結論から言うと、翔鶴は俺の秘書として優秀過ぎた。どんなに俺がサボろうが遅れなく仕事が進んでいく。これもう本当に俺いらなくね?と、いうわけで俺はソファーでPSPに夢中だ。その間、翔鶴が書類のお片づけをしてくれている。
「翔鶴姉〜お手伝いに来たよー」
突然開くドア。つーか姉妹艦お手伝いに来過ぎじゃね?どんだけ俺が仕事してない奴だと思われてんだよ。まぁ合ってるんですけどね。
入ってきたのは瑞鶴。だが、俺がサボり、翔鶴が仕事をしてるのを見るなり弓を構え出した。
「目標、ソファーの提督!」
「えっ!?ちょっ…なに!?」
飛んでくる艦載機の爆撃をなんとか全部かわす。
「提督さん!なんで翔鶴姉に仕事やらせて自分はサボってるわけ!?」
「ごめんなさい!ちゃんと仕事します!爆撃は洒落んなら無いから!」
速攻謝ってしまった……。だって怖いんだもん…。
「瑞鶴やめなさい。提督は徹夜して疲れてるよ」
おぉ!庇ってくれるなんてマジ女神!
「でも翔鶴姉…」
「私は大丈夫だから。瑞鶴は部屋に戻りなさい」
「せめて手伝わせて!じゃないと翔鶴姉が可哀想だもん」
「はいはい。じゃあこっち半分お願いね」
「はぁーい!提督さんはやらないの?」
「zzz……」
「爆撃するわよ?」
「ごめんなさい」
で、瑞鶴も入れて三人で仕事。おかげで昼前に全ての仕事が終わってしまった。
「すげぇ…これが秘書艦の力か……」
「なにいってんの?翔鶴姉の力よ」
「シスコンめ……」
「なんか言った!?」
「や、なんでもないです…」
「ほら、二人ともそこまで。お昼にしましょう?」
「はぁーい」
「や、俺はアレなんで…大丈夫です」
誘われたら断る。それが俺の流儀であり、気遣いでもある。だって向こうが気を使ってるかもしれないじゃん?現に中学の時、「あ、本当に来るんだ…」って言われたことがある。
「アレって…なんですか?」
「や、アレはアレだから。ほら、俺が食堂に行ってみなの空気悪くすんのもアレだから」
「ならないと思うけど」
瑞鶴が「なにいってんのこいつ?」みたいな目で見てくる。が、俺にはキチンと理由がある。
「中学の時、修学旅行の班決めでさ…俺がいるってだけで女子が泣きやがってさ…それ以来、女子が参加するイベントには参加しなくなった…」
「「………」」
流れる俺への同情ムード。悪かったな……。
「だ、大丈夫ですよ!私や瑞鶴もいますから!」
「そ、そうだよ提督さん!それに駆逐艦の子達はみんな提督さんのこと好きだよ!」
「だといいけどな……」
若干、不安要素は有りながらも俺は二人に着いて行く。食堂に着くと、周りはこっちなど見向きもしない。そりゃそうか。誰かが来るたびにこっち見るわけない。
「あ!司令官だ!」
「しれぇ!こんにちは!」
「珍しいね!食堂に来るなんて!」
やべぇ…駆逐艦とか名前わかんねぇ……。翔鶴にこっそり聞く。
「名前、分かるか?」
「え?あなた提督ですよね?」
「仕方ないだろ。今まで関わってなかったんだから…」
「まったく…手前から吹雪、皐月、雪風です」
「さんきゅ」
ふぅ…危うく泣かす所だった。
「よう、吹雪、サツキ、メイ」
「「「メイ?」」」
「じゃなくてユキカゼ」
危ない危ない。思わず隣の森のお化けに出てくる姉妹になるところだった。
「なんか用か?」
「いえ!しれぇが食堂に来るなんて珍しいと思ったので!」
いやそんな引きこもりじゃねぇんだけどな…。
「司令官!良かったら一緒にご飯食べようよ!」
「あ!私もそうしたいです!」
「えっと……」
チラッと助けて視線を翔鶴に向ける。にこにこしててなにも答えてくれない。瑞鶴を見ると、終始苦笑い。これ、断ったらダメな奴だよなぁ…でも社交辞令的な感じで声かけてもらってるかもしれないしなぁ…。
「提督、一応言っておきますけど、社交辞令ではありませんからね?」
「たまには複数人と食うのもいいか」
「わーい!ありがとうございますしれぇ!」
「やりました!」
「じゃあ僕の所へおいでよ!」
ナイスアシスト翔鶴!お陰でおそらく間違いではない道を行った。これで影口言われたら深海棲艦になろう。
で、飯を取りに行く。カレーという当たり障りのないメニュー。
「あら、食堂にいるなんて珍しいですね提督」
「あっすいません」
作ってる側の鳳翔さんに言われ、つい謝ってしまった。間宮さんも忙しそうにカレーを作る。
「これからはここで食べて行って下さいね。そうすれば皆さんも喜ぶと思いますから」
「は、はぁ。善処します」
ようやくカレー完成。カレーを持ってキョロキョロしてると、皐月が手を振ってるのが見えた。そこに向かう。後ろからは翔鶴と瑞鶴が着いて来た。だが、
「なんだ提督、珍しいじゃねぇかこんなところで」
「あ、ホントクマー」
「提督ー!次の夜戦いつー?」
「このクソ提督!」
「子日だよぉ〜」
「………」
ふぅ、やっぱりアレだ。
「悪い、その、やっぱ執務室で食うわ…」
逃げることにしました。
「もう!なにしてるんですか提督!」
翔鶴に怒られている。つーかなんでお前いんだよ。一人で食うって意味だったのに。
「せっかくみんなが集まって来てくれたのに…」
「…悪かったよ」
「悪かったじゃないよ提督さん!提督さんが戻った後、みんなガッカリしてたんだよ!?」
「だってさ…女の子があんなに周りに集まって来るんだぜ…緊張しちゃって気絶するっつの…」
「ヘタレ!」
「ごめんなさい」
まぁ、確かに悪いことしちまったかな…。
「とにかく!悪いと思ってるなら晩御飯はみんなで食べましょう?また逃げたりなんてしたら許しませんからね」
「分かったよ…」
なんて話してるうちに飯を食い終わった。あ…皿を食堂に運ばなきゃならんのか…。
「翔鶴、悪いんだけど皿を…」
が、翔鶴はジト目で睨んで来る。
「戻して来ます……」
「あ、提督さん私のもお願い〜」
「瑞鶴?」
「じ、冗談だよ翔鶴姉…」
あーあ…晩飯の時間が怖いなぁ。