昴くんはなにもしない 作:あまも
話自体は43でひとつですが、ここら辺はまとめて全部だとなかなか長いので区切ろうかなと
話が違うように見えてあんまり変わってない事と、変わりそうで変わってない事とありますね
閲覧ありがとうございます!
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群馬の雪深い山奥の別荘に、そのログハウスはポツンとあった。
車を停め、帽子を目深に被った小林さんが周囲を注意深く確認してくれている間に、鍵のありそうな所を探す。
階段下のスペースに隠されていた鍵を見つけた頃には、既に小林さんは周囲をざっと見てきてくれたらしい。
頭に積もった雪を犬みたいにプルプルと散らし、俺の頭の上の雪も払ってくれた。そのまま、白いキャップをぎゅうと押し付けられる。
「しっかり被っときな。周辺に人の気配は無いし見た限りではカメラも盗聴器も無いようだが、警戒は怠るなよ」
「うん。……鍵、開いたよ」
「先に俺が行く」
懐に手を入れたまま、小林さんが慎重に扉を開けて入り、俺も麻酔銃の蓋を開けたままその後ろに続く。
「……人は……いないな。そこで車の方を見ててくれ。すぐ戻る」
「あ、うん」
ささっと靴の雪を払い、足早に別荘の中をクリアリングしていく小林さん。
︎︎雪の振る中で視界は悪いが、車を近くに停めたのは見やすく、また万が一にはすぐ乗り込めるように、だろうか。
俺も彼もわかってはいるが、自宅の物の配置のほんの僅かなズレですら気付き、心を病むような神経質な人が、恐れている組織の連中に必要以上の接近を許してはいないはず。
それでも彼がここまで注意深いのは、連中がソフトを完成させてしまった板倉さんを“用済み”として処理する可能性を考えているためか。
一応、ここまで俺はラジオで、小林さんはスバルさんから、板倉さんの死亡がニュースとして世間に出ていないか確認しているが、……その意味でもこれは時間の問題。
数分と経たずに降りてきた小林さんは、この場に他に人間が居ないことを教えてくれた。
「直ちに危険は無さそうだ。パソコンはあそこだな。……注意しろよ」
「うん」
パソコンの前には小切手と、ケースに収まったディスクがあった。無造作だが、これもまた板倉さんの計算だったのだろう。
触れようとした手の前に、白いニトリル手袋が上から垂らされた。
「大人用で悪いが、無いよりマシだろ」
「あ、ああ。ありがとう」
手袋を俺の手に落として、窓の外の雪の中と、玄関の方とを見れる位置に戻る小林さん。
たぶん、あの車の中にこういうのが一通り隠されてるんだろうな……
パソコンの電源を入れ、ネットワークを確認、ちゃんと繋がっているようだ。
「さて、そろそろ時間だが……」
「ああ……」
ピコンと、軽快な電子音。メールの受信を知らせるものだ。
しかし、新着メールを開いた途端現れたのはパスワードの入力を求めるダイアログボックス。しかもカウントダウンまでついている。
じゅ、10秒!?
「江戸川くん?」
「パスワードだ!」
「チッ」
俺の様子に異変を感じ、小林さんが画面を見た時にはもうカウントは2秒、1秒、そして……新着メールごと画面から消滅した。
「なるほどね。板倉さん本人が受け取れなければ消去、他の人間に見せるつもりは無いってワケか。……ハルならなんとかなったかもしれないが……」
「まずいな、このパソコンでメールを開き損ねたことまでバレちまったかもしんねー……」
ゴミ箱や消去欄、新着メールを読み込み直してみたり、試してみるが、メールは二度と出てこなかった。
スバルさんなら、このメールが届いた時点で逆探知して、送信先のパソコンの場所まで特定していてくれたかもしれない。
……また俺は、焦って迂闊な事を……
いや、考えろ、逆にこれを利用して――
「シッ」
小林さんが俺の前に手を出した。人差し指。『静かに』という意味だろう。
別荘の中の電話が鳴り出す。3コール程で留守録に切り替わり、発信音の後に流れ始めた、その声。
『――どうしました? そこにいますよね?』
……静かで、丁寧。だがたった二言でも分かるほど、それは慇懃無礼な口調。
高圧的な……女の声。どこか聞いたことがある様な、だが、思い出せない。
少なくともベルモットではない。だが……誰だ?新たな組織の人間か?
