昴くんはなにもしない   作:あまも

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阿笠博士スッゲェ〜!ってことです(1敗)

執筆中小説から投稿を選んだら本文以外消えてビックリしました。

誤字脱字報告ありがとうございます!
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45-3:ネタばらしと情報のいきもの

 

 

 

 目が覚めたら知らない天井。そう言いたかったのだが、この天井には覚えがあってね。

 

 

 オーッス、米花総合病院チッスチッス。

 

 

 この天井はねぇ……そうだな、救急センターの病棟かな。

 

 って事はまだあれからそれほど時間は経って無さそうだ。

 頭はさほど問題に感じないし、中身もそれほどいってないからおそらくICUには行かないだろう。

 足のほうが大事無ければこのままリハビリにでも回されるかな?

 

 もそもそと手足の動きの可動域を確認していたら、顔見知りの看護婦のおばちゃんが覗き込んできた。呆れ顔で「動かないように」と注意して、私が目覚めた事を先生達に伝えに行ってくれる。

 

 むん……

 

 知り合いの若い研修医のおにいさんやら、初対面な初心者マークをつけた看護師のおねえさんに、ものは試しと、ブスブスと点滴の針をドリトライされてたり。

 

 いいよいいよ、焦らなくて大丈夫さ。好きに練習台にしてくが良い。私の血管、分かりにくいからな。

 

 ところで私の調声機……一旦外してる?ああそう……メンテに持ってかれたかな。

 

 急患の報せでバタバタと慌ただしくなり、ベテラン看護婦さんに「動いちゃダメよ」と再度言われ、そのまま放置。

 

 ……どうやら救急センターの天井で正解らしい。

 

 

 ふふん。米花総合病院の天井ソムリエと呼んでくれたまへ。

 ……楠川さんも担ぎ込まれてんのかな。

 

 

 ■

 

 

 私が気絶してる間に輪切り(MRI)を撮ったが、脳は問題無し!だそうな。

 我慢しきれなかった眠気は、安心して気が抜けた所を、痛みで昇天しただけである。

 

 足は軽い捻挫。運悪く昔の火傷で皮膚が一番突っ張ってる場所を捻っちゃったみたいで、だから痛かったのかと。 まあ、今は湿布を貼っておけば痛まないし、歩くのにも支障はない。

 左肩は脱臼していたが綺麗にはめ直してくれて、どちらもしばらく安静にしておけば問題なし。

 肋骨はヒビで済んでるから、こちらもそっとしておけとのこと。

 ちょっと問題なのは、右手の指。

 薬指がぺきっと。そして小指が、開放感ある感じに折れてたのが問題だそうで、片手だけにしては大きい手術なんてする羽目になった。

 多分、落ちながら無意識に、咄嗟に何か掴もうとでもしたのか……それとも何かに挟んだのか……無理をして、逆パカしたんだろう。

 

 処置後の手は、ボクシンググローブみたいになってしまった。

 砕竜……デュクシ!

 術後の経過自体は良好。念の為の数週間後の再検査程度で済みそうとのこと。

 

 あと、スタンガンが何度も押し当てられた右の首筋から、イヤホンをつけてた右耳、調声機のつけてた首一周、そして右肩から手へと、電気の通り道になったまぁまぁな火傷が放射状に。

 

 まぁ……火傷に関しては今更感あるので、そこはいいや。慣れてるし。

 とはいえ痛・熱・痒の三拍子。

「古い火傷跡を電流が走ったせいで、深部の組織にどんな影響が出るか読めないから、これも後で詳しく診せて」なんて言われたけど。

 いうて今のところは、ちょっとピリつくだけさ。

 

 あとの細かい怪我に関しては舐めときゃ治るってわけでね。

 

 つまり命に別状は無いって事!

 

 

 そして楠川さんも、服部くんも、あとついでに一応ボコボコにされた犯人の男2名と、小林くんのガチな方向の覇気で怯えきって、心に深いキズを負った弁護士の女性も無事なので……

 

 つまりオールOK!解決ってコト!

