昴くんはなにもしない   作:あまも

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すいません突発的に忙しくなったり異次元いったりイカ見たりしてました…

年末年始、もうちょっと忙しいかもしれません。
雪やこんこん!

閲覧ありがとうございます!


46-1:赤い馬の真相と火事親父

 

 

 

 東都を騒がせている放火魔事件に、服部くんと新一くん、そして小五郎さんが首突っ込んだらしい。

 

 

 服部くんたら、彼も殴られて怪我してたはずなのに……アグレッシブなことで。

 

 

 なんでも、本来は楠川さんが担当するはずだった調査依頼だったが、こんなことになってしまったために動けなくなってしまって。

 それで気のいい服部くんが、二つ返事で安請け合いしたのを聞いてしまった小五郎さんが、渋面しながら杯戸探偵事務所に連絡をとって依頼の引き継ぎをしてくれたそうな。

 

 どっこい行ってみたらば依頼人には「もういいわ」と断られ、帰ろうとしたらその家が火事になり、今巷で噂の“赤い馬”を連想させるような目撃証言まで聞いて……

 

 ︎︎謎だいすきな探偵ボウヤ共は黙っていられなかったってね。

 

 

 連続放火魔とされる、その“赤い馬”。利善町の1丁目から始まり、鳥矢町の2丁目、奥穂町3丁目……そして今回の杯戸町4丁目……と何かの意図の見える現場の順番。

 その現場には、毎回赤い馬の置物が残されているという噂。

 ……赤い馬の字面をみると、連想されるのは赤兎馬だが、そも赤馬は放火の隠語。古いものだけどね。

 

 

 で、その事件は私が病院で小林くんに詰められている間に解決したらしい。

 

 2日くらいで解決するもんなのか……さすが名探偵ボウヤⅹ2。

 

 

 それで、何故か私に新一くんと服部くんが、親切心でこの事件の全貌の報告に来てくれたのだった。

 

 

 ……なんで?

 

 部屋からの眺めをホーホー言いながら見ている服部くんをよそに、新一くんが私のベッドに上半身を乗り上げ、小首を傾げる。

 ……わかっててやってやがらぁ。

 撫でてやるには左手が遠い。

 

「スバルさん、『諸角 明』って人……知ってる?杯戸町の……」

「ホー……そうですねぇ」

 

 新一くんの上げた名前には覚えがあった。

 それで思い出したついでに、自分のリマインダー扱いしていたノアズ・アークから、最近その名前を聞いていなかったことも思い出した。

 

 

「そういえば最近……受診してませんね」

 

 

 その諸角という人が私の知り合いと同じであれば、それは智明くんから紹介してもらった精神科の医師である。

 

 ただ、あの人……あんまり人のことよくみてくれない人で、決めつけてくるというか……

 なんと言うべきだろう。

 ……そう、私は“合わなかった”から、智明くんに言われた時だけ行っていた。

 確かに、最近行ってなかったな。智明くん(クリスさん)から診てもらってこいの指示は当然無かったし、あちらからの催促もなかった。

 そうかそうか。

 

 ……ロクな診断もしてくれないというか、私が普段は普通な人間だしそもそもがおかしくはない人間なので、特に目立った異常も無く……『安定している』と、あの人もそんなに深刻に考えてはいなかったのだろう。

 それはそれで、変な薬を出されるよりはいい。

 智明くんも、“精神科に行ってる”という形のための近場の人を紹介してくれただけだろう。

 現にちょっと遠かったり、予約が取りにくかったりする医師を何人か紹介はしてくれている。

 面倒くさがったのは私の方なのでそこで文句を言うのは違うか。

 

 もし仮に私が本当に精神的な病に苦しんでいて、医者の助けが必要だとなったなら……私は、苦手だとは言うけど、まず智明くんにすがりついてでも頼む。

 もしくは長い距離走って……もう医者は辞めてしまわれた、当時の私をみてくれた精神科の医師、中野先生に会いに行くわ。あの人は良い人だったし。

 

「諸角明って、精神科の医師のかたであってます?」

「うん。やっぱり知ってたんだな」

「……って、オイ工藤。まさか」

「ああ。この人、諸角さんの患者さんのひとりだよ。杯戸町の先生のとこ行くって、昔聞いたことがあったから」

 

 覚えてたんだねぇ。そんなどうでもいい小話。

 そして服部くんは驚愕の表情。

 ……なんなの?

