「生き物じゃないからさ。どこにも出品しないし。名前無くても不自由ないよ。」
「じゃ、ゆっくり考えるね。」
==== この物語はあくまでもフィクションです =========
私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。
午後から、やってきた大姪は、にゃんこ枕を抱いて悩んでいる。
「生き物じゃないからさ。どこにも出品しないし。名前無くても不自由ないよ。」
「じゃ、ゆっくり考えるね。」
表に、街宣カーの声が聞こえる。
「選挙か。煩いな。煩くない?」
「煩い。あ、お前のことじゃない。外も煩いが、電話も煩い。」
「選挙違反じゃないの?」「選挙違反だな。公示前も、公示後も。ポスター剥がす輩もいる。立候補取り消せなんて言う輩もいる。」
「選挙違反だよね。「選挙違反だな。お前がどんな人選ぶかは自由だが、人に迷惑かける人間かどうかは見極めた方がいい、少なくとも、点字ブロック踏むような奴は、タダの欲の塊。」
「点字ブロックって、目の不自由な人が杖付いて歩くのに便利なように出来てるんだよね。」「そう。彼らには、単なるイボ。実は、視覚障害者は選挙権があるにも拘わらず投票出来ない。詰まり、1票に結びつかないから、シカトしていい、という考え方。でも、彼らの所業は、視覚障害者は知らなくても、我々は知っている。前に言ってやったことがある。お前の被選挙権は視覚障害者を踏んづける為にあるのか。じゃあ、入れない。」
「そしたら?」「移動した。ぶつぶつ言って。」
「ホントに言った?」「嘘。もうあまり出歩かないからね。でも、ネットでよく踏んづけてる画像が見える。そういう考え方なんだと思う。来夢は、ばあさんの所属する党に入れるのか?所謂宗教3世だけど。」
「入れない。お母さんは、『犠牲になるのは』私達まででいい、って言ってる。それにさ。将来パートナーになる人は嫌がると思う。私達は『道具』じゃない。何が・・・まあ、いい。オッチャン、気にしてたの?オッチャンは決まった党や候補者居るの?」
「オッチャンは、その人次第。気に入った候補者がいたら投票する。該当なしなら危険。義理や義務で入れない。選挙権は『権利』だから。憲法で保証されている権利の一つだから。」
「そう言うと思った。だから、スキ。ちらっ!!」
大姪は、スカートを翻した。
「見えた?」「見えた。」「反応した?」「した。」「すけべ。」
笑いながら、二階の方へ。
またやられた。
いつまで、こんな『いい生活』出来るのかな?
―完―
※今は、視覚障害者の為の「点字投票」「代理投票」という制度があります。
詳しくは、NHKや自治体のホームページでご確認下さい。
該当なしなら棄権。義理や義務で入れない。選挙権は『権利』だから。憲法で保証されている権利の一つだから。