 

 

「アホか!」

「アダッ」

 

 阿笠さんに調声機の修理の依頼と、私の無事を伝えに行ってくれた小林くんから、無事だった頭をベチンと叩かれた。

 

 

 調声機、さすがに何発も食らった結果、一部絶縁破壊がどうしても起きちゃってて、このまま使用は出来ないってね……

 阿笠さん発明のファンタジーガチガチ耐性謎絶縁体、雷以外でも貫通することあるんだなぁ……なんて。

 

 手袋貰ったばかりの頃、扱いミスって自滅する事が度々あってね……

 そのたんびにショートさせまくった結果、命に関わるからか、阿笠さんは手袋の方の仕様を変える――のではなく、大急ぎで全力でもって、完璧な絶縁体の開発に着手した。

 簡単な原因の排除ではなく、辛く大変な対応の強化を選ぶ辺り、流石天才は常人とは考え方が違う。

 そして成功品が、私の普段使いの調声機。

 素材として特許も取ったんだが、その配合がエキセントリック過ぎて、量産には実用的でないとされている。

 1回だけ見たけど、ただの鉱石がどうして常温で液体になってたのか……あれなんだったんだろうな。夢かな。悪いほうの。

 

 そんなわけで、阿笠さんが耐電圧高めて絶縁破壊強度バリ上げにしまくってくれてたお陰で機能はギリギリ生きてたんだけど……このままでは感電や漏電の危険があるからと、修理に出されちゃいましたとさ。

 

 今は彼が使って、そして零くんに貸していた利奈ちゃん用の調声機で代用している。

 

 こちらは普段使いするものではないから頑丈さや耐久性は無く、革紐みたいなループタイで、主要なパーツをこの飾り具とラリエート部分にまとめてあるため隠しやすく、色んな服でオシャレに使える。とにかく目立たなさを重視した代物。

 小林くんの要望で、色んな声を出しやすくなる調整がされている。

 だから女の子っぽい声出そうとする時に、補助として使えるってわけだ。

 

 

 ただちょっと私の声の酷さには性能が追い付かないのか、それともまーた喉が焼けてるからか、現在いがらっぽい。

 酷い風邪ひいたみたいな声である。

 やっぱあのゴツさが無いと、この危険な街では使えないね。

 

 ……いつぞやのボウタイがあったんだけど……あれ面白がった有希子さんに持ってかれて、アメリカに置いて来ちゃったから今どこにいったか分からんのよな。

 アメリカの工藤氏の別荘にでもあるんだろうか。

 

 

 何はともあれ。

 命があったので……ヨシ!

 

 

 ……

 

 

「……」

「あの……無言は止めて頂きたくって」

「……」

「ヒィ……」

 

 

 手の処置も終わり、首も保護されて後は経過観察してから帰宅かな、なんて思いきや……何やらどこかからの圧力があってVIPな感じの個室があてがわれた。

 

 ベッドだけではない広さ。庶民には初めての部屋である。

 これは知らない天井だ。

 

 金持ちやらお偉いさんってのはこういう所で惰眠貪ってたり……ゴホゴホ。

 療養につとめたりするんだろうな。無駄金〜!

 ……いや冗談ですよ?

 

 

 そんなVIPなお部屋で、ただいま。

 小林くんからの無言の圧力をヒシヒシと。

 圧迫面接…!

 

「あの……」

「常々疑問だったんだ」

 

 モジャ公!?

 

 小林くんが喋り出したんだが、その手には私のボロボロの携帯と、彼の黒い携帯。

 私の携帯は無事死んでる様子で、ひび割れた真っ暗な画面を見せている。

 

 その横の黒い携帯の画面には、手を正面に合わせて『ごめんなさい』と吹き出しを出しているペンちゃんのアニメーションが。

 

 えっ?

 

「お前の開発中の人工知能……実用レベルまで来てるだろ」

 

 ええっ!

 そんな、こんな低リソースノアくんはまだまだですよ!

 これで“実用的”なんて言ってたら、ノアズ・アークはどうなっちゃうんですか!

 ……画期的?革新的?

 

「おかしいとは思ってたんだ。最初に疑問だったのは、以前の大阪旅行でハルが拘留されてた時」

「あの、言い方に語弊が……」

「逮捕?」

「逮捕でもないんですけど」

 

 小林くんは私のベッドへと腰掛け、何やらファイルからぺらりと1枚の紙を見せてくる。

 とある日のメールの通知画面。

 

 小五郎さんのメールアドレスで、蘭ちゃんのメールアドレスへと送信された2件のメール。別の紙に印刷されたそれらを、ベッドの上の私の膝の上に並べてくれる。

 1件目は、『パソコン小僧が不当に扱われてるから探偵ボウズの親父さん達に文句言ってくる』。

 2件目は『あくまで話を聞くだけの、参考人として連れてきたらしい。心配はしなくても大丈夫だ。本部内は自由に動いてて良いとか言われてるが、外出は止められてる。小僧がやらかさねーか見張っとく』。

 

 ふむ。ノアズ・アークったら、それっぽい文章じゃないか。

 小林くんは、その2件目の日付……いや、時間を示した。

 

「これ、……この2件目。送れるわけがないんだ。

 ――この送信時間、毛利探偵は蘭さんと電話してたんだから」

 

 小林くんがぺらりと追加で出したA4の紙。

 わざわざ記録を出してもらってきたのか、その日のその時間、小五郎さんの通話履歴と通話時間が明記されていた。

 

 

 ――れ、連絡……してる……だと!?あの小五郎さんが!?