 

 服部くんは驚きの後苦々しそうに顔を歪めていって、最後にはいつもの、胡散臭いものを見る表情。

 

「……変なマインドコントロールされてへんやろな?」

「さあな。この人が洗脳されるのは、あんまり想像つかないけど」

「ちょっと。なんて言い草ですか。……なんなんですか一体」

 

 そりゃあの先生は私には合わなかったが、合わなかっただけで悪い先生ではないから、そんな言い方しなくてもいいだろう。

 

 ……ああいや、もしや?

 

「……亡くなりました?」

「ううん。放火と殺人の容疑で逮捕されたんだよ。“赤馬”の犯人は彼だったんだ」

「ああ、そっち」

 

 犯人のほうね。

 あの人、そんなんやる人には見えなかったが、ここはやはり私の見る目の問題だろう。

 

「それで、何故私にそれを?」

「いや……その……服部じゃないけど……変な薬、処方されたりしてないよね?」

「変な薬……?」

 

 寝てないだけって診断もらって、睡眠薬(安定剤)はもらったことはあるが、飲まないまま……今頃車のダッシュボードで化石になってんじゃないかな。

 

「なぜに?」

「犯人がなぁ、患者のひとりに『自分が犯人なのかも?』と思い込ませようとしとってな。そんでそのおっちゃんが、夢遊病の再発した自分が夜中に火ィつけとんとちゃうかって思い込んでもうて……」

「そりゃむごい」

 

 腕組した服部くんが渋い顔。新一くんは……憐憫?眉を下げて難しい顔。

 精神を病んでしまい、医者を頼って来た人を貶めるなんて、……なんて酷い人だ。医者の風上にも置けないな。智明くんを見習え。

 

 そこでノックも無しにガラリと扉が開いた。

 

「おーす、ラムネ買ってきてやったぞ〜って、……江戸川くんに服部くんじゃないか」

「小林ハン」

 

 コンビニ袋をガサガサと振りながら入ってきた小林くんが、渋い顔した名探偵達が私のベッドを囲んでいるのを見て一瞬足を止め、首を傾げるだけでそのまま私のところまで。

 

「“赤馬”は解決したんだろ?わざわざ教えに来たのか」

「なんや、知っとるんか」

「俺も教えに来たからな。犯人が犯人だったし」

「もう犯人まで知ってるの?小林さん」

「もう記事になってるだろ。ニュースでも見たからな」

 

 デジタルデトックスじゃないが、『どうせ取り扱えないだろ』と、情報を集められる電子機器類から離されている私に、みんなしてトレンドニュースのお届けに来てくれたらしい。

 

「……あ、それとね。弓長警部が、小五郎のおっちゃんに『沖矢はいねーのか?』って訊いてたんだけど……知り合いだったんだ?」

「ええまぁ。……そうか、火事だし弓長さんも来ますよね、そりゃ」

「アンタの知人の範囲どうなってんだよ……」

 

 みんなして呆れ顔してるが、警察さんとのお付き合いとこねこねのコネは君ら全員の方があるだろ。

 

 警視庁刑事部捜査一課火災犯捜査係・警部の弓長さん。

 どういうわけだか良くないところで燃え上がる火を頻繁に目撃してしまう私に、『お前が火をつけたのか』と何度も疑われるうちに……色々あったがついには『またお前か』と呆れ顔で言われる程度には仲良くなった警部さんである。

 織田さんと合わせて、よく火災現場を眺めながら火は怖いねぇなんてしみじみする仲ですよ。

 何でかね。

 

「おっちゃんが、スバルさんが居ない理由を、怪我して入院中って話してて、それで」

「おお、せやせや。これな」

 

 新一くんからの視線を受け、手のひらをガッテンと打った服部くん。肩に引っ提げていたバッグから取り出したのは……羊羹1棹。

 

「よ、羊羹……」

「『これでも食って栄養摂れ』やて。中々話のわかるおっちゃんやったわ」

 

 子供である名探偵ボウヤ達を邪険にすることなく、小五郎さんと一緒に事件捜査に混ぜてくれたからか、服部くんはご機嫌な様子。

 小五郎さんもいたし、弓長さんならそうなるか。

 

 あの人、昔刑事だった頃の小五郎さんの面倒を見ていた時期があったそうだが、2人して毎回事件性を疑っては手がかり探しに熱中しがちでね。

 おかげさまで、彼には何度も詰められて……なんだかんだ、自分のやってない証拠集めやアリバイを探して指摘するうちに世間話が弾み、仲良くなれて……最近じゃ、『お前が火をつけたのか』に『違います。証拠は――』は最早挨拶がわりみたいなもんである。

 

 そんな、私のような一般人が捜査に口出ししても聞き入れて参考にしてくれる人だからな。

 名探偵ボウヤたちの意見も、有用性があるとして聞いてくれたんだろう。

 少年と高校生。子供たちとはいえ、小五郎さんも一緒にいたのだし。

 