隣で、小林さんが僅かに体を強張らせた。
『いるのはわかっているんです。
お返事を頂けないと困ってしまうんですが』
「…………一応言っておくが、万が一望遠鏡で見られてるとしてもこの雪では詳細は解らないはずだ。
ただ、この別荘に、“パソコンの電源を点け、メールを受け取った人間が居る”ことはバレたな」
「……らしいな」
「どうする?逃げるなら今だが」
彼も自分の警戒には自信はあるだろうし、長年組織の目を逃れてきた彼の目は俺も信用している。だから彼が言う通り、少なくともこの周辺に
でも、人が居ることは確実にバレた。それが板倉さんかどうかはともかく。
……で、あれば……
「……やるのか……」
蝶ネクタイ型変声期を取り出しながら電話に歩み寄る俺を見て、後ろで小林さんが嘆息するのが聞こえる。
「……ああ、すまない……暗くて電話が取りづらくてね……」
こうなったら、雪のせいを押し通して成りすますしかない。
小林さんは携帯を取り出し、何かメールを打ち込み始めた。スバルさんと連絡を取っているんだろう。
あのメールや、この電話の発信元を特定出来ないか確認するのだろうか。
「メールを開け損ねてしまったよ……よくわかったな、ここに、私がいると……」
『そんな山奥で、メールなんて受け取るからじゃないですか?……まぁ、我々はあなたの行動は手に取るようにわかる…といったところですかね……』
「み、見張りは……いないんだろうな……?」
『ハハ。どうか怯えないでくださいな。……ところで、例のソフトは完成したんですか?』
小林さんが部屋のスイッチを指さしてこちらを向いてくる。
︎︎……ここを実際に監視している人がいるか、確認するならそれが1番早いか。
頷くと、小林さんも頷き返して部屋の明かりを……パチリと点けた。
『おや、誰か他にいるんです?』
「ッ!」
俺の表情に小林さんが眉を顰めたが、強風と共に窓に吹き付けてきた雪が窓ガラスを鳴らす音で電話の向こうの女も納得したようだ。
『ああ、そうか、群馬……なるほど、全国的な大雪ですからね。――こんな時に、よくそんな所にいきましたね。ちゃんと取引までにこちらに戻ってこれるんですか?……ああ、電気が不具合で、先程のメールが見れてないのでしたっけ』
「あ、ああ……そうだ、メールが見れなくて……だから、すまないが直接教えてくれないか…
…このソフトの受け渡しの、時間と場所を……」
ここで女の返事が途切れる。風の音が聴こえる辺り、相手側もどうやら外でこの電話をしているらしい。
……返事が遅い。やはり苦しいか。
小林さんが、携帯を見て何か打ち込み、こちらに見せてきた。メール画面に文字。
――会話をもう少し長引かせられるか?
