「学校のお友達の加奈子ちゃん。」
「大北加奈子でーす。素敵な伯父様・・・ああ、大叔父様だっけ?大叔父さんって言い方初めて聞いて、びっくりしました。」
==== この物語はあくまでもフィクションです =========
私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。
日曜日の午後。
大姪は、女の子を一人連れて来た。
「学校のお友達の加奈子ちゃん。」
「大北加奈子でーす。素敵な伯父様・・・ああ、大叔父様だっけ?大叔父さんって言い方初めて聞いて、びっくりしました。」
「まあ、そうだね。『核家族化』って言い方流行ってから随分になる。家族も小さな単位になり、親族の集まりも葬式くらいなものだからね。で、どこそこのオジサン、どこそこのオバサンって言い方する。」
加奈子ちゃんは笑った。恐らく親族の付き合いは希薄だろう。
2人は、わいわい言いながら、パンケーキを焼き、おやつに一緒に食べた。
「オッチャン達の子供の頃は、ホットケーキって言ったんだ。確かに、普通のケーキと違ってほくほくだ。でも、もう1つ日本流に言った訳があるんだ。」
「何?」と2人は顔を見合わせた。
「パンケーキなら、パンかケーキか分からない。そう言う人がいたんだ、沢山。パンはパン、ケーキはケーキ。どっちでもない、って言って。」
「ふうん。」
「パンケーキのパンは、フライパンのパン。食パンや菓子パンのパンじゃない。でも、人ってイメージを強くして覚えると修正しにくいんだ。詐欺師が上手く欺すのも、その辺にある。だから、真面目で融通の効かない人ほど脆い。」
「今の政治家さんね。」と、大姪が言った。
「そういうこと。パンは英語じゃなく、ポルトガル語。英語ではブレッド。鎖国していた時の南蛮貿易って社会科・・・って今は言わないんだっけ?学校で習った?」
「習った。宣教師とか鉄砲伝来とか。それで入って来た『外来語』ってことね。」
「うん、パンの他にボタンとかボーロとかもポルトガル語。オッチャンの専攻はポルトガル語。殆どしゃべれないけどね。」
2人は夕方まで、おしゃべりをしていたようだ。
加奈子ちゃんは、帰りに台所に寄って、挨拶をした。
「お邪魔しました。勉強になりました。ありがとうございました。」
夕食時。
大姪に尋ねた。「介護士学校の友達じゃないんだね。」
「小学校の友達。」
「何か、悩んでいた?」
「分かるの?」分かる。」
「加奈子ちゃんに挨拶された時、反応した?」「した。」「スケベ。でも、大好き。」
大姪は私に抱きついた。
「反応した?」「した。」「やっぱり、変態。」
ニッと笑って、大姪は食事の支度を始めた。
いつまでも仲良くな。オッチャンみたいに友達に先立たれると、凄く寂しくなるぞ。
思い出は、いっぱい作っておけ。
―完―
「まあ、そうだね。『核家族化』って言い方流行ってから随分になる。家族も小さな単位になり、親族の集まりも葬式くらいなものだからね。で、どこそこのオジサン、どこそこのオバサンって言い方する。」