 

 してないと思ったのに!!

 

 

 小林くんが頷いて続ける。

 

「蘭さんが『そっち大丈夫か』とか、『ボウズ共は何してんだ』とか。

『こっちはあのバカにゃ話を聞きたいだけらしいから、明日には帰れるだろ。やらかさないか見とくから、心配いらねーからな。寝とけ』って……

 メールを送って来てるのに電話も、なんて、あの毛利探偵がそんなマメなことするわけないから、蘭さんも結構ハッキリ覚えててくれたよ。

 ……電話した当の本人はよく覚えてなかったけど」

 

 

 ……あの人なんなんですかね。

 

 というか毛利家なんなんですかね。

 小五郎さんだけでなく、蘭ちゃんも、妃さんも……普段やらないようなこと、なんで突然やりたくなったり野生の勘でなんとなくやってみたりやらなかったりするんです??

 あとたまにチョイスとセンスが謎。

 

 

「……ちなみに平次くんからも聞いてる。平次くんのお母さんが、ハルの荷物から着信の音みたいな変な音が鳴っていたって。

 ……イマドキ2台持ちなんか、珍しくないけどな」

 

 

 

 あーっと。

 

 小林くんは蘭ちゃんだけでなく、しっかりと静華さんにも確認している!

 刑事さん!!証拠と裏取りがしっかりなされておいでだ!

 

 

「サブ機も置いてきていたのだとすれば、ハルが代わりに送ることも出来なかったはず……お前、あの時俺やゼロにメッセージ送った時にはもう、携帯は水没していて使えなかったんだろ?

 いつもみたいな、『ポチポチっとね』なんて言い訳はさせないぞ」

 

 うーん……

 一応まだメールの件は、『メールアドレスは私が覚えてたから、本庁で他端末借りてそこから打ちました』が言えるんだが。

 ただメッセージアプリがな……

 

 メールも確認されてしまえばバレることながら、あの時は私も講習会してて、おじちゃんたちの端末、いくつか触ってるからな。

『こっそりね』とつけられる。

 まだ焦ることじゃない。

 

 

 

 

「……ハルのことだから、ここはまだ言い逃れは出来るだろうが」

 

 

 やはりくるか……

 

 身構えていると、不意に無表情だった彼が、表情を和らげた。朗らかな、春のような笑顔。菩薩のような微笑み。

 

 

 あっやばい。

 

 

「お前、これまでも何度かおかしかったけど。

 

 今回、その手(・・・)で、携帯もない、連絡できない状態で……遠山刑事部長に連絡取った挙句……俺に助けを求めるのは流石に無理だろ」

 

「ぐぅ……」

 

 左は脱臼、右は滅茶苦茶、電話は死んでる。

 

 ……うん!

 …………い、いやまだ……

 

「ちなみにペンちゃんはもう吐いたぞ」

 

 

 画面の中の小さなペンギンは、また深々と頭を下げている。

 

「面白おかしく、便利に使わせてもらってるけど……コイツですら、この携帯に合わせて小さくしてるって、本体はどんななんだよ」

 

 

 う、裏切りものーっ!

 

 

 ︎︎■

 

「…………ノア。いますね?そこに」

『……ごめんなさい。こうするしかなかった』

 

 聞き馴染みのある声が申し訳なさそうな調子で小林くんの携帯から流れ、ペンギンの周りに白い浮き輪がぎゅむとペンギンを囲んだ。

 えっ可愛い。

 一方、小林くんが困惑したように自分の携帯を見ている。

 そりゃペンちゃんと違う声が流れてきたらなぁ。

 

「ヒロくんは?」

「ん?」

『お兄ちゃんとボクに任せるって。公開するべき相手は、きっとヒロキよりお兄ちゃんがわかるだろうからね』

 

 買いかぶりすぎでは?