――ハルに逆探知を頼んだが、この天気、距離、回線の状態で、手こずっているみたいだ
その内容に、俺は1つ頷く。
以前の爆弾犯の事件で、旅行先から探知してくれたあの人だ。時間さえ稼げれば、きっとどうにかしてくれるはず。
『――良いでしょう。場所と時間をお伝えしますよ。1度しか言いませんから、ちゃんと覚えてください』
女の声がようやく答えてくれたが、女の指示する時間は今からぐるりと回って明日の0時。24時間後。
……それでは、板倉さんの死亡のニュースが流れるリスクが増えてしまう。
「……ダメだ、明日は都合が悪い……」
『何ですって?』
「今日の夕方から検査入院するんだ……」
この交渉で受け渡しの時間を早め、ニュースが流れる前に取り引きを行わねーと。
そして、なるべく会話を長引かせて……スバルさんが調べをつける時間も稼ぐ。
小林さんにも、スバルさんにもここまで手を貸してもらってるんだ。
この電話を取った以上、俺がここでしくじるわけにはいかない。
「……知っているだろう?私の心臓の調子が悪いのを……」
ひとつひとつ。
冷静、沈着、慎重に、だよな。
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なんとか、今日のこれから、午前4時に取り引きを早めることは出来た。――群馬の山奥の別荘から、雪の降り積もるこの天気の中運転して今から4時間以内に賢橋駅構内、というのは小林さんと彼の車にだいぶ無茶をさせることになる。
しかも、可能な限り早く辿り着く必要がある。
しかし、電話を終えてひと息ついた俺を、小林さんはにっかりと暗闇の中にきらりと光るような、自信ありげな笑顔を見せてくれた。
帽子の上から、ガシガシと俺の頭を撫で回してくる。
「よくやった、コナンくん! 運転はこのおにーさんに任せろ、絶対に時間までに辿り着いてやるからな!」
「ちょっ……小林さん!安全運転でね!車、スバルさんから借りてるんでしょ!」
「なーに、大丈夫大丈夫!俺も結構運転上手いから!」
小林さんがなんだか嬉しそうなのは、俺が彼の依頼通り交渉を長引かせた上、予定通り取り引きの約束を今日中に変更させることができたからだろう。
彼がどこかから持ってきた粗めな箒でバサバサと俺たちの足跡を消している間に、しっかりと、板倉さんの置いていった小切手と未完のシステムソフトのディスクを俺が持つ。
「小林さん」
「スペックはハルのやつほどじゃないが、ノートパソコンが車に積んである。コナンくん、酔うほうか?」
「大丈夫!」
「OK。頼もしい限りだ。助手席の下のシューズ入れな。上の本はそこら辺に置いといていい。先に乗っててくれ」
「うん」
ちゃり、と小さな木彫りの鳥のキーホルダーが付いた鍵を投げ渡され、俺は一足先に車に戻った。
痕跡を消すのは彼に任せた方がいい。
車に戻り、エンジンを掛けて暖気運転にしておき、暖房をかける。
この短時間でも、すっかり雪が積もってしまっているため、せめてフロントくらいは雪を落としておいてあげたかったが……身長的に厳しいか。
仕方ない。彼が戻ってからだな。
助手席に移動。関東近郊の地図帳の下にあった冷えきったパソコンを引っ張り出して、シートベルトを締める。
「君、エンジンまで掛けられるのか?」
「あ、ごめんなさい。雪かき出来なくて……」
「ああ、いいよいいよ。ちょっと待ってろ」
パソコンが立ち上がるのを待つ間に、小林さんはささっと雪掃きを終えて車に乗り込んだ。
そのまま彼はカーラジオをつけ、ひと通りの局を回す。
幸い、まだどこも板倉さんの死亡ニュースは報道していないようだ。
「よし、……出るか。そっちのソフトの確認、任せて良いな?」
「うん。……急がなくて良いからね、くれぐれも“安全運転で”、よろしくお願いします。小林さん」
「はは。大丈夫、大丈夫」
ホントかなぁ。
……黄昏の館に向かった時の事が頭に浮かんだが……大丈夫だと念押して笑顔の彼に、任せることにした。
車は、少し狭い別荘への道をガタガタと、速度を緩めに走り出した。ここは脇道だから、ちゃんとした道路に出るまでは路面がやや荒れている。
「それで……、さっきの電話、逆探知出来たの?」
「あぁっと。それなんだが、良い知らせと悪い知らせが同時にある」
「……何?」
路面的に集中したいのか、前を向いたままヘッドライトに照らされた道を見つめた小林さんがしかめっ面で告げる。
「この取り引きの相手……“バーボン”だ」
「……なるほど。やっぱり」
「流石。薄々気付いてたか」
電話の最中、小林さんが目を見開いて、メールを何度も打ち込んでいたから何度も確認したいことがあったはず。
そして、俺が上手くやったこと以上に、相手が“バーボン”ならギリギリ最悪な事にはならない、という最低保証が出来た。
小林さんがちょっとだけ明るく持ち直したのは、“バーボン”と連絡がついて、この件に絡んでいたからじゃないかなと。
「……俺が貸したの、そういや返してもらってなかったんだよな……」
「何か貸してたの?」
「ああ、ちょっとね」
物の貸し借りとかも出来る程度のやり取りもしてるのか。
……携帯電話、とかかな?
