、テートク…素直に謝った方がいいネ…榛名は滅多に怒らないのに金剛型で怒ると一番……」

 

「何か言いましたか金剛姉様?」

 

「な、なんでもないネ!」

 

榛名の顔は真っ赤だ。おそらく羞恥心と怒りから来ているからだろう。その真っ赤な顔でこっちを睨み付ける。

 

「提督?」

 

「…ごめんなさい」

 

「はい、許してあげますね♪」

 

おぉ、やっぱり天使だ。

 

「その代わり、今日一日提督は榛名の言うこと聞いてもらいますからね」

 

「へ?」

 

「ちょっと待つネ榛名!言うことって…一体何を…」

 

「行きますよ提督!」

 

金剛の言うことも聞かずに榛名は俺の手を引いて出発してしまった。あぁ、なにされるんだ俺…。

 

 

 

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