 あと、そういえば景光(ヒロ)くんだったっけね。

 

「つまり君は、小林くん……みっちゃんを信頼出来る人物だと定めたんですね」

『うん。お兄ちゃん、大変そうだから』

 

 大変ということはないんだが……ノアズ・アークが信頼できるとしたなら、良いことだと諸手をあげたい。

 

 ノアズ・アークは私を助けるため、辻褄も何も無視して連絡してくれたわけだ。

 疑問に思ってしまっているなら全部話してしまっても、いずれ辿り着くだろうと予測して、ならもう話してしまって、協力してもらった方がいい、と。

 

 ペンちゃんにあの態度の人だから、かな。それともこれまでの彼の様子で、かな。

 

「みっちゃん」

「……おう」

「隠してた事は、すいません。この子は見ての通り、聞いての通り……自分で考えて動くことも出来る人工知能です」

 

 怪我した中でも酷い方ではある火傷がジワジワと熱くて痛い。……懐かしいな。

 

「隠したかった理由は?」

「サワダヒロキがこれ(・・)を作ったことを、よく(・・)考えて(・・・)しまう(・・・)相手には話しにくかった」

「……それは、どういう……」

 

 秀吉はあれですっかりノアズ・アークのことは知ってしまっているが、あくまで私がヒロキくんの力を借りて、高校時代につくった将棋対戦用人工知能の延長上の存在だと思っている。

 良くも悪くも、秀吉は将棋星人だからな。1に将棋2に将棋、3、4で由美タン5で将棋だから。

 …………それがアイツなりの、世界の楽しみ方だから何も言わんし尊重するけども。

 

「……みっちゃんは“警察官”ですからね。ノアズ・アークがいずれ、どう使われるか……どう使うことが出来てしまうか、また、ノアズ・アーク自身でどう考えてしまうか、予測してしまうでしょう」

「……そうだな」

 

 小林くんは頷いた。

 辞めたと言ったって、彼の中での正義感はいつまでも消えないし、彼自身もいつだって世のため人のためで生きてるヒーローだ。裏稼業に混ざっても消えなかった。大事なことだ。

 そんなヒーローは、“これ”がどんな存在か、どう使われるものかを考えてしまうだろう。必要なことだ。大事なことだ。

 

「事実、あなたが怖い顔をしてたのは“私がこんな感じになったから”、の他に“このことを隠していたから”、って点もあるのでしょうが、ノアズ・アークの危険性を考えなかったはずは無い。

 『これはなにか』と問いに来ましたね?」

「……そうだな」

 

 私が予期せぬ妙な犯人に巻き込まれ事故でこんな怪我したってのは小林くんもわかってるはずだから、そこではあまり彼は怒っていないはず。

 犯人への怒りが逮捕の形で発散されただろうし、残ったのは隠されていたってことだけだろう。

 

 ぶっちゃけ、別に知らせても良いんだけどね。

 

 重要なのは、人工知能……AIそのものの危険性を、良く考えてしまう人のひとりって点。

 

「……これは大事なので先に言っておきますが。

 ノアズ・アークは、確かに危険性はあります。今の人間社会を壊滅的なまでに壊せますが、それは『可能なだけ』です。そうする可能性はありません。

 ……この子が組織に悪用されることは、万に一つもありません。どうかそれだけは信じて欲しい」

「…………はぁ」

 

 でっかいため息。

 複雑そうな表情。

 

「……お前、黙ってた理由……

 サワダヒロキくんを守りたかったからか?」

「そうですね」

「ならそうひとこと、言えばいいんだよ。……言ってくれさえすれば」

「だってどう言おうが、あなたは必ずこの子の危険性を念頭に置いてしまうでしょう。現に今、みっちゃんの考えてそうなこと当ててみましょうか?」

 

 まずひとつめに、『組織の作ろうとしてるシステムプログラムの完成系ってこれなのでは?』が最初にあるだろ?

 そんで最近のメッセージの違和感から、『沖矢昴としてここまでの成りすましが可能』ってことは、他の人間にも成りすまして事を起こせるわけだ。いずれ起きる。

 そして……『というかコイツ、これ使って情報集めてたな?』っていう。

 ……その情報収集を、ノアズ・アークが自分で判断して潜ってしまい、普通の人には認識できないほどキレイに痕跡残さず帰ってこれるシステムプログラム。

 

 彼が『消せ』と開口一番言わない人種だからまだ助かってるようなものである。

 こーれもし零くんなら開口一番『消せ』が、8割くらいの確率であるし、小林くんに知らせたくなかったのって小林くんなら絶対に零くんに相談するだろうってのがわかってたからである。

 

 小林くんを見ると、彼は顔を手で覆ってから、頭を下げてきた。

 ん?

