帰って来た大姪にまた、平手打ちをされた。
「言い訳はいい。事情を話しなさい。」
「はい。」
私は、素直に説明した。
大姪が私に替わって付けようとしたが、小さな穴に紐の先端の留め具を嵌めるのが難しい。
蛍光灯の紐
==== この物語はあくまでもフィクションです =========
私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』、所謂『断捨離』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。
ある日の午後、蛍光灯の紐が切れているのを発見。もう古いからなあ。そこで、私は杖を突きながら、椅子を2脚運んだ。
椅子を並べて、予備の紐を付けようとしたが、蛍光灯がまぶしくて、上手く付けることが出来ない。『起き上がりヘルパー』を側に置いてのチャンレンジだ。
3回トライしたとき、大姪が帰ってきた。
帰って来た大姪にまた、平手打ちをされた。
「痛かった?言い訳はいい。事情を話しなさい。」
「はい。」
私は、大姪の剣幕に負けて素直に説明した。「私がやる。」
大姪は、『起き上がりヘルパー』をどけて、椅子を並べ直した。
大姪が椅子の上に立って、私に替わって付けようとしたが、小さな穴に紐の先端の留め具を嵌めるのが難しいらしく、上手くいかない。
「そうだ。」見ていた私は、ふと思いついて、大姪にゼムクリップを渡した。
大姪は、私が言ったっ通りに、ゼムクリップを蛍光灯の奥から伸びるチェーンに取り付けた後、蛍光灯用の紐を渡した。
すると、留め具がすんなりゼムクリップに填まった。
「急がば回れってヤツだな。」と、安堵した。
「そう。自分でやろうとしないで、可愛い大姪にやらせるのが安全、って考えなかった?」
「反省してます。」
「でも、これって、よく出来てるけど、いつ買ったの?」
「大分前。2階の部屋のを付けた時に余分に買ったんだ、ホームセンターで。大して高く無かったよ。流石に100鈞にはないし。」
「ふうん。気が付かなかったけど、便利だね。紐の長さを調整出来る・・・なんで?」
「オッチャンが、布団敷いて、そこに寝てた時、明暗切り替えする紐が一定だと、寝たまま紐を引っ張れないから、付けたんだ。。」
「ふうん・・・ベッドの所は・・・帰って邪魔か。ま、いいや。ね、さっき張り倒した時、反応した?」「した。」
「やっぱり変態だ。今度からMオジサンって呼ぼう。」
「勘弁して下さい。」
私は、やはり罠にかかりやすい。
車椅子を移動させ、起動したPCのノートに、真っ先に書き込んだ。
『私は、やはり罠にかかりやすい。でも、変態じゃない。』
―完―
「ふうん・・・ベッドの所は・・・帰って邪魔か。ま、いいや。ね、さっき張り倒した時、反応した?」「した。」
「やっぱり変態だ。今度からMオジサンって呼ぼう。」
「勘弁して下さい。」