スバルさんが特定した結果の連絡で、驚いてたようだし……
……そうか、そうなると“バーボン”はとっくに……
「あ、それで、……悪いことって?」
「ああ。今回、“バーボン”は俺たちに協力できない。――ジンに見張られているらしい」
なるほど、それは悪い話だ。
そして、そういうことかと。
脇道から県道に出て、ようやく安定して運転出来るようになったのか、小林さんは両手で握りしめていたハンドルから片手を解くと、ポケットをまさぐって携帯を取り出した。
器用に、道路に目を向けたまま、片手でイヤホンジャックを差し込み、耳にイヤホンをはめる。
「ペンちゃん、連絡の読み上げよろしくな」
「?」
読み上げ、と聞くと、スバルさんの使っていたパソコンの合成音声が思い浮かぶ。彼も同じのを使えるのか?
「こっちの話。……それで、“バーボン”の話だが」
小林さんの言う、悪い話……今回の“バーボン”の立場。
散々自由にしていた挙句作戦が失敗したベルモットは、いくら優秀で組織でも重宝されている存在とはいえ御咎めなしとはいかず、FBIから逃げる目的と合わせ、雑用のような仕事をする為に今は既に日本を離れている。
そして、“バーボン”は“バーボン”で、日本警察とFBIを散々引っ掻き回して大混乱させはしたが協力したベルモットが失敗したうえ、FBIと共に行動していた元構成員にして裏切り者の『ライ』を見つけたのに捕まえも殺しもしなかった事を怪しまれ、ジンに睨まれている状態らしい。
「……“バーボン”は…大丈夫なの?」
「一応は。『今回のは子供の癇癪や八つ当たりのような嫌がらせ程度だから、ここを切り抜ければ問題ない』とさ。ただ、そのせいであいつ、今忙しくてなかなか連絡が取れなくてな。
今日もほとんど返事が無いんだが、たぶん携帯弄ってるとこを隣で見てるやつがいるんだろう。……あのメッセージが送れたなら、ジンではなく実際に監視しているのはウォッカだとは思うが……」
ジンの横をついて回っている補佐のような男、ウォッカ。
その目を盗んで、なんとか連絡は出来たが、とはいえ詳細を語る程の連絡は取れていないという。
「ところで、システムソフトの方はどうなった?」
「あっ、ごめんなさい。今、またパスワードの入力が要求出てて……なんなんだろうと考えてたらそのまま手が止まっちゃってた」
「マジかー……うーん……ハルならこういうの、どうにかしてくるんだろうが……」
生憎と、今ここにはネット回線は無いし、スバルさんもいない。
小林さんも運転中で、パソコンはそこまで得意ではないと言い、俺もこのコピーも出来ないシステムソフトに手も足も出ない。
こうなったら、パスワードを推理するしかないが、そのヒントが『板倉さんの使うパスワード』、というだけ。
話を聞きながら悩んでみたが、なんにも出てこない。
「入力して失敗して、また消えられたら元も子もないもんなぁ」
「うん。……せめて、これを“バーボン”に渡して実績にしてもらうしかない」
「………………」
息を吸い込む音。見ると、小林さんが複雑そうにむっと、不機嫌、とも見えなくもない表情。
暗い夜道の運転中で、いつもかけているスポーツサングラスを前髪ごと上げているため目元がよく見える。
……彼の不満気な顔は、ちょっとだけ怖さがある。
「……そういうのはあいつ、気に入らないから……」
「気に入らない……って?」
「そういう、“施し”、みたいなもの。……となるとあれだな。あいつの連絡が指示ばかりで内容がほとんど無かったの……なるほどなるほど。そういう……」
「……どういう意味?」
うんうんと頷いている小林さん。
組織側として“バーボン”がこの未完のソフトを手に入れた後、あちらでこのパスワードが共有されているのか、それとも板倉さんの最後のあがきとして、パスワードがわからないためこのデータは消えました、となるのかは組織側でしかわからない。
おそらくはこの小林さんから板倉さんの死亡について聞いたはずの“バーボン”から、もし知っているならこのパスワードについて教えて貰えるかもしれない。それなら、見返りに未完とはいえ謎のシステムソフトを彼に、と思ったのだけど……“施し”は嫌だから、って……?