 上げた表情は、苦笑というか妥協というか……

 

「…………お前が怖がってるのはよくわかったよ。わかった。ごめん。俺もちょっと頭来てたから」

「こわがっ…て…」

 

 …………はっ!

 

「け、喧嘩腰になってました!?」

「うん。……お前、その態度ってことは本当にこの……ノアズ・アーク?が消される可能性が怖かったんだろ。うん。よくわかったよ」

 

 テンパって、噛み付くという……赤井さんにやらかしたとされるやつである。

 探りに来られるとどうしても……気を付けてるつもりなのに。やましいことあるとでちゃうなこれ。

 小林くんは、いつもの笑顔に戻っている。

 

「……正直、確かにそれらを考慮しないことはできないけれど、俺だって……お前の事は信じてるんだぞ?お前がそこまで大丈夫だと言って……、守りたがってる大事なものを、無理やり壊すようなことはしたくないよ」

 

 そこで『しない』、と断言できないから怖いんだってば。……でも信じてるって言われてしまった。彼が私の言葉を信じてくれるなら、私だって彼のしたくないと言う言葉を信じるしかない。

 

 ……いや、景光くんはまだいいんだよ。ペンタ・ゴンちゃん可愛がってくれてたし。

 

「でも零くんには言うでしょう?」

「言う」

 

 もーーーーーさぁ。

 そうなるじゃん!零くんが、機械なんかのことを信用するかって言われるとさぁ!

 

「大丈夫だって。ゼロも制御下にある限りはその有用性のほうを重視するはずだよ。

 あいつほど『情報』の強さを知ってる奴は他にいないぞ」

「でも零くんに貸したペンちゃん、1ミリも成長してないですよ」

「……」

 

 かわいそうに……零くんのところの低リソースノアくん、貸して以来なんにも構ってもらってないのだ。

 樫村さんや、零くんよりずっと後に貸している秀吉や、智明くんや成実さんの所のペンちゃんは、とっくにすっかり大きくなって……誇らしげに頭の冠羽をふさふさと揺らしていたり、小柄な白黒の身体でパタパタと駆け寄ってくるというのに。

 彼らは集めた学習情報を定期的に持ち帰って同期していってくれるんだが、未だに灰色でふさふさとしたあの子ってば自分のこと役立たずだと思ってそうなしょんぼり具合でとぼとぼと……

 毎回ノアズ・アークといっしょに零くんはああいうやつだからと慰めるんだが、見ててかわいそうでかわいそうで……

 

「こんなにかわいいのに無視するような男ですよ!?」

 

 小林くんの携帯を示す。

 画面の中では、きっとノアズ・アークが小林くんの小さい青いペンギン姿で、浮き輪持ってかわいいポーズしてることだろう。

 

「いや、得体が知れないから触れないだけだろ。あいつ、メッセージ自体はこんなに活用してるし……教えたら相当使い込むぞ」

 

 え〜?

 ほんとにござるかぁ?

 

 

 …………ふざける余裕が出てきた。

 うむ、うむ。

 

 小林くんなら、ノアズ・アークの情報は上手く使ってくれて、大事に隠してくれるはず。問題は……

 

 …………零くん、ほんとに大丈夫でござるかぁ?

 

 いやいや、今回は私の命の危機だったから。

 知らせてしまったことはノアズ・アーク何も悪くないから。私が鈍臭かっただけ。

 …………あっ

 

「そうだ。私の車って回収してくれました?」

「ああ。……お前の持ってた鍵、使えなくて……ペンちゃん……じゃなくてノアズ・アーク?が開けてエンジンかけてくれてな。お前の部屋まで持ってっといたぞ」

「ありがとうございます」

 

 あの恰幅の良い犯人、鍵が使える車が無かったと言ってたが当たり前だ。

 持ってたその鍵は景光くんに貸してるスバル360のもので、リモートキーとスターターは使えなくなってたんだろう。

 

 ……鍵、買い替えか〜………………

 あれ、買い替え、できるか?

 

 …………か、鍵の方を直せばいけるか…?

 いや、ノアズ・アークがやってくれるならもうそれで良くない?

 

 うーん。近々、また集まって報告会かな。

 その前に、私の退院ね!

 経過見るだけだそうだから、2、3日程度で長引かないでしょ。

 

 荷物とか持ってきて貰わないとなー。

 

 





困ったことにこれ没案3話くらいあるんですが、この後の火事に参加させなければ何も問題なかったんですよ。
ここで死にかけるか、赤馬で死にかけるかの2択でした。
でも弓長のおっちゃんに会わせたかった…

読んでいただきありがとうございました!
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