「んー。思いつかない。」
「だから、無理しなくていいよ。
==== この物語はあくまでもフィクションです =========
私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。
午後から、やってきた大姪は、まだ、にゃんこ枕を抱いて悩んでいる。
「んー。思いつかない。」
「だから、無理しなくていいよ。本物のにゃんこだったら、名前は必要かも知れないよ。自分のことをどう呼ぶか認識しないと、食事もおやつも逃すかも知れないから、にゃんこにとっても大事だ。でも、それはクッション。オッチャンが枕にしてるだけ。」
「も少し考える。」
「それよりかさ、来夢、チャレンジしてみない?」「え?」
「昨日、宅配便で届いたのが、これ。」
「何、これ。」「けっそくばんどー。」
「可愛くない。」「あ、そう。」
「この前、君のお祖母さまが粗相して、隅に追いやった扇風機。やっぱり使おうと思ってね。触るな、って言ってるのに触りに行って怪我したやつ。」
「電源入るんだよね。プロペラ回るんだよね。使うの?」
「うん。エアコン、きつく感じることあるんだ。併用しようと思って。あの時は、『応急処置』しただけだったから。だから触るな、って言ったんだよね。」
「ごめんなさい。代わりに謝っておく。」「ありがとう。で、『本格処置』しようと思って取り寄せたんだ。やる気あるって顔だな。よし、軍手とペンチ用意。場所分かるよね。」
「うん。」
大姪は、すぐに扇風機をベッドの近くに持って来て。丸椅子を前に置く。
そして、軍手とペンチを用意してきた。
「こっちの先端が四角になってるよね。」「うん。」
「で、反対側が先細りになってる。」「ズボンのベルトみたいだね。」
「いいところに気が付いたねえ。この先っぽを四角に通して輪っかを作る。すると、その輪っかの内側にあるものを締めることになる。扇風機の部品、一番大きいのが前ガード、後ろガード。羽根を挟み込む構造だ。羽根を固定しているのが『スピンナー』とか『スピンナート』とか呼ばれている部品。案外知られていないのが、普通とは『逆締め』。日本語または英語で矢印と一緒に書かれている。何で逆に締めたり緩めたりするか分かる?」
「ううん。なんで?」
「遠心力って習わなかった?理科とかで。」
「えと・・・重りに紐をつけて振り回し、突然紐が切れると、重りがとんでっちゃうヤツ。」「概ね、そんなとこかな。扇風機の羽根が回る方向にスピンナーが締めてあると、その切れた重りみたいになっちゃうんだ。それで、前にある蓋は『逆締め』になっている。簡単に言うと、『時計と反対方向』が締める方向、『時計の方向』が開ける方向。これ、普通に考えて力尽くで廻すと、スピンナーが壊れる。老朽化で、このスピンナーが壊れる場合もある。この扇風機の前の代のが、そういう現象だった。こういう場合は諦めるしかない。ちょっと話が横道にそれたけど、前ガードが折れちゃって、後ろガードに挟み込めなくなった、のが故障原因。モーターは、来夢が言った通り、まだ生きてる。で、応急処置したんだが、確かに針金で縛っていると、危ない。」
「この拘束バンドは外れないの?」「外れにくい。最近は、悪用して犯罪に使われることもある。ギザギザが見えるだろ?」
「うん。」「そのギザギザが極単に言うと、こんな感じ。」
私は、空中に絵を描いた。
「じゃ、前ガードと後ろガードの位置確認しながら、ガード跨いだ輪っか作って。それで締める。尻尾が出来ちゃうから、適当に切る。で、数カ所同じ作業して、針金の方をペンチで切って。分解掃除しにくくなるけど、結束バンド切れば、分解掃除は出来なくもない。」
「埃貯まったら、捨てちゃえば。」「うん。そうする。」
「オッチャンのことは捨てないからね。」作業が終り片づけてから、大姪はそう言った。
「反応した?」「した。」「すけべ。」
またしても大姪に嵌められた。
大好きな、大姪に。
―完―