「あいつ、君を試す気だ」
「……試す」
あの埠頭で、小林さんを信用するため、“試した”事実が胸にガツンとくる。
頭の中で、スバルさんが『ほら、これが
「ああ。まずひとつ。『君がそのソフトを手に入れる』。これはそのソフトの取り引きを、“君に”、板倉さんが任せるかどうか、から始まってるだろう。ここは“俺に”、でも可。
次に、この『交渉して指定の場所と時間に、間に合うかどうか』。最初の指定だった“明日の0時”、ってのは、俺が“バーボン”に板倉さんの死亡を伝えた後の指定だ。
︎︎……だから、最初から、俺たちが持ってくる事を狙ってる。
︎︎その上で君が、どういった交渉をするのか……そして、間に合うかどうかギリギリな時間なのも、これは……くそ、俺が安全運転しか出来ないのを考慮されてるな。
駅に辿り着いた後、時間が迫る中、どのようにして物を受け渡し、如何に組織の手がかりを掴むか…… …… ……――
――もーーー!性格悪いぞ!バーボン!」
小林さんが、耐えきれずに叫んだその時。ガガガと足下から嫌な振動が伝わってきた。
……これ、黄昏の館に向かう時の……
「……えっ、うそ……まさか?」
「…………まさかかも」
暖房だけではない冷や汗を滲ませながら、小林さんが急いで車を路肩に停めた。
降りて、1番振動を感じた右後方のタイヤを見る小林さんに続いて俺も車を降りる。
左は何も無し。
……後ろから回り込むと、小林さんがタイヤの前で頭を両手で抱えて、蹲っていた。
「……は……ハルに怒られる……」
どうやら、またもやタイヤがパンクしているらしい。
……小林さんの運転のせいじゃ、ないのはわかるんだけど……タイミングが悪過ぎて、ついつい俺も渋面になってしまった。
ええ……?どうしよう……?
♤
「ありがとう、ホントに助かったよお兄さん!おねーさんも、寝ていたのにごめんなさい」
「良いのよ。ウトウトしてただけだから」
頭を抱えていた俺たちの横に、たまたま通りがかった1台のBMWの乗用車。
東京方面に向かう彼らに乗せてもらえる事となり、なんとか群馬を抜けられそう、というところまでは来たが……
さきほどから、この車、何かおかしい。
センターラインをギリギリで走行し過ぎて、何度も対向車からパッシングやクラクションをされているし、雪の多さに辟易しながらワイパーとウインカーを何度も間違えている。
乗り換えるつもりだと言うだけあって、型落ちの古いものだが、それに長く乗っているなら慣れていて当然なのに、彼の運転には左ハンドルに慣れてない人の特徴が多い。…車検の年数も、カマかけてみたら案の定、記憶にないと。
︎︎後部座席で寝ていた女性は、彼は金持ちだからそういったことは気にしない、というが……
……後ろのトランクから聞こえる、固定されていない荷物の音……
「……ぼくたち、運が良かったね!お兄ちゃん!」
「そうだね。危ないからちゃんと座りな。少ないけど、ほら、チョコあげるから」
「はぁ〜い」
前の助手席に座る小林さんへ、ヘッドレストの横の隙間から伸ばした腕へ、小林さんは12ピースがバラで入ったチョコの小さな箱を乗せてくれた。
振るとカラカラと言う中身は、既にほとんど無い。残っているのは、3つだけ。
「……おねーさんもひとつ、どう?」
「あら。じゃあいただこうかしら」
銀の包み紙に綺麗に包まれたチョコをひとつ、女性に。
子どもからの好意を、女性は警戒せず口に入れた。ゴミになる包み紙を預かり、箱に戻す。