「弓長さんは人情家で良い人ですからね。彼が事件担当だったなら、その“思い込まされてしまった人”というのも良いように面倒見てくれるはずです」

「せやなぁ。……おお!せやせや。帰りの前にあのおっちゃんのとこ寄ろっちゅう話しとったんや。よっしゃ、行くで工藤!」

「だから、工藤って呼ぶなってのに!」

「ええやん別に。ここ防音しっかりしとるんやろ?」

「だからってお前なぁ……!」

 

 漫才が始まってしまったが、私のベッドに乗り上げていた新一くんが飛び降りて服部くんの方に寄って行った。

 ひと通り話して満足したのか、お帰りらしい。

 肩掛けカバンを背負い直した服部くんが、頬の絆創膏を気にもせずにニカりと笑う。

 

「ほなまたな沖矢ハン。アンタ鈍臭いんやから、小林ハンに面倒見てもろて……気いつけなはれや!」

「オイコラ!服部!」

 

 彼の中では、私は“胡散臭いにーちゃん”から“胡散臭くて鈍臭いにーちゃん”へとクラスアップして確定してしまったらしい。

 新一くんが服部くんの膝をべちりと叩いている。

 

「ははは! 今度はちゃんと俺も見とくよ。お見舞いありがとうな」

「江戸川くんと遊んでくれてありがとうございます、平次くん。あなたもお気を付けて」

「大丈夫やて!ほな!」

 

 服部くんの足元でまだなにやらミャーミャー言っていた小さい新一くんを小脇に抱えた服部くんは、ちゃちゃっと素早く病室を出ていった。

 

 ……タイミングといい……小林くんのこと、警戒してる?

 ゆっくりと閉まっていく大きなスライドドアを見ていたら、「いや」と小林くんの声が隣から。

 

「あれは俺とハルでの内輪話があるって察して、早めに空けてくれたんだろう」

「そうなんです?」

「何回か俺に目配せしてたろ」

 

 チョキを自分の目とどこかの相対する相手へと向けるジェスチャーを見せてくれるが、ちょっとそういうのはわかんないですね……

 

「江戸川くんから、俺がハルの見舞いに付きっきりだ、とか聞いてたんだろ。気の回し方が上手いのやら下手なのやら……」

「女の子の扱いは下手なのでしょうが」

「はは。違いない」

 

 本来ならばラン・ネーチャンほどではないにしろ武芸を嗜みそれなりの実力派な2人が、何故あの監禁へと至ったのか。

 

 理由が小林くんから教えられたのだけど、あの時見たのは見間違いではなくて……和葉さんが拳銃向けられて人質に取られてしまったため、服部くんは反抗出来なくなってしまったのだそう。

 その際、「手ェ出すなや!」と結構アツアツな感じで叫んだのか、そこは聞いてないのでわからないが……

 監禁から解放された時に和葉さんが服部くんに「あれ何言おうとしとったん?なぁ?平次?」と顔赤くして詰め寄る姿をニヤニヤしながら小林くんと江戸川くんで見ていたそうな。

 

 

 ︎︎ふーん、なるほどね。

 

 

 

 てぇ!

 

 

「それで……話があるんです?」

「ああ」

 

 小林くんがコンビニの白いビニール袋から取り出した、駄菓子のラムネのプラケースを取り出した。中には、小さなSIMカードとmicroSD。

 

「まずこっちが、あの携帯から復元されたデータな」

「取り出せました?」

「灰原さんとペンちゃんが手伝ってくれたよ。灰原さん、彼女パソコンも扱えるのな」

 

 ボロボロになってお亡くなりになってしまった私の携帯から救出されたデータを移してくれたらしい。とはいえPCも携帯も持たされていない私にそれを使う術はないため、私の荷物のボストンバッグにラムネケースごと突っ込まれた。

 

「で、こっちが阿笠博士が修理ついでにさらに改良したっていう……新しい調声機なんだが」

 

 取り出されたのは滑らかな素材でできた、くたりと小林くんの手の中で垂れている帯状のもの。

 

「……柔らかそうですね」

「ああ。今回装着感に拘ったそうで……すまん、俺は聞いてもよくわからなかったんだが、絶縁体の配合を変えてみたら、回路の方も余裕ができたとかで……詳しくは直接きいてくれ」

 

 それたぶん私が聞いてもわからんやつ。

 見た感じは革のような柔らかさと、厚みが薄くなった、という変化。あの分では機能はそれほど変わっていないのでは?と思う。

 

「で、お前の首、まだ火傷治ってないしこれもここに入れとくぞ」

「あっはい」

 

