仕事中。俺は書類の裏に絵を描いていた。描いてるのはクシャトリヤのファンネルだ。クシャトリヤ本体ではない。ファンネルだ。なんか急にファンネル描きたくなっただけな。すでに別の紙にキュベレイ、クィンマンサ、サザビーのファンネルが描いてある。もちろん、意味なんてない。理由もあるわけでもない。
「失礼します」
入ってきたのは榛名だ。
「うーっす。どったの?」
「いえ、最近は榛名は出撃させてもらえないと思いまして」
「そーだっけ?」
「はい。金剛姉様と霧島の出撃が増えているように思います。比叡姉様の出撃も減りました」
「いやそんなん俺に聞かれても…その辺の艦隊の指示は加賀さんが出してるし……」
俺はもはや書類を片付けするだけの人間だ。それで給料もらえるんだから本当に人生万歳です。
「嘘ですよね?加賀さんに聞いたら提督の指示と言っておられましたが?」
「………………」
余計なこと言うなよあのバカ………。
「あぁ、俺の指示だ。榛名、君には傷付いて欲しくないんだよ……」
「ふえっ!?」
突然、顔を真っ赤にする榛名。
「そ、そんな…榛名は……」
「ていうのは嘘。いやー最近はニセコイにハマってさ。臭い台詞を考えるのが趣味で……」
「この、バカ提督!」
「は?いやそこまで怒らなくても……」
「提督は少し、乙女心を学んだ方がいいですね」
「いえ大丈夫です。乙女なんてこの世にいないし」
「あぁ、そうですね…提督はそういう方でしたね……」
「いるとすればアニメの女くらいだよね。ていうかアニメの女は乙女過ぎて腹立つ奴とか多い」
「そうですか……って、そうではなくて!結局、どうして出撃を……!」
「いやだって、今思えば榛名と比叡はなんやかんなで練度90越えてるけど、他の戦艦はまだ50程度じゃん?不公平だー!って声が凄くてさ。だから加賀麦加賀米加賀卵に頼んどいたの」
「で、でも……榛名は、出撃したいです……他のみんなが戦っているのに自分だけここで休んでるなんて……」
ふーん…よく分からんな。休暇もらったら俺はすごく嬉しいけどな。
「分かりましたよ。出撃させりゃいいんでしょ?その代わり、艤装を外せ」
「……………へ?」
「お前に頼むのは72時間遠征だ。池袋のヤマダ電機にて、このナーヴギアを買う列に並んでもら……」
「提督?怒りますよ?」
にっこり微笑む榛名が怖い。
「そ、そうかよ……」
「しれえええええええっっ‼︎‼︎」
突然、雪風が突入して来た。その手にはなぜかペンキのバケツが握られている。
「え?ちょっなに……」
「しれぇ!とても上手に壁にお絵かきを……」
そこまで言ったところで雪風は躓いた。当然、手に持っていたペンキは空中に放たれ、俺と榛名は直撃した。真っ赤になり、ポタポタと赤いインクが垂れる。
「あっ……」
雪風が声を漏らした。しばらく何も言えなくなってしまった。が、すぐに電話。
「あ、もしもし加賀さん?非常に申し訳ないんだけど、執務室に来てくれます?掃除とか頼みたいんだけど。え?自分で?いやそういうんじゃなくて…一応、キチンとした理由が……あー面倒臭いや。今度パフェ奢るから」
で、加賀さんが来て事情を説明。快く引き受けてくれたので、俺は自室の風呂に入った。
しばらく私(榛名)は呆然としていた。どうして、こんな目に……。
「榛名。起きてる?」
「へ?」
いつの間にか執務室には加賀さんが来ていた。
「だ、大丈夫です。それより提督は?」
「自室のお風呂にいるわ。あなたも流してきたら?」
「は、はい……」
「と、言いたいところだけど、昨日妹一号提督が艦娘用のお風呂で居眠りして溺れて、お風呂ぶち壊してくれたのよね。だから提督の自室のお風呂を使ってくれるかしら?」
「へ?」
「もちろん、一緒に入れなんて言わないわ(訳:私だって一緒に入ってないのに……)。時間を空けてね?」
「わ、分かりました!榛名は大丈夫です!」
私は決心すると、迷いない足取りで執務室を出た。そして、廊下から提督の部屋に入り、ペンキまみれの服を脱ぎ捨てた。