「……いやぁ、こんな時間に夜道走ってると俺、ラジオ聴いちゃうんですが、お兄さんは会話で起きてるタイプなんですね」
「ああ、そうッスね……あいつがよく、話に付き合ってくれますから……でも、こう…、雪道は苦手でね。へへ、すいません」
「いえいえ!俺も苦手なんですよね、雪道!だからパンクなんてしちゃったのかな……氷踏んだのかな……うう」
思い出して、スバルさんに怒られるかも、と泣き言が漏れた小林さん。
「あの車、人から借りてたやつなんですよ。あんな所に置いてきて……怒られそうだ」
「ラジオといえば……お兄ちゃん、そういえばさっき聞いてたあのニュース、どうなったんだろうね。
あの……逃走中の宝石強盗犯!」
その俺の言葉に、ぎくり、と左側の2人が肩を揺らす。
右の俺たちは半ば確信に近いものを同時に。
「置いてきた車、盗まれちゃったりしないかな?」
「大丈夫だろ。鍵はここにあるし……ぱ、パンクしてるし……ああ、ごめんよハル……」
2台とも借りたうえで2台ともパンクさせてしまった事が、相当気になっているようだ。できれば気をしっかりもってほしい。せめて、取り引きが終わるまでは。
「……それにほら、検問もある、みた、い――」
「あ、ホントだ。群馬県警の人たちだね!」
遠目に見えたバリケードと、赤ランプ。白の中に黒の混じった、パンダな車が何台か。
左側の2人の顔色が変わるのはわかるんだが……
なんで小林さんまで言葉に詰まってるんだ?
︎︎もしかして、何かマズい……
︎︎えっ、知り合いでもいたのか?
どこかで聞いた声と似てるらしいですね、慇懃無礼な女の声
感想ありがとうございます。どうぞ、この作品が続く間はお付き合いいただければと思います。
読んでいただきありがとうございました!
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ソロモンの秘宝
「これいよいよエデンの果実だろうが!!」と叫び、現在休憩中(不貞寝)
プレイヤー:「わかってるんですよ。ゲームとして、この『ソロモンの秘宝』はかなり面白いです。謎解き、大冒険、スペクタクル……映画の主人公のような気持ちで、とても楽しめます。世界中を飛び回り、かつての歴史に思いを馳せ、知識と技術を駆使して謎に挑む……バトル展開少なめな点も大変好ましく、お助けキャラクターをプレイヤーに合わせてレベル調整して、補助の具合を選択できるのもいい。頼りにならないポンコツから、最悪どうとでも何とかしてくれる保証があるのもかなり良いですね。
恐らくコクーンのローンチはこれ一本でも行けると思います。追加でダカールとヴァイキングをそれぞれ年齢層絞って調整して、キャラもので学習系、パズル系は後からでいいかな。あと…ヴァイキングの庭や部屋のような、マイデザイン関係で何か足せば完璧じゃないですかね。大人から子供まで、これは楽しめると思いますよ。
ただね……これ、私は楽しめないんです……
︎︎これ……最悪だ……ごめんなさい……私は……私は楽しめない……皆さんが頑張って作ったというのに…ヴァイキングの時から既に怪しかったのに…この…このポンコツめが…ノアくんもヒロくんも、樫村さんたちは何もパクってなんかいないのに……グウ…………アヴスターゴ…」
管理:「すごい褒めてくれてるのに、どうしてそんなに落ち込んでるの?せっかく手に入れた秘宝をぶん投げて……それじゃクリアにならないよ?『石版』、『壺』、『杖』、を『聖櫃』に入れれば、なんでも願いが叶…ああ、ちょっと、ここでログアウトするのかい?!」