==== この物語はあくまでもフィクションです =========
私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。
明日は、母の月命日。毎月坊さんに「月参り」に来て頂いていたが、姉妹に煩く言われて廃止にした。その代わり、自分でお参りする儀式を行うことにしていた。
確かに金がかかる。檀家としては。だが、「月参り」は「法事」ではなく「仏事」。
宗派にもよるだろうが、「義務」ではなく「任意」であり、「権利」なだけ。
要は、ほとけ・先祖を敬い大事にする精神があればオッケー!!
大姪がやると言うから、やはり指導することになった。
まずは、仏壇の内外にある仏具を片づける。そして、仏壇の内外をウェットティッシュ、布巾、乾いた手ぬぐいを用意して拭いていく。
拭き終わったら、『お供え皿』の菓子を取り除き、布巾で拭いてから新しい菓子を載せ、所定位置に置く。なるべく1ヶ月とか長期保つものが良い。
次は花立て。ここからは、台所と仏間の往復。
買って来た仏壇用の花を一時置き場に置き、花立てから抜いた花を新聞紙または紙の上に取り除く。花立ては内外を丁寧に洗い、磨く。
「以前はねえ。金属の花立てだったろ?年数減ると錆びたり黴びたりするんだ。それで先ず、研磨用に粗いヤスリタワシでゴシゴシ、細かいヤスリタワシでゴシゴシ、水洗いして拭ってから、ネットで取り寄せした『仏具専用ワックス』を塗る。で、布巾でゴシゴシ擦る。更に、布巾替えてゴシゴシ擦る。出来上がったら花立てに水を入れ、新しい花の根元側を数ミリ、切る。で花を花立てに入れて完成。」
「聞いただけでくたびれちゃった。」「だろう?今はほら陶器の花立てだろう?花立て磨くステップは省略出来た。」
「良かった。」「次は蝋燭立てだ。あ。先にステップ花立て。」
「はいはい。」大姪はメモを取っていなかったが、簡単に終了させた。
「じゃ、ステップ蝋燭立て。先端に釘みたいなのがあるだろう?」
「うん。」「そこにこびりついた蝋燭の欠片や『オコゲ』を削ぎ落す。持って来た?」
「持って来た。」仏具関係の掃除道具は、常時座席近くに配置してある。
「ギザギザある平らなスプーンね。何て名前?」
「忘れた。でも百均で売ってた。」「そうなんだ。」
「で、そのスプーンでこびりついた蝋とかをそぎ落とす。洗剤使っちゃダメだよ、意味ないから。お湯で流しながら、そぎ落とす。」「了解。」
「次は、お待ちかねの・・・待ってないか。ステップ灰ならし。香炉の灰の中に、線香の灰の燃えかす・残骸なんかを取り除く。そうそれ。持ち手の付いたザルみたいなの。これも百均で見付けた。」「オッチャン、百均で見付ける天才だね。」
「変な褒め方だな。新聞紙用意して、香炉を置く。そして、その灰ならしで、掬って残骸を外して行く。まあ、多くても8往復くらいで全部出せる。一応、ぐるっと回して確認。仕上げは、香炉を持ってトントン叩きながら、タイラにしていく。」
「次は?」「ステップ床机。床机と言うのは、元々はテーブル。祭壇に使う物には引き出しが付いている。仏壇とセットで買うが、仏壇の中には収納出来ない。何故か?仏教的な意味合いがあるらしいが、詳しいことはオッチャンも知らない。兎に角、お坊さんが前に座って読経する際の、仏具を置く台。簡単に掃除できるが、意外と忘れられやすい。床机の上のものを取り除いて、ウェットティッシュ、布巾、手ぬぐいで掃除をする。蝋燭立ては仏壇側、線香立てになる香炉は左側。りん棒、りん棒台、りんとりん座布団を左側から順に置く。空いているところにマッチを置く。ライターはあまり良く無い。お墓参りの時は仕方無く使うけどね。因みに、オッチャンのところでは、蝋燭立てと菓子盆も仏壇内のテーブルに置くが、無くてもいいらしい。」
大姪は、いつの間にか、ノートを広げてメモを取っている。
「次はステップお茶だ。お茶碗は、予め丁寧に洗う・・・と言いたいが、普通の食器感覚では綺麗に洗えない場合が多い。」「漂白剤の出番?」「うん、昔は、そうしてた。でも、今は『クエン酸』につけ置きするのがいい。慣れていれば、今までのステップの最中に浸け置き出来る。この『クエン酸』、ホームセンターにも売っているが、百均だとスプレータイプがある。あ、褒めなくていいから。で、充分浸かったら、さっと水洗いしてから、丁寧に擦って洗う。布巾で茶碗を拭う。で、急須に新しい葉っぱを入れ、お湯を入れて茶碗に注ぐ。注意すべきは、古いお茶は、よく洗って流し落すこと。急須にお湯を入れ、時間が経ってから、茶碗にお茶を注ぐ。ここで待っているのは時間が勿体ないから、お供えのお菓子を入れ替えよう。お盆も、さっと拭いてな。」
大姪は走って戻り、新しい菓子と古い菓子を入れ替えた。
そして、大姪は急須からお茶をお茶碗に注ぐ。
「オッケー、じゃ、仏壇のテーブルにお茶をセット。」
大姪がお茶をセットしている間、床机から数珠を2個取り出した。
「念仏は唱えなくていい。オッチャンも知らないし。目をつぶって数秒間、亡くなっている人の事を思いだす。」
蝋燭と線香に火を点け、2人して拝むと、大姪は、「勇気」を絞り出して言った。
「オッチャンが死んだらどうするの?」「後の事は遺族の仕事。オッチャンは関与出来ない。遺言書には、お葬式は別にしなくてもいい、と書いてある。オッチャンは無宗教だからね。仏壇終い墓終いは遺族の仕事。オッチャンは、『入る墓』や『入る仏壇』がないかも知れないが、やむを得ないことだ。」
「ゴメン。まだ、まだ死んじゃ嫌!!」「オッチャンはガンじゃないよ。この先、がんや重病になる可能性はあるが。」
「あ。」「うん?」「反応した?」「した。」「すけべ!!」
言い捨てて、大姪は二階に上がって行った。
大姪は、一日1回以上は、変な確認をしたがる。
まさか、成果を日記に書いたりしていないだろうな?と、思いつつ、私はPC起動した。
―完―
オッチャンは、『入る墓』や『入る仏壇』がないかも知れないが、やむを得ないことだ。」
「ゴメン。まだ、まだ死んじゃ嫌!!」