 そちらもずぼっとバッグに突っ込まれた。

 しかし、そうなると利奈ちゃん用の調声機をまだ借りることになるが。

 

「それと……阿笠博士が、心配してた」

「……それは……」

「灰原さんのこともあるし、出来ればひとり暮らしを止めて戻ってきて欲しいそうだが、お前のやりたいこととかあるだろうからって……言い出しにくそうにしてたぞ」

 

 

 頭に浮かぶ、しょぼんと眉と肩を下げる丸い顔。

 

 あの人は私のことを尊重してくれているが、それでも一時期面倒見て、幾度となく私がひとりでこっそり体調悪くしてるのを見てた人だからな。

 …………私のことは気にしなくていい、なんて言った日には、彼はおろおろと、悲しそうにしては狼狽えて、でも強く言えなくてと困り果ててしまうことだろう。

 

 ………………本当に、面倒な人間を預けてしまって申し訳ない。

 本来なら灰原さんひとりを大事にして、その残りの余裕で少年探偵団達の面倒を見ているはずの人だったろうに。

 後から更に増えてたりしたらわからないが、少なくとも“沖矢昴”は彼に面倒見てもらう存在ではなかったはずだ。

 ……余計な心配を……

 

「せめてもっと近場に、阿笠博士が気軽に様子見に来れる所にしてあげられないか?ほら、今倉庫代わりとして借りてる部屋あったろ?あそこと交換とかさ」

「ああ……でもあそこ、他の部屋に人住んでますし」

 

 今の部屋の最大の利点は、私以外あのアパートに誰も住んでいない点だ。

 大家さんとも付き合いが長く、仲良くしているおかげでほぼ貸家みたいな扱いさせてもらっている。

 だからこの小林くんやら零くんやらクリスさんやらが好きに喋れたり、防諜対策勝手にできたり電波飛ばしたり夜中に車出し入れしたり監視の人たちにコーヒー差し入れしたりできるんだが。

 

「どうせ両方借りてて、寝るため程度にしか部屋を使ってないなら役割入れ替えたって変わらないだろ」

「でも監視の人たちが大変じゃないですか。人目が増えますし」

「……なんでそこを配慮する必要があるんだよ……」

 

 あのくたびれおにいさんを筆頭に、その他よく来るおにいさんたち、盗聴器やカメラを仕込みに来るんだが、私が知られたくない事したい時には申し訳ないけどスイッチ切らせてもらったりデータの差し替えさせてもらったりしてるからな。

 その手間が増えるかもしれないし、ほかの住人たちがもしも神経質だと、心労が祟ってしまうかもしれない。

 

「……監視の意味!!」

「れーくんも言ってましたねぇ、『気付かないのが悪い』って」

 

 零くんたら、私がクリスさんとやり取りしてたことについての報告が無かったことを知った彼に、そんな小細工したこともある旨を謝ったらもちろん殴られたんだが、その後『務まってないぞ!!』って部下さんたちにもキレてたっけな。

 かわいそうに。

 

「……わかった。監視の件、アイツと相談してみるからさ。検討してやってくれよ。こっちも灰原さんとお前が近い位置にいてくれたほうが何かと便利になるんだ」

「む。そう言われると前向きに検討せざるを得ませんね」

 

 その2点を出してこられると、途端にメリットが増えてくる。阿笠さんの所に顔出ししやすくなり、灰原さんの駆け込み寺として使えて、小林くんの目の届く位置に新一くん、灰原さん、そして私が近場に。

 小林くんが見れるようになれば、監視の人たちの仕事量がもう少し減るだろうし……

 

 むむ。悪くないかも。

 

 ただなぁ。

 

 

「あそこの大家さんの息子さん、私のこと変な呼び方するんで苦手で……」

「変な呼び方?」

 

 あちらの花壇を借りて、よく使う野菜なんかを作らせてもらってたんだが……日課の走り込みの帰りに水やりに行くと、たまに顔合わせたりしてさ。

 しかもその子はちょっぴり人見知りで、挨拶してはくれるんだが言うだけ言って走り去ってしまうから、その呼び方の理由を聞くに聞けなくてね。

 

 

 

「ええ。

 

 

 『赤い人』って」

 

 

 

「…………赤井?」

「赤い人」

 

 そりゃ一度ならず二度までも燃えたりなんなりしている私への皮肉かなんかと、毎回複雑な気持ちになってしまうのである。

 

 ……今小林くん、イントネーションおかしくなかった?

 

 





玄田さんはちいかわみがあります。
あと三国志詳しい毛利家…

あそこ見た感じ駐車場狭そうなんで、他の所にあるとかなんですかね。


読んでいただきありがとうございました!
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